ヘックスバーは背中ともも裏に効く?膝の働きと筋活動の比較で見える種目の選び方

ヘックスバーで持ち上げると、背中やもも裏を重点的に鍛えられるのか。筋トレ経験者の比較試験とお尻の筋活動の系統的レビューから、通常のバーベルとの違いを読む。広背筋と脊柱起立筋、筋活動と筋肥大、膝と股関節の働きを区別し、重さだけで種目の役割を決めないための視点を示す。

持ち上げ終わって、脚の前側が働いた感じがする。「もも裏を鍛えるつもりだったのに」と、六角形のバーを見直す。ヘックスバーのデッドリフトは、お尻の高い筋活動が報告される種目である。ただし、もも裏の大腿二頭筋の筋活動は通常のバーベルの方が高かった比較試験があり、種目の特徴は、狙う筋肉と開始姿勢を分けて読む必要がある。[4][16]

女性の筋トレ経験者を調べた研究でも、ヘックスバーでは膝を伸ばす側の働きやバーの速度が大きく、通常型やスモウ型では立ち上がりの終わり付近で股関節側の働きが大きかった。「何キロ挙がるか」と「どこがどの局面で働くか」は、別の問いなのだ。[8]

また、背中という言葉にも注意がいる。後で扱う筋活動の比較で差がなかったのは脊柱起立筋であり、それを広背筋の結果として読むことはできない。[16] 既存記事「ヘックスバースクワットは背負う方法より挙がる?重量の差と膝・腰の評価を分ける」には挙上重量の比較を譲り、ここではもも裏、お尻、背中の筋活動を分けて考える。

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もも裏を狙うなら、通常のバーとの比較が手掛かりになる

最も直接的な手掛かりの一つは、筋トレ経験のある男性13人が参加したクロスオーバー試験である。同じ参加者が複数の条件を行う方法で、通常のバーベルのデッドリフト、ヘックスバーのデッドリフト、ヒップスラストを比較した。測ったのは大殿筋、大腿二頭筋、脊柱起立筋の活動である。男性の最大挙上で得た結果なので、18〜39歳の女性の普段の練習にそのまま当てはめるには条件が異なる。[16]

参加者は慣れるためのセッションを経て、それぞれの種目で1回だけ挙げられる最大の重さに挑んだ。実施順序は無作為化され、順序の偏りにも配慮された。したがって、同じ重さの軽い練習を比べた結果ではなく、種目ごとの最大挙上時の比較である。職場帰りに初めてバーを触る人が、そのまま再現するための練習メニューではない。[16]

持ち上げる動作全体では、大腿二頭筋の筋活動は通常のバーベルでヘックスバーより28%高く、ヒップスラストより20%高かった。いずれも統計的に有意な差である。著者らも、大腿二頭筋を活動させる点では通常のバーベルが他の種目を上回ったと結論している。[16]

ここで大腿二頭筋は、もも裏の比較対象になった筋肉の名前だ。「ハムストリング全体が同じ割合で働いた」と広げず、この筋肉での結果として読む。検索するときはもも裏とまとめてよいが、研究を読むときには測った筋肉の名前へ戻る必要がある。この区別だけで、「ヘックスバーはもも裏に効かない」という逆向きの決めつけも避けられる。[16]

通常のバーベルの値が高かったことと、ヘックスバーで活動が起きなかったことは同じではない。実際に同じ試験では、動作の下半分に限ると、ヘックスバーの大腿二頭筋の活動はヒップスラストより26%高かった。もも裏を使うか使わないかの二択では、種目間の違いを取りこぼしてしまう。[16]

日常の練習に置き換えるなら、まず確認したいのはメニューの目的だ。もも裏の筋活動を比較したいのか、持ち上げ動作全体を練習したいのか。前者なら通常のバーベルを比較候補にする理由があるが、この試験だけで経験や体調の異なる人全員の種目を決めることはできない。最大挙上時の大腿二頭筋という、条件の付いた手掛かりだからである。[16]

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動作の前半と後半では、同じ筋肉の順位も変わる

「どの種目が上か」を一つの順位表にしたくなるが、この試験は持ち上げる動作を下半分と上半分にも分けている。途中のどこを比べるかによって、筋活動の差の見え方が変わる。持ち上げ始めから立ち切るまでを、ひと続きの同じ負担と考えない方が結果を読みやすい。[16]

下半分では、大腿二頭筋の活動は通常のバーベルでヒップスラストより48%高く、ヘックスバーでヒップスラストより26%高かった。ここでの比較相手はいずれもヒップスラストである。「通常のバーベルはヘックスバーより48%高い」と数字を移し替えてはいけない。[16]

