筋トレと有酸素運動で反射の強さも変わる?筋力とは別に読む脊髄の調節と練習

筋トレと有酸素運動を続けると、力だけでなく脊髄の反射も変わるのか。反射が増えた試験と変わらなかった試験を比べ、筋力、持久力、動きを覚える練習の違いを読む。安静時と力を出す最中で異なる測定結果も確かめ、反射の強さを健康や若返りの点数にせず、日々の運動を振り返る視点を示す。

かかとで床を押す練習を続け、前より強く踏ん張れるようになった。そのとき、脊髄の反射も強くなっているのだろうか。筋肉に力を入れる成果と、電気刺激に対して返ってくる反射の変化を分けると、運動の研究は少し意外な姿を見せる。

答えの芯は、運動で反射の応答が変わることはあるが、筋力の伸びとは別に調べる必要がある、である。短期間の比較試験では、筋トレで最大の力が伸びても反射の最大応答は変わらず、持久的な運動では別の変化が現れた。一方、自転車運動を続けても反射に有意な変化がなかった試験もある。[5][12]

既存記事「インナーマッスルの評価は反射で分かる?膝をたたく検査と自分で出す力の違い」には、反射の検査を筋力の評価と混同しないという問いを譲る。ここで追うのは、運動を続けた前後で何が変わり、その変化が練習の内容や測定の場面によってどう違うか、という問いである。

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反射の数字は、筋力とは別の窓である

研究でよく使われるのが、電気刺激によって引き出すホフマン反射、以下H反射である。これは脊髄の運動ニューロン、つまり筋肉へ出力する神経細胞の興奮しやすさを評価する手段だ。ただし、感覚から入る信号の伝わり方も反映するため、単に「神経の元気さ」を直接表示する数値ではない。[17]

同じ研究に出てくるV波は、脳など上位の中枢から下りてくる働きかけを受けた、運動ニューロン群の出力を反映する。H反射とV波を併せて調べるのは、力が伸びた理由を脊髄だけに押し込めず、上位からの出力も考えるためである。どちらかの波が増えたことを、神経全体が一様に強くなった証拠とは読まない。[17]

この区別が見えるのは、健康で普段座って過ごすことの多い男性を対象とした無作為化比較試験である。参加した男性20人を訓練群と対照群に分け、足首を下へ押す筋群の等尺性運動、つまり関節を動かさず力を出す運動を4週間行った。訓練群の最大の力は平均20.0%増え、力の立ち上がりの速さも42.5%増えた。男性を対象にした結果であり、18〜39歳の女性に同じ変化率をそのまま当てはめることはできない。[7]

ところが、H反射の応答曲線の傾きから求めた指標は変わらなかった。その一方、最大の力を出す最中のV波の比率は57.3%増えた。最大の力の変化は20.0±13.9%、V波の比率の変化は57.3±34.2%と報告され、ここでの±は参加者間のばらつきを表す標準偏差である。同じ割合で全員が伸びたわけでもない。[7]

この試験から読めるのは、力を出す能力と、調べた反射の指標が別々に動いたということだ。著者らは、上位の中枢から自発的に筋肉を働かせる出力の増加を、筋活動の改善に関わる可能性として挙げている。「反射が変わらないから神経の適応はない」という説明には収まらない結果である。[7]

日々の記録に置き換えるなら、扱えた負荷と、その動作を続けられた長さを別に書くところから始めたい。これは反射を自分で測る方法ではない。研究が別々に扱った成果を、生活でも混ぜずに振り返るための整理である。重い荷物を持てた日と、帰り道を歩き切れた日は、同じ欄に丸を付ける必要がない。[5][7]

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筋トレと持久的な運動は、同じ変化を起こすか

両者を直接比べた研究として、普段運動していない健康な25人を、持久的な運動の群13人と筋力トレーニングの群12人に無作為に分けた試験がある。期間は3週間で、足首を下へ押す筋群の最大の力、一定の力を保てる時間、H反射とV波を調べた。[5]

筋トレ群では最大の力が14.4±5.2%増えたが、最大のH反射を最大のM波で割った比率は変わらなかった。対して持久運動群では、最大の力の40%で収縮を保つ課題の継続時間が22.7±17.1%延び、そのH反射の比率は30.8±21.7%増えた。最大のM波を基準にした比率は、反射の電気的な応答を比較するための指標として使われている。[5]

