腹筋の筋トレは寝る前に回数を競わない、眠気と動作のばらつきを分けて考える

寝る前の腹筋で、回数は同じでも動きがそろわないと感じたら何を見ればよいのか。睡眠不足と知覚反応、主観的な眠気、運動中のきつさを調べた研究から、夜という時刻と眠い状態を分けて読む。腹筋への直接の効果を断定せず、回数だけで自分を採点しないための記録と予定の組み方を考える。

寝る支度を終えてから、床にマットを広げる。腹筋を始めたものの、さっきはゆっくり戻ったのに今度は勢いがついた。回数の欄だけ埋めれば、昨日と同じ運動をしたことになるのだろうか。

寝る前の腹筋を考えるときは、夜という時刻と、その日の眠気を分けたい。睡眠を奪う実験では、知覚への反応の遅れや運動中の主観的なきつさの増加が報告されている。ただし、その結果を腹筋のフォームの乱れやけがの確率にそのまま置き換えることはできない。[13][4] 眠い日の回数を競うより、どのような状態で、どう動いたかを別々に残す、というのがここでの提案である。

既存記事「腹筋の筋トレは最後だと姿勢が崩れる?回数が減った日こそ分けて見たい動作の質」が扱う運動の順序とは問いを分ける。ここで取り上げるのは、ほかの筋トレを終えた後かどうかではなく、寝る支度の時間に眠気が重なった日の判断である。

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寝る前という時刻だけで、動作の出来は決まらない

「夜の腹筋」と一口に言っても、仕事から帰って間もない日と、眠る時間を削って取りかかる日では、比べている条件が違う。予定表には同じ名前の運動が並んでいても、その欄だけでは前の晩の睡眠や今の眠気は見えない。まず「いつ行うか」という予定と「どんな状態か」という観察を分けておきたい。

睡眠不足と時刻の関係を考える手掛かりになるのが、健康な成人54人が35時間連続で起き、注意を持続する課題、記号を置き換える課題、眠気の自己評価を繰り返した実験と、関連する研究のメタ分析である。メタ分析とは、複数の研究結果を統計的に統合する方法だ。健康な成人を対象とする結果を、18〜39歳の女性の就寝前の腹筋にそのまま当てはめるには、対象と課題の違いを考慮する必要がある。[3] この研究では、睡眠不足の後でも夕方に認知課題の成績が部分的に持ち直す現象を、課題ごとに検討している。[3]

報告された持ち直しの割合は、持続的な注意の課題で33.0〜52.1%、記号の置き換えで45.7%、主観的な眠気で23.5%だった。[3] 同じ人が同じ時間帯に評価を受けても、眠いと感じる程度と課題成績は同じ割合では動かない。この数字は、夕方まで待てば睡眠不足が解消するという意味ではない。眠気と作業の出来を、別の指標として扱う必要を示している。[3]

ここから家庭での腹筋に持ち帰れるのは、「夜だから必ず動きが悪い」「少し目が覚めたからいつもどおりできる」という決めつけを避ける視点である。腹筋の最適な時刻を決める実験ではないため、夕方の認知課題の持ち直しを、夜の運動の推奨時間には変換しない。[3] 帰宅してようやくマットを広げた夜も、時計の針だけで自分を採点する必要はない。

比較するときには、運動を始めた時刻が同じでも、起きてから過ごした時間や前の晩の睡眠も確かめたい。連続覚醒の実験が追っているのは、起き続ける負担と時刻による変化が重なった状況である。[3] 「昨日も寝る前だった」という共通点だけで、昨日と今日の条件をそろえたことにはならない。時刻の記録に眠気の言葉を足すのは、その違いを忘れないためだ。

たとえば、運動をするつもりで着替えたが、床に座るころには眠くなっていた夜を想像する。この場面で「着替えたのだから予定どおり」と考えるか、「始める時点の状態で予定を見直す」と考えるかは、計画の立て方の違いである。認知課題の研究から腹筋の中止基準を数値で決めることはできないが、計画時と実行時の状態を区別する視点は持てる。[3] 支度を終えた事実は、身体の準備が整ったことの検査結果ではない。

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眠気は手掛かりだが、動作そのものの採点表ではない

眠気は本人にしか分からないから役に立たない、という話でもない。覚醒中の脳波と主観的な眠気の関係を調べたメタ分析とレビューでは、シータ波という脳波成分の強さの増加が、通常の睡眠条件でも睡眠を減らした条件でも、眠気の増加と関連していた。一方、アルファ波の強さには同じ関連が見られなかった。[11]

