観葉植物でストレスは和らぐ?鉢を眺める休憩と世話する時間の反応を比べる

観葉植物でストレスが和らぐ可能性はある。ただし、眺める休憩と植え替えや水やりでは、比べた活動も測った反応も違う。学生の実験、術後の病室、植物を育てる試験から、気分・血圧・考え込みの変化を読み分ける。世話すれば必ず効くとも、気分が戻れば仕事も進むとも言い切れない理由を探る。

水やりを終えた鉢を窓辺に戻す。葉を眺めて休む時間と、じょうろを持って動く時間では、心身の反応も違うのだろうか。窓辺の鉢に目を向けるだけでよいのか、土に触れて世話をしたほうがよいのか。緑を部屋に迎えた人なら、そんな違いが気になるかもしれない。

観葉植物に接することで気分やストレス反応が和らぐ可能性はある。植物のある休憩で感情面の回復が見られた実験も、植え替えをしたときにパソコン作業とは異なる血圧や自律神経の反応が出た実験もある。ただし、この結果を並べて「世話するほうが眺めるより効く」とは決められない。両者を直接対決させた結果ではないからだ。[2][9]

既存記事「観葉植物の空気清浄効果は本当か、部屋に何鉢いるかを計算した研究」には空気の話を譲る。ここで追うのは、人と鉢との関わり方である。植物が視界に入ること、作業の手を止めること、自分で世話をすること。それぞれの実験で何が変わったのかを分けて読む。[1][2][7][9]

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「癒やされた」を、気分と体の反応に分ける

植物の効果を聞いたとき、最初に確かめたいのは何を測ったかである。心地よさを質問したのか、血圧を測ったのか、課題の成績を調べたのか。「ストレスに効く」という短い言葉の中には、違うものさしが収まっている。植え替えの実験では気分の評価に加えて心拍の間隔の変動と血圧を使い、休憩の実験では感情やストレスに加えて作業記憶を測っている。[2][9]

作業記憶とは、情報を一時的に保ちながら扱う働きである。学生を対象にした休憩の実験では、植物への接触後に感情面で小さいながら有意な回復が認められた一方、認知面の回復には有意な効果がなかった。気持ちが楽になったことと、頭の作業能力が戻ったことは同じ結果ではなかったのだ。[9]

これは「気のせいだった」という意味ではない。苦痛感が減ること自体が、実験で測った変化である。ただ、その変化に「記憶も改善した」という別の札を付けない。講義や仕事のあとに植物を見て落ち着いたとしても、それだけで難しい資料を読める状態まで戻ったと判断する必要はない。感情面と認知面を分けた実験は、この期待の置き場所を教えてくれる。[9]

血圧についても、測定した場面を残して読む。若い男性が植え替えをした実験で差が出たのは拡張期血圧であり、病室に植物を置いた実験では収縮期血圧の低さが報告されている。前者は血圧の下の値、後者は上の値である。対象も状況も違う結果をつなげて「観葉植物は誰の血圧も下げる」と読むのは飛躍になる。[1][2]

部屋で気持ちよく過ごす工夫を探しているなら、病気を治すほどの変化であることを条件にする必要はない。一方で、研究の言葉を暮らしに持ち込むときは、心地よさ、苦痛感、血圧、課題成績のどれを期待しているのかを決めておく。その区別があると、自分が実感したことを大きくも小さくも扱わずに済む。[2][9]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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眺める植物は、病室と休憩でどう調べられたか

眺める側の研究として、痔の手術後に回復中の患者90人を対象にした無作為化比較試験がある。患者を植物のある病室と対照の病室へ無作為に割り付け、半数の患者の病室に生きた植物を置いた。植物や花のある病室の患者は、対照の病室の患者より収縮期血圧が低く、痛み、不安、疲労の評価も低かった。部屋に対する満足度も高かった。術後患者の療養環境で得た結果であり、18〜39歳の女性が自宅で休む場面にも同じ変化が起きるかは別に確かめる必要がある。[1]

著者らはこの結果から、病院環境での植物の補完的な価値を肯定している。単なる飾りにとどまらず、療養環境を考える手掛かりになった試験である。ただ、これは手術後の患者が過ごす病室の比較だ。通勤帰りの人が自宅で鉢をちらりと見る場合に、痛みや不安が同じ幅で減ると受け取ることはできない。[1]

病室という条件も捨てないでおきたい。植物のある患者は、部屋を明るく感じたり、医療従事者に良い印象を持ったりしたと述べている。植物に対する反応は、葉そのものを見ることだけでなく、その部屋がどう感じられるかとも重なっていた。著者らの結果には部屋の満足度が含まれており、植物を薬の成分のように切り出す読み方とは相性が悪い。[1]

