ダイエット中にプロテインを飲み、尿素として出たら無駄なのかと迷う人へ。体内を巡る尿素の再利用と、体外へ失われる窒素を分けて考える。牛や羊の実験、人の臨床試験と観察研究を読み比べ、再利用の割合だけで食事量や減量効果を決められない理由と、数字を見るときの確認点を整理する。
朝食のあと、空になったシェーカーを洗いながら、「結局、尿に出るなら飲んだ意味がないのでは」と考える。ところが研究でいう尿素の「再利用」は、体外に出た尿を取り戻す話ではない。血液中の尿素が消化管へ移り、その窒素が微生物のたんぱく質へ取り込まれる流れなどを指す。子牛の実験では、この流れと窒素の収支が別々に調べられている。反芻動物の結果なので、18〜39歳の女性の利用率にはそのまま当てはめられない。[2]
答えの芯は、体内で何度巡ったかと、最終的に体外へどれだけ出たかを分けることにある。羊では低たんぱく条件で尿素の分解割合が高かった一方、体に保持された窒素は高たんぱく条件のほうが多かった。再利用率が高いことを、そのまま栄養状態のよさとは読めない。羊の比較は18〜39歳の女性の食事量を決める試験ではない。[12]
「ダイエット中のタンパク質は余るとどうなる?尿素への処理と筋合成の違いを読む」では、余った材料の処理を扱う。ここではその先の、尿素が体内を巡る量と外へ出る量の違いに絞る。プロテインの減量効果を、尿素の行き先だけで採点しないための読み方である。

尿素の再利用には、場所の違う話がある
尿素という同じ名前が出てきても、研究ごとに見ている場所が違う。尿素輸送体を扱うレビューでは、尿素が細胞膜を速く通る仕組みと、腎臓で尿を濃縮する働きが整理されている。輸送体とは、ここでは尿素の膜を越える移動を助けるたんぱく質のことだ。[4]
一方、子牛や羊の研究が追っているのは、血液の尿素に由来する窒素が消化管内で分解され、細菌のたんぱく質へ入っていく経路である。同じ「巡る」でも、腎臓の中での移動と、消化管の微生物への材料供給は分けておきたい。尿を濃くする働きが確認されたからといって、それだけで筋肉の材料が増えたとはいえない。[2][4][12]
たとえば尿素輸送体を欠くマウスの実験では、通常の条件で血液中の尿素が高く、尿素を排出する指標は低くなっていた。研究の中心は尿を濃縮する能力であり、尿素の居場所が変わることと、食べたたんぱく質が筋肉になることを同じ成果として扱ってはいない。マウスの腎機能の結果を18〜39歳の女性のプロテイン利用率に直接当てはめることはできない。[11]
検索結果で「尿素リサイクル」という語を見つけたら、まず消化管の話か、腎臓の話かを確かめる。この確認を挟むだけで、尿の濃さを見て「今日はプロテインが無駄だった」と考える飛躍に気づける。移動を調べる研究から読むべきなのは、その移動先と測った機能なのである。[4][11]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
羊では、再利用の割合と保持量が逆を向いた
去勢した雄の子羊を使った実験では、計6頭を高たんぱく条件と低たんぱく条件に無作為に割り付けた。窒素の摂取量はそれぞれ1日21gと12gだった。ここでの単位はたんぱく質の重さではなく、その中の窒素の重さである。食品表示のたんぱく質量へ、そのまま置き換える数字ではない。雄の子羊の試験条件を18〜39歳の女性の摂取量の目安にはできない。[12]
体内で作られた尿素由来の窒素のうち、消化管で分解された割合は、低たんぱく条件で88.7%、高たんぱく条件で71.8%だった。低い摂取条件で、作られた尿素のより大きな割合が消化管へ回っていたことになる。これだけを切り出せば、少なく食べたほうが効率的に見える。[12]
しかし絶対量では、高たんぱく条件のほうが消化管で多くの血液尿素由来窒素を分解していた。1日13.4gに対し、低たんぱく条件では6.9gである。割合が高い側と、流れた量が多い側が逆になっている。分母となる尿素の生産量が違うため、割合だけの順位と量の順位は一致しない。[12]
さらに体に保持された窒素は、高たんぱく条件で1日9.7g、低たんぱく条件で4.1gだった。尿中へ出た窒素も高たんぱく条件のほうが多い。つまり、排出が多いことと、保持が多いことが同時に起きていた。尿へ出た分だけを見て、食べた量のすべてが無駄だったとは判断できない。[12]
この実験の面白さは、単に「再利用できる」という結論ではない。同じ動物の中で、摂取、内部の循環、排出、保持という別々の数字が動いている点にある。レシートに出費だけ印字しても家計全体は分からない。それと似て、尿の窒素だけでは収支の片側しか見ていない。[12]

