ダイエットの水泳は速く泳ぐほど効率的?一往復の消費と泳ぎの上達を分けて読む

ダイエットで水泳を選ぶと、速く泳ぐほど効率がよく、消費も増えるのかが気になる。競泳選手の比較試験とレビューから、泳法、速度、ストロークで変わる指標と、日常のペース記録を整理する。同じ距離と同じ時間の違いを押さえ、腕の効率を消費カロリーや減量効果に読み替えない記録の見方を考える。

壁に着いて息を整える間に、隣の人はもう折り返している。こちらは懸命に腕を回しているのに、壁が遠い。上手な人ほど楽そうなら、速く泳ぐ人はエネルギーも使わないのだろうか。

答えの芯は、速さだけでは消費も減量効果も決められない、である。水泳の効率には異なる測り方があり、ペース配分も距離や泳法で変わる。[3][8] 普段の水泳では、隣の人の速度を追う前に、自分がどの調子で泳ぎ続けられたかを記録したい。ここでは研究の比較条件を手掛かりに、日常の記録の付け方を考える。

食欲の話は既存記事「ダイエットの水泳後は水温で空腹が変わる?陸の運動と食事量の違いを読む」に譲る。ここで追うのは、水の中の一往復である。同じ距離を泳いだのか、同じ時間泳いだのか。泳法や途中の休憩まで含めて、何をそろえると比較になるのかを見ていく。

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「効率がよい」は何を割った数字なのか

水泳研究の「効率」は、日常語の「手早く済む」とは少し違う。体が使ったエネルギーに対して機械的な仕事がどれほど得られたかを見る場合もあれば、その機械的な仕事のうち、水の抵抗に対抗して進むために使われた割合を見る場合もある。分子と分母が変われば、同じ泳ぎから別の効率が出てくる。[8]

この違いを調べた研究では、泳ぐ動きを模した実験室の全身用装置で、泳者10人の機械的な仕事と代謝によるエネルギー入力を評価した。18〜39歳の一般女性がプールで泳ぐ場合への適用は、この装置による評価とは分けて考える。[8] 全体の機械効率は0.28±0.01だった。一方、推進に関わる効率の推定値は、抵抗に関する値の置き方によって約0.10〜0.35となった。研究者らは、実際の泳ぎを実験室で完全に再現する難しさにも触れている。[8]

この0.28を見て「食べたものの28%が前進に変わる」と読み替えるのは誤りである。研究で全体の機械的仕事として扱ったものと、抵抗に打ち勝って進む仕事は分けられている。まして、この値を自分のプールでの運動にそのまま当てはめることはできない。測る仕組みを知るための数字であり、個人の消費カロリーを計算する係数ではない。[8]

速さの評価と消費の評価も分けたい。同じ距離を短い時間で泳ぎ切った、という記録には到着までの時間が入っている。同じ時間ずっと泳いだ、という記録では進んだ距離が変わりうる。「今日は速かった」という感想だけでは、どちらの条件で比較したかが消えてしまう。これは計算以前の、記録の整理の問題である。

泳ぐ動きを模した装置で測る利点は、体が行う仕事と代謝の関係を検討できることにある。一方、実際の水中の動きを完全に再現する難しさもある。[8] そのため、装置の値をプールの一往復へ移す前に、測定された環境を確認する必要がある。

日常の比較でも、条件をそろえる考え方は使える。以前より短い時間で壁に着いたとしても、そこで長く休んだなら、泳いだ区間の速さと滞在中の運動の続き方は別々に記す。ここで勧めているのは消費量の計算ではなく、自分の記録を読み違えないための整理である。

消費の数字を知りたい読者にとっては遠回りに見えるが、ここを飛ばすと、腕の動きの改善を全身の省エネと読んだり、推進の改善を消費の増加と読んだりしてしまう。効率という言葉の印象より、実際の測定項目を優先する。その区別を支えるのが、仕事の成分を分けて評価した研究である。[8]

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泳法の名前だけでは一往復を比べられない

クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライを扱ったナラティブレビューは、水泳の成績には体格、水の抵抗、エネルギー供給、動きの仕組みが関係し、それぞれの寄与は年齢、性別、距離、泳法によって変わると整理している。泳法の名前は比較の入口だが、それだけで結果を決める札ではない。[1]

動きを見る指標には、ストローク長とストローク頻度がある。前者はひとかきで進む距離、後者は腕を回す頻度に当たる。さらに、左右の腕や脚をどのタイミングで動かすかという協調も調べる。レビューでは、速度、水の抵抗、頻度の操作がこの協調に影響する要因として扱われている。[1]

