足首が硬いのは生まれつき?双子研究の遺伝率と自分の動く範囲を分けて読む

足首が硬いと家族の体質を思い浮かべるが、柔軟性の遺伝率は、自分の足首が変わらない割合ではない。双子研究で使われた長座体前屈と足首の角度の違い、研究ごとに異なる推定値、運動で変わる能力の違いを読み解く。他人との比較から離れ、日々の記録で確かめたいことを整理する。

床に落ちた小物を拾おうとしゃがむと、かかとが浮く。母も似た座り方だった気がして、「足首が硬いのは生まれつき」と検索する。隣の人と同じ形になれない理由を、家系図の中に探したくなる場面だ。

柔軟性の個人差には遺伝的な要因が関わるという双子研究がある。ただし、そこで調べた柔軟性は長座体前屈であり、その遺伝率をそのまま足首の硬さに当てはめることはできない。まして「自分の足首の半分は変えられない」と読む数字ではない。[13]

足首が生まれつき硬いかという問いには、集団の違いを説明する研究と、いまの自分が何をできるかを分けて考えたい。双子研究は前者を扱う方法である。個人の将来の動く範囲を、その場で判定する検査ではない。[19]

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柔軟性の研究は、足首のどこを測ったのか

足首の話を読むとき、先に確かめたいのは、研究で何を測定したかだ。健康な一卵性・二卵性の双子を調べた研究では、柔軟性の指標として長座体前屈が使われた。座って前方へ手を伸ばす課題である。同じ研究は脚の瞬発力、握力、バランスも調べており、柔軟性の評価には足首の角度ではなく長座体前屈を用いている。対象は平均17.2歳の双子ときょうだいであり、18〜39歳の女性の足首へそのまま当てはめるには、年齢と測定部位の両方に隔たりがある。[13]

この違いは細かい注釈ではない。検索した読者が知りたいのは「しゃがむときに自分の足首が動くか」でも、論文の数字が答えているのは別の課題における人と人の差かもしれない。長座体前屈で得られた推定値を足首に移すと、測った対象を途中で取り替えることになる。[13]

たとえば、成績表に柔軟性という欄があっても、その欄だけで体のあらゆる場所の動きを代表させる読み方は避けたい。この研究で示されたのは、実際に使った長座体前屈という指標の個人差への遺伝的寄与である。足首だけに対象を絞った数値として紹介するのは不正確だ。[13]

「体が硬い」という日常語から研究へ進むときには、日常語を一度ほどく必要がある。自分が気にしている動作と、論文が評価した課題が一致するか。ここを確認すると、派手な数字を見ても必要以上に落ち込まずに済む。論文の題名に柔軟性とあっても、そのまま自分の困りごとの採点表にはならない。[13]

本記事の隣にある「足首が硬くて正座しにくい?」は、つま先を伸ばす動きの問いである。また、既存記事「ヨガで手首が痛いとき支えの角度は変えられる?手の位置と荷重の違いを読む」に、手で支える工夫は譲る。ここではポーズの角度の調整よりも、生まれつきという説明をどこまで使えるかに焦点を置く。

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双子を比べると、何が分かるのか

双子研究は、遺伝と環境が集団内の個人差にどの程度関わるかを考える方法である。薬への反応を題材とした方法論のレビューでも、古典的な双子研究は、複雑な特性のばらつきに対する遺伝的要因と環境的要因の相対的寄与を評価するものと説明されている。足首の治療法を試す研究とは役割が異なる。[19]

そのレビューは、双子を比較する利点として、年齢、性別、同じ世代、共通する環境などをそろえやすい点を挙げる。似た条件の人を比較することによって、個人差を読み解こうとする設計だ。生まれつきを研究するために、暮らしの条件にも目を向ける必要がある。[19]

ただし、遺伝的な寄与を推定することと、原因となる特定の遺伝子をその人について突き止めることは同じではない。レビューは双子を用いた設計と、ゲノム全体を調べる方法などを関連づけて論じている。双子研究の遺伝率だけを見て、自分の検査結果が出たように受け取るのは飛躍だ。[19]

家族で同じ座り方をしている写真は、気づきのきっかけにはなる。しかし、それだけを研究上の遺伝的寄与の判定に変えることはできない。双子研究が遺伝と環境の双方を扱う設計であることを思い出したい。見た目が似ているという観察と、集団のデータから要因を推定する作業の間には段階がある。[19]

中央線で並んで座る親子の足元が似ていても、その車内で遺伝率は計算できない。研究が慎重に条件を扱うのは、似ているという印象だけでは説明が足りないからだ。自分の体について語るときにも、印象から結論までを急がないほうがよい。[19]

