睡眠前はスマホ以外なら目が休まる?紙の本との距離と読み続ける時間を考える

条件をそろえた比較では、まばたき回数は紙と画面で有意差がなく、まぶたが閉じ切らない割合は画面7.02%、紙4.33%だった。ただし、この割合と疲れの症状に有意な相関はなかった。近くを見る目の働き、姿勢による端末位置の変化も読み、紙への変更を目の休息や睡眠改善と混同しない選び方を考える。

栞を抜いて枕元の文庫本を開く。これで目も休めるつもりだったのに、細かい文字を追ううちに本が顔へ近づいてくる。画面を片づけたことと、近くの文字を見続けることを終えたかどうかは、別に確かめたい。

紙の読書も、目を使う作業である。文字の大きさや見る距離などをそろえた比較では、画面と紙のまばたきの回数に有意差はなかった。一方、閉じ切らないまばたきの割合には違いがあった。素材だけで答えを出すより、読んでいる間に何が起きるかを見る方が実用的である。[19]

ここでは睡眠前のスマホ以外の選択肢として、紙の本をどう読むかを考える。既存記事「寝つきが悪い夜は紙の本ならよい?運動後に読む画面と部屋の光を分けて考える」に光の論点を譲り、文字までの距離、読み続ける時間、疲れの確かめ方に絞る。目が楽だったことを、そのまま眠りが改善した証拠にはしない。[14][17]

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紙の本でも、近くを見る仕事は残る

目が距離に応じてピントを合わせる働きを調節という。水晶体などの働きによって、異なる距離の対象をはっきり見られるようにする仕組みだ。調節に関する解説では、対象が近づくほど必要な調節が増え、遠ざかるほど減ると説明されている。印刷された文字も、近くに置けばこの仕組みを使って読む。[7]

同じ解説にある例では、作業距離が20cmなら必要な調節はおよそ5Dとなる。Dは光を曲げる強さを表す単位である。これは目のピント合わせを説明する光学上の関係であって、20cmを超えれば安心、あるいはこの距離なら病気になるという境界ではない。必要な働きと、本人が無理なく続けられるかどうかを分けて受け取りたい。[7]

寝室で試すなら、まず本を開いた位置を見てみる。胸元で支えているのか、顔のすぐ前まで持ち上げているのか。読み始めは楽でも、文字を確かめるたびに近づけていないか。紙だから問題ないと決めてしまうと、こうした動きを見落とす。確認の対象は本の材質だけでなく、自分と文字の位置関係である。[7]

紙の本は文字の大きさをその場で変えにくい。スマホから移った先が細かな文字の文庫本なら、画面から離れるという目的は達しても、近くを見続ける条件は残る。反対に、表示を大きくした画面なら必ず疲れないとも言えない。距離に伴う調節の要求と、読む時間や作業の性質は、それぞれ確認する必要がある。[7][13]

ここで「遠くへ離すほどよい」と無理に腕を伸ばす必要はない。ぼやけた文字を我慢して追うことを目標にせず、手元の本が読みにくければ、別の版や別の行動を候補にする。距離の数字を守るために読みにくさを抱えるのでは順序が逆だ。近くの見づらさや疲れが続く場合は、眼科の医師に相談する。[7]

相談の際は「本を読むと疲れる」から少し具体化できる。遠くは見えるのに近くがぼやけるのか、読み始めからつらいのか、続けたあとに難しくなるのか。調節不全に関する解説では、近くのぼやけ、目の疲れ、読書を続けにくいことなどが挙げられ、遠くの視力が通常でも問題が見過ごされることがあるとされる。視力表だけで、寝室での困り事を片づけないための情報である。[7]

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横になると、文字はどこへ近づくのか

スマホの距離と睡眠を調べた研究では、看護学生23人を対象に、座った姿勢と横になった姿勢で端末を見る位置を測定した。参加者の平均年齢は19.7歳である。頭と手の位置を非接触の機器で測り、その座標から距離を求めている。寝室で自分が何となく感じる「近い」を、位置の測定に置き換えた研究だ。[14]

座った姿勢の距離は平均20.3cm、横になった姿勢では16.4cmだった。個人の範囲も、座位で13.3〜32.9cm、横になった状態で9.9〜21.3cmと広い。少なくともこの集団では、姿勢が変わると端末との距離も変わっていた。「同じスマホを同じように使っているつもり」でも、顔との位置は姿勢によって変わる。[14]

ただし、この研究は端末を遠くへ動かすよう割り付けて、睡眠が改善するかを試したものではない。姿勢による距離を測り、質問票による主観的な睡眠状態との関係を調べている。横になった状態での距離と睡眠状態に関連はあったが、距離を直せば眠れるという因果の証明として扱うことはできない。[14]

