レジスタンス運動で血中脂質は変わる?体重計とは別に読む筋トレ単独の研究

レジスタンス運動で血中脂質は変わるのか。筋トレ単独の比較試験とメタ分析を読み、中性脂肪やコレステロールの変化を確かめる。改善した研究と有意差がなかった研究を対象者や比較相手から整理し、体重の減少とは分けて検査結果を見る意味と、日常での運動の記録の残し方を考える。

筋トレを続けているのに体重計の表示は動かない。ところが健診の封筒には、体重とは別に中性脂肪やコレステロールの欄がある。同じ体の記録なのに、運動の成果を判断するときは体重の欄ばかり見てしまう。

レジスタンス運動、つまり筋トレで血中脂質が改善する可能性はある。ただし、変化は検査項目によって異なる。成人を対象としたメタ分析では中性脂肪は低下したが、ほかの血中脂質には有意な効果が認められなかった。糖の調節に異常がある人の試験を統合すると、脂質の各項目に有意な効果がなかったという結果もある。[3][6]

したがって、運動の評価には体重と脂質それぞれの結果が必要だ。ここでは、筋トレだけを行った研究で何が変わったのかを読む。既存記事「有酸素運動に筋トレを足すと血中脂質も変わる?単独運動との差と健康維持の考え方」には運動の併用を譲り、体重の評価と脂質の評価を分けることに焦点を置く。

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血中脂質の欄をひとまとめにしない

「コレステロールが変わった」という言葉だけでは、研究の答えを取り違えやすい。筋トレの研究で測られているのは、総コレステロール、低密度リポたんぱくのコレステロールであるLDL、高密度リポたんぱくのコレステロールであるHDL、そして中性脂肪などだ。脂質のプロフィールという表現は、こうした項目をまとめて扱っている。[1][3][5]

同じ採血で測っていても、結果は別々に読む必要がある。中性脂肪の有意な低下は、LDLの改善を示す結果にはならない。逆に、総コレステロールが有意に変わらなかった研究を見て、中性脂肪を含めた全項目に効果がなかったと書くのも誤りだ。成人の筋トレを統合した研究は、この違いをよく示している。[3]

ここでの「有意」は、単に数字が上がった、下がったという意味ではない。統計的な不確実さを踏まえて差を評価した表現である。有意差がないという結果を、全員の検査値がまったく動かなかったという話に置き換えてはいけない。実際、糖の調節に異常がある人を対象にしたメタ分析は、脂質への有意な効果を認めなかった一方で、血糖管理などには意義を認めている。[6]

健診の結果を手にした場面なら、「脂質が良くなったか」を先に決めるより、どの欄を見ているのかを言葉にしておくとよい。中性脂肪が気になって検索していたのに、読み進めるうちにHDLの研究を自分の答えにしてしまう。そんなすれ違いを避けるだけでも、記事の読み方は変わる。

また、脂質の検査値が変わったことと、将来の病気がどれだけ減るかは同じ問いではない。今回扱う筋トレの試験では、脂質を含む検査項目の変化が調べられている。そこから自分の将来の発症率まで数字で見積もることはしない。検査の変化を、その試験で確かめた範囲の成果として受け取る。[3][5][6]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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成人の統合結果では中性脂肪だけが動いた

Cornelissenらのメタ分析は、健康な成人を対象に、筋トレが血圧などの循環器リスク要因へ与える影響を調べたものだ。全体では、期間が4週間以上のランダム化比較試験28件、参加者1,012人が含まれる。ランダム化比較試験とは、参加者の割り付けを無作為に行い、介入の結果を比較する研究である。この全体の人数を、そのまま脂質の各解析の人数と読み替えることはできない。18〜39歳の女性に限った統合結果ではなく、この年代の女性への効果量をそのまま示す数字ではない。[3]

筋肉を動かす動的なレジスタンス運動の解析では、血中の中性脂肪は0.11 mmol/L低下し、有意な変化が認められた。一方、ほかの血中脂質と空腹時血糖には有意な効果が観察されなかった。体脂肪も0.6%低下しているので、この結果を「体脂肪の変化とは独立した脂質改善の証明」とすることもできない。[3]

この研究から言えるのは、筋トレの評価を体重だけに閉じない理由がある、というところまでだ。中性脂肪を測ることには、体重計とは違う情報がある。しかし、筋トレを始めれば採血のすべての欄が望む方向へ動く、という約束にはならない。改善が認められた項目と、認められなかった項目が同じ解析の中に並んでいる。[3]

