腕だけの日と脚も鍛えた日で、プロテインの一回量を変えるべきか。全身の筋トレ後にホエイ20gと40gを比べた試験を軸に、動かした筋肉と体格、短時間の合成率と長期の筋肉量を分けて読む。男性中心の研究を女性の生活に当てはめる際の限界と、食事全体から考える順序も確かめる。
腕の種目だけで終えるつもりが、今日はスクワットまで加えた。更衣室でいつものシェイカーを手に取り、粉の量を迷う。腕だけの日と同じ量でよいのか。脚まで使ったのだから材料も多く必要に思える。運動の記録に種目を足すのは簡単でも、飲む量の足し算には別の根拠が要る。
答えの芯は、全身の筋トレ後に多い量で筋肉の合成率が高くなった試験はあるが、「脚を鍛えたら必ず増量」という規則までは作れない、である。若い筋トレ経験者の男性では、ホエイたんぱく質40gの摂取後は20gより筋たんぱく質合成率が高かった。一方、その反応は除脂肪量の多い群と少ない群で似ていた。男性の結果から18〜39歳の女性の一回量を直接決めることはできない。[5]
既存記事「女性のプロテイン、一回の量は多いほどよい?筋肉の合成と吸収の違いを読む」には、一回量と吸収の一般論を譲る。ここで確かめるのは、鍛えた部位が増えた日に量を変える根拠である。全身運動の実験、体格を考慮するレビュー、継続した筋トレの試験を同じ棚に並べずに読む。[3][5][10]
既存記事「プロテインは乳糖の一回量で選べる?分けて飲む前に知りたい試験の条件」が扱う乳糖と腹部症状の問いもそちらに譲り、ここでは筋トレで動かす範囲と筋肉の合成を追う。

全身を鍛えた後の比較は、脚だけの比較と違う
中心となるのは、筋トレを行っている男性30人を対象にした実験である。参加者を除脂肪量65kg以下の15人と70kg以上の15人に分け、それぞれが全身の筋トレ後にホエイたんぱく質20gまたは40gを摂る試験に、順序を無作為にして参加した。同じ人が両方の条件を経験するので、個人差を抑えて量の違いを比べられる。対象は若い筋トレ経験者の男性であり、18〜39歳の女性にも同じ差が出るかは別に確かめる必要がある。[5]
測ったのは筋原線維たんぱく質の合成率だ。筋原線維は筋肉の収縮を担う構造であり、ここでいう合成は、そのたんぱく質を新しく作る過程を指す。研究者は目印を付けたアミノ酸を使い、筋組織を採取して運動後の反応を調べた。シェイカーが空になる速さや、翌朝の体重を測った実験とは評価の対象が異なる。[3][5]
両群を合わせると、合成率は20gで毎時0.049%、40gで毎時0.059%だった。報告されたばらつきはどちらも±0.020で、摂取量による差は統計的に有意だった。これは「飲んだたんぱく質のうち、その割合だけ筋肉になる」という換算表ではない。筋たんぱく質が新しく作られる速さを、実験の条件下で比べた値である。[5]
ここには日常への大事な区切りがある。この試験で直接比べたのは、全身運動後に飲む量の違いだ。腕だけの運動と全身運動を同じ参加者で比べ、脚を加えたことだけの効果を取り出した設計ではない。「全身を鍛えた条件で40gの反応が大きかった」は言えるが、「脚を加えたから40gが必要になった」と原因を一本に絞ることはできない。[5]
たとえば、帰宅後に上半身の練習だけを行う日と、休日に全身を鍛える日があるとする。後者の一杯を考える参考にはなるが、練習メニューの名称が同じだけで実験と同条件にはならない。まず記録したいのは、全身という言葉の中身だ。何を動かしたのかを残すことと、研究の摂取量をそのまま採用することは、別々の判断になる。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
大柄な人ほど多く必要、という結果ではなかった
この実験は、体の大きさにも目を向けていた。除脂肪量は、体重から脂肪を除いた部分を表す指標である。日常でいう筋肉量と完全に同じ言葉として扱わず、研究で参加者を分けるために使われた体組成の指標として読む必要がある。[5]
少ない群の合成率は20gで毎時0.048%、40gで0.059%、多い群はそれぞれ0.051%と0.059%だった。著者らは、この摂取量の比較では除脂肪量によって反応が左右されるようには見えなかったと述べている。40gの利点は両方の体格群で現れた。[5]
この点は「たくさんの筋肉を動かしたなら必要量も多いだろう」という発想を整理する。体にもともとある除脂肪量と、その日の運動で使った筋肉の量は同じ項目ではない。さらに、動かした範囲と動かし方も区別したい。研究で確認された体組成の群間比較を、そのまま種目ごとの追加量の計算に使うことはできない。[5]
