大胸筋の筋トレはチェーンを足すと違う?押す途中で増える重さと速度を読む

大胸筋の筋トレ用の器具を探すと見かける、バーベルに付けるチェーン。同じ表示重量でも押す途中の負荷はどう違うのか。ラグビー選手の速度測定、若い男性や女性競技者の継続試験を比べ、速く押せることと筋力が伸びることを分けて読む。購入前に確認したい重量の内訳と比較条件も整理する。

胸を鍛える器具を探していたら、バーベルの両端から鎖が垂れている動画が出てきた。押し上げるたびに床から鎖が離れ、下ろすと床に積もる。見た目は大がかりだが、確かめたいのは鎖の迫力ではなく、押す途中のどこで重さを受け持つのかである。

チェーンには、動作中の負荷の配分を変える使い方がある。実際にプロのラグビー選手を調べた研究では、通常の重りの一部をチェーンに置き換えた条件で、押し上げる平均速度と最高速度が約10%高かった。ただし、これはその場の動作の結果であり、胸の筋肉がその割合だけ育つという意味ではない。対象はプロ選手であり、18〜39歳の一般女性に同じ速度差が出るかは、この試験から判断できない。[15]

器具を買う前に押さえたい答えは、チェーンは重さの配分を変えて速度に影響する道具であり、長期的な筋力向上では通常の重りとの差が研究によって異なる、ということである。[2][4][9] 既存記事「大胸筋の筋トレはチューブ付き腕立てでも育つ?プレスと比べる刺激と成果の境界」には種目間の比較を譲り、ここではベンチプレスの中で変わる重さの配分に絞る。

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チェーンは「全部を持ち続ける重り」と違う

ベンチプレスは、ベンチに横になって重りを胸の側へ下ろし、押し上げる種目である。チェーンを使った研究では、鎖の輪が床に載ることで、下ろす動作の後半に負荷が減ることが、動作速度の変化を説明する可能性として挙げられている。逆に押し上げる際は、床から離れた部分を支えることになる。この動作途中の負荷の変わり方が、通常のプレートだけの条件との違いである。[15]

こうした方法は可変抵抗と呼ばれ、動作を通じた抵抗の配分を変えるために、バーベルへチェーンや弾性バンドを付ける。女性のトレーニング経験者を対象にした研究も、この配分を変える方法として両者を扱っている。[9] 18〜39歳の女性でも、この研究の対象は経験者であり、未経験者の導入効果は別に確かめる必要がある。「器具が増えたから全区間で同じだけ重くなる」と想像すると、比較の出発点を取り違える。

たとえば重りの記録に「チェーンあり」とだけ残しても、通常の重りを減らして置き換えたのか、そのまま追加したのかが分からない。ラグビー選手の速度研究は、チェーン条件と通常条件の総抵抗を同じにしている。チェーンを足したうえに、総抵抗まで増やした条件を、その研究の結果で説明することはできない。[15]

また、弾性バンドの研究では、全体の負荷に占めるバンドの割合を動作の最上部で評価したものがある。[14] 「全体の何割が可変抵抗か」という数字にも、どの位置で評価したかという条件が付く。チェーンとバンドを同じものとして買い替えるより、負荷の内訳と評価する位置を確認するほうが、研究との距離を縮められる。

器具の写真だけでは、この内訳は見えない。立川駅北口の帰り道にスマホで動画を見るなら、保存したいのは鎖が鳴る場面より、設定を説明している箇所だ。派手な音は、比較条件を読み上げてはくれない。

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同じ総抵抗で速度が変わった試験を読む

チェーンを直接扱ったBakerらの研究には、プロのラグビーリーグ選手13人が参加した。各条件で3回の反復を2セット行い、チェーンを使う条件では、最大挙上重量の60%に当たるバーベルの抵抗へ17.5 kgのチェーンを組み合わせた。総抵抗は最大挙上重量の約75%で、比較する通常条件も総抵抗をそろえた。プロ選手の比較であり、18〜39歳の一般女性への適用には、競技経験と負荷設定の違いを考慮する必要がある。[15]

最大挙上重量は、1回持ち上げられる最大の重量であり、論文では1RMと表記される。この試験で押し上げる局面の平均速度と最高速度は、どちらのセットでもチェーン条件で約10%高かった。[15] ここでの比較は「重りを軽くしたから速い」というだけのものではない。設定した総抵抗は同じでも、動作の途中で支える負荷が変わっていた。