V波の比率は逆の組み合わせだった。筋トレ群では55.1±28.3%増え、持久運動群では変わらなかった。著者らは、持久的な運動後の持久性の改善にはH反射の経路が関わり、筋トレ後の最大の力の改善には上位から下りる出力などが関わる可能性を示している。神経の変化にも、運動の種類に応じた違いがあると読む材料になる。[5]

ただし、これで「有酸素運動なら反射が増える」と決めるのは早い。若い成人22人を介入群と対照群に無作為に分けた別の試験では、8週間の自転車による持久運動後、安静時と最大の力を出す最中のH反射を調べた。最大の力や力の立ち上がり、疲労への抵抗性なども評価したが、調べた変数に有意な変化はなかった。[12]

後者の試験は、運動しない対照群を置いて前後の差を比べている。運動前後で値が変わったかを見る問いと、運動しなかった場合に比べて変わったかを見る問いは同じではない。また、異なる試験の期間だけを並べても、自転車と別の持久的な運動、参加者、測定条件が一致した比較にはならない。[5][12]

短い試験で変わったから長く続ければ必ずもっと増える、とも読めない。3週間と8週間という期間の長短を勝敗に変えず、それぞれの運動と測定の組み合わせで結果を受け取る必要がある。有意な変化がなかった試験は、持久的な運動の価値全体を否定する試験でもない。調べた反射や足首の機能について、変化を確認できなかった結果である。[5][12]

安静時と力を出す最中では、結果が違う

机に座って脚の力を抜いているときの反射と、足首で力いっぱい押している最中の反射。研究では、この場面の違いが結果を分けている。男性14人が脚の重い負荷を扱う筋トレを14週間行った介入研究では、最大の力が23〜30%増え、最大収縮中のV波はおよそ50%、H反射はおよそ20%増えた。対象は男性であり、18〜39歳の女性にも同じ程度の変化が起こるかは、この結果だけでは判断できない。[17]

同じ参加者でも、安静時のH反射は変わらなかった。したがって「この人の反射はトレーニングで増えた」という説明だけでは、測定場面が抜ける。力を出す最中には変化が見えても、力を抜いた条件では同じ変化が見えなかった、と書いて初めて結果の輪郭が残る。[17]

別の対照群を置いた介入研究では、12人が3週間の最大等尺性運動を行い、12人が対照となった。最大の力は18%、力の立ち上がりの速さは28%増えた。最大の力の20%と60%を出す最中に引き出したH反射は、それぞれ17%と15%増えたが、安静時の最大H反射と最大M波の比率は変わらなかった。[16]

さらに、反射の変化率と力の立ち上がりの変化率には、相関係数0.59の正の関連があった一方、最大の力の変化率との有意な関連は見つからなかった。反射が増えた人ほど最大の力も増えた、とまで言ってはいけない結果である。力をどこまで出せるかと、どれほど速く出し始められるかを分けたから見える違いだ。[16]

駅の改札へ急ぐ脚と、荷物を持って踏ん張る脚を想像すると、速さと最大の力を区別する意味はつかみやすい。ただし、足首の実験で調べた力の立ち上がりは、そのまま転倒を避ける能力や電車に間に合う能力を測ったものではない。日常の情景は測定項目を理解する助けであり、効果の保証に使うものではない。[16]

研究の見出しに「反射が増加」とあったら、まず安静時か収縮中か、どの強さで力を出していたかを見る。次に、最大応答なのか、応答曲線の傾きなのかを確かめる。短期の等尺性運動で傾きの指標が変わらなかった試験と、収縮中の振幅が増えた試験を、単なる賛成と反対に分けない読み方になる。[7][16]

測定の条件をそろえることは、数字を疑うためだけの作業ではない。たとえば、安静時には反射が変わらず、収縮中には増えた結果なら、力を出している場面に応じた調節を考える材料になる。何もしていない状態の値だけで練習の成果を判断するよりも、運動中の制御に目を向けられる。反射の研究の面白さは、大きな数字そのものより、どの場面で変わるかにある。[16][17]

数字で読む反射と筋力のずれ

3週間:運動習慣のない健康な成人で、筋トレと持久的な運動を比べた期間である。[5]

14.4%:その試験の筋トレ群での最大の力の平均増加率。最大H反射の比率は変わらなかった。[5]

30.8%:同じ試験の持久運動群での最大H反射の比率の平均増加率である。[5]

8週間:若い成人の自転車運動で、反射などに有意な変化がなかった試験の期間である。[12]

約20%:重い負荷の筋トレ後、最大収縮中に増えたH反射。安静時は変わらなかった。[17]

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宮川涼 Founder

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