大胸筋の筋トレはセット間も伸ばす?胸を押す速度と成長を測る場所から考える

大胸筋の筋トレのインターバルに胸を伸ばすと、次のセットも押しやすくなるのか。ベンチプレスの速度を調べた比較試験と、セット間ストレッチを続けた試験を読み分ける。反復回数、最大筋力、筋肉の厚さは別の成果であること、胸以外の測定結果を胸の成長へ広げない判断の仕方を示す。

胸を押す運動を終え、次のセットまで腕を後ろへ開く。じっと待つより、伸ばしている方が時間を有効に使えそうだ。ベンチから立つ前に胸を開けば、次も押しやすくなるのか。休憩にも役目を持たせたくなる場面だ。

大胸筋の筋トレのセット間ストレッチは、直後の速度と長期の適応を分けて判断する必要がある。ベンチプレスの比較試験では静的ストレッチ後の平均挙上速度が前のセットより低下した一方、初心者がセット間ストレッチを続けた試験では、筋力と測定した筋厚の改善が妨げられなかった。見ている時間と成果が違うのである。[4][1]

既存記事「背中の筋トレの休憩中は伸ばす?直後の成績と長期の成長を別々に読む」には背中の運動の問いを譲る。ここでは胸を押す運動に絞り、次のセットの動きと、胸の筋肉を実際に測った結果との距離を確かめる。ベンチプレスが研究に含まれていることと、大胸筋の成長が測定されていることは同じではない。[1][12]

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胸を伸ばす休憩と、何もしない休憩を比べる

直接の手がかりは、大学生25人が別々の日にベンチプレスを行った比較試験である。用いた負荷は、最大で持ち上げられる重量の60%。限界まで反復するセットを続けて行い、セット間には静的ストレッチ、反動を使うストレッチ、ストレッチなしという条件を設けた。同じ人が違う条件を経験するため、個人差を抑えて条件を比べる設計である。大学生を対象とした結果を、18〜39歳の女性全体へそのまま当てはめるには慎重さが必要だ。[4]

静的ストレッチとは、動かずに伸ばした位置を保つ方法を指す。この試験で大切なのは、伸ばした直後の気分より、次にバーを押したときの動きを調べた点である。研究は押し上げる局面の平均速度や、加速している区間に着目した。胸が開いた感じがする、腕が軽い気がする、といった感想とは別の尺度である。[4]

結果は、短い題名だけでは読み違えやすい。次のセットにおける加速区間と速度の推移のパターンは、ストレッチ条件によって変わらなかった。その一方、速度を実際の値で見ると、静的ストレッチ条件では次のセットの平均挙上速度が前のセットより有意に低かった。動作中の速さの変わり方と、どれくらい速く持ち上げたかは区別されている。[4]

たとえば、押し始めから終わりまでの速さの変化が似ていても、その全体が遅くなっていることはあり得る。「動きのパターンに影響しない」という表現を、「どの成績も変わらない」と読み替えないことが必要だ。この試験の著者も、高い絶対速度を続くセットで保つことを重視する場合は、静的ストレッチを避けるか別の方法に置き換えるという判断を示している。ただし、この結果が答えるのは最大筋力の60%で限界まで押すセットを続けた条件である。伸ばす強さや保持時間まで違う日常のストレッチ全般へ、同じ速度低下を広げることはできない。[4]

ここから一般の読者が受け取るべきなのは、急いで反動をつけて伸ばそう、という指示ではない。何を守りたいセットなのかを先に決める、という読み方である。速く押すことを課題にしている日の休憩へ、良さそうだからという理由だけで静的ストレッチを加える根拠にはならない。研究の比較条件は、そのまま誰にでも勧める手順ではない。[4]

また、この速度の結果から「伸ばすと必ず反復回数が減る」と断定することもできない。反復を続けられるかと、同じ反復をどれだけ速く押すかは別の問いだ。検索したいのは回数でも、提示された研究の結論が速度についてなら、答えの単位を勝手に回数へ変えない。胸のトレーニングを評価するときは、回数の欄だけで全体を代表させない方が研究に沿う。[4]

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続けた試験では筋力が伸びたが、胸の厚さとは別だ

長期の手がかりとして、運動習慣の乏しい健康な成人29人を無作為に分けた試験がある。通常の筋トレ群と、セット間ストレッチを加える群を8週間比較した。ベンチプレスを含む全身の運動を行い、筋力と筋肉の厚さの変化を調べている。対象は、すでに胸のトレーニングを長く積んだ人ではなく、始めた段階の人たちである。18〜39歳の女性が経験を積んだ後にも同じ適応が続くかは、この初心者の結果とは分けて考えたい。[1]

両群は週2回、連続しない日に運動した。各種目は8〜12回が限界となる負荷で4セット、セット間の休憩は90秒。ストレッチ群は、その間に最大の可動範囲で30秒の静的な受動ストレッチを行った。受動とは、自ら筋肉を縮めて動かすことを主とせず、伸ばされる形で行うことだ。研究は、気が向いたときに軽く胸を開く場面より、条件をそろえた比較である。この30秒・最大可動範囲という手順は長期試験のものであり、先ほどの速度試験の手順と取り違えない。強さ、保持時間、反復の負荷をひとまとめに「セット間ストレッチ」と呼ぶと、異なる条件の結果を同じ方法の効果と誤読しやすい。[1][4]