研究者は、下ろす後半に床へ鎖が載って負荷が減ることで、下ろしから押し上げへの切り替えが速まり、押し始めの速度がその後にもつながった可能性を挙げている。[15] これは観察された速度を説明する仮説として読むべきで、胸の筋肉の内部で起きたことをすべて確定した説明ではない。

読者が記録を見るときにも、最大速度だけでなく平均速度が測られている点に意味がある。最高値は動作中の最も速いところ、平均値は測った局面全体の速度を表す。この研究では両方が増えているため、「一瞬だけ速くなった」という読み方では狭すぎる。一方、両方が速くても、測定対象はその場の速度であり、筋肥大や数か月後の成果は別の評価になる。[15]

対象が普段から競技トレーニングをしている選手である点も、買い物の判断に残しておきたい。研究の動作を動画で見たからといって、これから胸の筋トレを覚える人の速度差は予測できない。約10%という値は、その選手たちと負荷設定に結びついた結果として扱うのが妥当である。[15]

この試験の「約75%」にも注意が要る。これは参加者ごとの最大挙上重量を基準にした相対的な負荷であり、誰もが同じ重量を使ったという意味ではない。チェーンの17.5 kgだけを取り出して、自分のいつもの重りへ足す手順に変えることはできない。研究が比較したのは、最大重量に対する割合と総抵抗をそろえた条件の違いである。[15]

また、この研究は普段の練習の中で行った短いセットの比較だった。限界まで何度も押したときの結果や、疲れた日のすべての反復が同じ割合で速くなることを示したものとしては扱わない。[15] 記録に回数やセットを残すのは細かすぎる作業ではなく、どの範囲の結果を比べているかを見失わないための手がかりになる。

速くなった結果をパワーの向上と混ぜない

別のチェーン研究では、男性ラグビー選手8人が、通常のベンチプレスとは異なるベンチスローを行った。これは重りを投げ上げる動作である。条件の順序をランダムにした交差試験で、同じ参加者がチェーンありとなしを経験し、両条件の間には7日を空けている。男性競技者の投げ上げ動作を調べた試験であり、18〜39歳の一般女性の通常のベンチプレスにそのまま当てはめることはできない。[1]

通常条件は1RMの45%を一定の負荷とし、チェーン条件は30%を一定の負荷、15%をチェーンによる可変負荷とした。各条件で行ったのは3回である。[1] 同じ「45%」という数字でも、中身まで同じではない。この内訳を落とすと、チェーンという名称だけで効果を比べてしまう。

チェーン条件では平均速度や加速度が高まる方向の結果がみられた一方、最高パワーの差はごく小さく、平均パワーの差は明確でなかった。[1] パワーは、力をどれだけ速く発揮するかを捉える指標であり、速度と同じ欄にまとめてよい数字ではない。この試験は、速く動いたという結果から、測ったすべての出力が改善したと結論する危うさを示している。

さらにベンチスローの結果は、バーを手放さず押す普段のセットと区別する必要がある。測定した動作が違えば、比較している課題も違う。[1][15] 動画の説明に「パワー向上」とあっても、まず研究で何を測ったかを確かめたい。押す速さ、持ち上げられる最大重量、投げ上げの出力では、同じチェーンに尋ねている問いが異なる。

この点は器具選びの目的にも関わる。今の課題が、一定の動作を落ち着いて繰り返すことなら、競技者のベンチスローの速度を、そのまま購入理由にしなくてよい。測定結果が自分の課題に近いかを先に考えると、「研究がある器具」という大きな看板を、具体的な比較へ戻せる。

同じ人が両条件を行う交差試験には、人による元々の筋力の違いを、条件の違いと混ぜにくくする利点がある。ただし参加者は男性ラグビー選手8人で、試験はその場の反復を評価している。[1] 条件を丁寧にそろえた小さな試験として価値を認めつつ、一般の女性の長期的な成果へ話を広げない。その読み方なら、肯定的な結果も過小評価せずに受け取れる。

数字で読むチェーンの比較条件

13人:総抵抗をそろえたベンチプレスの速度研究に参加した、プロのラグビー選手の人数だ。[15]

約10%:その研究でチェーン条件の押し上げ平均速度と最高速度が高かった程度である。[15]

30%と15%:ベンチスロー研究のチェーン条件における内訳だ。1RMに対し、前者が一定の負荷、後者が可変負荷を占めた。[1]

28%と19%:若い男性の継続試験で報告された、チェーン群と通常群のベンチプレス1RMの伸びである。[2]

17.4%と11.8%:女子大学競技者の試験でのチェーン群と通常群の伸びであり、群間差は統計的に有意ではなかった。[4]

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宮川涼 Founder

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