20代男性や大学生のダイエットは、体重を減らしたい気持ちだけでは捉えきれない。筋肉を増やしたい願いと食事の変更、健康的に食べたい気持ち、動画を見た後の不満を研究から読む。行動の割合と診断の違いを確かめ、食事や運動が生活を圧迫するときに何を相談するかを考える。
学食の定食を前に、「腹まわりはすっきりさせたい。でも、肩や胸は大きくしたい」と考える。検索窓に入れる言葉はダイエットでも、望んでいる変化は体重を減らすことだけだろうか。
若い男性の体への不満には、筋肉を増やしたい気持ちが含まれる。男性の摂食障害を扱うレビューも、細さを目指す食行動だけでなく、筋肉を大きくする方向の食行動に目を向ける必要を述べている。食事量だけで悩みの有無を判断すると、この方向を見落とす。少年・若い男性を扱う知見であり、18〜39歳の女性の悩みを同じ特徴だけで捉えることはできない。[4]
筋肉をつけたい願いが、そのまま病気を意味するわけでもない。研究で数えた行動、質問票で見つかった可能性、面接で評価された摂食障害は分けて読む必要がある。本記事の問いは、どれだけ食べれば大きくなるかではなく、その目標と付き合う食生活が自分の暮らしに収まっているか、である。[2][14]

男性のダイエットには「大きくなりたい」もある
筋肉志向とは、筋肉をもっと発達させたいという気持ちや、それに向かう行動を指す。少年や若い男性の摂食障害を整理したレビューでは、筋肉を増やす目標や行動は珍しいものではなく、女性で典型とされてきた現れ方と異なる場合があると論じられている。体重を減らしたかどうかだけを尋ねると、拾いきれない悩みがあるという視点だ。少年・若い男性が対象で、18〜39歳の女性に同じ現れ方をそのまま当てはめる根拠にはならない。[4]
たとえば「食事を変えた」と聞いても、量を減らしたのか、体を大きくするために量や内容を変えたのかで意味が違う。米国の前向きコホート研究は、体重や筋肉を増やすための食べ方の変更、同じ目的でのサプリメント利用、筋肉増強に関わるステロイドの使用を、筋肉志向の問題のある食行動として調べた。前向きコホートとは、最初に記録した人たちを後から追い、その後の状態との関連を見る研究である。[2]
この米国研究は思春期から若年成人期の男女を追ったもので、18〜39歳の女性全体へ結果を広げるには対象年齢の違いがある。[2]
この定義には幅の異なる行動が含まれる。「食べ方を変えた」と「薬物を使った」を同じ行為として受け取ってはいけない。一方、食事を増やす方向も調査対象に含めたことは、若い男性の体型の悩みを考えるうえで大切だ。減量中かどうかだけでは、食事と体の関係を説明し尽くせない。[2]
痩せたい気持ちと筋肉を増やしたい気持ちは、併せて考える必要がある。メキシコ市の男子大学新入生570人を対象にした質問票の検証では、細さを求める要素と筋肉を求める要素が別々に抽出された。これは、男性の食行動を測る際に両方を考える意義を示す結果であり、すべての男性が同じ理想像を持つという意味ではない。男子大学新入生の尺度検証なので、18〜39歳の女性にも同じ尺度が適するかは別に確かめる必要がある。[10]
「細くなりたいのか、大きくなりたいのか、どちらかにして」と片づける必要はない。腹まわりと上半身で望む変化が違う、と自分の言葉で整理する余地がある。目標の矛盾を責めるより、何を変えたくて食べ方を選んでいるのかを聞くほうが、筋肉への願いも扱う評価の考え方に沿っている。[4][10]
体の大きさに応じた必要量は、隣の記事「20代男性のダイエットは体重比例で食べる?体の大きさと必要量を読み解く」に譲る。ここでは食事の正しい量を計算する前に、普段の食事に何を求めているかを見ていく。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
男性22%は「摂食障害の診断率」ではない
米国の全国を代表する縦断データを使った研究では、男女14,891人について、思春期から若年成人期への変化を調べた。最初の調査時は11〜18歳、7年後は18〜24歳であり、後の調査で筋肉志向の食行動のいずれかを報告した割合は男性22%、女性5%だった。女性も含むが、18〜39歳の女性全体の割合を示す研究ではない。[2]
この数字を「若い男性の22%が摂食障害」と読み替えるのは誤りだ。集計されたのは研究で定義した行動の有無であり、医師による診断の割合ではない。また、複数の行動をまとめた指標なので、この割合から特定のサプリメントや薬物の使用率を取り出すこともできない。数字の大きさより、何を数えた数字かを先に確かめたい。[2]
