連載「研究が示す『続く条件』」全10回の第3回です。
「人数が少ないほうが丁寧に見てもらえる」。これはスタジオ選びで最もよく使われる説明であり、直感的にも正しそうに見えます。では、その直感はどこまで研究に裏づけられているのでしょうか。
この問いは2つに分けると扱いやすくなります。ひとつは指導者の側の限界——何人までなら誤りに気づけるのか。もうひとつは受講者の側の結果——人数が少ないクラスに通った人は、実際に良い結果を得ているのか。前者には明快な実験があり、後者には意外な数字があります。
結論を先に書くと、指導者が個々の誤りを見つけられる人数には実験的に確かめられた上限があり、それは思ったより小さい。しかし「人数が少ないクラスほど出席率が高い」という予想は、少なくとも一部の研究で否定されている——これが現時点で最も正確な要約です。

指導者は何人まで誤りに気づけるか
この問いを正面から実験したのは、意外にも心肺蘇生(CPR)の教育研究でした。医学生に「胸骨圧迫が速すぎる」などあらかじめ決めた3種類の誤りをわざと演じさせ、指導者がそれを7分間で何割見つけられるかを、グループの人数を3人から10人までランダムに変えて測ったのです。
Nabecker S, Huwendiek S, Theiler L, Huber M, Petrowski K, Greif R. The effective group size for teaching cardiopulmonary resuscitation skills – A randomized controlled simulation trial. Resuscitation. 2021;165:77-82.
参加した指導者は64人、各人数につき8人ずつでした。結果は明快です。正しく指摘できた誤りの割合は、グループが6人を超えると80%を下回りました。 著者らはここから、CPR講習における指導者と受講者の比を最大で1対6にすることを推奨しています。
この実験の射程には注意が要ります。対象はCPRであってヨガではありませんし、指導者には「誤りを探して直せ」という明確な課題が与えられていました。それでも、人間が同時に監視できる対象の数には物理的な上限があり、7人目あたりで見落としが目立ち始めるという骨格は、他の実技指導にも通じる可能性が高いと考えられます。逆に言えば、20人のクラスで全員の誤りが拾われていると期待するのは、研究の示す人間の能力から見て無理があります。
クラスが大きくなると何が変わるか
ところが、受講者の側の指標を見ると話は単純ではありません。運動クラスの人数を扱った初期の研究は、5人から46人までの47クラスの記録を解析しました。
Carron AV, Spink KS. The Impact of Group Size in an Exercise Setting. Journal of Sport and Exercise Psychology. 1990.
ここで見つかったのは2種類の関係です。ひとつは曲線的な関係——他の参加者と交流する機会の知覚と、混み合いの感覚は、小規模なクラスと大規模なクラスの両方で好意的に評価され、中規模のクラスが最も低い評価でした。もうひとつは直線的な関係——指導者への評価と満足度は、人数が増えるにつれて系統的に低下しました。
指導者の評価は人数とともに下がる。しかし人との交流や居心地は、中くらいの人数で最も悪くなる。この2つがせめぎ合います。
さらに直接的な比較もあります。中規模(18〜26人)と大規模(70〜90人)の運動クラスに登録した学生256人を比べた研究では、大規模クラスの参加者のほうが出席率が良く、自分を最適に追い込めたと感じる頻度も高く、社会的凝集性も満足度も高いという結果でした。指導者による差(調整変数としての効果)は有意ではありませんでした。
Remers L, Widmeyer WN, Williams JM, Myers L. Possible mediators and moderators of the class size-member adherence relationship in exercise. Journal of Applied Sport Psychology. 1995.
