連載「研究が示す『続く条件』」全10回の第8回です。

「通いやすさが一番大事」。スタジオ選びの助言として、これはほとんど定説の扱いを受けています。実際、距離は誰にでも測れる数少ない指標であり、比較しやすい。ではその定説は、どれくらいの大きさの効果として実測されているのでしょうか。

この回は、都市計画と公衆衛生の領域で40年近く積み上げられてきた「建造環境と身体活動」の研究を読みます。そこには、選ぶ側にとって意外な数字がいくつも含まれています。

結論を先に書くと、距離と利用頻度の関連は確かに存在するが、効果は小さい。そして新しい施設ができても、不活動な人はほとんど使わなかった。距離の効果には、近くに住むことを選べる人の属性が大きく混ざっている——これが現時点で最も正確な要約です。

研究が示す続く条件 第8回 立地と時間帯通いやすさは継続をどこまで決めるか|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

距離と利用頻度——効果はどれくらいか

この分野の古典は1990年の研究です。米国サンディエゴの住民2,053人を無作為に抽出し、385か所の運動施設を有料・無料に分類したうえで、住所を地図上に落として自宅周辺の施設密度を計算しました。

Sallis JF, Hovell MF, Hofstetter CR, et al. Distance between homes and exercise facilities related to frequency of exercise among San Diego residents. Public Health Reports. 1990;105(2):179-185.

年齢・学歴・所得を調整したうえで、週に3回以上運動していると答えた人は、まったく運動しない人より、自宅周辺の有料施設の密度が統計的に高いという結果でした。無料施設では同様の関係が明確ではありません。この非対称は、あとで交絡を考えるときに効いてきます。

近年の大規模調査も同じ方向です。スウェーデンの職業保健調査から7,358人を解析した研究では、自宅から有料の屋外施設・屋内施設までの距離が長いほど、運動頻度が低いことと関連していました。

Raza A, Pulakka A, Hanson LLM, Westerlund H, Halonen JI. Distance to sports facilities and low frequency of exercise and obesity: a cross-sectional study. BMC Public Health. 2022;22(1):2036.

ただし効果の大きさを見てください。完全に調整した相対危険度は、屋外・屋内ともに1.01(95%信頼区間 1.01〜1.02)です。統計的には有意ですが、1.01という値が意味するのは、距離が1単位増えたときに低頻度である確率が1%ほど上がる、という程度です。有意であることと、大きいことは別だという第1回からの教訓が、ここでも当てはまります。 肥満についての結果は同じ方向でしたが、統計的に有意ではありませんでした。

所要時間で測った研究もあります。Guo らが中国の10省から3,926人を抽出した調査では、最寄りの運動施設までの通所時間が30分以上の人は、10分未満の人と比べて身体活動の推奨量を満たすオッズが0.80(95%信頼区間 0.65〜0.98)でした。10分増えるごとにオッズは6%下がります(0.94、95%信頼区間 0.88〜0.99)。この関連は年齢・性別・学歴で修飾されませんでした。なお推奨量を満たしていたのは3,926人中878人、22.4%にすぎません。

入館記録で見るとどうか

自己申告ではなく実際の記録で見た研究が、最も具体的な数字を出しています。英国リーズ市の公共の身体活動事業で、25,745人の185,245回の来館を1年分解析したものです。

Hobbs M, Moltchanova E, Wicks C, et al. Investigating the environmental, behavioural, and sociodemographic determinants of attendance at a city-wide public health physical activity intervention: Longitudinal evidence over one year from 185,245 visits. Preventive Medicine. 2021;143:106334.

結果は3層に分かれます。

  • 1回来たあと、同じ施設にもう一度来るかどうか——最も影響が大きかったのは自宅からの距離でした。
  • 年間の来館回数——最も影響が大きかったのは年齢層で、距離の重要度は下がります。ただし距離の効果は消えません。300 m と15,000 m では、年間の来館回数に7〜10回の差がありました。
  • 特定の日に来るかどうか——最も影響が大きかったのは暦の月でした。

この3層は、選ぶ側にとって読みやすい構造をしています。距離が効くのは「もう一度行くかどうか」という最初の関門であり、通い続ける段階では別の要因が前に出る。 そして日々の行き帰りは季節に強く左右される。年間7〜10回という差は、週1回通う人にとって2か月分に相当します。小さくはありませんが、第1回で見た離脱の規模を覆すほどでもありません。

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施設ができれば、人は使うのか

ここがこの回で最も重要な研究です。オーストラリアのメルボルン近郊に大型の総合レクリエーション施設が新設されることになり、開業前の時点で身体活動をしていない成人549人を登録し、12か月後に追跡しました。

Smith BJ, MacKenzie-Stewart R, Newton FJ, et al. A longitudinal study examining uptake of new recreation infrastructure by inactive adults. The International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2019;16(1):59.