思春期に自分を低体重だと感じていたこと、体重を増やす目的で運動していたことなどは、後の筋肉志向の食行動と関連していた。男性ではウエイトトレーニングへの参加なども関連する要因として挙がった。ただし観察研究なので、運動と食行動の因果関係は確定できない。先にあった体への思いや、ほかの生活条件も含む関連として読む結果だ。[2]
追跡期間があることと、原因を確定できることは別である。体を大きくしたい人が運動を始める場合もあれば、食事や運動の両方に同じ理想像が関わる場合も考えられる。この研究から、筋トレをやめれば予防できるという処方を作ることはできない。[2]
診断と尺度の違いは、ブエノスアイレスの男子大学生472人を対象にした横断研究でも分かる。主に18〜28歳の学生を質問票で調べ、該当者などへの臨床面接を組み合わせた研究で、摂食障害の有病率は1.9%だった。一方、筋肉に関する尺度の基準で筋肉醜形症の可能性があるとされたのは6.99%だった。主に18〜28歳の男性の結果で、18〜39歳の女性の有病率や尺度の基準へそのまま適用はできない。[14]
この研究で扱われた筋肉醜形症の6.99%は、筋肉志向を測る尺度に基づく「可能性」の数字である。面接による摂食障害の評価と同じものではない。この差をもって、片方の診断を誤りと判断することはできない。調べている問題と見つけ方が違うためだ。[14]
米国研究の最初の調査は1994〜1995年、追跡は2001〜2002年に行われた。論文が公表された年と、参加者が生活していた時代は一致しない。現在の動画サービスを使う大学生の割合を直接測った数字として、この結果を紹介することもできない。長く追った研究だからこそ分かる関連と、現在の生活への当てはめは分けて考える必要がある。[2]
さらに、米国の追跡研究とアルゼンチンの大学生調査は、国も時期も対象も異なる。割合を並べて増減を語ることや、日本の大学の教室にそのまま当てはめることは避けたい。得られる見通しは、男性の食生活を理解するには、減量の有無だけでなく筋肉への思いも尋ねる必要がある、という点である。[2][4][14]
「健康的に食べたい」と筋肉への願いは重なる
食事へのこだわりが「痩せたい」ではなく「健康に気をつけたい」という言葉で表れることもある。平均年齢19.84歳の男子大学生103人を対象にしたオンライン調査は、オルトレキシアの症状を調べた。これは健康的な食事への関心から生じる、制限的で問題のある食行動を扱う概念である。若い男子大学生の調査であり、18〜39歳の女性に関連の強さまでそのまま当てはめることはできない。[9]
この研究では、症状が強いことと、ほかの食行動の問題、運動への依存、細い体や運動的な体を理想として取り込むこと、筋肉志向の行動面との間に正の関連があった。正の関連とは、一方が高い人ほど他方も高い傾向があるという意味だ。健康を意識することが原因で問題が起きたと証明した研究ではない。[9]
ここで分けたいのは、食べ物に気を配ることと、気を配るために暮らしが狭くなることだ。友人と食事に行く場面を想像してみる。「今日はこれを食べたい」と選ぶことと、「決めたもの以外は選べない」と感じることでは、同じ注文でも本人の負担は違う。この場面だけで診断はできないが、相談では食材名に加えて、選ぶときの気持ちを言葉にする手がかりになる。[4][9]
研究の著者らは、男性の理想像の中で健康と筋肉のある外見が重ねられる可能性にも言及している。「筋肉が目立つ写真だから健康的」とは、写真だけでは判断できない。逆に、筋肉を目標にしているという理由だけで、その人の食事を問題扱いすることもできない。[9]
食事にこだわる理由は本人に聞かなければ分からない。栄養に関心があるのか、体の評価が気になるのか、予定が変わることが苦しいのか。研究で関連していた要素を、誰かを分類する札ではなく、会話で確かめる入り口にしたい。食材の良し悪しを採点し続けるより、自分が何を守ろうとしているかを考える問いである。[4][9]
数字で読む筋肉への願いと食行動
14,891人:思春期から若年成人期までを調べた米国の縦断研究の対象人数だ。[2]
7年:その研究の追跡期間。先の時点との関連を見た長さであり、原因の証明ではない。[2]
男性22%・女性5%:追跡時に筋肉志向の食行動を報告した割合で、診断率ではない。[2]
472人:ブエノスアイレスで質問票と臨床面接を組み合わせた男子大学生調査の対象だ。[14]
1.9%と6.99%:同調査の摂食障害有病率と、尺度による筋肉醜形症の可能性の割合で、同じ指標ではない。[14]
282人:動画内容への短期的な反応を調べた男性の無作為割り付け実験の対象だ。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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