肩関節の外旋可動域は片方向だけで比べる?内旋との合計で左右差を読み直す

肩を外へ回す角度が左右で違うとき、外旋だけで硬い側を決めてよいのか。内旋と外旋を足した総回旋可動域を使い、競泳・テニス・野球の研究から左右差を読み直す。合計に残すべき内訳、運動前後の変化、筋力や痛みとの違いまで整理し、競技者の角度を日常の合格基準にしない見方を考える。

袖に腕を通す前、鏡の前で肩を外へ回してみる。右は外へ開きやすいのに、左は少し手前で止まる。その場で「左肩が硬い」と決めたくなるが、外へ回る範囲だけでは、肩の回旋全体の左右差は分からない。エリートテニス選手の研究では、利き側は外旋が大きい一方、内旋と内外の合計は小さかった。競技者の結果なので、18〜39歳の女性の日常動作へそのまま当てはめることはできない。[3]

見たいのは、外旋の広さに加えて、反対へ回る内旋と、それらを足した総回旋可動域である。この合計はトータルアークとも呼ばれる。ただし合計が大きければ筋力も高い、痛みもない、という採点表ではない。可動域と筋力は別に調べる必要があることを示す研究もある。[3][6]

測る位置の話は既存記事「肩関節の柔軟性チェックは腕を横に開く?外旋角度を比べる前にそろえたい測る位置」に譲る。ここで扱うのは、測定された外旋と内旋をどう並べるかだ。右と左を比べる前に、まず片方の肩の内訳を見たい。検索窓に入れた「外旋」の隣に、「内旋」を書くところから始めよう。

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外旋の数字に、内旋と合計を添える

肩の回旋は、上腕を軸に外へ回す外旋と、内へ回す内旋に分けて測られる。テニス選手を調べた研究では、他者が動かして測る他動可動域について、内旋と外旋の和を総回旋可動域と定義している。自分で動かしたときの見た目と、他動で測った角度は、記録の欄を分けておきたい。[3]

足し算の利点は、外へ大きく回る肩が、内へも大きく回るのかを見失いにくい点にある。外旋の左右差だけを取り出すと、同じ肩の内旋の小ささが隠れる。実際に、エリートテニス選手では外旋が大きい利き側で、内旋と合計が小さいという組み合わせが観察されている。[3]

一方、足した結果だけを残すと、今度は動く方向が消える。左右の合計を比べる欄の横に、内旋と外旋の欄も残すのが、この定義を日常の記録に使う方法となる。合計は内訳を捨てるための数字ではない。方向別の値に、全体を見渡す窓を加えるものだ。[3]

記録を見返す場面を考えると分かりやすい。「右のほうがよく回る」という一言だけでは、次に同じ動きを確認できない。外旋なのか内旋なのか、あるいは合計なのかを書けば、比較の対象が定まる。肩の柔らかさという大きな言葉を、実際に測った項目へ戻す作業である。

記録を並べる順番にも意味がある。まず右の外旋と左の外旋、次に右の内旋と左の内旋を比べ、その後に左右の合計を見る。テニス研究のように、外旋と内旋で大小が逆になる場合を、この並べ方なら見落としにくい。最初から合計だけを眺めるより、どちらの方向が差に関係するかを説明しやすくなる。[3]

さらに、左右差と前回からの変化を別の問いとして扱いたい。左右の比較は同じ時点の反対側を相手にし、前後の比較は過去の同じ肩を相手にする。痛み経験別のテニス研究と、試合前後のテニス研究でも、比較している相手が違う。どちらも角度を扱うが、答えようとしている問いまで同じではない。[3][8]

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両腕を使う競泳でも、左右差は観察される

左右差を、片腕を多く使う競技だけの話と考えるのも早い。競泳選手を対象にした比較研究では、男女と年代に分けて肩の回旋を調べ、多くの区分で利き側の外旋が大きかった。一方、内旋や総回旋可動域は、性別・年代別の比較で非利き側のほうが大きかった。[1]

この研究の対象は、年齢が12〜61歳の競泳選手144人である。若年群はほかの年代より総回旋可動域が大きく、若年群と高校生群では、大学生群やマスターズ群より、肩甲骨の動きを含めた内旋も大きかった。競技名が同じでも、年代を混ぜた平均だけでは自分との比較が粗くなる。男女の競泳選手を広い年代で調べた結果であり、18〜39歳の女性一般の基準値としては使えない。[1]

もうひとつ注意したいのは、何を合計したかである。この競泳研究では、肩関節だけの内旋と、肩甲骨が前へ動く分を含む内旋を分け、総回旋可動域には後者を用いている。テニス研究の内外旋の和と並べる際も、同じ名前だから同じ測り方だと決めつけないことが大切だ。[1][3]