12か月間の利用状況は次のとおりでした。

利用の程度割合
月1回以上利用した8.7%
月1回未満の利用17.5%
一度も利用しなかった73.8%

利用を予測したのは、女性であること、子どもがいること、施設から5 km 以内に住んでいること、そして開業前に強い利用意向を表明していたことでした。障壁として挙がったのは交通の費用と入場の費用です。

そしてこの研究の結論部分が決定的です。施設を利用したことは、余暇の身体活動の総量がより高い水準へ進むことと関連していませんでした。 通った人は、もともとしていた運動の場所を移しただけかもしれない、という読み方が残ります。

著者らは、多目的施設の設置は身体活動への投資とみなされがちだが、不活動な人による定期的な利用は低くとどまる可能性が高いと書いています。近くにできることと、使うことは別だ、ということです。

この研究の設計には長所があります。参加者は施設ができる前に登録されており、その時点では誰も利用者ではありませんでした。 通常の調査なら、すでに通っている人に「なぜ通えているか」を尋ねることになり、続かなかった人は最初から視野の外です。開業前に不活動な人を登録したことで、この選別を避けられました。だからこそ73.8%という、施設側にとって都合の悪い数字が出ています。

選ぶ側にとっての含意は苦いものです。「近くにできたから通えるはず」という期待は、大規模な追跡では裏切られている。 距離は行かない理由を一つ減らしますが、行く理由を作るわけではありません。

時間帯と「決まった通い方」

距離より効いている可能性があるのが、通い方の型です。第1回で紹介した英国の入館記録の研究は、入会3か月目に「同じ曜日・同じ時間・同じ場所」で通えていたかどうかが、入会後4番目の四半期の入館水準と有意に関連していたと報告しました。頻度そのものと並ぶ予測因子です。

Rand M, Norman P, Barker AB. Why do new members stop attending health and fitness venues? The importance of developing frequent and stable attendance behaviour. Psychology of Sport and Exercise. 2020.

この所見と、リーズ市の研究で「特定の日に来るかどうかは暦の月に最も強く左右された」という所見を並べると、示唆はこうなります。人が通えるかどうかは、距離という空間の問題であると同時に、時間の型の問題である。 同じ時刻に同じ場所へ行く型ができれば、判断が要らなくなる。逆に毎回「今日は行くか」を決めている限り、季節や天候や気分が毎回それを揺らします。

ただし注意が要ります。これらはいずれも観察研究です。 「同じ時間に通えた人が続いた」のであって、「同じ時間に通うようにしたら続くようになった」ことは示されていません。安定した通い方ができる生活を持っている人が、そもそも続けやすいだけかもしれません。

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距離の効果は交絡だらけである

ここまでの数字には、この連載で最も強い交絡が入っています。住む場所を選ぶのは本人だからです。

運動施設の多い地域は、一般に地価が高く、所得の高い人が住みます。第1回で見たとおり、所得・学歴・以前の運動習慣はいずれも継続の予測因子でした。「施設の近くに住む人はよく運動する」という観察は、施設の近さの効果と、そこに住める人の性質が、分離できないまま混ざった数字です。 Sallis らの1990年の研究で、有料施設の密度では関連が出て無料施設では明確でなかったという非対称も、この線で説明がつきます。

この交絡の大きさを示す研究があります。Kaufman らによるニューヨーク市の調査(644人)では、自宅から1 km 以内の商業的な運動施設の数が最も多い四分位の人は、最も少ない四分位の人と比べて、施設の会員であると答えるオッズが3.77倍(95%信頼区間 1.54〜9.20)でした。施設の数と身体活動量の関連は、会員である人でより強いという結果です。環境と個人の属性は、別々に働くのではなく絡み合っています。

さらに踏み込んだ研究もあります。フィンランドの成人1,322人に、余暇の身体活動を実際に行った場所ごとに地図上へ記録してもらった調査です。

Kajosaari A, Laatikainen TE. Adults’ leisure-time physical activity and the neighborhood built environment: a contextual perspective. International Journal of Health Geographics. 2020;19(1):35.

結果は2つの点で重要です。第一に、屋内・屋外のスポーツ施設の利用は、近隣にそうした施設があるかどうかとは有意に関連せず、個人の属性とだけ有意に関連していました。 緑地や公共空間での活動は近隣の条件と関連したのに、施設の利用は関連しなかったのです。第二に、活動の記録のうち平均40%は、自宅から1,600 m より遠い場所にありました。 「自宅の近隣」という枠で測ること自体が、実態を捉え損ねていたということです。

この2つの所見を並べると、距離の測り方そのものへの疑問が出てきます。研究が使ってきた「自宅から何メートル」という指標は、測りやすいから使われてきた面があります。第3回でクラスの人数について述べたのと同じ構造です。数えられるものが判断基準になり、その代理指標としての精度は確かめられないまま残ります。

何を測れば埋まるのか

住む場所を無作為に割り付けることはできません。しかし、交絡を弱める設計はあります。

ひとつは本人の意志によらない移動を使うことです。転勤や引越しのように、運動とは無関係な理由で距離が変わった人を前後で比べれば、住む場所の選択による選別を弱められます。もうひとつは、施設の新設を自然実験として使うこと。Smith らの研究はまさにこの設計であり、だからこそ「73.8%が使わなかった」という、通常の横断調査では見えない数字が出ました。

