筋トレの背中は滑車の数で割り算できる?機械を替えた日の記録を考える

背中の筋トレで、別の機械へ移ると同じ表示重量でも引き心地が違う。滑車の個数だけで負荷を半分と判断してよいのか。動滑車を用いた装置評価、力と速度を測った実験、マシンとフリーウエイトの比較から、表示の意味と記録の残し方を考える。重さの数字を競う前に確かめたい条件を整理する。

いつもの背中のマシンが埋まっていて、隣のケーブルへ移る。前回の記録と同じ表示を選んだのに、今日は妙に軽い。急に強くなったのか、それとも滑車が多いからなのか。記録帳では同じ数字なのに、腕の返事が違う。

先に答えると、見えている滑車の個数だけで手元の負荷を換算するのは避けたい。動滑車を使って発生負荷を倍増させる運動装置の評価例もあり、滑車があることと、利用者が軽く引けることは同じ意味ではない。どの部分に生じる力を比べるかまで必要である。[13]

この記事が扱うのは、機械を替えた日に表示をどう読み直すかである。既存記事「筋トレの背中のケーブルは伸びると遅れる?重りの加速と手元の負荷を分けて読む」が扱うケーブルの伸びと加速の問題はそちらへ譲る。ここでは滑車の数を数える前に、表示が何を表すのかを確かめる。既存の「女性の筋トレマシンは同じ表示重量でも重さが違う?滑車とてこの負荷を読む」に装置の負荷全般の問いを譲り、今回は見える輪の数で記録を換算する判断に絞る。

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滑車が見えることと、力の換算ができることは違う

手元の負荷を考えるときは、「選んだ設定」「装置が生む力」「その運動を行う人の負担」を分けておきたい。これは記録を整理するための区分である。設定の数字をそのまま手にかかる力と呼ぶと、機械を替えた瞬間に、異なる条件の記録が同じ欄へ入ってしまう。

具体例として、宇宙飛行向けに開発された抵抗運動装置の人を対象とする機能評価がある。この装置は電動モーターで抵抗を生み、バーの加速度と設定した抵抗質量に基づいて慣性負荷を模擬する仕組みである。バーそのものが動滑車として働き、発生した負荷を倍増させると説明されている。[13]

ここでの動滑車とは、装置の中でバーとともに動く滑車である。大切なのは「倍増」という言葉の向きだ。この装置では、モーター側で発生した負荷が利用者へどう伝わるかを説明している。「滑車を増やせば、人の感じる重さは必ず小さくなる」という読み方では、説明の向きを取り違えてしまう。[13]

この事例から一般の背中用マシンの換算表を作ることはしない。この記事で引き出せる実務上の問いは、「何を基準に表示している機械なのか」である。重りの設定についての表示なのか、手元の抵抗についての表示なのかを、機種の説明で確かめたい。前者と思い込んで計算し、実は別の意味の数字だった、という記録を避けるためだ。

上部に見える輪だけを数えたメモには、その数字の出発点がない。「滑車が二つだから軽い」と決めるより、「この表示はどこの負荷か」と施設の担当者に尋ねるほうが、次の練習に使える答えになる。利用者が配線を外したり、カバーを開けたりする必要はない。説明を確認することと、装置を自分で検査することは分けたい。

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手元の抵抗は、実際に測った研究から考える

先の装置評価では、参加者は宇宙飛行士が通常行う運動から10種目を、自由に選んだ3段階の負荷で実施した。報告された抵抗の範囲は4〜1600 Nだった。Nは力を表す単位である。これは宇宙飛行向け装置を人が使った機能評価であり、18〜39歳の女性に適した負荷の検証としてそのまま当てはめることはできない。[13]

この力の範囲を、近所のケーブルの表示へそのまま移し替えることはできない。同じ運動器具という名前でも、研究ではモーターの制御と動滑車を組み合わせた装置を用いている。数字を読む際には、対象の装置と測定した量を一緒に読む必要がある。力の大きさだけを抜き出すと、何を評価した数字なのかが消えてしまう。[13]

別の研究では、日常的に運動している大学生38人が、抵抗の異なる6種類の弾性チューブで片腕のカールを行った。研究者はチューブの固定部に組み込んだひずみゲージで力を、立体的な動作解析で速度を測り、両方からパワーを計算した。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるより、ここでは大学生の腕の運動を測った方法として読む。パワーは、力を出しながらどれだけ速く動かせるかに関わる量である。[16]

