朝ごはんのえのきはゆで汁も使う?ナイアシンと加熱後の成分を分けて考える

朝ごはんのえのきをゆでたとき、汁まで使えばナイアシンを取り戻せるのか。きのこの加熱実験や成分分析を読み、抗酸化活性とビタミンの残存率、濃度と一食の量を区別する。蒸す調理と電子レンジで結果が異なる理由を確かめながら、汁物にする朝とあえ物にする朝の判断を考える。

えのきをゆでた湯は、朝の汁物に使うべきだろうか。鍋から具を取り出したあと、残った湯を前に迷う。汁物に使えるなら使いたいが、栄養のために毎回飲み切る必要まであるのかは別の話だ。

先に答えると、「汁も使えばナイアシンが何割残る」と決めつけて献立を変えるのは避けたい。えのきを含むきのこの加熱研究では、成分の濃度や抗酸化活性を測った結果がある。ただし、それらの測定値とナイアシンの残存率は同じものとして扱えない。[7][9][10]

汁物にしたい朝は汁物にする。あえ物にしたい朝は、その食べ方を選ぶ。その判断を支えるのは「栄養が全部消えるか、全部残るか」という二択より、何を測った研究を読んでいるかという区別である。鍋の中身より先に、数字の名前を確かめたい。

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ゆで汁の話は、まず何を残したいかから始める

ナイアシンの残り方を知りたい問いに、抗酸化活性が上がったという結果で答えることはできない。抗酸化活性とは、ここでは酸化に関わる反応への働きを実験で評価した指標のことである。食品の成分そのものを定量することと、その食品から得た試料が示す反応を調べることは、研究の入口が異なる。[7][9]

たとえば、加熱したきのこの水抽出物を調べる実験がある。水抽出物は、水を使って食品から取り出した成分を含む試料である。この試料の抗酸化活性が高いという結果を、そのまま家庭で鍋に残ったゆで汁の栄養量に置き換えることはできない。抽出物についての測定と、食卓に出す汁についての判断は分けて読む必要がある。[7]

さらに、きのこの「栄養」と一括りにしてしまうと、異なる成分の変化が見えなくなる。成分分析の比較研究では、調理後にでんぷん、総食物繊維、酸で分解して測る脂質の濃度が増え、粗たんぱく質とキチンの濃度は減った。加熱したらすべてが同じ方向に動いた、という結果ではない。[10]

ここでの読み方は、食品を良いか悪いかに振り分けることではない。「何の成分を」「どの状態で」「何を基準に」比べたかを揃えることだ。朝のえのきに必要なのは、栄養という大きな袋の中へ結果を全部入れてしまわない姿勢である。

既存記事「疲労回復の豚肉はゆで汁も使う?ビタミンB1の減少と加熱条件を研究で読む」には、豚肉とビタミンB1の問いを譲る。「糖質制限のとうもろこしは加工で栄養が変わる?粒と粉のナイアシンを読み解く」には、とうもろこしの加工とナイアシンの問いを譲る。また「ダイエットのえのきは細かく刻むと違う?細胞壁と消化から食べ方を研究で読む」とも問いを分け、ここでは刻み方より加熱後の測定値と汁の扱いを考える。

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蒸す調理がよかった実験は、何を比べたのか

2017年の食品実験では、えのきを含むきのこを対象に、加熱方法と時間を変えて抗酸化活性を比較した。対象はえのきだけではなく、マッシュルーム、しいたけ、ひらたけ、エリンギを含む5種類である。食品を実験室で比べた研究である。18〜39歳の女性が食べたあとの健康変化に、その結果をそのまま当てはめることはできない。[9]

この実験でえのきの抗酸化指標に好ましい条件だったのは、1.5分の蒸し調理だった。一方、ひらたけとしいたけでは4.5分の蒸し調理、マッシュルームでは1.5分の電子レンジ加熱が選ばれている。同じきのこの仲間でも、よい結果になった条件は揃っていない。[9]

この違いは、朝の台所に持ち帰れる大切な事実である。「きのこは全部電子レンジがよい」「ゆでると全部だめ」と、仲間全体に同じ順位を付ける読み方は合わない。えのきの結果を探しているなら、しいたけに好ましかった条件と取り違えず、えのきの測定結果として読むことになる。[9]

また、同研究では短時間の蒸し調理で総フラボノイドとアスコルビン酸が増える結果、長い圧力調理で水溶性フェノール成分が減る結果も報告された。フラボノイドやフェノール成分は、この実験が調べた成分群である。指標を変えれば見る対象も変わるため、抗酸化という言葉だけで結果を一つに束ねないほうがよい。[9]

