HIITのアプリの合図は高い音ほど急ぐ?音程と動く速さを分ける選び方

HIITのアプリで鋭い合図を聞くと、動きまで速めたくなる。けれど音の高さ、鳴る間隔、合図に反応する課題は別の条件である。音に合わせた手首の練習、歩行、若い競技者の試験から、動作の速さときつさを混同せず、開始と休憩を知らせる音を選ぶための確認点を考える。

マットの前で足を止め、HIITの開始音を待つ。画面ではまだ休憩なのに、鋭い電子音を聞いただけで次の動きを始めたくなる。そんなとき、音を高くすれば運動も速くなるのか、と設定欄が気になる。

高い音ほどHIITで速く動ける、きつさが変わる、と判断する根拠はここで扱う研究からは得られない。手首の協調運動、歩行中の脳活動、競技の反応練習は、それぞれ別の問いを調べている。アプリではまず、音の高さと鳴る間隔、開始・休憩の区切りを分けて確認したい。[6][18][19]

アプリで先に確認したいのは、何のために鳴る音かだ。開始を知らせる音なのか、動くたびに合わせる音なのか、それとも途中で動作を変える指示なのか。外からの出来事を手掛かりに予定した行動を思い出す課題と、自分で時刻を見計らう課題では、関わる脳活動も異なるという研究がある。音色の好みと合図の仕事を分けるところから考えたい。[13]

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高い音と、速く鳴る音を混ぜない

設定画面で音を変更するときは、音程、音量、鳴る間隔を別々の欄として見ると整理しやすい。ここでいう音程は高い音か低い音か、間隔は次の音までどれだけ待つか、という区別である。高い音に変えたつもりで、細かく連続する通知へ切り替えていれば、比べている条件が増えてしまう。これはアプリを見比べる際の確認方法であり、高音の効果を示す実験結果ではない。

たとえば、運動開始の直前だけ音が鳴る設定と、運動中も繰り返し鳴る設定では、使い方が違う。前者は区切りを伝える役目であり、後者を動作の拍として使うなら、動く間隔まで関わる。開始のベルに急かされた気分になったことを、そのまま繰り返し動作の速度が上がった証拠にしないことだ。

外部の合図を手掛かりに予定した行動を行う働きは、研究では出来事に基づく展望記憶として扱われる。展望記憶とは、後で行う予定を覚えて実行する働きのことだ。健康な高齢者を対象とした無作為割付研究では、外部の出来事を手掛かりにする課題で、環境の変化を捉え、注意を切り替えることに関わる活動が見られた。対象が高齢者のため、18〜39歳の女性のHIIT中にも同じ働き方や効果が現れるかは、この試験から判断できない。一方、時間を自分で見計らう課題では、認知的な制御などに関わる領域が活動した。[13]

この研究を家庭のHIITにそのまま当てはめることはできない。それでも、音を聞いて休憩から運動へ移ることと、運動中に速く動き続けることを同じ成績として扱わない理由になる。タイマーが教えているのは区切りであり、区切りが分かりやすいことだけで運動能力全体の向上を語るのは飛躍である。[13]

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音に合わせた練習でも、速度が上がるとは限らない

音の合図と動作を結び付けた研究として、参加者を無作為に分けた手首の練習試験がある。対象は若年成人24人で、変動する構造を持つ音に手首の往復運動を合わせる群、自分のペースで手首を動かす群、練習しない群に分けられた。練習によって、標的へ正確に手を動かす課題の成績がどう変わるかを調べた研究である。若年成人の結果でも、18〜39歳の女性の全身運動にそのまま当てはめることはできない。手首の小さな往復運動と、脚や体幹を使うHIITでは動作も負荷も違い、この試験はタイマー音の心理的効果を調べたものでもない。ここで取り上げるのは、音を使った実験なら何でも高音の効果の証明にできる、という読み違いを避けるためである。[6]

練習群は4回の練習を行った。結果として、標的を狙う正確さはすべての群で改善したが、標的を打つ速度の改善はなかった。また、音に合わせて練習した群は、自分のペースの群や練習しない群より優れた成績を示さなかった。特殊な変動を持つ音を使えば、練習効果も必ず上乗せされるという予想は、この比較では支持されなかった。[6]

大切なのは、何が否定されたかを狭く読むことだ。否定されたのは、この条件の音に合わせた練習が、比べた他の条件より優れるという予想である。音の合図はすべて無意味だという結論でも、高音と低音の差がないという結論でもない。手首の標的課題から、脚を使うHIITの成績まで決めることもできない。[6]

さらに、この研究では、練習課題中の動きの予測しにくさが高い人ほど、その後の標的課題で改善を示す傾向があった。ただし、これは練習群の違いとは別に見られた関連である。自分の動きを意図的に乱せば上達する、という指示には置き換えられない。群どうしを比べた結果と、人ごとの特徴の関連は別に読む必要がある。[6]

