筋トレのモチベーションは進捗を隠すと上がる?残りが見えない練習を考える

筋トレのモチベーションを保つため、進捗や残り回数を隠す方法は勧められるのか。不確かな報酬を扱う動物実験、運動を続ける人の調査、記録と支援を組み合わせた研究を区別して読む。見たくない成果の表示と、安全に必要な情報を分け、次の練習で何を確認するかを考える。

練習ノートを開くと、前回と同じ重さ、同じ回数が並んでいる。いっそ記録を閉じたほうが筋トレを続けられるのではないか。着替えを前に、数字を見たくなくなる日がある。

ただし、「残りが分からないほど意欲が上がる」とは決められない。不確かな報酬への引きつけられ方を示したラットの実験はあるが、これは人が筋トレの進捗表示を隠して長く通えるかを試した実験ではない。[9] 運動の記録と個別の支援を組み合わせた人の研究では、平均的な活動量が増えた結果もあり、情報を減らすことだけが継続の答えではない。[15] ラットと心血管疾患のある成人の結果を、18〜39歳の女性の筋トレにそのまま当てはめることはできない。[9][15]

考えたいのは、何が見えないと気になるのかだ。体の変化、今日の実施内容、練習の終わり、安全への疑問を同じ「進捗」に押し込めない。本記事では表示を隠す方法の優劣を決めるのではなく、その方法に期待してよいことと、別に確かめたいことを研究から分ける。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

見えないのは成果か、それとも練習の終わりか

「進捗を隠す」という言葉には、違う場面が重なっている。体重などの成果の画面を開かないこと。今日の練習の達成率を見ないこと。あとどれだけ行うかを知らされないこと。見えていない情報が違えば、本人が困っている内容も違う。まずは、画面を伏せたくなった瞬間を具体的な言葉にしたい。

たとえば「前回と同じ数字を見るのがつらい」なら、気になるのは成果の評価である。「いつ終わるのか分からず落ち着かない」なら、練習の見通しの問題だ。「この動きをしてよいのか分からない」なら、安全や指導の問題になる。これらを一括して、やる気が足りないという話にしない。

運動を続ける難しさが意欲だけに収まらないことは、疾患のある人を対象とした調査からも分かる。背骨などに炎症が起こる体軸性脊椎関節炎の患者117人(平均年齢41.62歳、男性59%)への横断調査では、運動の障壁として痛み27.35%、疲労23.08%、意欲不足14.53%、時間不足10.26%が挙がった。[4] その時点の状況を尋ねた研究であり、原因の強さを順位づけした実験ではない。それでも、続かない理由を意欲だけで説明する見方には収まらない。[4] 男性が多い患者集団なので、18〜39歳の女性の運動の障壁をそのまま表す結果としては使えない。[4]

この患者集団の割合を、そのまま健康な筋トレ初心者の割合として使うことはできない。[4] 日常に持ち帰るなら、数字の転用ではなく、尋ねる項目の広げ方だ。「成果が見えないから行きたくない」のか、「疲れて着替える余裕がない」のか。前者を隠す工夫だけで、後者まで解決したことにしない。

既存記事「女性の筋トレは声かけで力が増す?モチベーションとその場の力発揮を分けて読む」の声かけ、「ダイエットのモチベーションは自分を責めると戻る?失敗後の思いやりを読む」の失敗後の自己評価は、ここでは扱わない。既存記事「ダイエット停滞期のモチベーションは目標で変わる?体重と行動の達成感を読む」には、体重と行動の目標を分ける論点を譲る。ここで扱うのは目標の選び直しそのものではなく、目標までの情報を見せないことに、どんな意味を持たせられるかである。

ここでは、表示を変える前後で何を比べたいのかも考えておきたい。「練習中に数字を何度も確認するのが煩わしい」という相談と、「見えない成果を想像しながら頑張りたい」という相談では、期待する役割が異なる。画面を隠すという操作だけをそろえても、同じ問いにはならない。本人の言葉を具体化することは、方法を選ぶための準備である。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

不確かな報酬に引かれる実験は、筋トレの処方ではない

不確かさが意欲を強めるという話の入口には、報酬を予告する合図を調べる研究がある。雌雄のラットを使った実験では、確実な報酬条件と不確実な報酬条件を設け、報酬を知らせるレバーなどへの反応を調べた。思春期に相当する時期のアルコール曝露や、不安の程度も検討した研究である。[9] 動物の合図への反応から、18〜39歳の女性が筋トレを続ける効果へそのまま当てはめることはできない。[9]

