間食の栗は焼き目が濃いほど違う?香りと加熱成分を食べる量から分けて読む

間食に栗や甘栗を選ぶとき、濃い焼き目や香ばしさだけで成分や安全性を判断できるだろうか。栗そのものを加熱した食品実験をもとに、香り、でんぷん、ポリフェノール、食感の変化を整理する。研究の温度と家庭での調理を分け、成分の測定値を食べる個数へ飛躍させない選び方を考える。

焼き栗の殻をむくと、指先に香ばしい匂いが残る。殻の色が濃いものほど香ばしそうで、薄いものは何となく物足りない。ところが、焼き目の見た目をそのまま「成分が多い」「体によい」「食べる量を減らすべき」という目盛りにするのは難しい。栗の加熱実験では、香り、でんぷん、ポリフェノールがそれぞれ違う動きをしているからだ。[3][8][17]

答えの芯は、加熱で栗は変わるが、変わったものをまとめて評価しないことである。中国栗を使った食品実験では、調理後にフルフラールやフランなどの香りに関わる成分が形成された。一方、別の品種比較では、でんぷん量の変化の方向さえそろわなかった。[3][17] 香りの強さを測定したつもりで、安全性の判定まで済ませないようにしたい。

既存の「間食の桃は皮をむくと何が変わる?果肉の成分と吸収までの距離を研究で読む」は、取り除く部分と食べる部分の問いに譲る。また、栗のビタミンや保存中の甘さを主題にした記事とも分け、ここでは加熱条件と測った指標の対応を追う。焼き栗の色を見て、どこまで判断の材料にできるのかが今回の問いである。

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香ばしさが増えたとき、何が起きているのか

中国栗の実を対象に、ゆでる、焼く、揚げる調理を比べた食品実験がある。調べたのは、でんぷん、水に溶けるたんぱく質、遊離アミノ酸、糖、有機酸、総フラボノイドなどの成分と、揮発性成分である。揮発性成分とは、香りに関わる、空気中へ移りやすい成分のことだ。対象は調理した栗そのものである。18〜39歳の女性が食べた後の健康影響に、そのまま当てはめることはできない。[3]

生の栗ではアルデヒド類とエステル類が主な香気成分だったのに対し、調理した栗ではケトン類、フルフラール、フランが形成された。研究では、メイラード反応と糖、アミノ酸、脂質の分解に結びつけて説明している。[3] 食べる前から袋の中の匂いが違うのは、気分だけの話ではない。加熱後の栗には、生の栗とは違う成分の組み合わせがある。

ここで「香りの成分が形成された」と「食べた人に健康影響が生じた」は、研究の問いが違う。前者は食品の分析で確かめる変化であり、後者を考えるには摂取の条件と人の結果をつなぐ必要がある。調理した栗の香りの分析を、病気になる確率の数字へ置き換えることはできない。[3] 見慣れない成分名だけを拾うと、食品の変化と体への影響が近すぎて見えてしまう。

アクリルアミドという言葉が気になって検索した場合も、香り成分として報告されたフランを、そのままアクリルアミドの測定値の代わりにはしない。この比較の結果から読むべきことは、調理で香気成分の構成が変わるという点である。[3] 焼き目の濃淡を、特定の成分の量を示す表示として扱うのは飛躍だ。

香りと一緒に見たいのが、もとの成分側の変化だ。この調理比較では、調理後に減った主な遊離アミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンが挙げられている。[3] 香りが生まれるという変化だけを取り出すのではなく、調理前後で別の成分も動いていると読むと、加熱を単なる足し算で捉えずに済む。ただし、この結果だけから甘栗の味の強弱を個別に予測するのは難しい。複数の成分を調べた研究として受け止めたい。[3]

また、この実験では、成分全体の特徴をまとめて比べる解析で、焼く処理と揚げる処理が似た傾向を示し、ゆでる処理は異なった。[3] 似ていたのは複数の測定値を組み合わせた特徴であり、個々の栄養成分がすべて一致したという結果ではない。栗の調理を選ぶなら、まずどの成分や食感についての比較なのかを確かめる必要がある。

例えば、帰宅後に香りを足したくて甘栗を焼き直す場面を考えたい。求めているのが香ばしさなら、それは香りの好みとして整理できる。一方、成分を増やすため、安全にするため、と目的を広げると別の根拠が要る。香りが変わることを確認した食品実験は、追加加熱の回数や家庭の焼き直し時間を決める処方箋ではない。[3]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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温度の数字だけでは、おいしさの順位も決まらない