脚を使った実感が強い日ほど、帰りの階段で一杯の量まで決めたくなる。しかし、実感の強さはこの研究が摂取量を割り当てるために使った尺度ではない。筋肉を多く持っている人に多く飲ませた試験でもなかった。生活の手応えと、実験が比較した変数を結びつける前に、対応するものが本当に測られていたかを確かめたい。[5]
体格を考慮すること自体が無意味なのではない。ここで否定したいのは「体が大きい群だけ多い量が有利だった」という読み違いである。次に見るレビューは、まさに一律のグラム数を全員に当てはめてよいかを問い直している。同じ問題への入口でも、個別試験の群分けと、複数研究を読み直す方法では、答えの出し方が異なる。[3][5]
体重あたりのレビューは、動かす範囲をどう見るか
2019年のレビューは、若い成人の既存研究を再検討し、運動後に速く消化される質の高いたんぱく質を一回に摂る量として、体重あたり約0.31g/kgを提案した。平均的な体組成の人で、筋原線維たんぱく質の合成を高めながら、過剰な摂取に伴うアミノ酸の酸化を抑えるという観点である。若い成人の研究に基づく提案であり、18〜39歳の女性全体に共通する一回量として使うには、運動や体組成の条件も照らす必要がある。[3]
注目したいのは、このレビューが性別や運動で活動させた筋肉の量を検討したうえで、それらが体重あたりの目安を適用する大きな障壁にはならないと論じたことだ。全身運動後の40gの実験を読んだからといって、「動かす筋肉が増えるほど常に大幅な上乗せが必要」という整理に決着したわけではない。[3][5]
両者は、量の話をしていても同じ問いへの完全な答えではない。個別試験は、全身運動を行った筋トレ経験者の男性で、選んだ摂取量を直接比べた。レビューは、若い成人の研究を横断して体重に対する相対量を考えた。対象、比較方法、どの量を評価したかを外して、片方の数字だけを正解として貼り付けると筋道が消える。[3][5]
また、レビューは植物性や消化の遅いたんぱく質、高齢者、持久性運動、日常的にたんぱく質を多く摂る場合などについて、さらに研究が必要だとしている。目安を読む際には、その前提も一緒に持ち帰る。ホエイの運動後摂取から得た数字を、食事内容や運動が違う日にも無条件で適用するより、条件が近いかを先に見る方が筋が通る。[3]
同じ論文の中でも、平均値と個人の反応は区別したい。40g条件の方が高いという集団の結果は、参加者全員に同じ幅の増加があったという意味ではない。研究が報告した平均値にはばらつきも添えられている。その数字は人の反応を一点に固定するものではなく、自分の体感から毎時の合成率を逆算することもできない。[5]
健康な成人の試験をまとめたネットワークメタ分析では、一部の動物性・植物性原料について18〜25gで合成率が最も高くなるという予測が示された。ただし原料ごとに試験数は異なり、証拠の確かさにも限界があった。健康な成人全体からの予測を、18〜39歳の女性だけの最適量として当てはめることはできない。[13]
個別試験での差を尊重することと、研究全体の予測を読むことは両立する。前者は特定の参加者と条件で実際に比べた差を示し、後者は異なる試験を組み合わせた推定を示す。数字がそろわないときには平均を取って自分の一回量を作るのではなく、比較している条件と推定の仕方を確認する。この手順を踏むと、「全身の日」という短い言葉に、体格や原料の違いまで押し込まずに済む。[5][13]
運動後の量を相談する際にも、「全身を鍛えた」という説明だけでなく、普段の食事や補給の情報を一緒に伝えたい。長期の筋トレ試験では、もともとの食事でたんぱく質を十分に摂っている集団に、補給による追加効果が示されなかった。何を足すかを考えるには、足す前の条件を置き去りにできない。[8][10]
数字で読む全身運動後のプロテイン
30人:全身の筋トレ後にホエイ20gと40gを比較した筋トレ経験者の男性。[5]
毎時0.049%と0.059%:両群を合わせた筋原線維たんぱく質合成率。順に20g条件と40g条件である。[5]
約0.31g/kg:若い成人の研究を再検討したレビューによる、速く消化される質の高いたんぱく質の一回量の提案。[3]
51試験:運動直後の合成を評価したネットワークメタ分析に含まれた試験数。原料ごとの証拠の確かさは低〜中程度だった。[13]
12週間:未経験の若い男性で、補助食品を使いながら全身の筋トレを続けても、筋肉量や筋力の増加に追加の利点が見られなかった試験の期間。[10]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







