ダイエットで筋トレと有酸素運動の順番に迷う時、脚から腕へ種目を替えれば血流もそのまま移るのだろうか。運動後に残る脚の血管反応、血流量と血管の通りやすさの違い、呼吸に使う筋肉との関係を研究で読む。その場の循環の変化と長期の減量効果を分け、切り替え時に確認したい点を考える。
自転車をこいだあと、腕を使う筋トレへ移る。脚はもう休ませているのだから、血液も次の仕事場へ移ったはず。次のダンベルを手に取る時、そんな図を頭に描くかもしれない。
だが、使う部位を替えることと、先ほど使った部位の血管反応が消えることは同じではない。片脚の動的な運動を調べた実験では、終了後も運動した脚の血管の通りやすさが高まっていた。一方、筋力を発揮する運動では同じ持続反応が認められなかった。[17]
したがって、血液が脚から腕へ順番に引っ越すという図だけで、ダイエットに有利な順番は決められない。ここでは種目を替える瞬間を、局所に残る反応と全身の循環から考える。既存記事「有酸素運動で脚を使うと腕の血流も変わる?休んだ部位の反応を研究で読む」には休んでいる腕の反応を譲り、こちらでは次に動かす部位へ切り替える時の読み方を扱う。

脚から腕へ替えても、脚の反応はすぐには終わらない
血流の話では、運動中と運動後をまず分けたい。Barrett-O’Keefeらは、男女を対象に片脚で膝を伸ばす運動を行い、運動した脚と休ませた脚の反応を調べた。動的運動の実験は9人、筋力を発揮する抵抗運動の実験は12人である。血圧と、超音波を使った大腿動脈の血流を測定している。男女を含む小規模な実験なので、18〜39歳の女性だけでも同じ反応となるかは、この比較だけでは判断できない。[17]
動的運動の終了から60分後、運動した脚の血管コンダクタンスは運動前より27.2±8.4%高かった。血管コンダクタンスとは、血流量を圧との関係で見た、血液の通りやすさを表す指標である。休ませた脚の変化は4.6±3.5%で、運動前との差は統計的に有意ではなかった。活動した脚と休ませた脚で、反応が異なった。[17][19]
ここから分かるのは、動作を終えた局所に反応が残る場合があることだ。「脚を使う種目は終わり」という予定表の区切りと、脚の血管が運動前の状態へ戻る時点は一致しない。運動の終了ボタンは、血管のリセットボタンを兼ねていない。[17]
ただし、27.2%を次の腕の種目への影響に読み替えてはいけない。この実験が示すのは、片脚運動後の脚の反応である。次に腕を動かした時の血流量や、その日の脂肪の減少率を表す数値ではない。種目間の切り替えを考える材料として使い、減量の順位表には使わない。[17]
同じ実験の抵抗運動では、60分後の変化は−4.3±4.7%で、持続的な血管拡張は認められなかった。筋トレも有酸素運動も体を動かす点では同じだが、この実験では、終わった後に残る循環の反応が異なった。脚を疲れさせたという感覚だけで、両方を同じ箱へ入れない方が研究を読みやすい。[17]
研究ではヒスタミン受容体の働きを薬で抑える条件も比較した。ヒスタミン受容体とは、ヒスタミンという物質の信号を受け取る仕組みである。動的運動後の通りやすさの上昇は、この働きを抑えた日に認められなくなった。著者らは、強い筋力の発揮や全身共通の要因より、有酸素運動を行った筋肉の局所要因が関わる可能性を示している。[17]
これは薬を使って運動の効果を調整するための話ではない。似た運動後の温かさでも、背後の仕組みを確かめるには比較条件が必要だという話である。腕へ移る前に脚が温かいからといって、血液が脚に閉じ込められているとも、次の運動が無駄になるとも判断できない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
血流量と血管の通りやすさを混ぜない
水道の蛇口を思い浮かべると、出てくる水の量と、水が通る条件を分けやすい。ただし、体の血管は家庭の配管ほど単純ではない。運動研究で血流量だけでなく血圧も測るのは、流れの変化が血管側の変化なのか、圧の変化と一緒に起きたのかを考えるためである。大腿の血管コンダクタンスを、血流量と平均動脈圧の商として計算した研究もある。[19]
Thurstonらの試験は、この区別のよい例である。余暇に運動する男性11人が、硝酸塩を多く含む飲料と対照の飲料を用いる条件で自転車運動を行った。低い負荷から段階的にこぎ、さらに一定の高い負荷を続けられなくなるまで運動する実験である。条件の順序を釣り合わせ、参加者に条件を知らせず比較している。男性だけの試験なので、18〜39歳の女性へ同じ変化率をそのまま当てはめることはできない。[7]
