プロテインを飲む人と飲まない人の差は、最後まで続けた人だけで比べてよいのか。高齢者の補給と筋トレの試験を手がかりに、割り付けに沿う解析、途中で抜けた人、食事と運動の実行状況を読み分ける。改善した研究と差が出なかった研究を並べ、生活に持ち帰れる範囲を考える。
流しに置いたシェーカーを見て、「今週は飲めたが、筋トレは休んだ」と気づく。気になるのは自分にも効くかどうかだが、その前に確かめたいことがある。途中で飲むのをやめた人や、筋トレに通えなくなった人は、その比較のどこにいるのだろう。
答えの芯は、続けた人の成績だけで「飲むことの効果」を決めないことにある。補給と筋トレを組み合わせた高齢患者の無作為化比較試験では、食事の実行状況は良好でも筋トレの実施が難しく、筋量への有意な効果は認められなかった。飲めたかどうかと、計画全体を実行できたかは別の問いである。18〜39歳の女性への適用は、この高齢患者の結果と分けて判断する必要がある。[16]
改善が出る研究もある一方、同じ補給という言葉でも対象や運動条件は違う。[1][10][11][16] 既存記事「糖質制限の効果は割り付けで比べる?守れた人だけの数字と無作為化を読む」には食事法の比較を譲り、ここではプロテインの試験で、誰が比較に残っているかを追う。飲む回数の決め方や食事記録の誤差とは分けて考えたい。
既存記事「プロテインを朝食の途中で飲むと遅い?パンより先に飲む実験との違いを確かめる」には食事の中で飲む順序の問いを譲る。ここで確かめるのは飲む時刻ではなく、試験の終了時に比較された人の範囲である。

飲んだ人の名簿と、最初に分けた名簿は同じか
無作為化比較試験とは、参加者を偶然の仕組みで介入群と比較群へ分ける試験である。補給の試験なら、飲む群と比較の飲食物を受け取る群を出発点で分ける。一方、結果を読む段階では、割り付けられた人、測定できた人、計画を守れた人という異なる集まりが登場する。実際に、当初の群に沿う解析と、測定値がそろう人や計画に沿った人の解析を併用した運動関連の試験がある。[5]
当初の割り付けに沿って効果を評価する考え方を、割り付けに基づく解析と呼ぶ。研究ではこの原則を用いて、補給と運動を導入したときの結果を評価している。[11][16] これに対し、計画を守った人を対象にする解析では、「実行できた範囲ではどうだったか」に目が向く。解析対象が違えば、答えようとする問いにも違いが生じる。[5]
例えば、忙しくて運動に通えなかった人を比較から外し、運動も補給も続いた人だけを見る場面を想像する。残った人の成績がよくても、それが粉の違いなのか、運動まで続けられた条件を含む違いなのかを確認したい。この例は特定の研究で起きた脱落理由の説明ではない。結果を読む際に、自分がどの名簿を見ているかを意識するための問いである。
続かなかった人を含めて考えることは、努力した人の成績を軽く扱うことではない。仕事や家事がある生活へ取り入れるなら、実行できる部分と難しい部分の両方が関係する。食事介入の実行状況が良好でも運動が難しかったという研究結果は、その違いを具体的に示している。[16] シェーカーを空にすることと、予定した筋トレを終えることは、同じチェック欄には入らない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
同じ試験でも、解析に残る人で数字が動く
解析対象の違いが見える例として、高齢者の自宅運動に薬剤を追加した探索的な無作為化比較試験を見よう。18〜39歳の女性の補給効果へ、そのまま当てはめることはできない。これはプロテインの試験ではない。補給の有効性を裏づけるためではなく、同じ研究で解析の範囲によって結果の読み方が変わる例として扱う。[5]
対象は運動習慣の乏しい65〜85歳の40人で、薬剤群とプラセボ群に分けられた。両群とも、自宅で椅子から立つ運動と自転車こぎを行った。主な評価は13週間後の、30秒間に椅子から立てた回数の変化だった。当初の割り付けに基づく解析では、薬剤群からプラセボ群を引いた調整平均差は−2.13回、95%信頼区間は−4.61〜0.34回だった。[5]
信頼区間は推定値の不確かさを表す幅である。この主解析では、群間差がない値であるゼロをまたいでいた。一方、測定値がそろった人だけを扱う解析では、薬剤群16人、プラセボ群19人となり、差は−2.46回、95%信頼区間は−4.87〜−0.06回だった。さらに計画に沿った人の解析では、対象は15人と16人、差は−3.44回、95%信頼区間は−5.86〜−0.99回となった。[5]
後の解析では統計的に有意な差が出ているが、数字だけを抜き出して主解析の代わりにするのは避けたい。いずれもプラセボ側に有利な方向を示しながら、解析対象と推定の幅が異なる。研究は主解析に加え、結果が解析の置き方にどの程度左右されるかを確かめる感度分析として、これらを位置づけている。[5]