とくに目を引くのは、調理時間がアスコルビン酸に影響した点だ。方法の名前だけでなく時間も条件に入っていた。そこで示された短時間の条件は、その実験の抗酸化評価に関する数字である。家庭のえのきの加熱終了や安全性を、その時間だけで判断するための目安には転用しない。[9]

「蒸すほうがよい」という短い結論は便利だが、何に対してよいかを添えて初めて使える。ここで言えるのは、えのきの抗酸化指標を比較した実験で、蒸す条件が選ばれたということだ。ナイアシンが最も多く残る条件、汁まで使うべき理由、朝食全体の優劣までを一緒に決める数字ではない。[9]

電子レンジがよかった研究とも矛盾を急がない

別の2019年の実験では、えのきを含む5種類のきのこに、ゆでる、電子レンジ、蒸す、圧力調理という4つの家庭調理法を適用した。さらに、消化を実験室で模した処理を行い、その前後の水抽出物を比較している。加熱直後だけでなく、消化を模した処理後の反応にも目を向けた設計である。人を対象とした試験ではなく、18〜39歳の女性の食後の反応にそのまま当てはめることはできない。[7]

この研究では、えのきとマッシュルームで短時間の電子レンジ加熱が、抗酸化活性と糖質を消化する酵素への阻害活性についてよい値を示した。酵素への阻害活性とは、その酵素の働きを抑える反応を実験で調べたものである。人の食後血糖や体重が下がったという結果とは分ける必要がある。[7]

蒸す条件が選ばれた研究と、電子レンジがよかった研究が並ぶ。ここで「研究は当てにならない」と片付けるのも、「新しいほうだけ正しい」とするのも早い。前者は加熱法と時間による抗酸化指標の比較、後者は消化を模した処理や酵素への作用も含む比較である。評価した対象が重なっていても、同じ問いだけを測っているわけではない。[7][9]

2019年の実験では、消化を模した処理により、調理したきのこ抽出物の総抗酸化活性と、糖質を分解する酵素の一つへの阻害活性が高まった。一方、別の糖質分解酵素への阻害活性は低下している。同じ試料の中でも、見る反応によって増減の向きが分かれた。[7]

したがって、加熱法の総合優勝を決めるより、何を重視した比較なのかを見るほうが役に立つ。朝ごはんを作る側にとっても、蒸す料理と電子レンジを使う料理を候補として持てばよい。抗酸化試験の順位を、ナイアシンを残す順位や減量効果の順位へ読み替える必要はない。[7][9]

実験の対象をもう少し丁寧に追うと、読み方は具体的になる。2017年の比較は、きのこの種類と調理時間を変えることで、同じ調理名でも結果が一様でないことを示している。2019年の比較は、それに加えて消化を模した処理を通すと、調べる活性自体が変化することを示した。加熱前後の比較と、消化前後の比較は、食べ物を見る別々の窓である。[7][9]

この二つを朝食の場面で考えてみたい。蒸したえのきをそのまま添える朝と、電子レンジで加熱して別のおかずに合わせる朝がある。研究から調理の候補を得ることはできるが、片方を選ぶたびに体内で同じ差が生じると約束することはできない。調理した食品の実験値から、食べた人の変化までを直結させないためである。[7][9]

比較の主役が「汁か具か」なのか、「蒸すか電子レンジか」なのかも分けたい。前者を知りたいのに後者の結果を読むと、調理法の比較で汁の扱いまで決まったように感じる。しかし、えのきに好ましかった加熱条件という結果だけでは、家庭で取り分けた汁と具のナイアシンの配分まで答えたことにはならない。[7][9]

鍋を洗う前に頭の中で一度、問いを言い直す。「栄養は残ったか」では広すぎる。「この成分は、食べる部分にどれだけあるか」とすると、必要な数字がはっきりする。料理を選ぶための問いと、分析値を知るための問いが混ざらなければ、研究の見出しに振り回されにくくなる。

数字で読むえのきの調理研究

5種類のきのこを比較した2017年の食品実験。えのき以外の結果も含む比較である。[9]

1.5分の蒸し調理が、その実験でえのきの抗酸化評価に好ましかった条件。家庭の安全な加熱時間を決める数字ではない。[9]

4つの家庭調理法を用いた2019年の実験。消化を模した処理の前後も比べている。[7]

2.5〜10%の乾燥きのこ粉末を加えたパスタの実験。丸ごとのえのきとは食品の形が異なる。[3]

10%のえのき粉末を加えたパスタでは調理損失が増えた。その数字はナイアシンの損失率ではない。[3]

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宮川涼 Founder

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