連載「その常識、研究では?」全10回の第8回です。

「マシンは初心者向け、本気でやるならフリーウエイト」。ジムでこう言われた経験のある方は多いと思います。理由としてよく挙げられるのは、バーベルやダンベルは自分で軌道を制御しなければならず、体幹や小さな筋が総動員されるから、というものです。マシンはその仕事を機械が肩代わりしてしまう、と。

この説明は一見もっともらしく、実際に筋電図で裏づけられたように見える研究もあります。しかし、急性の筋活動と数か月後の結果は別物です。

結論を先に書きます。数週間から数か月の介入で比べると、筋肥大にも最大筋力にもマシンとフリーウエイトの差は検出されない。差が出るのは「測定した課題に近い方法で鍛えた側が有利になる」という特異性であり、器具の優劣ではない——これが現時点での要約です。「フリーウエイトのほうが体幹が働く」という主張も、フリーウエイトとスミスマシンを比べた筋電図では支持されていません。

その常識研究では 第8回 マシンとフリーウエイトどちらが優れているのか|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

出自——不安定さが動員を増やすという理屈

この通説の土台は、「不安定な環境ほど多くの筋が動員される」という、それ自体は妥当な観察にあります。固定された軌道の上で押すより、自分で軌道を保ちながら押すほうが、姿勢を支える筋の仕事は増えるはずです。1990年代から2010年代にかけて、この予想を筋電図で確かめる研究がいくつも行われました。

Schwanbeck S, Chilibeck PD, Binsted G. A comparison of free weight squat to Smith machine squat using electromyography. Journal of Strength and Conditioning Research. 2009;23(9):2588-2591.

健常者6名が、8回が限界となる重さでフリーウエイトのスクワットとスミスマシンのスクワットを8回ずつ行い、7つの筋の活動を同時に記録しました。結果、フリーウエイトのほうが腓腹筋・大腿二頭筋・内側広筋の活動がそれぞれ34、26、49%高く(p<0.05)、全筋の平均では43%高くなりました。他の筋には有意差がありません。

ベンチプレスでも似た所見があります。Schick らは、フリーウエイトのベンチプレスのほうがスミスマシンより三角筋中部の活動が高いことを示し、負荷が最大挙上重量の70%より90%のほうが活動が高いことも確認しました。

こうした結果から「フリーウエイトのほうが優れている」という主張が組み立てられました。ただしここには飛躍があります。筋電図の振幅は、ある瞬間にどれだけ電気的に活動したかを表すだけで、数か月後にどれだけ太くなるかを表す指標ではありません。参加者6名という規模も、結論の重みを制限します。

この飛躍は連載を通じて繰り返し出てきた形です。急性の指標(筋電図の振幅、ホルモンの上昇、筋肉痛、筋の腫れ)は、いずれも数か月後の筋肥大を予測する力が弱い。理由のひとつは、表面筋電図が測っているのが「皮膚の下を通る電気信号の合計」だからです。どの筋線維がどれだけ動員されたかを直接数えているわけではなく、電極の位置、皮下脂肪の厚み、隣接する筋からの混入によって値が動きます。異なる姿勢・異なる器具のあいだで比較するときは、この影響がとくに大きくなります。

「体幹が働く」は本当か

Saeterbakken AH, Stien N, Pedersen H, Andersen V. Core Muscle Activation in Three Lower Extremity Exercises With Different Stability Requirements. Journal of Strength and Conditioning Research. 2022;36(2):304-309.

この主張を正面から検証した試験があります。トレーニング歴4.5年(標準偏差2.0年)の女性19名が、レッグプレス・フリーウエイトのスクワット・スミスマシンのスクワットを3回が限界となる重さで行い、腹直筋・外腹斜筋・脊柱起立筋の活動を測りました。

結果、最も安定性の要求が低いレッグプレスは、フリーウエイトより17〜59%、スミスマシンより17〜42%、体幹の筋活動が低くなりました。ここまでは予想どおりです。ところがスミスマシンとフリーウエイトのあいだには、有意な差がありませんでした。著者らははっきりと、「安定性の要求が高いほど体幹の筋活動が大きくなるという証拠はない」と述べています。

付随して興味深い数字も出ています。レッグプレスで扱えた重量は、スミスマシンのスクワットより54%、フリーウエイトのスクワットより47%大きく、スミスマシンはフリーウエイトより5%大きくなりました。器具を変えると扱える重量が大きく変わるということは、器具をまたいだ重量の比較にはほとんど意味がないということでもあります。

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数か月の介入で比べると

Hernández-Belmonte A, Martínez-Cava A, Buendía-Romero Á, et al. Free-Weight and Machine-Based Training Are Equally Effective on Strength and Hypertrophy: Challenging a Traditional Myth. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2023;55(12):2316-2327.