夕方の部屋で試すなら、音が変わった日に回数が増えたとしても、まず動作を同じように行ったかを確かめたい。手を伸ばす幅が小さくなった、途中の止まりが減った、開始を早めた、といった違いも記録の候補になる。これは効果を保証する練習法ではなく、回数という結果を何の変化として読むかを決めるための観察である。

音に合わせた手首の研究では、練習しない群も比較に含まれていた点に注目したい。練習後に正確さが上がったという事実だけなら、音の練習が効いたように見える。しかし、他の群でも正確さが上がっていたため、その改善を音に固有の利点とは扱えなかった。開始前と終了後だけを見ることと、別の条件の変化も並べることでは、結論が違ってくる。[6]

家で設定を比べるときにも、この考え方は役立つ。音を変えた日だけ印象が強く残っているなら、変える前の動作をどう行っていたかまで思い出してみたい。以前の記録がなければ、今日の結果は今日の記録として置いておけばよい。数値が残っていない場所へ、想像した改善率を書き足す必要はない。音の違いを楽しむことと、効果を検証することは、それぞれ違う目的として扱える。

また、標的を狙う正確さと速度は、同じ課題の中でも別々の結果だった。正確さが改善したから速さも改善したはずだ、と連動を決め付けない読み方が求められる。腕の課題で測った正確さを、脚の運動の安定性へ置き換えるのも同じ飛躍だ。研究の結果を生活へ持ち帰るときは、測定した動作の名前も一緒に持ち帰る必要がある。[6]

歩行中の脳活動も、音だけで一律には変わらない

歩くときの音と身体の印象については、既存記事「体力をつける散歩は高い足音で軽くなる?音の高さと歩き方の変化を読み分ける」に譲る。ここで見たいのは足音の印象ではなく、アプリの合図に何を期待して設定を選ぶか、という場面である。

歩行中に聴覚の合図を加えた別の研究では、24人を地面の上で歩く群とトレッドミルで歩く群へ無作為に割り付け、歩行周期に沿って脳波を測定した。参加者の平均年齢は25.7歳で、ばらつきは標準偏差で3.8歳だった。脳波とは、頭皮上から記録する脳の電気的活動であり、動作速度そのものを測る値とは違う。平均年齢が近くても、18〜39歳の女性がHIITを行うときの音程の効果へは、そのまま適用できない。[19]

地面の上を歩く条件では、音の合図を加えても、歩行周期中のどの脳領域にも有意な活動変化は認められなかった。一方で、自分で速度を選ぶ条件における地面歩行とトレッドミル歩行の比較では、特定の歩行局面で脳波の違いがあった。つまり、研究の中で何と何を比較したかによって、読み取る結果が異なる。[19]

音を加えた条件で脳活動が変わらなかったことを、聞こえていない証拠にしてはいけない。また、歩行環境の違いに伴う脳波の差を、音が運動を楽にした証拠にしてもいけない。測った対象と比較した条件を離してしまうと、音の設定欄に研究以上の意味を持たせることになる。[19]

スマホの広告や説明に「脳」「リズム」「反応」といった言葉が並んでいても、自分が必要なのはどの役目かを考えたい。開始を聞き逃したくないのか、動く間隔をそろえたいのか、記録を取りたいのか。脳活動の研究があること自体は、特定のアプリの音程を選ぶ理由にはならない。[19]

歩行研究で扱われたのは、歩行周期のどの場面で脳活動が違うか、という細かな問いだった。地面の上で歩くときの合図の有無と、地面とトレッドミルの違いを分けているからこそ、結果を取り違えずに読める。室内で動いているという共通点だけで、別の運動機器やスマホの設定にも同じ差が出るとは考えない方がよい。[19]

自宅でも、音を変更した日にスマホの置き場所まで変えていれば、そのことをメモに添えられる。画面を見たまま動いたのか、画面から目を離して音を頼ったのかも、設定の使い心地を振り返る材料だ。こうした記録から確かめたいのは、まず区切りを理解しやすかったかどうかである。そこから先の速度やきつさは、実際に見た動作と感じた負担を確かめてから言葉にしたい。

数字で読む合図と動作の研究

24人:音に合わせた手首の練習などを比較した無作為割付試験の参加者数である。[6]

4回:手首の練習群が行った練習回数で、音に合わせる群の優位性は示されなかった。[6]

24人:地面歩行とトレッドミル歩行に分け、聴覚合図と脳波を調べた研究の参加者数である。[19]

18人:反応型と予定型の敏捷性練習を比較した、16歳未満の男子サッカー選手の人数である。[18]

8週間:そのサッカーの比較試験の介入期間で、反応型では課題に即した成績と楽しさに利点があった。[18]

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宮川涼 Founder

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