硝酸塩の条件では、脚の血流量と平均動脈圧がともに約8%低下した。一方で、脚の血管コンダクタンス、酸素の利用、限界までこげた時間には条件間の差がなかった。循環の数値が変わっても、運動を続ける能力の差へそのままつながらない例である。[7]
ここで「血流が少なくなったから悪い」「血管が通りやすいから消費が多い」と急ぐと、別の測定項目を飛び越えてしまう。流れる量、圧、酸素の利用、疲労、続けられる時間は、それぞれ確かめる対象だ。この試験では神経と筋肉の疲労の進み方にも差がなく、血流の変化だけでは結果を言い当てられなかった。[7]
脚から腕へ移る時にも同じ読み方が役立つ。腕の種目が楽だった日を、腕に血液がたくさん来た日と呼ぶ必要はない。手元にあるのが重さ、回数、息の感覚なら、まずその範囲を記録する。測っていない血流の説明を後から足すと、実感と研究の境目が見えなくなる。
この飲料試験は、飲み物の勧めでも順番の比較でもない。血流の数値を読む際の注意点を示す実験として取り上げている。比較しているのは飲料の条件であり、脚から腕へ動作を替える順序ではない。[7]
血流の配分には呼吸に使う筋肉も関わる
自転車のあとで息が弾んでいる時、次の種目を腕と脚の交代だけで考えると、呼吸の仕事が抜ける。Sheelらのレビューは、全身の持久的運動では呼吸に使う筋肉にも酸素の需要が生じ、その負荷を変えると活動する脚の血流が変わる研究を整理している。ほぼ最大の運動では、呼吸筋と運動する筋肉の間に血流配分の競合が見られるという。[13]
交感神経とは、運動時などに循環の調節に関わる神経の仕組みである。このレビューでは、最大に近い運動で脚などへの血流を交感神経が制限することが、血圧を保つ役割を持つ可能性を論じている。最大より低い運動でも、呼吸の負荷を十分に高めた条件では活動する手脚の血流が減る知見を扱っている。[13]
ところが、ここから「息が上がると呼吸筋が脚の血を奪う」と一般化するのも早い。Vogiatzisらの別のレビューでは、訓練された自転車競技者や慢性閉塞性肺疾患の患者で、太ももと肋骨の間の筋肉の血流を同時に調べた研究を整理している。最大強度の運動で、呼吸筋を優先するための太ももの血流低下は認められなかった。競技者や患者の結果を、18〜39歳の女性が日常的に行う運動へそのまま当てはめることはできない。[14]
健康な人の運動で息を吐く流れを実験的に制限した場合には、脚の血流低下と呼吸筋の血流増加が見られた。ただし、その条件では酸素飽和度の低下など大きな生理的な乱れも起きており、著者らは通常の運動へ当てはめられないとしている。呼吸を操作した実験と、普段の自然な呼吸で行う運動は区別する必要がある。[14]
両方のレビューを並べると、血流の配分は運動強度、呼吸の負荷、対象者、測り方によって見え方が変わることが分かる。「競合する」という説明には使える場面があるが、いつでも同じ方向へ血液が移るという規則にはならない。腕と脚の順番だけで全身の流れを描くには、条件が多いのである。[13][14]
血流を比べる相手も重要だ。Parkerらは健康な男性31人、女性32人について、脚の運動時の血流と予測因子を調べた。対象年齢は40〜72歳であり、18〜39歳の女性の反応を直接示す比較ではない。男性では年齢と脚の血流に負の関連があったが、推定した太ももの筋肉量で補正すると、その関連は有意ではなくなった。女性では年齢との関連は認められず、閉経の状態が血管コンダクタンスの予測因子となった。[19]
これは年齢を変える介入ではなく、人による違いの関連を調べた分析である。同じ脚の運動でも、暦の年齢だけで循環の反応を説明できないことを示している。隣で運動する人と息の弾み方が違う時にも、その差を種目の順番だけへ帰す前に、比べる対象が異なると考えたい。集団の関連は、自分の血流の測定値の代わりにはならない。[19]
数字で読む種目交代と血管の反応
9人:片脚の動的運動後の血管反応を調べた実験の参加者数である。[17]
27.2±8.4%:動的運動の60分後、運動した脚で見られた血管コンダクタンスの上昇である。[17]
−4.3±4.7%:抵抗運動の60分後の変化で、持続的な血管拡張は認められなかった。[17]
約8%:男性の自転車試験で、硝酸塩条件における脚血流量と平均動脈圧の低下である。[7]
12週間:高齢の閉経後女性で弾性バンドの筋トレを継続した試験の期間である。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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