間食のチーズは発酵でビタミンKも変わる?熟成日数より先に菌と成分の形を読む

間食にチーズを選ぶとき、熟成が長ければビタミンKも多いと考えてよいのか。発酵に使う菌がつくる成分の形、硬さや脂質からは決められない含有量、プロセスチーズの分析結果を研究で読む。食品に含まれる量と、人が食べた後の血液指標の変化を分け、買い物で比べるポイントを整理する。

午後の休憩に食べるチーズを選ぶ。片方の包装には熟成、もう片方には低脂肪の文字がある。ビタミンKを意識するならどちらか。答えは、熟成期間や脂質表示だけでは決められない、である。チーズのビタミンKは種類、熟成、脂肪分、産地などで変わり、発酵乳製品の分析では菌に応じて成分の形にも大きな違いが見つかっている。[1][12]

発酵によってビタミンK2がつくられることは研究されている。ただし「発酵食品だから同じ成分が同じ量だけ入る」とは考えない。乳製品では複数の形のビタミンK2が検出され、調べる形の範囲によって、見えてくる食品の姿も違う。[2][17]

大豆の発酵と栄養の話は、既存記事「ソイプロテインは発酵でビタミンB12も増える?大豆と菌が作る成分を読む」に譲る。ここで追うのは、チーズをつくる菌と熟成条件が、ビタミンKの量と内訳にどう関わるかだ。含有量の比較から人の健康への効果までを、一息で飛び越えない。[1][2]

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ビタミンK2は、同じ名前の中に複数の形がある

ビタミンKという呼び名の下には、フィロキノンと呼ばれるビタミンK1と、メナキノンと呼ばれるビタミンK2がある。さらにメナキノンには、分子の側鎖という枝に当たる部分の長さなどが違う複数の形がある。乳製品を調べた研究は、その内訳まで分けて測っている。[17]

研究で見かけるMK-8やMK-9は、メナキノンの形を区別する表記だ。数字が大きいほど健康によい、という順位表ではない。米国の乳製品の成分分析では、通常の脂肪分を含む製品で主に見つかったのはMK-9、MK-10、MK-11であり、多くの製品ではMK-5からMK-7などはほとんど検出されなかった。[17]

この違いは、栄養の話を読むときに効いてくる。「この食品にはMK-7が少ない」という結果と、「ビタミンK全体が少ない」という結果は同じではない。別の形が含まれる食品なら、特定の形だけの比較では全体像を捉えにくい。実際に乳製品には、主成分以外にもK1やMK-4、MK-8、MK-12などが検出されている。[17]

発酵乳製品を対象とした別の成分分析でも、主要な形はMK-9だった。ただし、すべてのメナキノンが一緒に増減したわけではない。MK-9とMK-8の量には相関があった一方、ほかの形は独立して生産されていた。ひとまとめの「K2」という言葉だけでは、菌がつくる成分の組み合わせは表せないのである。[12]

買い物でこの記号を全部暗記する必要はない。研究記事や食品の説明に出会ったら、「ビタミンKの合計なのか」「そのうち特定の形なのか」を確認する。それだけでも、違う物差しで出された数字を同じ棚に並べずに済む。乳製品の研究が複数の形を測り分けるのは、実物の中身が単一ではないからだ。[12][17]

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菌の違いは、量だけでなく成分の内訳にも現れる

健康な人やビタミンが不足した人の研究を集めた系統的なナラティブレビューでは、一部の微生物が発酵食品中のビタミンK2などを増やすことが整理されている。同時に、体が利用できる程度は食品の構造、発酵の種類、菌株、ビタミンの形などに左右されるとされた。菌株とは、同じ種類の菌の中でも性質を区別する単位である。対象集団が多様なため、18〜39歳の女性に同じ変化が起きるかは、このレビューだけでは決められない。[2]

つまり、材料が牛乳であることだけでは、できあがる成分を言い当てられない。発酵乳製品の分析研究は、製品間でメナキノンの量と形が多様であり、その違いが製造に使う主な微生物の種類と関係すると報告している。売り場では隣同士でも、使う菌が違えば成分の内訳も変わりうる。[12]

より直接的な手掛かりは、乳酸菌の遺伝子の働きを調べた実験にある。研究者は乳製品の発酵に使われる乳酸菌の一種について、メナキノンの合成に関係する遺伝子の発現を変えた。その結果、短い側鎖を持つ形が増える条件と、長い側鎖を持つMK-9が増える条件が分かれた。[8]

複数の遺伝子の発現を高めた菌株を牛乳の発酵に使うと、元の菌株に比べ、ビタミンK2の含有量は3倍に増えた。これは製造技術を検討する実験であり、売り場のチーズなら何でも同じように増えるという話ではない。重要なのは、菌の成分合成の仕組みを変えると、同じ牛乳を使っても結果が変わったという点だ。[8]