これは30年前の、大学生を対象とした1研究にすぎません。一般化はできません。それでも「人数が少ないほど続く」という前提が、実測では支持されなかった例が存在することは、覚えておく価値があります。人数の効果は、見てもらえる度合いと、集団に属する心地よさの、綱引きになっているのです。

監督の有無で結果はどれだけ変わるか
人数の話から一歩引いて、「監督されているかどうか」という粗い比較に移ります。ここには質の高いメタ分析があります。60歳以上を対象に、監督つきと監督なしの運動を比べた無作為化試験34件、2,830人分を統合したものです。
Gómez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Mañas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877-1906.
| 指標 | 監督つきの優位(標準化平均差) | p |
|---|---|---|
| 膝伸展筋力 | 0.18 | 0.002 |
| 椅子立ち上がりテスト | 0.25 | 0.050 |
| Timed Up and Go | 0.21 | 0.035 |
| 通常歩行速度 | 0.29 | 0.026 |
| 健康関連QOL | 0.21 | 0.035 |
数字は監督つきに有利です。しかし著者らは重要な但し書きを添えています。感度分析まで行うと、有意なまま残ったのは膝伸展筋力だけでした。 しかも出席率は監督の有無にかかわらず81%で同じでした。重篤な有害事象の報告もありませんでした。なお除脂肪量だけは標準化されない平均差として報告され、監督つきが1.05 kg 多いという結果でした(p<0.001)。
効果量の大きさも見ておく必要があります。標準化平均差0.18は、慣習的な目安では「小さい」に分類される水準です。Fisher らがレジスタンス運動に絞って行った別のメタ分析(12研究、監督つき301人・監督なし276人)では、運動能力と身体機能の全体で0.28(95%信頼区間 0.02〜0.55)、筋力に限れば0.40(95%信頼区間 0.06〜0.74)でしたが、体組成への効果は0.07(95%信頼区間 -0.01〜0.15)と、ほとんど差がありませんでした。監督の効果は、あらゆる成果に一様に及ぶわけではないのです。監督つき運動の効果の全体像は監督つきトレーニングのエビデンスでも扱っています。
CPRの実験からヨガへ——類推はどこまで届くか
冒頭で引いた「6人」という数字は、この回で最も具体的で、最も使いやすい数字です。だからこそ、どこまで信じてよいかをはっきりさせておきます。
あの実験とヨガのクラスには、少なくとも4つの違いがあります。第一に課題が明示されていたこと。指導者は「誤りを探して直せ」とだけ指示されており、説明も進行も励ましも担当していません。実際のクラスでは、指導者は同時に見本を示し、声を出し、時間を管理しています。この実験の6人は、監視だけに専念できたときの上限です。 現実のクラスでの上限は、これより低いと考えるほうが自然でしょう。
第二に誤りが定義されていたこと。胸骨圧迫の速さには正解の範囲があり、外れているかどうかを判定できます。ヨガの姿勢には、体格と可動域に応じた幅があり、「誤り」を一意に決められません。第三に7分という短さ。60分のクラスで注意を保ち続けられるかは、この実験では測られていません。第四に模擬状況であること。指導者は観察されていると知っており、普段より集中していた可能性があります。
では何を測れば埋まるのでしょうか。ひとつはクラスの人数を無作為に割り付けた試験です。同じ指導者・同じ配列で人数だけを変え、受講者の姿勢の質を第三者が録画から評価すれば、ヨガでの上限が出せます。もうひとつは声かけの回数を数えること。人数ごとに、一人あたり何回個別の修正が入ったかを記録するだけでも、現在よりはるかに具体的な材料になります。いずれも技術的には難しくありませんが、実施された形跡はありませんでした。

監督は何を変えているのか
では監督は、どういう仕組みで結果を変えているのでしょうか。古典的な実験が手がかりを与えます。12週間の同一のプログラムを、パーソナルトレーナーが直接監督する群と監督なしの群に割り付けた研究です。
Mazzetti SA, Kraemer WJ, Volek JS, et al. The influence of direct supervision of resistance training on strength performance. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2000;32(6):1175-1184.