たとえば以前の記録に「内旋」とだけ書いてあれば、肩甲骨の動きも含めた値かどうかを確認したい。足し算自体が正しくても、足した中身が違えば比較の意味は変わる。家計簿なら交通費込みかどうかを気にするのに、肩の角度になると合計だけが一人歩きしやすい。

この結果から、左右差があるだけで異常とは決められない。反対に、競泳選手にも差があるから自分の差は放置してよい、ともならない。観察された競技者の特徴として読み、自分の症状や困っている動作は別に伝える。研究の集団と目の前の肩をつなぐには、その順序が必要である。[1]

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テニスでは、痛みの経験と同じ特徴を分けて読む

エリートテニス選手58人を、肩の痛みの経験がある20人と、ない38人に分けた比較では、どちらの群でも利き側の内旋と総回旋可動域が小さく、外旋は大きかった。つまり、この回旋の組み合わせは、痛みを経験した選手だけに現れた特徴ではなかった。対象は競技者であり、18〜39歳の女性一般にも同じ組み合わせがあるかは、この比較からは判断できない。[3]

群を分けたときに違っていたのは、利き側の外旋筋力と、外旋筋力を内旋筋力と比べた比率である。これらは痛みの経験がある群で低かった。一方、サーブ速度に群間の有意差はなかった。動く範囲、力、競技の出力を同じ意味の「肩の状態」にまとめないことが、結果を正しく読む鍵になる。[3]

これに対し、ジュニアテニス選手25人の横断的観察研究では、痛みの経験がある11人は、ない14人より、利き側の内旋と総回旋可動域が小さかった。群間差は内旋で3.1度、合計で6.1度であり、効果量はそれぞれ0.58と0.66だった。ジュニア競技者の結果を、18〜39歳の女性の痛みの判定基準にはできない。[5]

ジュニアの研究では、内旋の左右差は両群で認められ、総回旋可動域の左右差は痛みの経験がある群で認められた。しかし、調べた筋の硬さには、群間でも左右間でも有意差がなかった。角度が狭いという結果から、特定の筋が硬いとすぐに説明をつけるのは、この結果を飛び越えてしまう。[5]

これらの研究は、同じ競技でも対象や比較項目によって見える特徴が違うことを示す。痛みの経験との関連を調べた結果は、将来の痛みを角度だけで予言できるという意味ではない。大人のヨガ参加者が、この差をそのまま自分の危険ラインとして採用する理由にもならない。[3][5]

合計が増えても、内旋は狭くなることがある

運動の前後では、合計と内訳が別の向きへ動く例もある。プロテニス選手26人を試合前後で調べた研究では、利き側の内旋は1.3%減少したのに、外旋は5.3%、総回旋可動域は3.1%増加した。合計だけなら広がった肩でも、内へ回る範囲は小さくなっていた。プロ競技者の試合による変化であり、18〜39歳の女性の普段の運動でも同じ割合になるとは予測できない。[8]

対象の平均年齢は20.4歳、平均試合時間は80.3分だった。利き側の外旋筋力は試合後に4.8%低下したが、サーブ速度には有意な低下が認められなかった。角度が広がること、力が出ること、速い球を打てることが、それぞれ別の指標として変化する。[8]

この前後比較を、レッスン後にも同じ割合で変化するという予測には使えない。ただ、運動後に測った合計が大きかったとき、「肩の状態が全面的によくなった」と読む前に内訳を確かめる理由にはなる。試合後の変化を扱った研究を、長期間続けた効果の証明に置き換えることも避けたい。[8]

前回は運動前、今回は運動後だったなら、その違いをまず記録に残す。測定値と一緒に、その日に何をしてから測ったかを書いておくのである。角度の増減に名前をつける前に、比較した場面を確かめる。これは細かい注意書きというより、次回の自分が読める記録を作る工夫だ。

たとえばノートの余白に「前回より広い」と書く前に、外旋なのか合計なのかを書き足す。同じノートに「内旋はどうだったか」という確認欄も置く。これは運動の処方ではなく、試合前後に方向ごとで違う変化が生じた研究を踏まえた、結果の取り違えを避けるための記録案である。[8]

数字で読む肩の回旋の内訳

144人:競泳選手の比較研究。外旋と内旋、合計では、利き側と非利き側の大小関係がそろわなかった。[1]

58人:痛みの経験別に比べたエリートテニス選手。両群で利き側の外旋が大きく、内旋と合計は小さかった。[3]

6.1度:ジュニア選手の痛み経験群で小さかった、利き側の総回旋可動域の群間差。個人の診断基準ではない。[5]

3.1%:プロテニスの試合後に増えた、利き側の総回旋可動域。内旋は同時に1.3%減少した。[8]

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宮川涼 Founder

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