生活に近い「作業後の休憩」は、学生60人を植物、誘導瞑想、対照の休憩に無作為に割り付けた試験で調べられた。誘導瞑想とは、案内に沿って取り組む瞑想である。注意を持続させる課題によって疲労を起こし、課題の前後と休憩後に測定した。植物の条件では苦痛感が有意に減り、誘導瞑想の条件では苦痛感が減るとともに取り組む感覚も高まった。[9]

著者らは植物と誘導瞑想の双方について、感情面の回復に小さいが有意な好影響があり、感情面では同程度に有効だったと結論している。一方、認知面への有意な効果はなかった。「植物を見れば瞑想と同じように何でも回復する」という広げ方では、この後半が落ちてしまう。何について同程度だったのかまでが結果である。[9]

夕方の机を思い浮かべるなら、「植物が置いてあるから作業を続ける」場面より、「作業から離れた休憩に植物がある」場面に近い試験だ。研究を生活へ移すときには、鉢があったかだけでなく、そこで何をしていたかを一緒に運ぶ必要がある。休憩をなくして鉢だけ残せば、同じ条件にはならない。[9]

植え替えや水やりは、何と比べて落ち着いたのか

世話をする側では、若い男性24人、平均年齢24.9歳の無作為化クロスオーバー試験がある。クロスオーバーとは、同じ参加者が条件を入れ替えて体験する方法だ。この実験では観葉植物の植え替えとパソコン作業を比べた。植え替え後のほうが快適で、気持ちが落ち着き、自然だと評価された。拡張期血圧も植え替え後のほうが有意に低かった。男性のみの試験なので、18〜39歳の女性にも同じ反応が出るかは、この比較だけでは判断できない。[2]

心拍の間隔の変動から算出した交感神経活動の指標は、パソコン作業中には時間とともに増え、植え替えの終わりには減る方向を示し、条件間の差は有意だった。交感神経は、自律神経のうち活動時の反応に関わる側である。著者らは、その活動と拡張期血圧の抑制などを通じ、植物との能動的な関わりが精神作業に比べて心身のストレスを減らし得ると述べている。[2]

ここで大切なのは、比較相手が「何もせず鉢を眺める時間」ではなく、パソコン作業だった点だ。植物の世話へ切り替えると、目の前の対象も手の動きも、取り組む課題も変わる。この実験が示したのは活動全体を入れ替えたときの差であり、葉に触れたことだけの差ではない。土の力だけで説明したくなるところで、パソコンも比較の中にいる。[2]

水やりを調べた中国の成人50人の比較研究でも、相手は立った状態で行うパソコン課題だった。対象は20〜21歳で、脳波、血圧、心理的な評価を測った。水やりは血圧を有意に下げたが、脈拍には影響しなかった。園芸活動の後に幸福感が増したことも報告されている。血圧と脈拍で結果が分かれた。20〜21歳の中国の成人を対象とする結果を、18〜39歳の女性全体へ広げるには、年齢や生活環境の違いも考える必要がある。[16]

高齢者施設から集めた100人のクロスオーバー研究では、水やりとパソコンのカードゲームを比べた。水やりはゲームに比べ、収縮期・拡張期血圧の有意な低下、不安評価の低下、快適さやリラックス感の増加と関連していた。著者らは10分間の水やりの可能性を示しているが、18〜39歳の女性に同じ反応が出るかは未確定であり、その時間を自宅での水やりの処方として使うことはできない。[14]

世話はいつも植え替えでなくてよい、という発想には水やりの研究が参考になる。ただし、植物を眺めるより手を動かすほうが優れているという順位表は、これらの比較からは作れない。若い男性、若い成人、高齢者施設の人々では対象も異なる。研究ごとの相手を残したまま読むほうが、自宅で何を試すかを考えやすい。[2][14][16]

人数は効果の強さを表す数字ではない。病室の患者と学生では過ごす状況が違い、植え替えと水やりでも活動が違う。ここでは結果の大きさを競わせるためではなく、誰を調べた答えなのかを見失わないために並べておく。[1][2][9][16]

数字で読む植物との関わり

90人:手術後の患者を植物のある病室と対照の病室へ無作為に割り付けた試験の人数である。[1]

60人:植物、誘導瞑想、対照の休憩を比較した学生の人数であり、感情面と認知面で結果が分かれた。[9]

24人:植え替えとパソコン作業を入れ替えて比べた若い男性の人数である。[2]

50人:水やりと立ったままのパソコン課題を比べた20〜21歳の成人の人数である。[16]

26人:ストレスを伴う生活上の出来事のあと、植物を育てる介入と待機対照に割り付けた試験の人数である。[7]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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