そして、この回にはヨガに特有の空白もあります。クラス制のスタジオでは、距離だけでなく「自分の生活に合う時刻にクラスがあるか」が効くはずです。 総合型施設は開いていればいつでも使えますが、クラスは始まる時刻が決まっています。時間割と利用頻度の関係を測った研究は見当たりませんでした。第6回で述べた予約の仕組みと合わせて、測られていない領域です。

この回から言える判断材料

  • 距離の効果は実在するが小さい。 調整後の相対危険度は1.01、通所時間30分以上のオッズ比は0.80。年間来館回数で見ると300 m と15,000 m の差は7〜10回だった。
  • 距離が最も効くのは「2回目に行くかどうか」である。 1年間の来館回数では年齢層のほうが影響が大きく、特定の日に行くかどうかは暦の月に最も左右された。
  • 近くにできても、使わない人のほうが多い。 新設施設の周辺で不活動な成人549人を追跡したところ、12か月間で一度も使わなかった人が73.8%だった。しかも利用は身体活動量の増加と関連していなかった。
  • 「同じ曜日・同じ時間・同じ場所」で通える時間割かを確かめる。 早期の通い方の安定は、後半の入館水準と関連していた。ただし観察研究であり、型を作れば続くと証明されたわけではない。
  • 「近いから続く」という説明を額面どおり受け取らない。 施設の近くに住める人は所得も健康度も高い傾向があり、距離の効果と混ざっている。施設利用は近隣の施設の有無とは関連せず、個人の属性とだけ関連したという報告もある。
  • 自分の活動の4割は近隣の外で起きているかもしれない。 自宅から1,600 m という枠で通いやすさを考えると、実態を取りこぼす。職場や通勤経路からの距離も含めて考えるほうが実際的である。
  • 費用の障壁は距離の障壁と同時に効く。 新設施設を使わなかった理由として挙がったのは、交通の費用と入場の費用だった。近さだけを見て決めると、この2つを見落とす。
  • クラス制のスタジオでは、距離より時間割が効く可能性がある。 ただしこれは仮説であり、時間割と利用頻度の関係を測った研究は見当たらなかった。

次回予告

第9回は「目的で選び方は変わるか——腰痛・不眠・体力向上」を扱う。同じヨガでも、目的によって証拠の厚みはまるで違う。腰痛には20年分の無作為化試験があり、不眠には中程度の証拠があり、体力向上は様式に強く依存する。目的別に何がどこまで言えるのかを整理する。

この連載の全10回

  1. 第1回|なぜ人は辞めるのか——運動の継続率が示す数字
  2. 第2回|指導者の資格は何を保証するのか
  3. 第3回|クラスの人数と監督——集団指導で失われるもの
  4. 第4回|ケガはどこで起きるか——場面・姿勢・経験年数
  5. 第5回|高温環境は選択基準になるか
  6. 第6回|価格と契約——支払い方は継続を変えるか
  7. 第7回|オンラインと対面——効果と継続率の比較
  8. 第8回|立地と時間帯——通いやすさは継続を決めるか(この記事)
  9. 第9回|目的で選び方は変わるか——腰痛・不眠・体力向上
  10. 第10回|主張の見分け方——「科学的に証明された」をどう読むか

出典

  1. Sallis JF, Hovell MF, Hofstetter CR, et al. Distance between homes and exercise facilities related to frequency of exercise among San Diego residents. Public Health Reports. 1990;105(2):179-185.
  2. Raza A, Pulakka A, Hanson LLM, Westerlund H, Halonen JI. Distance to sports facilities and low frequency of exercise and obesity: a cross-sectional study. BMC Public Health. 2022;22(1):2036.
  3. Guo X, Dai J, Xun P, Jamieson LM, He K. Sport facility proximity and physical activity: Results from the Study of Community Sports in China. European Journal of Sport Science. 2015;15(7):663-669.
  4. Hobbs M, Moltchanova E, Wicks C, et al. Investigating the environmental, behavioural, and sociodemographic determinants of attendance at a city-wide public health physical activity intervention: Longitudinal evidence over one year from 185,245 visits. Preventive Medicine. 2021;143:106334.
  5. Smith BJ, MacKenzie-Stewart R, Newton FJ, et al. A longitudinal study examining uptake of new recreation infrastructure by inactive adults. The International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2019;16(1):59.
  6. Rand M, Norman P, Barker AB. Why do new members stop attending health and fitness venues? The importance of developing frequent and stable attendance behaviour. Psychology of Sport and Exercise. 2020.
  7. Kaufman TK, Rundle A, Neckerman KM, Sheehan DM, Lovasi GS, Hirsch JA. Neighborhood Recreation Facilities and Facility Membership Are Jointly Associated with Objectively Measured Physical Activity. Journal of Urban Health. 2019;96(4):570-582.
  8. Kajosaari A, Laatikainen TE. Adults’ leisure-time physical activity and the neighborhood built environment: a contextual perspective. International Journal of Health Geographics. 2020;19(1):35.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ここで扱った距離や時間の数字は、いずれも海外の都市を対象とした集団の平均であり、個人の通いやすさを予測するものではありません。持病がある方、服薬中の方は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。

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