ダイエットの筋トレ後に食べすぎた日、一度の食欲で体質を決める前の確認

ダイエット中、筋トレや有酸素運動の後に食べすぎた経験だけで、運動すると食欲が増える体質と決めてよいのか。同じ人の反応を繰り返し測る研究を軸に、空腹感と実際の食事量、運動時刻と食事条件、集団の平均と個人の違いを整理し、次の運動日に比較するための記録の残し方を考える。

筋トレから帰った夜、ご飯をおかわりした。翌朝には「自分は運動すると食べすぎる体質らしい」という結論ができている。昨日の茶碗は覚えているが、その前の昼食の時刻は曖昧なままだ。

同じ条件で測った食事量や食欲には再現性を認めた研究がある。ただし、それは男児の糖飲料後の食事や短時間運動後の食欲を調べたものだ。成人の筋トレ後に起きた一度の食べすぎから、固定した反応を判定する根拠にはならない。男児の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[2]

ここで扱うのは、食欲を我慢する方法ではなく、昨日と次回を比較できるかという問いである。既存記事「運動すると食欲は増えるのか 補償摂食の研究で読む空腹とご褒美の分かれ道」に全般の論点を譲り、こちらでは同じ人の反応をどう確かめるかに絞る。痩せることを全員の目標にはしない。

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同じ人の「また食べた」は、同じ反応なのか

再現性とは、条件をそろえて測り直したときに、どのくらい似た結果が得られるかという見方だ。男児を対象とした研究では、標準化した朝食や飲料を用い、別の日に食事量と主観的な食欲を測り直している。日常の記憶を並べるより、比較の土台をそろえた設計である。18〜39歳の女性には、この測り方と対象の違いを分けて考える必要がある。[2]

対象は9〜14歳の男児11人だった。別々の週末の朝に、標準化した朝食の2時間後、ブドウ糖50 gを含む飲料を飲み、その30分後のピザの摂取量を測った。18〜39歳の女性に同じ摂取量や再現性を見込むための試験ではない。平均摂取量は初日925 kcal、次の日988 kcalで、食事量には高い再現性が認められた。[2]

ここで見落としたくないのは、再現性が高くても平均値には違いが残る点だ。測り直して似た傾向があることと、毎回同じ量を食べることは別である。同じ研究の食事量の級内相関係数は0.96だったが、反復測定の一致の幅を示す再現性係数は259 kcalだった。[2]

級内相関係数は、繰り返した測定で参加者同士の違いがどれだけ安定して捉えられるかを見る指標である。一方、再現性係数は測り直した値のずれの大きさに目を向けるための数字だ。高い相関だけを見て「自分の食事量はほぼ変動しない」と読むと、研究の意味が変わってしまう。[2]

この研究では、短時間運動後の主観的な食欲も別の平日に測り直され、両日で似た増加が見られた。ただし、ピザの摂取量の再現性は糖飲料後の結果であり、運動後の食事量の再現性と入れ替えてはいけない。食べた量を測った場面と、食欲を尋ねた場面を分けて読む必要がある。[2]

だから、昨日と今日の夕食が多かったという記憶だけでは、研究と同じ確認にはならない。比較したいのが空腹感なのか、食卓で食べた量なのか、帰宅途中の飲食まで含む量なのかを先に決める。ノートの見出しが「食べすぎ」だけだと、中に違う出来事が同居する。

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空腹感と食事量は、別々に測る

肥満のある男性21人を対象にした無作為化クロスオーバー試験では、同じ参加者が異なる複合運動を経験した。中強度の筋力運動と有酸素運動の組み合わせを、高強度の機能的運動と有酸素運動の組み合わせと比較した研究である。運動の順序などの影響を偏らせないため、条件を経験する順番を無作為にした。男性の肥満者を対象とした結果であり、18〜39歳の女性の反応にそのまま当てはめることはできない。[4]

運動の1時間後、食欲に関わる腸由来のホルモンであるペプチドYYの濃度は、筋力運動を含む条件で高く、条件間の比は1.69、95%信頼区間は1.26〜2.27だった。ところが満腹感などの主観的な反応は単純に同じ向きには動かず、当日と翌日のエネルギー摂取量には条件間の差が認められなかった。[4]

血液の数字、本人が感じる空腹、実際に食べる量は、どれかを知れば残りも分かる関係ではない。この試験は、運動同士の比較であり、運動しない場合と比べて食事量が変わらなかったという結果でもない。比較相手を取り違えないことが、結果を生活へ持ち帰る前提になる。[4]

