ソイプロテインのカルシウムは吸収率も確認、含有量とフィチン酸をどう分けるか

ソイプロテインの適量を考えるとき、カルシウムの表示量だけで吸収や骨への利益まで決めていないだろうか。成人女性の比較試験、乳児用調製乳の試験、発酵豆乳の実験を読み分け、フィチン酸だけに原因を求めず、含有量・溶けやすさ・吸収率・体内への保持を区別する視点を示す。

朝食の支度中、ソイプロテインの袋にあるカルシウム表示で手が止まる。たんぱく質の欄を見たあと、カルシウムの数字にも目が止まる。「大豆にはフィチン酸があるから吸収されない」という話を思い出すと、表示を信じてよいのか、飲む量を増やすべきかまで迷ってしまう。

答えの芯は、含有量と吸収率を分けることだ。閉経後女性の比較試験では、大豆由来と乳由来のたんぱく質でカルシウムの吸収割合に差が認められなかった一方、肉由来から大豆由来へ替えた短期試験では、吸収が低くなる傾向が報告された。大豆という名前だけで、吸収を一律に良いとも悪いとも判定できない。閉経後女性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、対象の違いを考慮する必要がある。[3][5]

フィチン酸を含む植物性食品のミネラル利用は、胃の酸性度やカルシウムの化学的な形、たんぱく質の存在も考える研究課題として扱われてきた。フィチン酸の話を、そのまま手元の粉の吸収率へ置き換えるのは急ぎすぎである。[1] 既存記事「ソイプロテインの夜の置き換えは油も確認、脂質の総量と必須脂肪酸を分けて考える」が扱う食事の脂質の論点はそちらに譲り、ここではカルシウムの数字が何を意味するかに絞る。

既存記事「ソイプロテインは女性の鉄補給にもなる?フィチン酸と成分表示の違いを読む」は鉄の吸収と鉄の状態を、「間食の干しいちじくはカルシウム源になる?果実と葉、含有量と吸収を分けて読む」は植物の部位と加工素材の区別を扱う。ここでは成人の大豆食の比較を中心に、尿への排泄と体内への保持が食い違う点を追う。

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含有量から体内への保持まで、数字の行き先が違う

袋に書かれた量を読むときは、「入っている」と「体が取り込む」を同じ意味で使わないことから始めたい。閉経後女性を対象とした試験は、食事からの吸収割合だけでなく、尿や便に出るカルシウム、骨への取り込みと骨からの放出、体内への保持を調べている。これらを別々に測る必要があるのは、ある指標だけが動いても、ほかの指標は別の方向に動くことがあるからだ。対象は閉経後女性であり、18〜39歳の女性にも同じ変化が起こるかは、この比較だけでは判断できない。[3]

ここでいう吸収割合は、摂取したカルシウムのうち吸収される割合を指す。体内への保持は、吸収の後の出入りも含めて考える指標である。実際、大豆由来のたんぱく質をとったときに尿中のカルシウムが少なくても、保持の有意な改善は認められなかった。[3] 袋の栄養成分表示は買い物の出発点になるが、骨へ残る量を知るには別の測定が必要になる。

溶けやすさも別の段階にある。発酵したカルシウム強化豆乳の実験では、液中で溶けているカルシウムが増えたことから、体が利用しやすくなる可能性が論じられた。ただし、そこで測った溶解性の割合を、人の腸で測った吸収割合と同じ数字として読むことはできない。[6] 「よく溶ける」という言葉は便利だが、何が、どこで溶けたかを添えて初めて比較に使える。

朝のシェーカーを眺めて、だまが消えたことを栄養の利用率の証拠にする必要はない。調理で見える混ざり具合と、研究で測定するカルシウムの溶解性や吸収は、同じ測定ではない。発酵豆乳の実験で調べたのはカルシウムを測定機器で定量した結果であり、飲み物の外見による採点ではなかった。[6] 台所の観察には役割があるが、分析装置の仕事まで背負わせなくてよい。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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成人女性の比較では、尿に少ないことが利益に直結しなかった

閉経後女性15人を対象とした無作為化クロスオーバー試験では、同じ参加者が異なる食事条件を経験した。比較したのは、イソフラボンを多く含む分離大豆たんぱく質、イソフラボンを除いた分離大豆たんぱく質、対照のカゼイン・ホエイたんぱく質である。各食事の介入期間は1か月だった。閉経後女性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[3] 原料の比較に加えて、大豆に含まれる成分の違いも切り分けようとした設計だ。

尿中カルシウム排泄量は、イソフラボンを多く含む大豆条件で85±34mg/日、除いた大豆条件で80±34mg/日、乳由来の対照条件で121±63mg/日だった。大豆条件では対照より有意に少なかったが、カルシウムの吸収割合は処置による影響を受けなかった。[3] 出口のひとつで差があったことと、入口で差があったことは、別々に説明する必要がある。