また、菌が増えることと成分が増えることの関係も、どの形を見るかで具体的になる。プロピオン酸菌という菌を用いたチーズの分析では、MK-9(4H)という形の量が、生きた菌の数やプロピオン酸濃度と相関していた。研究者は、この菌の増加が成分生成に寄与したと考察している。相関という観察結果と、その理由の解釈は分けて読むところである。[18]

同じ研究では、比較したチーズ間でこの形の量に差があり、極めて少ない、あるいは検出されない試料もあった。「菌を使うチーズ」という大きなくくりから、すべて同じ成分量を期待するのは難しい。菌が関わるという説明は、均一さを約束する説明ではなく、違いが生まれる理由を示す説明なのだ。[18]

熟成は関係するが、硬さと脂質だけで順位はつかない

幅広いチーズを比べた成分分析では、一般に硬質チーズは軟質チーズよりメナキノンが豊富だった。ただし実際の含有量は大きく変動し、チーズの種類、熟成期間、脂肪分、生産地域に依存していた。「硬いものに多い傾向」は、この研究での傾向である。[1]

一方、米国の乳製品を調べた研究では、ビタミンKの合計量の平均は、軟質チーズが硬質チーズより高かった。こちらは測定対象に複数の形を含めた合計値であり、分類された製品の集まりも先の研究と同じではない。硬さだけで順位をつけると、分析する製品や成分の範囲によって順番が変わるのだ。[17]

この食い違いを、片方の結果を隠して片付ける必要はない。長鎖メナキノンを中心にした見方と、複数のビタミンKを合計する見方をそろえ、どの地域のどの食品を調べたのかを見る。研究の数字は、食品の分類と測定範囲を伴って初めて使える。[1][17]

脂質についても似た注意が必要だ。米国の乳製品分析では、低脂肪や無脂肪の製品に含まれるビタミンKは、対応する通常の脂肪分の製品の約5〜22%だった。ところが、発酵乳製品を調べた別の研究では、MK-9の量と脂肪分、または酸性度を表すpHとの間に、明確な関係は認められなかった。[17][12]

これは、脂質を手掛かりにする意味が一切ないという話でも、脂質が多ければ必ず多いという話でもない。前者はビタミンKの合計と対応製品の比較、後者は特定の形と多様な発酵製品の比較である。何を測って何と比べたかが違うため、栄養表示の脂質の数字を、別の成分の換算表にはできない。[12][17]

熟成期間も、それだけを切り離して量の保証にはしない。チーズの分析では熟成のほかにも種類や産地などが関係しており、発酵乳製品では菌による形の違いも観察されている。熟成の文字は製品を知る手掛かりとして読み、ビタミンKの含有量そのものとは区別するのがよい。[1][12]

成分の形まで見ると、発酵と熟成をひとつの時計だけで扱えない理由がもう少しはっきりする。発酵乳製品の分析では、MK-9とMK-8は連動したものの、それ以外の形は独立して生産されていた。ある形の多さから、別の形の量まで比例計算することはできない。熟成した食品を比べるときにも、合計の大小と内訳の違いを別々に見たい。[12]

測定の幅にも意味がある。米国の乳製品研究はMK-4からMK-13までを対象とし、オーストラリアの研究はMK-4からMK-10までを対象としていた。どちらも形を分けて調べているが、測る範囲は完全には一致しない。異なる論文の数値を並べる際には、「どちらもビタミンKの研究だから」という理由だけで同じ合計と見なさないことだ。[17][9]

スーパーで選ぶ短い時間に、菌や測定法まで判断するのは難しい。そこで覚えておきたいのは、熟成の長さで勝敗を決めるより、含有量の情報が何を指しているかを見るという順序である。チーズの分析が示す多様さは、食品に上下をつけるためというより、同じ呼び名の中身を丁寧に区別する手掛かりになる。[1][12]

数字で読むチーズのビタミンK

発酵乳製品62試料の分析:K2は検出されないものから1,100ng/gまで幅があった。[12]

同じ分析のMK-9とMK-8:前者の量は後者のおよそ4倍で、両者に相関があった。[12]

米国のプロセスチーズのビタミンK合計:平均98±11μg/100gで、ばらつきは平均の標準誤差として示された。[17]

菌株を改変した牛乳発酵実験:元の菌株と比べてK2含有量が3倍となった。[8]

健康な女性の無作為化試験:参加者66人を対象に、チーズを食べる群の血液指標を比較した。[10]

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宮川涼 Founder

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