運動後の飲料を調べた系統的レビューとメタ分析でも、このずれが見える。健康な成人を対象とする12研究、計140人を取り上げ、エネルギー摂取量については10研究、118人を統合した。牛乳や牛乳を基にした飲料は、炭水化物飲料と比べて摂取量が平均72.73 kcal少なく、95%信頼区間は141.69〜3.77 kcal少ない範囲だった。[6]

一方、主観的な食欲については明確な差がないか、軽い抑制にとどまる結果が見られた。飲料による食事量の差を、必ず本人にも分かる空腹の差として感じ取れるとは限らない。この比較は飲料同士であり、飲まない場合との比較や、誰にでも同じ飲料を勧める結論には置き換えられない。[6]

次の運動日には「空腹が強かった」と「ご飯をおかわりした」を別の文で残してみる。空腹が強くても食事量が普段と変わらない日と、空腹はそれほどでもないのに量が多かった日を、同じ失敗の欄に押し込まないためだ。これは体質を採点する作業ではなく、観察した事実の整理である。

時刻と食事の間隔が違えば、比較する条件も違う

夕方の筋トレと休日の朝のランニングを比べ、「筋トレの方が食べたくなる」と感じたとする。しかし種目と一緒に、運動する時刻や直前の食事も変わっている。時刻と栄養状態を組み合わせた試験では、同じ人でも条件によって食事量に差が出ている。[8]

健康な若い成人35人の無作為化クロスオーバー試験では、朝または夕方に、食事を取らない時間を設けて30分のトレッドミル走を行った。同じ12時間の絶食後でも、夕方は朝より直後の食事の摂取量が平均400 kcal多く、95%信頼区間は286〜515 kcalだった。24時間の摂取量の差は平均547 kcalで、95%信頼区間は335〜759 kcalだった。[8]

夕方の絶食時間を12時間から6時間へ短くすると、直後の摂取量の差は小さくなったが、24時間の摂取量については同じようには軽減されなかった。また、一部の参加者が行った食後の運動では、事前に食べることで脂肪の利用は抑えられたものの、食事量や食欲の抑制には結び付かなかった。[8]

この条件を、自宅で再現する必要はない。長く食べずに運動する実験を勧める話でもない。持ち帰りたいのは、同じ運動時間でも、朝と夕方、食事からの間隔、直後の一食とその後の一日では、比較しているものが変わるという点だ。運動種目だけが記録されていても、条件の全体は見えない。[8]

夜の帰宅後に食事が多かったなら、「運動後だから」の前に、その日の食事と運動の並びを書いてみる。昼食、移動、運動、夕食を順番に置けばよい。中央線の車内で昨日を思い出すとき、種目名より昼食の時刻の方が難問かもしれない。記憶の難しさを、意志の弱さに翻訳する必要はない。

比較を始めるときは、種目を変えた日と、時刻を変えた日を区別しておきたい。たとえば休日の朝は走り、平日の夜は筋トレをする生活なら、両者の夕食の違いだけで筋トレ固有の反応とは決められない。研究でも、運動の組み合わせを比べた試験と、走運動の時刻を比べた試験では、調べた条件が違っている。[4][8]

「昨日は運動した、今日はしなかった」という比較にも、運動以外の予定が入り込む。自分のメモを読む際には、同じ曜日だったか、食事を取る場所が同じだったかなど、事実として分かる違いを余白に残せばよい。これらを食欲の原因と決めるのではなく、同じ条件だと思い込まないために書くのである。

食事の内容を変えた日も、その変更を消さずに残す。飲料同士の比較でも摂取量に差が見られたメタ分析があるため、運動以外の飲食条件も比較の一部となる。ただし、その平均差を自分の食事から差し引く計算には使わない。研究の平均は、次の夕食の予算表ではない。[6]

数字で読む食欲の比較

男児11人:糖飲料後の食事量などの再現性を調べた対象。成人女性の筋トレ試験ではない。[2]

0.96:糖飲料後の食事量の級内相関係数。毎回同じ摂取量だったという意味ではない。[2]

21人:異なる複合運動を比べた肥満のある男性の人数。当日・翌日の摂取量に条件間差はなかった。[4]

400 kcal:12時間絶食後の夕方と朝の走運動を比べた直後の摂取量の平均差。個人の予測値ではない。[8]

6研究:朝と午後・夕方の一日の摂取量を統合したメタ分析。有意な差は認められなかった。[20]

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宮川涼 Founder

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