さらに、イソフラボンを除いた大豆条件では、体内由来の便中カルシウムがほかの条件より多かった。一方、便中カルシウムの総量、骨への取り込みと骨からの放出、体内への保持には有意な影響が認められなかった。イソフラボンによるカルシウム代謝への有意な影響も認められていない。[3] この試験では「尿に出ないぶん、全部が骨に残った」という結論を支持する結果は得られなかった。

この結果を日常へ持ち帰るなら、大豆を選べばカルシウムを必ず節約できる、と宣伝文のように縮めないことが大切だ。反対に、保持が改善しなかったから大豆には栄養上の意味がない、と飛躍する必要もない。この試験が問うたのは、管理された食事条件のもとでカルシウム代謝がどう変わるかである。[3] 自分の朝食の好き嫌いや、続けやすさまで否定する結果ではない。

対象が閉経後女性である点も残して読もう。18〜39歳の女性が朝食に飲む習慣へ、同じ結果をそのまま保証する試験ではない。それでも、吸収率と排泄量と保持を混同しない、という読み方には役立つ。[3] 論文の対象を消してしまうと、慎重に組まれた比較ほど、妙に大きな健康宣言に変わってしまう。

肉との短期比較は、大豆対乳の結果と分けて読む

健康な女性20人を対象とした別の試験では、調整期間のあと、高たんぱく・低たんぱくそれぞれの大豆食と肉食を、順番を無作為にして比較した。調整期間は2週間、実験食の期間は4日間だった。[5] 大豆と乳を比べた試験とは相手も期間も異なるため、同じ問いへの単純な追試として扱うのは適切ではない。

この研究では、高たんぱく食で尿中カルシウムが増えたが、たんぱく質の種類による尿中カルシウムの差は認められなかった。一部の参加者で測った腸からのカルシウム吸収は、大豆食で肉食より低くなる傾向を示し、P値は0.1だった。[5] 低下の方向は報告されているものの、この吸収の比較を明確な有意差が出た結果として紹介することはできない。

著者らは、大豆を肉の代わりにした際のカルシウムの利用性に、急性の低下が起こると解釈している。ただし、読者が受け取るときには、短期の食事変更を調べた試験であることと、吸収の測定が参加者の一部で行われたことも一緒に置いておきたい。[5] 長く飲み続けた場合の骨の状態や、市販の粉の優劣を直接示す結果としては読まない。

大豆対乳の試験で吸収割合が変わらず、大豆対肉の試験で低下傾向が出たことは、都合のよい側だけ残してはいけない組み合わせだ。比較相手、たんぱく質量、参加者、食事管理の期間が違う。[3][5] 研究の見出しを並べて勝敗をつける前に、「何から何へ替えたときの話か」を確認すると、見かけの矛盾をほどきやすくなる。

クロスオーバー試験では、別々の人が別々の食品を選んだ結果を眺めるのではなく、参加者が異なる条件を経験する。閉経後女性の試験で食事を管理したことは、比較する条件を整えて代謝を評価するために意味がある。[3] その反面、仕事の日は朝食が違い、休日は飲み物も変わる、といった暮らしそのものを再現した試験とは区別したい。管理された比較から学ぶことと、自分の食卓に完全に重なることは別である。

健康な女性の短期試験では、カルシウムの調節に関わる副甲状腺ホルモンやカルシトリオールなども測定され、低たんぱく条件や大豆条件で高い値が報告された。[5] 吸収の値だけを切り取るより、体内の調節に関わる指標も調べていたと知ると、研究の目的が見えてくる。粉を何杯にするかを即答する実験というより、食事のたんぱく質源と量を替えたとき、カルシウムの出入りがどう応答するかを探った研究だ。

また、「有意な差がなかった」を「数値が完全に一致した」と訳さないことも大切である。閉経後女性の試験が報告したのは、吸収や保持への有意な影響が認められなかったという結果だ。[3] 反対に、短期試験の吸収低下傾向を、全員に確実に起こる変化とも訳さない。[5] 差の方向と、その差をどこまで確かめられたかを分けておくと、大豆を選ぶ際の不安も期待も、研究の大きさに合わせられる。

数字で読むカルシウムの測定

15人、各1か月:閉経後女性が異なるたんぱく質条件を経験した無作為化クロスオーバー試験である。[3]

85±34mg/日、80±34mg/日、121±63mg/日:大豆の異なる条件と乳由来の対照条件における尿中排泄量であり、吸収量の数字ではない。[3]

20人、4日間:健康な女性の大豆食と肉食を比べた実験期間であり、長期の骨の変化を追った期間ではない。[5]

22±3%対37±4%:乳児用の大豆たんぱく質調製乳で、パームオレインを含む場合と含まない場合の平均カルシウム吸収率である。[4]

89.3%と87.0%:特定の乳酸菌で発酵させた強化豆乳の可溶性カルシウムの割合であり、人の吸収率を表す値ではない。[6]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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