ダイエット中のもつ鍋やホルモンは脂を落とせる?加熱で減る重さの読み方

ダイエット中のもつ鍋やホルモンは、下ゆででどれだけ脂が落ちるのか。豚の大腸や内臓を使った食品研究から、加熱で減る重さと脂質の量を区別する。具と煮汁を別に考える理由、加工条件で変わる保水性、家庭で量を記録するときの注意点を読み、数字だけで食べ方を決めない視点を紹介する。

ざるに上げたホルモンが、ゆでる前より小さくなっている。鍋に残った白い脂を見て、「下ゆでしてあるなら、もつの脂はもう落ちているのか」と考える。家でホルモンをゆでたときも、ざるに残った具が小さくなると、その分だけ軽い食事になった気がする。

答えの芯は、加熱で減った重さを、そのまま落ちた脂の重さにしないことである。食品研究では加熱損失と脂肪含量を別の項目として調べ、保水性が変わる加工でも加熱損失は変化する。鍋の具の縮みだけから、脂質や摂取エネルギーの減少率を決めることはできない。[15][20]

既存記事「ダイエット中のレバーは煮汁も数える?鉄の残存量と一食の量を分けて読む」には、鉄と煮汁の論点を譲る。ここで考えるのは、もつ鍋やホルモンの脂を減らしたつもりになる前に、どこまでを食べた一食として見るか、という台所の問いである。

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加熱で減る重さと、落ちる脂は同じではない

食品研究に出てくる加熱損失は、加熱に伴って試料から失われる重さを扱う指標である。名前に「損失」とあっても、脂だけの量を表す数字として読むものではない。野生イノシシの内臓と肉の研究では、加熱損失のほかに、抽出できる脂肪の含量、水分と粗たんぱく質の比などが別々に評価されている。重さの変化と成分の変化を分ける設計である。[15]

家庭のざるは具の重さを教えるが、その内訳までは教えない。調理前と調理後を量って差が出ても、その差を脂質の欄から丸ごと引く計算には進めない。水を保持する性質を変えたソーセージの実験でも加熱損失が小さくなっており、加熱後に残る重さには食品の保水性が関わっている。[20]

たとえば、下ゆで前のホルモンを量り、湯を切った後も量る。その記録に「加熱前」「湯切り後」と名前を付けるのはよい。しかし、差に「脂」と書き足すには、重さの測定とは別に成分を確かめる必要がある。食品研究が脂肪含量と加熱損失を分けている理由を、家庭の記録にも持ち込むのである。[15]

この区別は、調理を細かく管理するためだけの話ではない。「縮んだから、もう脂を気にしなくてよい」と食べる量を増やす根拠にしないための話でもある。目に見える縮みは分かりやすいが、研究で別項目になっている脂肪の情報を、その見た目だけで代用することはできない。[15][20]

鍋の前では、食品の重さ、食品中の成分、実際に口にした量という別の問いが重なる。最初の問いに答えた秤の数字を、残りの問いの答えとして使わない。加熱後の重量が分かったときに分かったのは、まず、その条件で仕上がった具の重量である。脂肪の変化まで知ったことにしない姿勢が出発点になる。[15]

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豚の大腸の研究で減ったのは何か

もつに近い食材を扱う例として、豚の大腸のにおいと品質を調べた食品加工実験がある。研究者は揮発性の成分を調べ、においに強く関与する成分を選び、酵素、アルカリ、アルコールを組み合わせた加工を比較した。これは食品素材への処理を評価する実験であり、人がもつ鍋を食べた後の体重を追った試験ではない。18〜39歳の女性の脂質摂取量や体重変化に、そのまま当てはめられる結果ではない。[4]

組み合わせ処理では、主要な不快臭成分の総量が82.60%減ったと報告された。一方、加熱損失について示された減少は28.04%である。同じ研究の中の数字でも、前者はにおいに関わる成分、後者は加熱による重量の損失を指す。どちらも「食べる脂がその割合だけ減った」という数字に読み替えることはできない。[4]

とくに注意したいのは、「加熱損失が減少した」という向きである。加熱によって失う重さが小さくなる側の結果であって、脂を多く流し出したという意味にはならない。この実験では硬さや噛み応えも改善し、著者らは大腸の品質向上として結果を位置付けている。重さを多く失わせることだけが、加工の目的ではない。[4]

においが弱くなることも、脂質が少なくなることとは別である。研究ではにおいに関与する成分を分析しており、鼻で感じる変化にはその成分の情報が対応する。下処理後に食べやすく感じても、その感覚を脂の減少率に変換しない。台所では「さっぱりした」という言葉が便利だが、研究の数字は便利な形容詞ほど広い意味を持たない。[4]