不確実な条件では、報酬の場所へ向かう反応に対して、レバーという合図そのものへ向かう反応の比率が高まった。とくに対照条件や不安の強い動物でその傾向が見られ、報酬が得られなくなる訓練の後にも、合図への注意の偏りがより持続した。[9] 著者らは、報酬の不確かさが報酬を知らせる合図への引力を偏らせる結果として論じている。[9]

ここでの「引かれる」を「健康のために納得して続ける」と読み替えない。合図を気にし続けることと、必要な練習を選んで終えられることは、記事で区別すべき評価である。この研究はギャンブルに似た合図への動機づけを扱っており、運動の継続支援として進捗を隠す方法の有効性を示したものではない。[9]

スマホの画面が気になって何度も開いてしまう場面を想像すると、違いは分かりやすい。気になる回数が増えれば、関心は強そうに見える。しかし、それを筋トレが適切に続いた証拠には数えない。画面を見る、道具を出す、予定の練習をする、次回も戻る。日常の言葉では全部「やる気」で済ませがちだが、記録するなら別の出来事である。

実験で変えたのは、報酬が得られる条件である。[9] これを筋トレに移すときには、何が報酬に当たるのかも曖昧になる。運動後の満足感なのか、記録の更新なのか、体の変化なのか。残り回数の非表示と、報酬が得られる条件の変更は別の操作だ。言葉が似ていることと、比較した条件が一致することは違う。

また、この実験では不安や過去の曝露によって結果の現れ方が異なっていた。[9] 不確かさは誰にも同じように作用する、という読み方も避けたい。ラットの結果を、人の不安の強さを判定する道具にする必要はない。記事から引き出せるのは、不確かさに反応する現象があっても、それだけで表示を隠す指導を正当化できない、という研究間の距離である。

運動の不確かさが、不安として語られる場面もある

運動について分からないことがあるとき、その内容を聞く価値がある。中国で妊娠糖尿病のある妊婦16人に面接した質的研究では、運動の安全性が不確かなことに伴う否定的な感情が、継続を妨げる要因として挙げられた。[2] 質的研究とは、体験や語りを分析して問題の構造を探る研究である。妊娠糖尿病という条件があるため、18〜39歳の女性全般にそのまま当てはめず、運動の安全性を心配する場面として読む。[2]

研究では、運動習慣や基礎の不足、不快な身体症状への対処の難しさ、知識や技能の不足も挙げられた。医療者からの情報や個別の指導、仲間や地域からの支援にも課題があり、家族の支援は機会に関わる要因として整理されている。[2] つまり、本人の中にある意欲だけでなく、できる条件や支えてくれる環境まで含めて運動を捉えている。[2]

この研究の安全への不安を、成果が伸びるかどうかの不安と同一視することはできない。ただ、「分からないことを増やせば楽しくなる」と一律に扱えない具体例にはなる。[2] 本人が答えを必要としている場面で、あえて情報を伏せることを、面白い仕掛けとして押しつけない姿勢が必要だ。

たとえば指導者に「記録を見ると気が重い」と伝えるときも、何を知りたいかを添える。過去の成績と毎回比べる必要があるのか。今日はどの動きを予定しているのか。体調の変化を誰に伝えるのか。相談したい内容が違えば、見せ方の相談と健康状態の相談を別々に進められる。これは研究で検証された会話の手順ではなく、問いを混ぜないための整理である。

妊婦への面接で整理されたのは、能力、機会、動機という側面だった。[2] たとえば「やる意味は分かっているが、体調に合わせた方法が分からない」という悩みなら、期待する成果を大きく見せても問いへの返事にはならない。これは想定上の相談例だが、情報の不足を気持ちの不足と取り違えないために役立つ。何を知れば次の判断ができるかまで、相談の言葉に含めたい。

数字で読む不確かさと運動の支援

16人:妊娠糖尿病のある妊婦への面接。安全性への不確かさが継続の障壁として語られた。[2]

117人:体軸性脊椎関節炎の患者調査。一般の筋トレ参加者を代表する集団ではない。[4]

14.53%:同調査で意欲不足を運動の障壁に挙げた割合。痛みや疲労なども別に挙がった。[4]

313人:短い運動を分けて行う介入を統合した研究の参加者数。全体の効果は小さく、根拠の確実性は低かった。[13]

1,062.8歩/日:機器を用いた心臓リハビリ支援の統合結果で、対照群に対する平均差。個人への歩数の指示ではない。[15]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約