上半分では、大腿二頭筋の活動は通常のバーベルがヘックスバーより39%高く、ヒップスラストもヘックスバーより34%高かった。動作全体では通常のバーベルがヒップスラストを上回っていたが、下半分で見えたヘックスバーとヒップスラストの関係は、上半分では逆になる。バーの名前だけでなく、局面も結果の一部なのである。[16]

一方、お尻の大殿筋では、ヒップスラストがヘックスバーを上回った。動作全体では16%、上半分では26%高い活動であった。同じ比較試験の中でも、大腿二頭筋に注目するのか大殿筋に注目するのかで、種目選びの手掛かりが変わる。[16]

もも裏が気になる日に、お尻の筋活動ランキングだけを見ても目的とはずれる。反対に、お尻の活動を知りたい日に、もも裏の順位をそのまま使うこともできない。「背面に効く」は便利な言葉だが、便利すぎて筋肉の名前を消してしまう。少なくともこの比較では、大殿筋と大腿二頭筋の結果は分けて扱う必要がある。[16]

これは、動作中にどの筋肉で活動が記録されたかの話である。筋肉が長期的にどれだけ大きくなるかを比べた結果に置き換えることはできない。ヘックスバーから通常のバーベルへ替えれば、もも裏が28%余計に成長する、という意味ではない。活動の差の数字には、測定した時間と対象が付いている。[16]

練習の記録でも、その日の挙上重量の横に「何を確かめたかったか」を残すと、結果を読み違えにくい。例えば、もも裏の役割を考えるために種目を比べた日と、バーの動かし方に慣れる日では、同じ感想でも意味が違う。研究に合わせて比較の目的をはっきりさせるための工夫であり、特定のフォームで特定の筋肉へ必ず刺激が集まるという約束ではない。[16]

お尻の高い筋活動と、膝側の働きは両立する

大殿筋の活動をまとめた系統的レビューは、16本の論文を対象としている。筋活動は、最大随意等尺性収縮に対する割合で整理された。これは、力いっぱい力を入れて動かない状態の測定を基準に、運動中の活動を表したものだ。筋肉の大きさの何割が使われた、という意味の割合ではない。[4]

レビューでは、ヘックスバーのデッドリフトは、その基準に対して60%を超える「非常に高い」大殿筋活動の種目に分類された。ただし、そこには通常のデッドリフト、ヒップスラスト、ランジ、スクワットの一部の型なども含まれる。ヘックスバーだけが特別にお尻を活動させるという結果ではない。[4]

著者らは、ステップアップとその変法が最も高い活動を示し、その後にデッドリフトやヒップスラストなど複数の負荷を用いた運動が続くと結論している。お尻の筋活動を目的に種目を選ぶ際の候補は広い。だからこそ、ヘックスバーが候補に入ることと、その人にとって唯一の正解であることを分けたい。[4]

このレビューと、先ほどのヒップスラストとの比較は矛盾しない。ヘックスバーの大殿筋活動が高い分類に入っていても、別の種目との直接比較ではその種目の方が高いことはある。「高い活動がある」という説明は、「何と比べても最大」という説明ではない。[4][16]

さらに、筋トレ経験のある女性11人を対象とした比較研究では、通常型、スモウ型、ヘックスバー型のデッドリフトを調べた。比較したのは、3回が限界となる重さで行った際の最後の反復の持ち上げ局面である。参加者の平均年齢は約23歳であった。[8]

ヘックスバー型では、バーの速度、膝関節の正味の関節モーメント、股関節と膝関節の曲がる角度が大きかった。関節モーメントとは、ここでは関節まわりで体を回転させる力の作用を捉える指標であり、個々の筋肉の筋活動そのものとは区別する。通常型とスモウ型では、立ち切る付近で股関節の正味の関節モーメントが大きかった。[8]

数字で読むヘックスバーの筋活動

男性13人:通常のバー、ヘックスバー、ヒップスラストの最大挙上を比較した人数である。[16]

28%:動作全体の大腿二頭筋活動は、通常のバーでヘックスバーをこの割合だけ上回った。[16]

16%:動作全体で、ヒップスラストの大殿筋活動がヘックスバーより高かった割合である。[16]

16本:大殿筋活動の系統的レビューで採用された論文数である。[4]

女性11人:3回が限界の挙上を種目間で比較した研究に参加した。[8]

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宮川涼 Founder

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