なお、この研究は血圧への影響も扱っているが、血圧で出た成果を脂質の成果として数えてはいけない。研究の題名に「循環器リスク要因」とあると、どれかが改善すれば全体が改善したように読みたくなる。だが検査項目ごとに結果を開くと、変わり方はそろっていない。[3]

仕事帰りに運動した日は、達成感がはっきりある。採血の結果はそれほど一斉に拍手してくれない。このずれを、運動への罰点にする必要はない。ただし期待を修正する必要はある。「筋トレは脂質にもよいらしい」で止めず、中性脂肪なのか、LDLなのか、自分が知りたい欄へ戻る読み方が役立つ。[3]

糖尿病の試験では改善と有意差なしが並ぶ

筋トレによる脂質の変化をはっきり示した個別試験もある。Cauzaらは、2型糖尿病の人を筋力トレーニング群22人と有酸素の持久力トレーニング群17人に無作為に割り付け、4か月間比較した。平均年齢はそれぞれ約56歳と約58歳で、男女とも参加している。18〜39歳の健康な女性に、この中高年の糖尿病患者の結果をそのまま当てはめることはできない。[5]

筋トレ群では、総コレステロールが207から184 mg/dL、LDLが120から106 mg/dL、中性脂肪が229から150 mg/dLへ低下し、HDLは43から48 mg/dLへ上昇した。これらの変化は筋トレ群内で有意であり、有酸素運動群には同様の有意な変化が見られなかった。著者らは血糖管理への効果に加えて、脂質プロフィールの改善を筋トレの利点としている。[5]

数字を見ると期待したくなる。ただし、ここに示したのは筋トレ群の開始前と終了後の値だ。「筋トレ群では有意、有酸素運動群では有意でない」という記述だけから、脂質のすべての項目で運動同士の差も有意だったと広げることはしない。群内の前後比較と、群間の比較は別の質問である。[5]

一方、Strasserらは糖の調節に異常がある人を対象に、筋トレと対照群を比べたランダム化比較試験13件を統合した。このメタ分析では総コレステロール、HDL、LDL、中性脂肪のいずれにも統計的に有意な効果は認められなかった。著者らはそれでも、肥満、血糖管理、収縮期血圧などの面から、代謝の問題を持つ人の管理に筋トレを推奨している。18〜39歳の女性への適用は、糖の調節の状態が異なる場合には分けて考える必要がある。[6]

両者を並べる意味は、良い結果を打ち消すことではない。個別試験の改善を紹介するなら、試験を束ねたときに同じ明瞭さが出なかったことも伝える必要がある。筋トレの価値を保つために脂質の結果を大きく見せると、かえって、どの目的で続けているのか分からなくなる。[5][6]

さらに、ここでの対象には糖尿病や糖の調節の異常という条件がある。健診の結果を見て検索した人にも、診断を受けて運動を考えている人にも、同じ記事が届く。自分に似た年齢の参加者がいたというだけで、診断や体の状態まで同じになるわけでもない。対象を添えて読むことは、数字の魅力にブレーキをかけるためではなく、数字を置く場所を間違えないためだ。

もうひとつ、開始時の値と変化後の値を組で見る意味がある。個別試験の中性脂肪は、筋トレ群で229 mg/dLから150 mg/dLへ動いた。終了時の数字だけを切り取れば、どこからの変化だったかが消える。前後の変化だけを切り取れば、どんな参加者の値だったかが消える。研究の数字を紹介するときは、対象と開始時点を一緒に残しておきたい。[5]

また、集団の平均が改善したことは、各参加者の変化が同じだったことを意味しない。筋トレ群の前後の値は群を表す結果であり、次に取り組む個人への保証ではない。自分の検査値が同じ幅で動かなくても、この試験と矛盾したことにはならない。運動の記録と採血の記録を照らすときには、平均値を個人の合格点にしないという読み方が必要になる。[5]

数字で読む筋トレと血中脂質

28試験・1,012人:成人の血圧などを扱ったメタ分析全体の規模で、脂質の項目ごとの人数ではない。[3]

0.11 mmol/L低下:動的な筋トレの解析で認められた中性脂肪の平均変化。[3]

4か月:2型糖尿病の人で筋トレと持久力トレーニングを比べた試験の期間。[5]

229から150 mg/dL:その個別試験における筋トレ群の中性脂肪の前後の値。[5]

13試験:糖の調節に異常がある人のメタ分析で、脂質の各項目への有意な効果は認められなかった。[6]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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