ベンチプレスの最大筋力は、ストレッチ群で23.4%、通常群で22.2%増加した。研究が示す増加量の信頼区間はそれぞれ4.3〜11.1kg、5.2〜10.9kgである。信頼区間は、推定値が持つ不確かさを読むための幅だ。両群で筋力が伸びたことが中心であり、増加率を横に並べただけでストレッチ群の勝ちと決める結果ではない。[1]

ここで測定場所を確認したい。筋厚を調べたのは上腕二頭筋、上腕三頭筋、大腿直筋、外側広筋であり、大胸筋ではない。ベンチプレスの成績は胸を押す運動の成果だが、それだけで胸の筋肉がどれだけ厚くなったかを表すことにはならない。胸を含む運動をした試験から、胸の厚さの増加率を作ってはいけないのである。[1]

ストレッチ群では外側広筋の厚さと、測った部位の筋厚の合計について、通常群より大きな増加が認められた。外側広筋の筋厚の増加率は17.0%と7.3%、合計は10.5%と6.7%だった。ただし著者は、筋肥大についてストレッチ併用が優れていると結論するには十分でないとしている。好ましい数字があっても、研究自身の結論の強さを追い越さない。[1]

この試験を胸の運動へ持ち帰るなら、初心者の初期の筋力や測定部位の筋厚の適応を、セット間ストレッチが妨げなかったという範囲になる。胸を伸ばすことを成長の必須条件にする結果でも、伸ばさないと損をするという結果でもない。休憩のたびに何かを足さなくても、通常群はベンチプレスの筋力を伸ばしていた。[1]

次の反復回数は、休憩の条件もそろえて読む

休憩中に伸ばすかを試すとき、休んだ時間まで変わってしまうと、何が違いを生んだのか分かりにくい。ストレッチありの日は長く休み、なしの日はすぐ押し始めたなら、伸ばした効果と待った効果を切り分けられない。セット間の時間も比較の条件であることは、休憩時間そのものを変えたベンチプレスの試験からも分かる。[13]

この無作為化クロスオーバー試験では、運動経験のある男女22人が、最大筋力の75%の負荷で8回を4セット行う設定を経験した。セット間の休憩は1分と2分で比較された。反復回数に加え、仕事量や平均パワーなども調べている。パワーとは力を出す速さを含めた仕事の勢いの指標であり、重量や回数だけとは異なる見方になる。対象は運動経験のある男女であり、18〜39歳の女性でも、初心者へ同じ結果をそのまま当てはめることは避けたい。[13]

平均パワーは、どちらの休憩条件でもセットが進むにつれて男女とも低下した。一方、女性は男性よりパワーを保ちやすかった。また、1分休憩で実施した反復回数には男女の違いがあった。同じ負荷の割合と同じ予定回数でも、誰もが同じように次のセットをこなすわけではなかったのである。[13]

これは、女性なら休憩を短くしてよいという処方ではない。まして女性ならセット間ストレッチの影響がないという意味でもない。この試験が操作したのは休憩時間であり、ストレッチの有無ではないからだ。女性を含む研究であっても、調べた条件をまたいで結論を運ばない。今回の問いに対しては、休憩時間と対象者の違いを意識する補助線になる。[13]

休憩の長さを比べる研究と、休憩中の行動を比べる研究を並べると、記録の見方も整理できる。前者は待つ時間、後者はその間に何をしたかが比較の中心になる。胸を伸ばしてみた日に回数が変わっても、休憩の長さや使った重量まで違えば、ストレッチだけの答えにはならない。この区別は個人の記録を実験と同じ精度にする話ではなく、原因を急いで決めないための視点だ。[4][13]

初心者の長期試験でも、ストレッチの時間だけが独立して置かれたわけではない。全身の筋トレ、連続しない日の実施、反復の負荷設定が組み合わさっている。胸を伸ばす動作だけを抜き出して同じ筋力向上を期待するのは、この試験とは異なる使い方になる。運動全体に何を足した比較だったのかを読むことが、追加の手順に期待しすぎない判断につながる。[1]

数字で読むセット間ストレッチと胸の運動

大学生25人:ベンチプレスのセット間でストレッチ方法を比較した対象である。[4]

最大筋力の60%:直後の挙上速度を比較した試験では、この負荷を用いた。[4]

8週間・29人:通常の筋トレとセット間ストレッチ併用を比べた初心者の試験である。[1]

90秒の休憩内に30秒:長期試験では、この時間設定で静的な受動ストレッチを加えた。[1]

23.4%と22.2%:ベンチプレス最大筋力の増加率であり、大胸筋の筋厚の増加率ではない。[1]

男女22人:休憩時間を変えて反復回数やパワーを調べた別の試験の対象である。[13]

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宮川涼 Founder

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