差が出たのは、まず扱った重量でした。1セットあたりの平均負荷は、スクワットで7週目から11週目、ベンチプレスで3週目と7週目から12週目にかけて、監督つき群のほうが有意に大きかったのです。負荷の増やし方の傾きそのものも監督つき群で急でした。その結果として、12週後の最大筋力に差がつきました。
近年の研究も同じ像を描きます。Gavanda らが訓練経験のある男女79人を、対面監督・アプリ指導・自己管理の3群に割り付けた試験では、遵守率が監督つき88.2%、アプリ81.2%、自己管理52.2%と大きく開きました。スクワットの最大挙上重量の増加も監督つき群が最も大きく、他の2群より有意に優れていました。
つまり監督が変えているのは、多くの場合やった内容そのものです。フォームを直してもらえるという話以前に、来る回数と、負荷の上げ方が変わっている。これは人数の話と直結します。20人のクラスでも、来る回数と負荷の設定が変われば効果は出る。逆に人数が少なくても、指導者が個々に介入しなければ効果は出にくいということです。
ヨガのクラスは実際に何人か
ヨガに絞ったデータは限られますが、米国北東部の指導者407人への調査があります。対面・オンラインのいずれの形式でも、最も多かったクラス規模は4〜6人で、次いで7〜9人、1〜3人の順でした。
Kim S, Solow J, Lein DH, Singh H. Understanding the impact of COVID-19 on yoga instruction: Examining teaching methodology, class components, and injury patterns in the Northeastern US. Explore. 2024;20(6):103079.
報告されたケガの数は少なく、対面(3.6%)とオンライン(4.2%)で有意差はありませんでした。最も多い種類は捻挫・肉ばなれで42.9%です。ただしこれは指導者の自己申告であり、指導者が気づかなかったケガは数に入りません。第4回で見るように、ヨガのケガは練習中ではなく後から自覚されるものが少なくないため、この数字は下限と考えるのが妥当です。
人数だけでは決まらない
解釈の注意を3つ。第一に自己選択バイアスです。人数の少ないクラスは価格が高いことが多く、通う人の経済状況・意欲・健康度が最初から違います。第1回で見たサンパウロの小規模指導スタジオの12か月生存率51.7%が大規模チェーンより高いことも、施設の効果と参加者の性質を分離できていません。
この点で、Remers らの研究には見落とされがちな長所があります。対象が大学の授業として登録された運動クラスだったため、価格や立地による選別がほとんど働いていないのです。自費で通う施設を比べた研究より、人数そのものの効果に近いものを見ている可能性があります。そして、その設計で出た結果が「大規模クラスのほうが出席率が高い」でした。1研究の結果を一般化はできませんが、選別の弱い場面では、予想と逆の符号が出たという事実は記録しておく価値があります。
逆に言えば、監督の有無を比べたメタ分析群の強みは、その多くが無作為化された試験であることです。第1回で扱った継続率の研究が観察研究だったのに対し、監督つき対監督なしは、参加者をくじ引きで割り付けています。だからこそ「効果は小さいが実在する」と言える。同じ連載の中でも、数字の強さには段階があります。
第二に異質性です。監督つきと監督なしの比較は、研究によって「監督」の中身が違います。週に何回、誰が、どこまで介入するのか。Gómez-Redondo らのメタ分析は、監督なし群にも一部監督つきの回が含まれる研究があることを限界として明記しています。
第三に測っている成果の偏りです。上のメタ分析はいずれも高齢者やレジスタンス運動が中心で、柔軟性や姿勢、呼吸を扱うクラスでの比較はほとんどありません。ヨガのクラスの人数と成果を直接比べた無作為化試験は、現時点で見当たりませんでした。「人数が少ないほうが良い」というのは、まだ検証されていない仮説です。
言い方を変えれば、人数は測りやすいので比較の材料に使われやすい、という事情もあります。指導者が個々にどれだけ介入しているかは外から数えにくく、クラスの人数は数えられる。数えられるものが判断基準になりやすいという偏りは、施設を選ぶ側も、研究する側も共有しています。実際に効いているのが介入の中身のほうだとすれば、人数は代理指標にすぎず、代理指標としての精度も確かめられていないということになります。
この回から言える判断材料
- 個々の誤りを直してもらいたいなら、上限は6人前後と考える。 CPR講習の実験では、6人を超えると指導者の誤り検出率が80%を割った。ただしこれは指導者が監視だけに専念した場合の上限であり、説明も進行も担う実際のクラスではこれより低い可能性が高い。ヨガでの直接の検証は存在しない。
- 人数より「個別に声がかかるか」を見る。 監督の効果の実体は、来る回数と負荷の設定が変わることだった(遵守率88.2%対52.2%)。人数が少なくても介入がなければ意味が薄い。
- 人数が少ないほど続く、とは限らない。 大規模クラスのほうが出席率も凝集性も高かった実測例がある(Remers ら 1995)。
