ダイエットのチーズは脂質表示から引き算できる?カルシウムと便への排出を読む

ダイエット中のチーズは、カルシウムがあるから脂質を吸収しにくいのか。便への脂肪排出が増えた短期試験と、増えなかった長期試験を比較する。脂質表示から排出分を引けない理由、牛乳やバターとの比較条件、血中脂質と体重の違いをたどり、研究の数字を日々の食べ方に置き直す。

夕食に添えるチーズを切る前に、パッケージを裏返す。脂質の欄を見て戻しかけたところに、「カルシウムが脂を便へ出す」という話を思い出す。表示された脂質から、いくらか差し引いて考えてよいのだろうか。

答えの芯は、便への脂肪排出が増える条件はあるが、チーズの表示から一定量を引く計算はできない、である。健康な若い男性の短期試験では排出が増えた一方、過体重・肥満の成人を対象とした長期試験では、乳製品を多くしても排出や減量に上乗せ効果はなかった。対象の異なる両試験だけで、18〜39歳の女性にも同じ排出量や減量結果が得られるとは判断できない。[3][2]

既存記事「チーズと体重の意外な関係 脂の多い食品が肥満と結びつかない研究を読む」には体重との関係を譲る。また、「ダイエット中のチーズは製法も確認、酸と酵素で変わるカルシウムと固さの読み方」には製造中のカルシウムの変化を譲る。ここで追うのは、口に入った脂肪と便へ出た脂肪の間だ。食品の表示、食事全体の条件、実際に測った結果を分けると、チーズを悪者にも減量の道具にもせずに読める。

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脂質の量と、体に入るまでの過程は別である

チーズの研究で登場する「食品マトリクス」とは、成分が組み合わさった食品の構造やまとまりを指す言葉である。近年のレビューは、チーズを飽和脂肪酸やカルシウムの量だけで捉えず、その組み合わせを考える必要性を論じている。カルシウムによる脂肪吸収の低下も、候補となる仕組みの一つだ。[1]

ここでいう仕組みは、食べた脂肪がすべて体脂肪になる、という単純な見方を修正する材料である。同時に、カルシウムがある食品なら脂質を数えなくてよい、という許可証でもない。レビューも長期のしっかりした試験による因果の確認を求めている。仕組みとしてもっともらしい話と、日常の食事で起こる効果の大きさは分けて読む必要がある。[1]

便へ出る脂肪を「糞便脂肪」と呼ぶ。名前は硬いが、研究で便を集めて測る脂肪のことである。カルシウムと脂肪酸が腸の中で結びつき、便へ出やすくなる仕組みなどが提案されてきた。脂肪酸とは脂肪を構成する成分だ。この仮説を調べた試験では、便の脂肪だけでなく、胆汁酸という消化に関わる成分の排出も測っている。[8]

食品の裏側にあるのは成分の情報で、便を集めた結果ではない。研究で排出が増えたとしても、それは決められた食事を続けた人たちの比較結果である。売り場のチーズの脂質欄に、その人の排出量まで印刷されてはいない。この区別を置いてから、実際の試験へ進みたい。[3][8]

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チーズを食べた短期試験では、何が増えたのか

健康な若い男性15人が参加した無作為化クロスオーバー試験では、同じ人が順序を無作為に決めて、異なる食事をそれぞれ2週間続けた。比べたのは乳製品を含まない対照食、牛乳を使った食事、半硬質の牛乳チーズを使った食事である。エネルギー量をそろえ、脂肪の量と組成も近づけていた。男性だけの比較なので、18〜39歳の女性に同じ排出量をそのまま当てはめることはできない。[3]

カルシウムは対照食で約500 mg/日、牛乳食とチーズ食で1700 mg/日だった。便は各期間のうち5日間集めた。便への脂肪排出は対照食で3.9 g/日、牛乳食で5.2 g/日、チーズ食で5.7 g/日となり、乳製品を使った食事で多かった。一方、牛乳とチーズの効果には差がなかった。[3]

ここで大切なのは、チーズを自由に追加した比較ではない点だ。エネルギー量や脂肪条件をそろえた食事同士で、乳製品とカルシウムの条件が変わっている。夕食をそのままにしてチーズだけ足した生活は、この比較と同じにはならない。試験の献立全体で生じた排出を、追加した一切れの性質だけへ移すことはできない。[3]

また、5.7 g/日という値は、チーズ由来の脂肪だけを指す数値ではなく、その食事期間に測った便への脂肪排出である。対照食でも便に脂肪は出ていた。乳製品を食べた日にはじめて排出が始まる、という構図ではない。大きな数字だけを抜き出すと、この出発点が消えてしまう。[3]