この実験の目的は、弾性抵抗でパワーを鍛える際に適切なチューブを決める方法の検討だった。ケーブルでの腕のカールで1回だけ持ち上げられる最大負荷も、個人に合うチューブを考える基準として用いた。チューブの名称や外見だけではなく、実測した力と速度を合わせて評価した点に注目したい。[16]

ただし、これは腕の運動と弾性チューブの研究であり、背中用ケーブルの表示を校正した実験ではない。背中の筋トレへ応用するなら、研究の数値を借りるより、測る対象を明確にする考え方を借りたい。「表示が同じだから、力も速度も同じ」と記録していないか。そこを点検する材料になる。[16]

たとえば「重かった」という感想は残してよいが、「手元の力が増えた」という測定結果とは別の欄に置く。反対に、引きやすかった日も、力が小さかったと即断しない。日々のメモに実験室と同じ測定を求める必要はない。測っていない量を測った量のように扱わなければ、簡単なメモでも役割は十分にある。

先のチューブ研究で参加者が行ったのは、できるだけ速く動かす意図を持った片腕カールだった。各チューブで3回の動作を行い、力と速度のデータを組み合わせている。[16] 普段の背中の練習で「軽く引けた」と言う場合とは、課題そのものが異なる。何を目標に動かしたかまでそろえて初めて、その測定値の意味が見えてくる。

また、電動抵抗装置の評価では、デッドリフトで床から受ける力の左右対称性も調べ、利用者の質問票も用いた。質問票ではバーの種目よりダンベル用アタッチメントの種目が好まれた。[13] 提供できる力、左右の出力、使い心地は、それぞれ別の評価である。使いやすいという感想を尊重することと、装置の抵抗を数値で説明することは両立する。

表示が小さくても、練習の価値まで小さくはならない

表示重量にこだわる理由の奥には、「軽い機械では筋肉が育たないのでは」という心配があるかもしれない。この問いには、滑車の倍率と別の研究で答える必要がある。装置の力の伝え方を評価することと、一定期間のトレーニング後の体の変化を評価することは、異なる課題だからだ。

女性26人を含む46人、平均年齢22歳の参加者を、フリーウエイトとマシンの群に無作為に分けた比較試験がある。期間は8週間で、各筋群を週2〜3回、4〜10回の反復を3〜4セット行った。上腕二頭筋と大腿四頭筋の厚さは両群で増え、増加に群間差はなかった。若い女性も含むが男女を合わせた結果なので、18〜39歳の女性だけの効果としてそのまま当てはめることはできない。[12]

一方、マシンで測ったベンチプレスの筋力は、マシン群で13.9%、フリーウエイト群で8.6%増加し、マシン群の伸びが大きかった。他の筋力測定では両群に増加があり、群間差はなかった。筋肉の厚さという結果と、特定の機械で発揮する筋力という結果を分けて読むべき試験である。[12]

この結果は、背中の滑車比が違う機械を直接比べたものではない。また、測った筋肉の厚さは背中の筋肉の厚さではない。したがって、背中用マシン同士の筋肥大の比較は、この試験の結論の範囲外である。それでも、機械かフリーウエイトかという大きな分類だけで、筋肉の厚さの増加に優劣を付ける読み方は、この比較結果に合わない。[12]

研究では、一部のマシンがカムという仕組みにより、運動中の力の出しやすさの変化へ抵抗を合わせる利点にも触れている。マシンという言葉の中にも設計の違いがあるということだ。滑車の有無だけを眺めて機械全体の性格まで決めると、その違いを取り落とす。[12]

立川駅からの帰りに寄った練習で、前回より表示を下げたとしても、それだけで失敗と決める必要はない。機械が替わったのなら、まず別の条件として書く。研究の筋肉の厚さの結果と、目の前の設定数字は同じ物差しではない。[12] 記録帳の数字を守るために、今日の動作を崩すという逆転を避けたい。

数字で読む表示と抵抗の研究

4〜1600 N:動滑車を組み込んだ電動抵抗装置の機能評価で報告された抵抗の範囲である。[13]

10種目:同じ装置評価で参加者が行った運動の数で、単一の背中種目だけの試験ではない。[13]

38人:力と速度を測って弾性チューブの選択方法を検討した、運動習慣のある大学生の人数である。[16]

46人中26人が女性:マシンとフリーウエイトの比較試験の構成で、研究期間は8週間だった。[12]

13.9%と8.6%:同試験のマシンベンチプレス筋力の増加で、背中の筋肥大量の比較ではない。[12]

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宮川涼 Founder

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