内転筋の筋トレはレッグプレスかスクワットか?筋肉の育ち方と力の違いを読む

内転筋を鍛えたいとき、レッグプレスとスクワットはどう選べばよいのか。大内転筋の体積を測った継続試験と、スクワット中の筋力を推定した研究を区別して読む。足を広げる、膝で挟むといった工夫の意味、筋電図と筋肥大の違いも確認し、種目名だけで決めないための見方を整理する。

脚を閉じずに押す運動でも、内転筋は育つのか。レッグプレスの座席とスクワットの立ち位置を見比べると、まずそこが気になる。「内ももを鍛えるなら、脚を閉じる運動でなければ意味がない」と考えると、どちらも候補から外れそうになる。ところが、レッグプレスを続けた試験では、大内転筋の体積が増えている。スクワットでも、大内転筋の一部に高い力が推定されている。[5][6]

答えの芯は、どちらにも大内転筋を使う根拠があるが、内転筋全体の成長を比べて勝者を決める話にはできない、ということだ。レッグプレスの研究は継続後の筋肉の体積、スクワットの研究は動作中の筋力の推定を扱っている。同じ「効く」でも、確かめた中身が違う。[5][6]

既存記事「内転筋の筋トレは挟むだけでよい?女性が知りたい立って支える働きとの違い」には、内転筋の役割を広く考える問いを譲る。ここでは足で押す種目を選ぶ場面に絞り、大内転筋が育ったという結果と、その場で力を出したという結果を使い分ける。

既存の「レッグプレスとスクワットの効果は同じ?立位バランスへ移る力を研究で読む」には立位への成果、「O脚でレッグプレスをすると膝の負荷は違う?膝の向きと押す力を分けて読む」には膝の負荷、「女性のレッグプレスは背もたれを倒す?重さの記録より先に確かめたい座り方」には座位の設定を譲る。ここで比べるのは、内転筋の成長と動作中の筋力についての証拠である。

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内転筋をひとまとめにすると、種目選びがずれる

内転筋の研究では、短内転筋、長内転筋、大内転筋、薄筋などを分けて測っている。さらに大内転筋も、恥骨大腿部と坐骨顆部という部位に分けて筋力を推定した研究がある。「内もも」という日常語の範囲に、同じ運動でも反応の異なる筋肉や部位が入っている。[5]

けがのない参加者を対象にした実験では、スクワット、デッドリフト、ステップアップ、横に滑る運動、横になった脚上げ、コペンハーゲン内転運動などを比較した。コペンハーゲン内転運動は、横向きで脚を支点にして体を支える種目である。この実験は、動作や床から受ける力、筋電図を組み合わせたモデルで、各筋肉の力を推定している。けがのない参加者の結果を、18〜39歳の女性の筋力の順位としてそのまま当てはめることはできない。[5]

スクワットは大内転筋の坐骨顆部では高い筋力の群に入り、長内転筋、大内転筋の恥骨大腿部、薄筋では中間の群に入った。同じスクワットに対して、内転筋のすべてが順位は筋肉ごとに異なった。研究者は、股関節を伸ばす動作を中心とする種目で、大内転筋の坐骨顆部に高い力が生じると整理している。[5]

ここから得られる見方は、「脚を閉じて見えないから内転筋は休み」という判断を避けることだ。脚で押して立つ動作にも、大内転筋に負担をかける道筋がある。一方で、大内転筋を使ったという結果を、長内転筋や薄筋まで同じように鍛えられたという説明に広げることもできない。[5]

相談の言葉も少し変えられる。「内ももに効くものを」とだけ伝えるより、「大内転筋の成長を目指すのか」「脚を閉じる力を練習したいのか」を分ける。目的が決まると、筋肉の体積を見る研究と動作中の力を見る研究の、どちらが近い答えになるかが見えてくる。[5][6]

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レッグプレスには、続けたあとの体積の結果がある

運動習慣として筋力トレーニングを行っていなかった成人17人の比較試験では、片脚で膝伸ばし運動、反対の脚でレッグプレスを行った。最大で持ち上げられる重さの70%を使い、各セット10回、各回の運動で5セット、週2回を12週間続けた。磁気共鳴画像によって、運動の前後の筋肉の体積を評価した試験である。未経験成人で得た成長率は、18〜39歳の女性個人にそのまま当てはめる数値ではない。[6]

レッグプレス側では大内転筋の体積が6.2%、大殿筋の体積が15.4%増えた。膝伸ばし運動側では、この両筋の体積増加は認められなかった。大内転筋を直接挟む運動ではなくても、継続した結果として成長が確認された点が、この試験の読みどころである。[6]

比較相手を見落とさないことも大切だ。これはレッグプレス対スクワットの試験ではなく、膝だけを伸ばす運動と、複数の関節を使うレッグプレスの比較である。したがって「レッグプレスは大内転筋を育てる選択肢になる」は試験に沿うが、「スクワットより育つ」と続けると、比較していない相手に勝ったことになる。[6]

同じ人の左右の脚を比較する設計は、参加者が別々の群に分かれる試験とは異なる。また、報告された成長率は参加者全体の結果であって、自分の脚に必ず起こる割合ではない。経験のある人、別の重さ、別の運動量に、そのまま成長率を予約するようには使えない。[6]