この試験では、飽和脂肪酸による総コレステロールとLDLコレステロールの上昇も、対照食より乳製品の食事で小さかった。LDLは血中の脂質を運ぶ粒子の一種に関わる指標である。ただし、血中の指標が変わることと、体重が減ることは評価を分ける必要がある。便の結果、血液の結果、体重の結果を、同じ意味の「効いた」にまとめずに読みたい。[3][2]

排出が増える幅は、カルシウム量だけで決まらない

低脂肪乳製品を使った11人の無作為化クロスオーバー試験では、カルシウム700 mg/日と2300 mg/日の食事を、それぞれ7日間比べた。便への脂肪排出は5.4 g/日から11.5 g/日へ増え、便へのエネルギー排出もほぼ対応して増加した。一方、胆汁酸の排出は変わらなかった。[8]

この結果から言えるのは、この条件で脂肪排出が増えたということだ。「胆汁酸も一緒に多く出たから」という説明は、この試験の結果とは合わない。仕組みの候補を挙げたあと、実際に測定して変わった部分と変わらなかった部分を確認する。そこまで読むと、カルシウムの話は単なる栄養のうわさから離れる。[8]

別の無作為化クロスオーバー試験は、10人に各1週間、エネルギー量をそろえた食事をとってもらった。カルシウム500 mgでたんぱく質がエネルギーの15%を占める食事、カルシウム1800 mgでたんぱく質15%の食事、カルシウム1800 mgでたんぱく質23%の食事を比較したのである。[13]

便への脂肪排出は、高カルシウムで通常のたんぱく質量の食事では14.2 g/日だった。低カルシウム食では6.0 g/日、高カルシウム・高たんぱく質食では5.9 g/日である。同じ高カルシウムという呼び名でも、他の条件が違えば同じ結果にはならなかった。なお、この試験でカルシウム量は24時間のエネルギー消費や脂肪の酸化に影響しなかった。[13]

脂肪の酸化とは、脂肪をエネルギーとして使う過程を指す。便へ出すことと体内で使うことは異なる。この試験は、排出が増えたから脂肪がよく燃えた、と言い換えてはいけない例だ。食事のたんぱく質を減らす勧めとして読むのも早い。少人数の短期比較が示したのは、食事の組み合わせを無視してカルシウムだけの効果を固定できない、という論点である。[13]

乳製品とそれ以外のカルシウムを比較した健康な成人34人の試験もある。エネルギーを制限した12週間の無作為化クロスオーバー試験で、500 mg/日より1500 mg/日の条件で、摂取脂肪に対する便への脂肪排出の割合が高かった。摂取脂肪に対する排出割合の差は平均3.0パーセントポイントで、95%信頼区間は2.3〜3.7パーセントポイントだった。カルシウムの由来や乳糖を消化する能力によらない結果だった。18〜39歳の女性に限定した結果としては扱えず、自分の排出割合へ直接置き換えることはできない。研究ごとに比べる相手も、食事の条件も異なるのである。[6]

試験の献立にあるカルシウム量は、チーズだけの量と読み違えないようにしたい。牛乳食とチーズ食でそろえたのは食事のカルシウム条件であり、両者の効果には差がなかった。この結果から、チーズが牛乳より排出に優れているという順位はつけられない。好きな食品を選ぶことと、研究が認めた差を確認することは、別々に扱える。[3]

さらに、便を集めて測った日数にも意味がある。日々の排出をまとめて比較することで、研究は食事条件による違いを調べている。自宅で便の見た目や出た量を見ても、それは研究の脂肪測定と同じではない。出た感じがしたからチーズの脂質を差し引く、という使い方は避けたい。食事を記録するなら、排出を推定するより、何を食べたかを残すほうが比較の出発点を保てる。[3][8]

数字で読むチーズと脂肪排出

15人:チーズ食と牛乳食、対照食を比べた健康な若い男性の人数である。[3]

3.9、5.2、5.7 g/日:順に対照食、牛乳食、チーズ食で測った便への脂肪排出である。[3]

7日間:低脂肪乳製品由来の高カルシウム食で排出増加を調べた試験の、各食事の期間である。[8]

14.2対5.9 g/日:カルシウム量が同じ高い条件でも、たんぱく質条件が違う食事の排出量は異なった。[13]

24週間:乳製品を多くすることが減量や脂肪排出の上乗せになるかを調べた成人の試験期間である。[2]

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宮川涼 Founder

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