また、酵素などを組み合わせた加工と、家庭で湯に通す操作とは条件が違う。豚の大腸という食材が近いからといって、加工実験の減少率を自宅の下ゆでに貼り付けるのは飛躍である。この研究から日常へ持ち帰りたいのは薬剤や処理手順ではなく、何を減らした研究なのかを確かめてから数字を使う態度だ。[4]

外食の説明で「下処理済み」と聞いたときも、それだけで脂の残り方を数値化しない。におい、食感、加熱中に失う重さは、それぞれ評価の対象になる。処理があるという情報と、自分の皿の脂質が分かったという情報の間には距離がある。加工の有無より、説明されている指標の名前まで見ると誤解が減る。[4]

内臓という名前だけでは同じ食材にならない

野生イノシシの研究では、狩猟で得られた32頭を年齢と性別で分け、肝臓、腎臓、心臓、舌と筋肉の品質を調べた。若い群とそれより成長した群の比較で、筋肉と内臓の抽出可能な脂肪含量や、水分と粗たんぱく質の比に違いがみられた。筋肉の加熱損失などにも年齢群による違いがあった。対象は動物の組織であり、18〜39歳の女性が食べたときの減量効果には、そのまま当てはめられない。[15]

これは、年齢を変えて同じ動物を調理した実験ではなく、異なる個体群を比較した研究である。得られた差を、そのまま年齢だけの作用と断定しない。それでも、内臓という大きな分類の中に、由来や組織による品質の違いがあることを考える材料にはなる。著者らも、年齢によって料理や加工への適性が異なる可能性を述べている。[15]

ここで調べた内臓には、もつ鍋で使う腸とは異なる臓器が含まれる。しかも対象は野生イノシシである。これを牛や豚のホルモン全体の脂質表として使うことはできない。食材名に共通点があることと、同じ割合で脂が落ちることは別だ。研究対象の名前を省くと、条件付きの結果が、いつの間にか万能の下ゆで術になる。[15]

買い物で「ホルモン」とだけ書かれた商品を手に取ったら、部位や下処理の説明も読む、というのがここからの実用的な提案である。これは特定の部位を優れた食品と決めるためではない。豚の大腸を扱った加工研究と、イノシシの複数の内臓を扱った品質研究を、同じ食材の同じ結果として混ぜないための確認である。[4][15]

記録するときも、料理名だけで済ませず、購入時の表示や調理の状態を一緒に残すと、後で何を比べているかが明瞭になる。「前より小さくなった」と思ったときに、同じ部位だったか、同じ下処理だったかを振り返れる。研究が対象と条件を示すのと同じく、家庭の比較にも比較する相手の名前が要る。[4][15]

数字の比較には、何に対する割合なのかという確認も要る。豚の大腸で示された28.04%は加熱損失という指標の減少であり、調理前の大腸全体の重さの28.04%が脂になって流れた、という意味ではない。「減少」という同じ言葉でも、比較する指標を外すと別の主張になる。数字を引用するなら、割合の後ろに指標名も残したい。[4]

イノシシの研究については、群の差が認められたという情報と、家庭でどれほど変わるかという情報を分ける。脂肪含量に年齢群の差があったことは、どの店のどの一皿でも同じ差があることを意味しない。対象の動物、臓器、比較した群を添えて読めば、結果の届く範囲を見失いにくい。[15]

食材が違う研究同士で結果の方向がそろっていても、それだけで同じ仕組みを確認したことにはならない。大腸の加工はにおいと品質、内臓の群間比較は年齢や性別による品質の違いを問うている。自分の鍋に近い単語を拾うだけでなく、実験が何を比べていたのかまで読む。そのひと手間が、脂抜きの数字を借りる前の確認になる。[4][15]

数字で読むもつと加熱損失

82.60%:豚の大腸の組み合わせ処理で減少した、主要な不快臭成分の総量。脂質の減少率ではない。[4]

28.04%:同じ処理での加熱損失の減少。具から脂が抜けた割合とは区別する。[4]

32頭:野生イノシシの内臓と肉を調べた品質研究の対象。家庭のもつ鍋を比較した人数ではない。[15]

160羽:保存状態の異なる大豆粕を含む飼料で、肉質などを比べたブロイラーの実験。食べる人への介入ではない。[19]

15%:内臓の煮汁などを使った乳化ゲルを混ぜたソーセージで、最も弾性的なゲルになった置換条件。もつ鍋の推奨量ではない。[20]

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宮川涼 Founder

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