トレーニング経験のある男性38名が、フリーウエイト群(19名)とマシン群(19名)に分かれ、8週間のプログラムを行いました。スクワット・ベンチプレス・ローイング・ショルダープレスの4種目を、バーベルで行うかマシンで行うかだけを変え、他の変数はすべて同一に揃えています。強度は挙上速度を監視して調整しました。

結果、8つの筋力評価をまとめて見ると両群の変化は同程度で(差は1.8%以下、P≧0.216)、大腿四頭筋・大胸筋・腹直筋の横断面積もどちらの群でも有意に増加し、群間差はありませんでした(差は2.0%以下、P≧0.208)。関節の不快感(こわばり・痛み・機能障害)はどちらの群でも減少し、群間差はありませんでした(P≧0.144)。

やや古い試験も同じ方向です。Schwanbeck らは46名(うち女性26名)を8週間、週2〜3回のプログラムに割り付け、上腕二頭筋と大腿四頭筋の厚みがどちらの群でも増加し、群間差がないことを示しました。筋力については、マシンのベンチプレスではマシン群のほうが伸び(13.9%対8.6%)、フリーウエイトのベンチプレスとスクワット、スミスマシンのスクワットではどちらの群も11〜19%伸びて差がありませんでした。なお男性ではフリーウエイト群のほうがセッション前後の遊離テストステロンの上昇が大きくなりましたが、筋量と筋力の増加には差が出ていません。第4回で見たとおり、急性のホルモン応答は筋肥大を予測しません。

統合すると——効いているのは特異性

Heidel KA, Novak ZJ, Dankel SJ. Machines and free weight exercises: a systematic review and meta-analysis comparing changes in muscle size, strength, and power. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness. 2022;62(8):1061-1070.

Haugen ME, Vårvik FT, Larsen S, et al. Effect of free-weight vs. machine-based strength training on maximal strength, hypertrophy and jump performance. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2023;15(1):103.

何で測ったかHeidel ら(効果量)Haugen ら(標準化平均差)
フリーウエイトの種目で筋力を測るフリーウエイト有利 0.655フリーウエイト有利 -0.210(p=0.023)
マシンの種目で筋力を測るマシン有利 -0.784マシン有利の傾向 0.291(p=0.064)
どちらでもない装置で測る差なし 0.128—
筋肥大差なし -0.01差なし -0.055(p=0.751)
パワー・跳躍差なし -0.049差なし -0.209(p=0.290)

Haugen らの統合は6週間以上の試験13件・1016名(男性789名、女性219名)を対象にしています。表を縦に読むと構図が見えます。フリーウエイトで測ればフリーウエイト群が勝ち、マシンで測ればマシン群が勝つ。どちらでもない装置で測れば差は消える。そして筋肥大とパワーには、どう測っても差がない。

これは器具の優劣ではなく、訓練の特異性——鍛えた動作に近い課題で測れば有利になる——という、トレーニング科学の基本原則の表れです。Heidel らの筋肥大の効果量は-0.01、Haugen らは-0.055で、いずれも0の周りにあります。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

高齢者・初心者ではどうか

目的が「重いものを持ち上げること」でない場合は、別の軸が重要になります。安全性、習得の容易さ、続けやすさです。

Wiedenmann T, Held S, Morat T, et al. The Effects of Different Resistance Training Modalities on Muscle Strength in Community-Dwelling Older Adults: A Network Meta-Analysis. Gerontology. 2025;71(7):576-588.

地域在住の高齢者4,754名を含む102件を統合したネットワークメタ解析です。運動なしの対照と比べると、すべての様式が中〜大の効果を示しました。最も大きかったのはマシンによるトレーニング(標準化平均差1.34、95%CI 1.16〜1.52)で、以下フリーウエイト(1.15、95%CI 0.28〜2.03)、ゴムバンド(0.93)、混合(0.88)、自重(0.71)の順です。マシンの推定はばらつきも最も小さく、フリーウエイトの信頼区間は非常に広くなっています。

ただし反対向きの所見もあります。Schott らは60歳から86歳の32名を、マシン群とフリーウエイト群に分けて週2回、26週間のトレーニングを行いました。どちらの群も筋力が向上しましたが、26週間を通じた増加率では、脚(113%対44%)と上腕三頭筋(89.0%対28.3%)でフリーウエイト群が有意に上回りました。参加者の主観でも、フリーウエイト群のほうが楽しさ・意欲・日常生活への有用感が高い一方、安全面への要求も高いという結果でした。著者らは、それでも「フリーウエイトがマシンより全般的に優れているとは言えない」と結論しています。

参加者32名という規模と、対象が「機能の高い」高齢者であったことを考えると、この結果をそのまま一般化はできません。指導者がついているかどうかも結果を左右します——この点については監督つきトレーニングの研究を、加齢と筋力の関係については筋力低下と老化を扱った記事があります。

現在どこまで言えるか

  1. 筋肥大にマシンとフリーウエイトの差はない。統合された効果量はいずれも0の近くにある。
  2. 筋力の差は測定課題との一致で決まる。鍛えた器具で測れば、その器具で鍛えた群が勝つ。中立な装置で測れば差は消える。
  3. 「フリーウエイトのほうが体幹が働く」は、フリーウエイトとスミスマシンの比較では支持されなかった。差が出たのはレッグプレスとの比較である。
  4. 関節の不快感はどちらの様式でも減った。マシンのほうが関節に優しいという主張にも、逆の主張にも、この試験は根拠を与えない。
  5. 高齢者では、統合上マシンの効果推定が最も大きく、ばらつきも小さい。ただし個別試験にはフリーウエイト有利の報告もある。