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遺伝率は、体の中の取り分ではない

長座体前屈を評価した双子研究の対象は、健康な双子227組と、そのきょうだい38人だった。平均年齢は17.2歳であり、18〜39歳の女性だけを調べた集団とは対象が異なる。この集団における柔軟性の遺伝率の推定値は77%、95%信頼区間は69〜83%だった。[13]

ここでいう遺伝率は、調べた集団の個人差に対する遺伝的な寄与を表す。ある人の足首を遺伝の部分と努力の部分に切り分けたものではない。したがって77%を読んで「自分の硬さの77%は固定されている」と言うのは、研究の数字を別の意味へ置き換えている。[13][19]

信頼区間は、推定の不確かさを伝える範囲である。推定値だけを大きく表示して、幅を消してしまうと、研究がぴたりと答えを決めたように見えてしまう。柔軟性の遺伝率には69〜83%という幅が添えられていた。数字を人に伝えるなら、対象と幅も一緒に運びたい。[13]

残りの割合を、そのまま「今日からの努力で取り戻せる量」と呼ぶのも不適切だ。双子研究が推定するのは集団のばらつきへの寄与であり、練習を始めた後の個人の変化量とは問いが異なる。遺伝率と練習後の変化は、それぞれの問いに合う研究で確かめる必要がある。[13][19]

身近な言い方なら、これは人と人の違いについての問いであって、自分の体の完成率とは別の数字だ。遺伝的寄与が認められるという結果は受け止めつつ、自分の練習を評価するときには実際の動作の記録を見る。誰でも同じ形になるという約束にも、この研究を使う根拠は乏しい。[13]

77%と50%は、どちらを読めばよいのか

同じ論文は、自分たちの双子研究に加え、子ども、青年、若年成人を対象とした双子研究をまとめたメタ分析も行った。メタ分析とは、複数の研究結果を統合する方法である。対象とした身体能力全体では15研究をまとめ、柔軟性の統合推定には1,130人のデータが含まれていた。子どもから若年成人を含む結果なので、18〜39歳の女性へそのまま当てはめるには対象の違いを考慮する必要がある。[13]

その柔軟性の遺伝率は50%、95%信頼区間は38〜61%だった。先ほどの77%と同じ数値ではない。記事の見出しに使いやすいほうだけを選ぶと、「生まれつきがほとんど」と「半分は環境」という別々の物語ができてしまう。しかし両方とも、同じ論文が示した結果である。[13]

読み分ける軸は、どの対象と研究のまとまりから推定したかにある。77%はその研究の対象集団についての値であり、50%は複数研究を統合した値だ。両者を足したり平均したりして、自分のための新しい遺伝率を作る必要はない。推定の単位を保ったまま読む。[13]

また、これらの対象は子どもから若年成人である。立川で仕事帰りにヨガへ通う大人が、自分の年齢や生活条件を飛ばしてそのまま当てはめるのは慎重でありたい。対象の年齢が書かれているのは飾りではなく、その数値がどんな人々から得られたかを示す情報だ。[13]

数字が異なることを「研究は当てにならない」と片づける必要もない。個別研究と統合結果を並べることで、遺伝的な寄与が認められる一方、その大きさを全員に共通する定数のようには扱えないと読める。足首について断定する前に、研究間の幅を残しておくことが大切だ。[13]

同じメタ分析では、脚の垂直跳びの遺伝率は62%、握力は63%、バランスは35%と推定された。95%信頼区間は順に47〜77%、47〜73%、19〜51%だった。柔軟性と一緒に測った身体能力でも、値はそろっていない。「運動の才能」という言葉でまとめる前に、どの能力を扱っているかを見たい。[13]

個別研究でも、脚の垂直跳び、握力、バランス、柔軟性を別々に評価している。長座体前屈の結果からバランスの得意不得意まで決めつけたり、握力の値から柔軟性の将来を占ったりする読み方はできない。研究が評価項目を分けていること自体が、体の能力を一枚の成績にまとめない手がかりになる。[13]

足首が気になって運動を始める人も、最初に困っている動作を言葉にしておくと、別の話へすり替わったことに気づきやすい。柔軟性の個人差を扱った結果なのか、筋力を扱った結果なのか。その区別を残せば、家族から受け継いだ能力を一括して評価するような読み方から距離を取れる。[13]

数字で読む柔軟性の双子研究

227組:一卵性・二卵性の健康な双子を調べた個別研究の対象である。[13]

17.2歳:その個別研究に参加した人々の平均年齢である。[13]

77%:個別研究の長座体前屈の遺伝率。95%信頼区間は69〜83%である。[13]

1,130人:柔軟性の遺伝率を統合した分析に含まれた人数である。[13]

50%:統合した柔軟性の遺伝率。95%信頼区間は38〜61%である。[13]

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