
脳を冷やす説は、どこまで強いのか
ここからは、うつる理由ではなく、あくびそのものの役割の話になる。有力な仮説の一つが、脳を冷やすというものだ [7]。
これを試した珍しい実験がある。2017 年、健康な 22 人を対象に、細菌の成分である内毒素 2 ng/kg と偽薬を入れ替えて投与する無作為化クロスオーバー試験が行われた [7]。人工的に発熱を起こし、投与 30 分前から 4 時間後までのあくびを映像で数えたのである [7]。あくびは内毒素の条件でだけ時間とともに増え、とくに体温が上がっていく時期に増えた [7]。ここまでは冷却説に都合がいい。ところが、体温の上がり幅とあくびの回数のあいだに有意な相関は無かった [7]。
探索的な解析では、あくびが多い人ほど吐き気や体調の悪化の増え方が小さかった [7]。著者らは、冷却の役割を確かめるにはさらに研究が要るとしたうえで、血管迷走神経の反応を抑える働きなど別の機能にも目を向けている [7]。発熱した人のあくびを 4 時間数え続けた人たちがいて、答えはまだ出ていない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
我慢した分を、他人のあくびで取り戻している説
あくびの研究で、いちばん身につまされるのがこの仮説かもしれない。
霊長類の研究をまとめた 2010 年の総説は、まず旧世界ザルのあくびが、威嚇の一種として長く見られてきたと述べる [8]。大人のオスのマカクでは、餌を報酬にしてあくびの回数を操作した実験もある [8]。あくびは思ったより融通のきく動作らしい。
そのうえで著者は、一つの仮説を置く。現代の産業社会の大人は、あくびの自然なパターンを抑え込んでいる。他人のあくびを見ることは、出しそびれたあくびを思い出させ、遅れを取り戻す助けになる、というものだ [8]。幼い子どもや自然の中のチンパンジーで伝染性のあくびの報告が乏しいのは、そうした社会的な縛りが無いからだ、という説明がつく [8]。
午前の会議でかみ殺した分を、午後の電車で取り戻す。情景としては、よくできている。
ただ、仮説は仮説である。2026 年の胎児の研究 [18] と並べると、抑え込みだけでは説明しきれない部分が残る。胎児に、会議で我慢したあくびは無い。うつらない人の多くが、我慢どころかあくびをしたい感じすらしなかったという報告とも [21]、そのままではかみ合わない。

理由は一つでなくてよい
ここまでの研究を並べると、いま言えることの形が見えてくる。あくびが見た相手にうつる現象は、魚から人まで広く報告されている [17] [13]。人での共感との関係は一貫していない [3] [1]。その代わりに候補として並ぶのが、群れの動きをそろえる働き [17]、休む合図 [14]、抑えたあくびの取り戻し [8] である。人の個人差の大部分は、まだ説明がついていない [21]。
別々の系統で独立に生まれた可能性が挙がっている以上 [17]、魚とチンパンジーと人が同じ理由でつられている必要は無い。電車の中のあくび 1 回に、答えが 1 つとは限らない。
よくある誤解
「あくびがうつらない人は冷たい」。この思い込みを支える証拠は一貫していない [3]。健康な人にも、うつりにくい人は安定して存在し、その差は共感では説明できなかった [21]。特定の精神医学的な状態で少ないという報告はあるが、自閉スペクトラム症では視線や注意の配り方が挙がり、精神病質の傾向では情動反応の低さなどがより一貫して関わるというように、要因は状態ごとに違い、研究も小規模である [1]。これを一般の人の性格判定に移すことはできない。友人や恋人のあくびで何かを決めないほうがよい。
「あくびは退屈の印」。退屈を直接測った数字はここに無いが、ひとりでに出るあくびには起床後と就寝前の波があり、人からうつるあくびもある [5]。退屈以外の出どころがある以上、講義中のあくび 1 回を講師の話の評価と決めることはできない。
「あくびはミラーニューロンでうつる」。脳画像や脳波の研究は、社会的な認知、自己の処理、動作の観察に関わる脳の系を指し示すが、ミラーニューロンの系そのものの役割は不確かなままである [1]。決着した説明ではない。

今日からできること
- 向かいの人につられたら、その 10 秒間につばを飲み込んだかを確かめる。14 人の実験では 65% のあくびで飲み込みが続いた [5]
- あくびが多い時間帯を 3 日だけ書き出す。起床直後と就寝前に寄っていれば、研究で報告された波と重なる [5]
- つられたくない場面では相手の口元から目を離す。ただし聞いても考えてもうつるので、完全には防げない [5]
- あくびの動画を 3 分見て、自分がつられる側かを確かめる。328 人の研究では、この反応は検査をまたいで安定していた [21]
- 誰かのあくびがうつらなくても、その人の優しさの話にしない [3] [21]
- あくびがいつもより極端に増え、ほかの症状も続くときは医師に相談する
隣のマットのあくびはそのままで、オンザショア立川店
魚の論文が見ていたのは、群れが動きをそろえる仕組みだった。人が同じ部屋で同じ動きをする機会は、仕事の日にはあまり無い。オンザショア立川店は、JR立川駅北口から徒歩1分の、溶岩プレートを敷いたホットヨガのスタジオである。あくびがうつるかどうかはこの部屋の研究課題ではないので、隣のマットで誰かが口を開けても放っておいてよい。
ヨガだけで25種類以上のレッスンがあり、常温のヨガ、ピラティスも選べる。店は8:00〜23:30の年中無休で、平日の朝いちばんの回は月曜から木曜が10時、金曜が13時である。体験レッスン(ヨガ)は税込1,980円で、60分のレッスン、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。料金と体験の予約はこちらから。
参考文献
[1] Reduced contagious yawning in psychiatric disorders: a systematic review of potential social-cognitive mechanisms — Boiangiu R, Peleg R, 2026, Frontiers in psychiatry. DOI: 10.3389/fpsyt.2026.1879203