限界も明記します。ここで挙げた介入試験は8週間から26週間と短く、参加者は32名から46名の規模です。統合に含まれた研究も13件から102件と幅があり、器具の定義(スミスマシンをマシンに含めるか)も統一されていません。筋肥大を評価した研究はとくに少なく、Haugen らの統合では13件中5件にとどまります。傷害の発生率を主要評価項目にした長期の比較はほとんどなく、「どちらが安全か」は実は検証されていません。脱落率や継続率を丁寧に比べた研究も不足しています。

実務的な読み替えはこうです。筋肉を大きくしたい、健康のために鍛えたいという目的なら、どちらを選んでも構いません。選ぶ基準は、続けられるか、安全に扱えるか、混雑した時間に使えるか、といった現実的な条件のほうです。一方、バーベルスクワットの重量を伸ばしたいならバーベルスクワットを、特定のスポーツ動作に近づけたいならその動作に近い形を選ぶ必要があります。関節に不安のある方、バランスに不安のある方は、医療機関や指導者に相談したうえで様式を決めてください。

もうひとつ、この回の所見は「どちらでもよい」という結論の使い方に注意が要ります。「どちらでもよい」のは、他の変数が揃っている場合に限られます。マシンのほうが準備が簡単で、結果として週あたりのセット数が増えるのなら、その人にとってマシンは優れた選択です。逆に、フリーウエイトのほうが面白くて通う回数が増えるのなら、そちらが優れています。器具の生理学的な差がほぼ0である以上、差を作るのは続けられるかどうかのほうです。研究が教えてくれるのは、器具選びに悩む時間を減らしてよい、ということでもあります。

次回予告

第9回は「サプリメントは必要か——証拠水準を並べる」を扱います。クレアチン・BCAA・HMBについて、効くか効かないかではなく、どの主張がどの水準の証拠に支えられているかを整理します。汚染と禁止物質の問題にも触れます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「超回復」は本当にあるのか
  2. 第2回|筋肉痛は効いた証拠か——遅発性筋痛と筋肥大
  3. 第3回|プロテインは運動後30分以内か
  4. 第4回|重い重量でなければ筋肥大しないのか
  5. 第5回|限界まで追い込む必要はあるか
  6. 第6回|有酸素運動は筋肉を減らすのか——干渉効果
  7. 第7回|フルレンジでなければ効かないのか——可動域と部分反復
  8. 第8回|マシンとフリーウエイト、どちらが優れているのか(この記事)
  9. 第9回|サプリメントは必要か——証拠水準を並べる
  10. 第10回|「効かせる」とは何か——意識の向け方と総括

出典

  1. Schwanbeck S, Chilibeck PD, Binsted G. A comparison of free weight squat to Smith machine squat using electromyography. Journal of Strength and Conditioning Research. 2009;23(9):2588-2591.
  2. Schick EE, Coburn JW, Brown LE, et al. A comparison of muscle activation between a Smith machine and free weight bench press. Journal of Strength and Conditioning Research. 2010;24(3):779-784.
  3. Schott N, Johnen B, Holfelder B. Effects of free weights and machine training on muscular strength in high-functioning older adults. Experimental Gerontology. 2019;122:15-24.
  4. Schwanbeck SR, Cornish SM, Barss T, Chilibeck PD. Effects of Training With Free Weights Versus Machines on Muscle Mass, Strength, Free Testosterone, and Free Cortisol Levels. Journal of Strength and Conditioning Research. 2020;34(7):1851-1859.
  5. Heidel KA, Novak ZJ, Dankel SJ. Machines and free weight exercises: a systematic review and meta-analysis comparing changes in muscle size, strength, and power. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness. 2022;62(8):1061-1070.
  6. Saeterbakken AH, Stien N, Pedersen H, Andersen V. Core Muscle Activation in Three Lower Extremity Exercises With Different Stability Requirements. Journal of Strength and Conditioning Research. 2022;36(2):304-309.
  7. Haugen ME, Vårvik FT, Larsen S, et al. Effect of free-weight vs. machine-based strength training on maximal strength, hypertrophy and jump performance: a systematic review and meta-analysis. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2023;15(1):103.
  8. Hernández-Belmonte A, Martínez-Cava A, Buendía-Romero Á, et al. Free-Weight and Machine-Based Training Are Equally Effective on Strength and Hypertrophy: Challenging a Traditional Myth. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2023;55(12):2316-2327.
  9. Wiedenmann T, Held S, Morat T, et al. The Effects of Different Resistance Training Modalities on Muscle Strength in Community-Dwelling Older Adults: A Network Meta-Analysis. Gerontology. 2025;71(7):576-588.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。めまい・ふらつきのある方、バランスに不安のある方、関節や腰に痛みのある方は、器具や動作を変える前に医療機関にご相談ください。

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