- 監督の効果量は「小さい」水準にとどまる。 高齢者のメタ分析で感度分析後も残ったのは膝伸展筋力だけ、体組成への効果は0.07とほぼゼロだった。ただしこれらは無作為化された比較であり、第1回の継続率の数字より強い証拠として扱ってよい。
- ケガの少なさを指導者の申告で判断しない。 自己申告のケガ率は対面3.6%・オンライン4.2%だが、これは指導者が把握できた分だけの数字である。
次回予告
第4回は「ケガはどこで起きるか——場面・姿勢・経験年数の実測」を扱う。救急外来の全国データと、実践者への大規模調査を突き合わせ、どの姿勢で、どの年代で、どれくらいの頻度でケガが起きているのかを見る。経験年数が長いほどケガの報告が多いという、直感に反する所見も扱う。
この連載の全10回
- 第1回|なぜ人は辞めるのか——運動の継続率が示す数字
- 第2回|指導者の資格は何を保証するのか
- 第3回|クラスの人数と監督——集団指導で失われるもの(この記事)
- 第4回|ケガはどこで起きるか——場面・姿勢・経験年数
- 第5回|高温環境は選択基準になるか
- 第6回|価格と契約——支払い方は継続を変えるか
- 第7回|オンラインと対面——効果と継続率の比較
- 第8回|立地と時間帯——通いやすさは継続を決めるか
- 第9回|目的で選び方は変わるか——腰痛・不眠・体力向上
- 第10回|主張の見分け方——「科学的に証明された」をどう読むか
出典
- Nabecker S, Huwendiek S, Theiler L, Huber M, Petrowski K, Greif R. The effective group size for teaching cardiopulmonary resuscitation skills – A randomized controlled simulation trial. Resuscitation. 2021;165:77-82.
- Carron AV, Spink KS. The Impact of Group Size in an Exercise Setting. Journal of Sport and Exercise Psychology. 1990.
- Remers L, Widmeyer WN, Williams JM, Myers L. Possible mediators and moderators of the class size-member adherence relationship in exercise. Journal of Applied Sport Psychology. 1995.
- Gómez-Redondo P, Valenzuela PL, Morales JS, Ara I, Mañas A. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine. 2024;54(7):1877-1906.
- Fisher J, Steele J, Wolf M, Androulakis-Korakakis P, Smith D, Giessing J. The Role of Supervision in Resistance Training; an Exploratory Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Strength and Conditioning. 2022;2(1).
- Mazzetti SA, Kraemer WJ, Volek JS, et al. The influence of direct supervision of resistance training on strength performance. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2000;32(6):1175-1184.
- Gavanda S, Held S, Schrey S, et al. Optimizing Resistance Training Outcomes: Comparing In-Person Supervision, Online Coaching, and Self-Guided Approaches: A Randomized Controlled Trial. Journal of Strength and Conditioning Research. 2025;39(11):1129-1137.
- Kim S, Solow J, Lein DH, Singh H. Understanding the impact of COVID-19 on yoga instruction: Examining teaching methodology, class components, and injury patterns in the Northeastern US. Explore. 2024;20(6):103079.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ここで扱った効果量は集団の平均であり、特定のクラス形態が個人に適することを保証するものではありません。持病がある方、服薬中の方、関節や腰背部に痛みがある方は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。