同じ人が同じ泳法で泳いでも、速度を変えれば、手足の組み合わせまで同じとは限らない。反対に、同じ速さで進んでいる人同士でも、ひとかきの距離や頻度は違いうる。だから、目で見える腕の忙しさだけを「運動量」の代わりにしない。水泳を腕の回転数だけで採点するのは、水中の動きの一部しか見ないことになる。[1]

推進力を直接測る研究を集めた系統的レビューでも、値は測定法、泳法、使う手足、性別に左右されると整理された。採用された35論文では、男性や男子の競泳選手を対象にしたクロールの横断的な測定が多かった。[17] 論文の数字を読む際は、一般の成人女性が健康のために泳ぐ場面と、対象が重なるかも確かめたい。18〜39歳の一般女性に、その力の値をそのまま当てはめることはできない。

また、推進力が大きいこととエネルギー消費が大きいことは、測っている対象が違う。前者は水中で進むための力の評価である。[17] 「強く水を押せた」という成績から、「同じ一往復でどれだけ消費したか」へは、その間を測る作業が要る。力の順位を、そのまま減量向けの泳法の順位に置き換えることはできない。

速い一往復より、続けられるペースを記録する

普段の水泳で考えたいのは、一度だけ最速で壁に着くことより、その後も泳ぐ予定を続けられるかである。競技のペース配分を扱った系統的レビューは、16研究を基に、配分がレース距離と泳法に影響されると整理している。対象は競技泳者であり、18〜39歳の女性が健康目的で泳ぐときの適切な速度を直接定める結果ではない。[3]

そのため、競技の割合や全力での条件を日常の目標に移すのではなく、記録の問いを変える。「どれだけ速く泳げたか」に加え、「どこで調子が変わったか」を書く。出だしだけ急いだ日と、最後まで同じ調子で進めた日を区別すれば、平均タイムだけでは隠れる経過が見える。これはレビューから考えた記録の工夫であり、減量効果を検証した方法ではない。

例えば、泳ぐ予定は同じでも、途中で何度も止まった日には、泳いでいた時間と休んでいた時間を分けて残せる。時計が示す滞在時間には両方が含まれる。休憩を失敗として消してしまうと、次に同じ予定を組むときの情報も消える。「後半は壁で長く休んだ」という短い言葉でも、次回の自分には役立つ。

距離を基準にする日なら、泳法をそろえ、到着までの時間と途中の中断を確認する。時間を基準にする日なら、その時間を泳いだ区間だけで数えるのか、休憩を含めて数えるのかを決めておく。距離でそろえた記録と時間でそろえた記録は、それぞれ答える問いが違う。同じ欄に並べる前に、比較の基準を見出しに書くとよい。

本人が感じるきつさも、タイムとは別の欄に置ける。「前半は余裕があった」「後半は腕の動きを保ちにくかった」といった言葉でよい。数値化しなくても、どの場面で泳ぎ方を変えたかが分かる。ただし、感覚の記録を消費カロリーへ換算したり、楽だった日を運動不足と判定したりするためには使わない。自分が泳ぎを続ける条件を見つけるための記録である。

泳法を変えた日は、速さだけで前回と競わせない。泳法によって手足の動きの協調が異なり、速度やストローク頻度の操作もその協調に関わるとレビューは整理している。[1] 比較する条件が変わったことを残せば、ゆっくり泳法を練習した日を、単に記録が落ちた日として扱わずに済む。技術を試す日と、同じ条件で経過を見る日を区別するという意味である。

道具も速さを競うための解決策として選ぶのではなく、使用したなら条件として記す。器具を付けた全力の実験から、一般の利用者向けの消費量や適切なペースを導くことはできない。この記事ではそうした実験を日常の運動処方に使わず、泳法、時間、休憩、本人の感覚という、自分で確かめられる記録を中心に置く。

予定どおり泳ぎ切れなかったときは、最速タイムの更新よりも、次回に何を比べたいかを決めたい。泳法を同じにして出だしの調子を見るのか、休憩を含む全体の流れを見るのか。変更点を絞るのは、原因を証明するためではなく、前回との違いを自分の言葉で説明しやすくするためだ。個人の記録には実験のような厳密さはないが、条件を残す意味はある。

数字で読む水泳の効率

16研究:競技水泳のペース配分を扱った系統的レビューに採用された研究数である。[3]

10人:全身用の実験装置で機械効率を評価した泳者の人数である。[8]

0.28±0.01:装置で評価した全体の機械効率であり、前進だけの割合ではない。[8]

5%:訓練された泳者の比較試験で、本人のストローク頻度から意図的に減らした割合である。[10]

35論文:推進力の直接測定を扱う系統的レビューに採用された論文数である。[17]

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宮川涼 Founder

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