[3] Why contagious yawning does not (yet) equate to empathy — Massen JJM, Gallup AC, 2017, Neuroscience and biobehavioral reviews. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2017.07.006
[5] Occurrences of yawn and swallow are temporally related — Abe K, Weisz SE, Dunn RL, DiGioacchino MC, Nyentap JA, Stanbouly S, Theurer JA, et al, 2015, Dysphagia. DOI: 10.1007/s00455-014-9573-2
[7] Yawning, a thermoregulatory mechanism during fever? A study of yawning frequency and its predictors during experimentally induced sickness — Marraffa A, Lekander M, Solsjö P, Olsson MJ, Lasselin J, Axelsson J, 2017, Physiology & behavior. DOI: 10.1016/j.physbeh.2017.09.018
[8] Non-human primates: a comparative developmental perspective on yawning — Anderson JR, 2010, Frontiers of neurology and neuroscience. DOI: 10.1159/000307082
[13] Contagious yawning is stronger in wolves than in dog-admixed wolves — Amici F, Liebal K, Oña L, Iacuzzi M, Altdörfer T, Gretschzel A, Kamanga G, et al, 2026, Animal cognition. DOI: 10.1007/s10071-026-02086-w
[14] Chimpanzees yawn when observing an android yawn — Joly-Mascheroni R, Forster B, Llorente M, Valsera C, Gomara A, Crailsheim D, et al, 2025, Scientific reports. DOI: 10.1038/s41598-025-98639-z
[16] Behavioral Contagion in Wild Ecuadorian White-Fronted Capuchins (Cebus aequatorialis) — Hannaoui NH, Amici F, Hoeneisen A, Llorente M, 2026, American journal of primatology. DOI: 10.1002/ajp.70122
[17] Diving back two hundred million years: yawn contagion in fish — Galotti A, Manduca G, Digregorio M, Ambrosini S, Romano D, Andreazzoli M, et al, 2025, Communications biology. DOI: 10.1038/s42003-025-08004-z
[18] Prenatal behavioral contagion through maternal yawning and fetal resonance — D’Adamo G, Dall’Asta A, Ardizzi M, Sorrentino S, Mora V, Arenare G, D’Amario P, et al, 2026, Current biology : CB. DOI: 10.1016/j.cub.2026.04.025
[21] Individual variation in contagious yawning susceptibility is highly stable and largely unexplained by empathy or other known factors — Bartholomew AJ, Cirulli ET, 2014, PloS one. DOI: 10.1371/journal.pone.0091773
[22] Contagious yawning: the role of self-awareness and mental state attribution — Platek SM, Critton SR, Myers TE, Gallup GG, 2003, Brain research. Cognitive brain research. DOI: 10.1016/s0926-6410(03)00109-5
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
ヨガとからだの小さな疑問のほかの記事
- 音楽で鳥肌が立つ人と立たない人の違い、家族のつながりで最大29%、献血の意欲は動かない
- チョコを食べたくなる心理、マグネシウム不足説と生理前の欲求を実験と調査で読む
- 泣くとスッキリする理由は本当か、涙のあとに気分が戻る仕組みと人に届く涙の研究
- 指を鳴らすと太くなるは本当か、腫れが割れた2つの調査と60年決着しない音の正体
- 白髪はストレスで増える?1本の毛を読むと黒に戻っていた研究と、戻す手立てがまだ無い理由
- 血液型と性格は関係ない?1万人調査の0.3%と、日本だけの話でもなかった信じられ方
- 満月の夜に眠れないのはなぜ?電気のある街でも眠りが短くなった研究と、苦情が出る日のずれ
- ととのうの科学的根拠はあるか、サウナと水風呂の快感は脳と血液の部品どまりだった
- 犬を飼うと寿命が延びる?384万人の24%減と、双子の登録で再現しなかった研究を読む
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
2