中国栗の品種であるDabanhongとYanshanzaofengを使った比較研究では、蒸す処理が100°C、エアフライが150°C、焼く処理が200°Cという条件だった。栄養成分、生理活性成分、結晶性、食感、色、味を調べ、110人による官能評価も行った。[5] 官能評価は、人が食べて感じた特徴を評価する方法である。食品の品質を比べた結果であり、18〜39歳の女性の健康や食後反応へ直接当てはめることはできない。

この実験では、150°CでエアフライしたDabanhongが、栄養面と感覚面のバランスがよい組み合わせと評価された。エアフライは成分の保持、相対的な結晶性、硬さや好ましくない風味の改善などで良好な結果を示した。[5] 高い温度で焼いたものが、あらゆる項目で上位になるわけではなかったのである。

ただし、この比較は温度だけを変えた試験ではない。加熱の方法も、栗の品種も関わっている。[5] したがって「温度を下げれば必ずよい」と逆向きの単純化をするのも早い。蒸した栗と焼いた栗の違いを、温度の差だけで説明すると、研究が比べた条件のまとまりをほどきすぎてしまう。

家庭で袋入りの甘栗を温める場合と、この実験で栗を加工する場合も同じではない。表示された加熱温度は、研究条件を見分けるための情報として読むのが先である。[5] 台所の機器の数字を合わせたからといって、同じ試料、同じ処理、同じ仕上がりを再現したことにはならない。研究の温度を、そのまま自宅の推奨設定に変えないようにしたい。

食感を測る機器と、味の違いを捉える電子舌という装置でも、見分けやすい処理は違っていた。食感の測定は焼いた栗を識別するのに役立ち、電子舌は蒸した栗とエアフライした栗をさらに区別した。[5] 同じ栗の比較でも、「硬さで違う」と「味で違う」は別の情報なのである。

これは売り場でも使える見方だ。口に入れたときのほくほく感を求めるのか、香ばしい匂いを求めるのかを分けてみる。どちらかが強いからといって、もう片方や栄養成分の順位まで決めることはできない。研究でも食感、味、成分を別々に評価している。[5] 焼き目は選ぶときの手掛かりのひとつであって、栗の成績表そのものではない。

でんぷんとポリフェノールは同じ方向に動かない

ポルトガルの栗の7品種を使い、生、ゆで、焼きの状態を比べた実験は興味深い。加工後のでんぷん量には、処理で減る、処理で増える、ゆでると増えて焼くと減る、という3つの変化の型があった。[17] 「栗は焼けばでんぷんが減る」とひとまとめにはできない結果である。

研究では、電子顕微鏡を使って細かな構造も観察した。加熱処理で個々のでんぷん粒が融合し、糊化が進んで、伸びた集まりができるなどの変化が認められた。[17] 糊化とは、ここでは加熱に伴ってでんぷん粒の構造が変わる現象を指す。栗の実は、焼き色とともに内部の構造も変わる。

この構造の変化は、感覚的な特徴や流動・変形の性質、化学的特徴に関わり得ると研究は考察している。[17] ただし、でんぷん粒の写真や量の変化から、人が間食に食べた後の血糖や腹持ちを直接決めることはできない。測定した対象を取り違えず、まず栗の加工特性の話として読むことが大切だ。

ポリフェノールを調べた別の栗の実験では、生、ゆで、焼き、揚げの実と殻を分析した。29種類のポリフェノールを分析対象とし、検出された25成分の量は、処理ごとに特徴のある変化を示した。目立った成分は没食子酸、エラグ酸、カテキンだった。[8] こちらも「加熱」という言葉だけで全部の方向はそろわない。

総ポリフェノール量は、電子レンジで焙焼した実を除き、実と内外の殻で増加した。また、実の抗酸化活性はすべての処理で高まったが、殻の抗酸化活性は焼くと高くなり、ゆでる処理と揚げる処理では低くなった。[8] 同じ栗でも、実と殻では結果の受け止め方を分けなければならない。

ここでいう抗酸化活性は、実験で成分の働きを測った指標である。測定にはDPPHという試薬を用いる実験が使われた。[8] その値が高いことを、食べた人の体調改善や病気の予防効果と同じ意味で読まない。とくに殻の結果を、普段食べるむき栗の実の説明へ持ち込むと、対象まで入れ替わってしまう。

数字で読む栗の加熱比較

100°C、150°C、200°C:蒸す、エアフライ、焼く処理を比較した実験の条件。家庭用の共通設定ではない。[5]

110人:上の実験で官能評価に参加した人数。長期の健康影響を追った人数ではない。[5]

7品種:ゆでる・焼く処理に伴うでんぷんの変化を比較した栗の品種数。[17]

29種類と25成分:ポリフェノール研究での分析対象と検出された成分。食品を食べる個数の目安とは別の数字である。[8]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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