対象は若い看護学生であり、18〜39歳の女性全体に同じ距離や睡眠との関連が当てはまるかは、別に確かめる必要がある。通勤で画面を使い、仕事でも使った人と、日中ほとんど画面を見なかった人を同じ条件と考えるのも早い。この研究から持ち帰るのは最適距離の処方よりも、座位から臥位へ変わったときに、自分の端末の位置も確かめるという視点である。[14]

紙の本に替えるときも、この視点は役立つ。ただし、スマホで測った平均距離をそのまま紙の本の実測値と呼んではならない。本では判型も重さも持ち方も違う。ベッドに入る前には楽に読めた本が、横向きではページの端を追いにくくないか。これは研究結果を紙に転記する作業ではなく、寝室の配置を確かめるための問いである。

たとえば椅子では読めるのに、枕に頭を預けると本を顔の前へ引き寄せたくなる夜がある。そのときは紙の選択を失敗と考えず、読む場所まで含めて考え直せばよい。寝床で読み続けることを達成目標にしない。スマホを手放すことと、別の近業を際限なく続けることは同じ目標ではない。[7][14]

まばたきは、回数だけでは比べられない

紙と画面を比較した研究で大切なのは、何をそろえて比べたかである。25人が参加した比較試験では、同じ文章をデスクトップ画面または印刷された紙で20分間読み、距離を50cmにそろえた。文字の大きさとコントラストを合わせ、見る角度や明るさも近い条件にしている。日常の小さなスマホと大判の本をそのまま比べた試験ではない。18〜39歳の女性に同じ割合が当てはまるかは、この比較だけでは判断できない。[19]

まばたきは画面で毎分14.9回、紙で13.6回だったが、この差は統計学的に有意ではなかった。「画面は必ず紙よりまばたきを減らす」という説明は、この条件をそろえた比較では支持されなかった。紙にしただけで回数が増える、という単純な期待から一歩離れる結果である。[19]

一方、まぶたが閉じ切らない不完全なまばたきの割合は、画面で7.02%、紙で4.33%と、画面の方が有意に高かった。回数が似ていても、動きの質まで同じではない。しかし、この研究では不完全なまばたきの割合と症状スコアとの有意な相関は認められなかった。動きの違いが出たことと、本人の疲れを説明し切れたことは別だ。[19]

著者らは、以前の研究で見られたまばたき回数の違いについて、提示方法だけでなく、課題が頭に求める働きの違いが関係する可能性を挙げている。仕事の細かい確認を画面で行い、紙では気楽な文章を読むなら、変わったのは媒体だけではない。何をどのくらい集中して読むのかも、比較の中に入ってくる。[19]

そのため、自宅で紙と画面を比べるなら、片方を仕事の書類、片方を気軽な読み物にして「紙の勝ち」と判定しない方がよい。文字の大きさや内容、読む場所、読み終えるタイミングも振り返る。紙への変更を取り消す必要はないが、楽だった理由を素材だけに預けないことが、次の夜にも使える選び方につながる。[19]

また、デスクトップ画面と紙を比べた結果を、そのままスマホと紙の差と呼ばないことも大切だ。試験でそろえられた50cmという距離と、横になって使うスマホで測られた距離には、条件の違いがある。参加者も課題も異なるため、研究を横につないで「距離の差が疲れの差を作った」と計算することはできない。それぞれの試験が直接比較した範囲を守って読む必要がある。[14][19]

家庭ではすべての条件をそろえる実験より、読書を終えやすい準備の方が取り入れやすい。本をどこに置けば閉じられるか、途中で読みにくくなったときに別の本へ替えるか、そのまま終えるか。こうした段取りは、紙の読書で睡眠が改善するという証明とは別の生活上の選択だ。画面から紙への変更をひとつのきっかけにしつつ、本を読んだかどうかだけで夜の過ごし方に合否を付けないようにしたい。

数字で読む寝る前の読書条件

23人の測定:スマホの距離と主観的な睡眠状態を調べた若い看護学生の研究である。[14]

20.3cmと16.4cm:座位と横になった姿勢で測ったスマホまでの平均距離であり、推奨値ではない。[14]

毎分14.9回と13.6回:画面と紙のまばたき回数で、条件をそろえた比較では有意差がなかった。[19]

7.02%と4.33%:不完全なまばたきの割合は、同じ比較で画面の方が高かった。[19]

4時間:教科書と特殊な表示装置を比べた近業試験の読書時間であり、就寝前に勧める時間ではない。[13]

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宮川涼 Founder

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