前ももの結果にも差がある。大腿四頭筋全体の成長は両条件で同程度だったが、大腿直筋の体積増加は膝伸ばし運動で13.2%、レッグプレスで1.1%だった。「脚全体によい」という表現だけでは、どの筋肉が育ったかが隠れる。内転筋を選ぶときも、種目に付いた総合点より測定した筋肉の名前を確かめたい。[6]

この試験では、トレーニング前後に脚の17個の筋肉の体積を評価した。脚の外周を測ってひとまとめにした結果ではなく、個々の筋肉を画像で分けた結果なので、大内転筋の変化を前ももの変化と区別して読める。内もものどこが働いた気がするか、という本人の感覚とは、情報の種類が違う。[6]

さらに、追加の筋電図実験で見られた興奮のパターンは、膝伸ばし運動とレッグプレスの間に認められた筋肥大の違いや共通点と、おおむね対応していた。これは筋電図がいつでも将来の成長を正確に予報する指標だと結論するには、別の検証が要る。この研究では、体積の変化を実際に測ったうえで、筋活動の結果と照らしている。測定を重ねた順序まで残すと、筋活動だけを測った実験との違いが分かる。[6]

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スクワットの筋力推定は、成長率とは別の地図だ

先ほどの筋力推定の実験は、けがのない15人が8種類の運動を行ったものだ。研究者は、体の立体的な動き、地面から受ける力、表面筋電図を入力にした筋骨格モデルを使った。表面筋電図とは、皮膚の上から筋肉の電気的な活動を測る方法である。筋肉の力を直接取り出して測るのではなく、複数の測定から推定している。[5]

運動は、体の大きさなどを考慮した筋力のピークに基づいて3段階の群に分けられた。スクワットが大内転筋の坐骨顆部で上位の群に入ったことは、どの筋肉を狙う運動かを考える材料になる。ただし、これは参加者がその運動を続けて、筋肉がどれだけ大きくなったかを並べた順位表ではない。[5]

この区別は、レッグプレスと並べるときに効いてくる。レッグプレスの大内転筋の体積増加率の横に、スクワットの「上位群」を置いても、数字の大小を競わせることはできない。片方は時間をかけた変化、もう片方は動作中の推定値だからだ。異なる物差しを並べたままなら、見かけの比較にしかならない。[5][6]

長い支点で行うコペンハーゲン内転運動は、調べたすべての内転筋で上位群だった。短い支点の型は短内転筋と長内転筋で上位群に入った。スクワットを否定する結果ではなく、対象とする筋肉によって別の候補があることを示す結果である。大内転筋を中心に考える日と、内転筋群を広く狙う相談では、候補の並びが変わりうる。[5]

重い、難しい、筋肉が震える。運動中には分かりやすい感想がたくさん残る。それでも、感想をそのまま筋肉ごとの成長率に換算することはできない。種目選びでは、まず動作中の負担を考え、続けたあとの評価では体積や筋力など目的に合う指標を見る、という順に分けるのが研究に沿った読み方だ。[5][6]

ワイドにすることと、挟む力を足すことは別である

「ワイドスクワットなら内転筋」「レッグプレスなら膝の間に何かを挟む」と、動作の工夫が一続きに語られがちだ。しかし、足幅を変えることと、股関節を内側へ閉じる力を同時に加えることは、研究上も同じ操作ではない。挟む力を加えたレッグプレスの実験は、その追加の力によって前ももの活動がどう変わるかを調べている。[11]

健康な男子大学生10人の実験では、通常のレッグプレス、弱めの内転力を加えた型、強い内転力を加えた型を比較した。膝を90度曲げたところから伸ばす動作を行い、内側広筋斜走部、外側広筋、長内転筋の筋電図を記録した。内側広筋斜走部と外側広筋は、どちらも前ももの筋肉を構成する部分である。男性を対象とした実験なので、18〜39歳の女性でも同じ反応になるかは、この結果だけでは判断できない。[11]

内転力を追加しても、内側広筋斜走部と外側広筋の全体的な活動パターンは変わらなかった。一方、膝の角度ごとに見ると、両筋の活動比に小〜中程度の効果量が示された。動作全体では大きく変わらない結果と、一部の角度で差がある結果は、両立する。[11]

この実験を「強く挟めば大内転筋がもっと育つ」と読むのは飛躍になる。中心の問いは前ももの筋活動やその比であり、大内転筋の体積を追った試験とは目的が違う。挟むという見た目があるからといって、評価しているのは前ももの筋活動であり、内転筋の長期的な成長とは区別して読む必要がある。[6][11]

数字で読む、足で押す種目の根拠

17人・12週間:未経験成人の左右の脚で膝伸ばしとレッグプレスを比較した期間と対象である。[6]

6.2%:レッグプレス側に認められた大内転筋の体積増加率である。[6]

15人・8種類:スクワットを含む運動の内転筋力をモデルで推定した実験の規模である。[5]

10人:内転力を加えたレッグプレスの筋活動を調べた、健康な男子大学生の人数を示す。[11]

40人:片脚スクワットで膝が内側へ動く群と対照群を比較した、活動的な成人の人数である。[14]

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宮川涼 Founder

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