デルタ波の強さについては、睡眠を減らした条件でのみ、眠気との関連が認められた。[11] 脳波といっても、どの成分を、どの条件で見るかによって関係が異なる。眠気は身体の状態を考えるための情報だが、単独であらゆる機能を代表する値ではない。この研究は脳波と眠気の関連を整理したもので、家庭で腹筋の出来を脳波から判定する方法を示したものではない。[11]

さらに、健康な若年成人77人を対象に、自宅で通常睡眠と徹夜の条件へ無作為に分けた研究がある。徹夜条件では眠気が時間とともに悪化し、科学の概念を学ぶ課題の成績も低下した。男女を含む若年成人の学習課題の結果であり、18〜39歳の女性の腹筋動作へそのまま当てはめるには課題が異なる。[1] 回復の睡眠を含む期間の後には、眠気が基準の水準へ戻り、学習課題の成績も条件間で同程度になった。[1] これは睡眠を奪う操作の影響を調べた試験であり、たまたま寝る前にあくびが出た場面と同じ条件ではない。

この試験では、自己申告のストレスに有意な変化がない一方で、眠気と学習に変化が起きていた。[1] 「今日は気分が荒れていないから大丈夫」という判断も、状態全体の代わりにはならない。運動の記録欄に余裕があるなら、気分の良し悪しだけでなく、眠かったかどうかも言葉で残す。その記録を動作の感想と並べれば、後から条件を見直せる。これは自己観察の提案であり、眠気から筋力を推定する検査ではない。

反応の遅れと、間違いの増加は同じ結果ではない

眠いときに運動動画を見ても、合図が頭に入るまで間があるように感じることがある。そのような場面を考える手掛かりとして、急性の全断眠が視覚、聴覚、それらを組み合わせた知覚課題に及ぼす影響を統合した研究がある。対象は12〜48時間の全断眠を扱う56件の独立した研究で、正確さの解析には1,664人、反応時間の解析には1,864人が含まれた。[13]

全体では、反応時間の悪化の効果量は0.901、95%信頼区間は0.671〜1.131だった。[13] 効果量は、異なる測定法の結果を比較するために差を共通の尺度へ直した値であり、「反応が0.901秒遅くなった」という数字ではない。信頼区間は推定の幅を示す。秒数へ勝手に読み替えず、研究間でまとめても反応の遅れが検出された、と受け止めたい。

一方、正確さの全体の効果量は−0.401、95%信頼区間は−0.848〜0.047で、統計的に有意な低下ではなかった。[13] 反応が遅くなることと、正答が減ることは同義ではない。すべての能力が同じように落ちる、という平らな説明では、この違いが消えてしまう。見た目には課題をこなしていても、完了までの時間には変化がある、という読み分けが必要だ。

感覚の種類で分けると、反応時間の遅れは視覚課題と視聴覚課題で有意だったが、聴覚課題では有意でなかった。正確さは視覚課題と聴覚課題で低下し、視聴覚課題では低下しなかった。[13] ただし、これを「眠い日は音声指導なら安全」と読むことはできない。画面の指示を見る課題と、身体を起こして戻す腹筋は別の課題である。知覚研究が示すのは、受け取る情報と測る成績の組み合わせによって影響が違う、という範囲だ。[13]

反応時間には出版バイアスの兆候もあった。出版バイアスとは、結果によって研究の公表されやすさが偏る可能性を指す。補正後も反応の遅れは有意だったが、推定の読み方にはこの留保が付く。[13] 眠い人の腹筋が必ず乱れると断言する材料にせず、動作を急いで回数だけそろえる判断を見直す材料にしたい。

家庭で気になった動きと研究の結果をつなぐときには、この距離を保ちたい。反応が遅くなるという知見は、画面に追いつけない感覚を考える材料にはなるが、腹筋の成功回数の基準にはならない。[13] 数えやすいものだけを優先せず、何を確かめたいのかを先に決めておく。

数字で読む眠気と課題成績

54人・35時間:連続覚醒中の認知課題と主観的眠気を繰り返し測定した実験の規模と条件である。[3]

23.5%:同研究で示された主観的眠気の概日的な持ち直しの割合。注意課題と同じ割合ではなかった。[3]

56件:知覚の反応時間と正確さへの全断眠の影響を統合した独立研究の数である。[13]

0.901:知覚反応時間の悪化の統合効果量。時間の単位ではなく、95%信頼区間は0.671〜1.131だった。[13]

32人:睡眠条件を変えて翌朝の自転車運動を比べた、運動習慣のある若年成人の数である。[4]

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宮川涼 Founder

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