子牛の結果は、内部の流れが入口を超える理由を示す
雌の子牛8頭を比較した実験でも、たんぱく質摂取条件によって窒素の動きが変わった。高たんぱく条件と低たんぱく条件で、窒素の摂取量は1日126gと66.5gだった。窒素収支は高たんぱく条件で56.9g、低たんぱく条件で25.1gと、高い摂取条件のほうが大きかった。雌でも対象は子牛であり、18〜39歳の女性の保持量を示す結果ではない。[2]
一方、第四胃を通る窒素の流れを摂取量に対する割合で表すと、低たんぱく条件で124%、高たんぱく条件で71.1%だった。口から入れた量より、途中を通る量が大きい。ここで「栄養が勝手に増えた」と読むと迷子になる。研究では血液尿素や消化管の窒素の間を行き来する流れを追っており、入口と内部の通過点は同じ勘定ではない。[2]
この実験では、高たんぱく条件のほうが消化管で分解する血液尿素由来窒素の絶対量は多かった。それでも研究者は、血液尿素由来の窒素が細菌のたんぱく質へ正味で取り込まれる働きは、摂取量が低いほど大きくなる方向と解釈している。量の大きさと、再利用の位置づけを分けた説明である。[2]
ここでいう細菌のたんぱく質を、ただちに人の腕や脚の筋肉と読み替えないことも大事だ。反芻動物、つまり反芻を行う牛や羊の栄養研究では、胃の微生物による複雑な代謝と、その後の腸や体の組織での処理が研究上の重要な課題になる。微生物の材料供給を調べた実験は、その動物の消化の仕組みと組で読む必要がある。[3]
通勤前のプロテインの量を決めたい読者にとって、この実験が役立つのは具体的な摂取量の模範としてではない。途中の流量を、口から入った正味の量と取り違えないためだ。「再利用が多い」という説明を読んだら、それがどの地点の流れなのか、体に残った量まで測ったのかを一緒に見る。[2][3]
子牛の実験では、目印を付けた尿素などを血液や消化管の窒素の集まりへ投与し、集まりの間の移動を測った。食事の窒素量を量るだけでは見えない内部の経路を、別の測定で捉えようとしている。食べた量と尿中の量を比べる問いに加え、その間で何が起きたかを追う問いがあるのだ。[2]
だから、途中を通った窒素を食事に上乗せして、使える栄養が増えたと数えるわけにはいかない。同じ材料が体内の異なる場所を通ることと、外から新しく材料が入ることは違う。子牛の通過割合を読むときは、窒素収支の結果を隣に置くと、その区別を保ちやすい。[2]
一日の損失を測るにも、集め方が問われる
窒素収支は、体に入る量と外へ出る量を比べ、保持の状態を考えるための指標である。ただし、研究室では、引き算の前に排出物を正確に集める必要がある。反芻動物の窒素測定を扱うレビューは、便や特に尿から窒素が揮発して失われると、消化や体の窒素収支の測定精度が損なわれると指摘している。[3]
収集、処理、分析という各段階で失われた分があれば、測定容器に残った量と、動物が実際に出した量がずれる。研究者が気にしているのは、そのずれである。排出量を小さく見積もれば、差し引きの保持量も見かけ上変わりうる。細かな測定手順は、結論の土台を支えている。[3]
また、このレビューは食事を変えたあとの適応期間も重視し、少なくとも2週間、できれば3週間を確保することを提案している。体内にある材料が一時的に栄養を供給する場合など、さらに長い適応が必要になることもある。これは反芻動物の実験計画についての提案であって、人の減量食を試す期間の指定ではない。[3]
昨日の夕食と今朝の尿だけを対にして「この食事は損だった」と考える前に、研究が対象にしている時間の幅を見たい。体内の材料の動きも、集めた排出物の扱いも関わる。窒素の損失を知る研究は、便器を一度のぞいて終わる観察より、ずっと多くの条件をそろえている。[3]
数字で読む尿素の再利用と保持
子羊6頭の比較では、低たんぱく条件で消化管の尿素由来窒素の分解割合が88.7%、高たんぱく条件では71.8%だった。[12]
同じ子羊の窒素保持量は、高たんぱく条件で1日9.7g、低たんぱく条件で4.1gだった。割合が高い条件ほど保持量も多い、という並びにはなっていない。[12]
子牛8頭の試験では、第四胃を通る窒素の摂取量に対する割合が低たんぱく条件で124%だった。内部の流れと入口の量は区別する数字である。[2]
熱傷のある小児の試験では、たんぱく質摂取量1日1.15〜2.92g/kgの範囲を検討した。健康な大人への推奨量ではない。[9]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