なお、この薬剤試験の握力の群間差は−1.13 kgで、95%信頼区間は−3.52〜1.18 kgだった。椅子立ち回数の感度分析と違い、握力では統計的に有意な差は認められなかった。[5] 同じ参加者の身体機能を調べても、測る動作によって結論の強さはそろわない。見出しの「筋力」という言葉を、どの検査にも共通する結果として扱わないことが大切だ。
ここから「途中で抜けた人が差を作った」と断定することもできない。人を絞った解析で数値が変わったという事実と、なぜ変わったかという説明は分ける必要がある。読む側が持ち帰れるのは、最も大きい差を探す作業ではなく、主解析と補助的な解析を対応させる姿勢だ。[5] 小数点まで正確な数字にも、誰を数えたかという前提が付いている。

補給の実行と運動の実行は別に確かめる
プロテインそのものに戻ろう。急性疾患で入院した65歳超の高齢患者29人を、介入群14人と通常ケア群15人に分けた無作為化比較試験がある。介入群には入院中に体重あたりのたんぱく質量を設定し、退院後にはたんぱく質18.8 gの補給と週3回の筋トレを12週間組み合わせた。18〜39歳の女性の日常の補給へ直接適用するには、年齢と健康状態が異なる。[16]
割り付けに基づく解析では、筋量に有意な効果は認められなかった。除脂肪量の解析でも、開始時の除脂肪量を調整した係数は−0.31で、有意差はなかった。食事介入では良好な実行状況が得られたが、筋トレの実施は難しかったと報告されている。[16] 補給を続けたことだけで、計画した刺激が筋肉に加わり続けたと判断することはできない。
この試験は、若い健康な女性が仕事帰りに補給する状況とは異なる。急に入院した高齢患者で、通常ケアに対して食事と運動を組み合わせた比較である。[16] したがって「プロテインは誰にも効かない」にも、「運動さえ守れば必ず効いた」にも進めない。結果が出なかった条件を、そのまま研究の対象と計画に結びつけて読むのが筋だ。
別の多施設・二重盲検の無作為化試験では、70歳超の高齢入院患者に、入院中から退院後12週間にわたる低強度筋トレと、ホエイたんぱく質を含む補給または同じエネルギー量の比較食品を組み合わせた。補給により総たんぱく質摂取量は増えたものの、低強度筋トレへの適応を上乗せする効果は示されなかった。18〜39歳の女性に同じ結果が出るかは、この高齢入院患者の試験から判断できない。[10]
ここで確かめるべき比較相手は、「何も口にしなかった人」ではない。同じエネルギー量の食品を受け取った人である。[10] 検索結果の見出しにある「飲む・飲まない」は、この違いを落としやすい。飲み物を追加した影響を知りたいのか、エネルギーをそろえてたんぱく質の違いを見たいのかで、生活上の問いとの距離も変わる。
さらに、何が増えなかったのかも区別したい。急性疾患の患者の試験では、筋量に加えて握力や椅子から立つ動作、移動能力も評価している。[16] 「筋肉に効く」というひと言では、筋肉の量を指すのか、発揮できる力を指すのかが曖昧になる。飲み続けた日数を数える前に、自分が期待している変化と試験の測定項目が合っているかを確かめたい。
改善した研究は、どんな組み合わせだったか
肯定的な結果も並べて読む。高齢者の筋量・筋機能の低下を背景に、たんぱく質補給と運動を扱った系統的レビューでは、無作為化比較試験7件、計260人が採用された。週3回の筋トレと、主に乳由来のたんぱく質を毎日少なくとも15 g補う介入で、筋力や除脂肪量などの改善が整理されている。研究の期間と人数にはばらつきがあった。18〜39歳の女性の補給量や効果へ、そのまま置き換えることはできない。[1]
これは補給と運動の組み合わせに期待を持てる結果だが、「最後まで飲んだ全員が同じだけ増える」という数字ではない。レビューが扱う集団と介入条件を確認し、異なる試験を通じて見える傾向として受け取る必要がある。[1] 先ほどの入院患者の試験とは、改善が出たかどうかだけでなく、運動の強度や実施状況まで並べて読みたい。[10][16]
数字で読む比較対象の違い
7件・260人:補給と運動の組み合わせを検討した系統的レビューの規模である。[1]
29人:急性疾患の高齢患者で、補給と筋トレを通常ケアと比較した試験の人数である。[16]
18.8 g:その試験で退院後に毎日補ったたんぱく質量であり、全員への推奨量ではない。[16]
−2.13回:薬剤と自宅運動の試験で、割り付けに基づいて求めた椅子立ち回数の群間差である。[5]
−3.44回:同じ薬剤試験の計画に沿った人の解析による差であり、主解析とは対象が異なる。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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