背中の筋トレで増えた厚みは全部が力を出す部分?筋原線維と周囲の成分を読む

背中の筋トレで厚みが増えたとき、力を出す成分も同じ割合で増えたと言えるのか。筋原線維と筋形質の違いから、若い男性の高容量トレーニング研究と異なる立場のレビューを読み比べる。濃度と総量の区別、太ももの結果を背中に当てはめる限界を押さえ、見た目と練習記録の受け止め方を考える。

背中の厚みが増えたら、力を出す部分も同じだけ増えたのだろうか。引く練習を終え、更衣室でシャツの肩まわりを眺めると、外形の変化は分かっても中身までは見えない。筋線維が大きくなることと、その内部の収縮に関わるたんぱく質が同じ割合で増えることは、区別して考える必要がある。[2]

答えの芯は、厚みだけから中身の増え方までは決められない、である。ただし「力を出さない成分だけを増やす特別な筋トレがある」と飛躍するのも早い。筋形質の拡大を示唆する研究がある一方、それを独立した重要な筋肥大の仕組みとみなすことには強い証拠がないとするレビューもある。[1][2][5]

測り方そのものは既存記事「女性の筋トレの筋肥大はどう測る?腕の周径と超音波の厚さ、その数字の読み方」に譲る。ここでは測られた大きさの内訳を読む。背中の写真から細胞の成分表を作らないための話である。

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筋肉の中には、収縮する部分とそれを囲む環境がある

筋線維は、核を複数持つ細胞である。その内部には筋原線維が多く含まれ、筋原線維は筋形質という水を含む環境に置かれている。筋原線維と筋形質は、別々の場所に生えた別種の筋肉ではない。同じ筋線維の内部を、構造と成分に注目して分けた呼び方である。[2]

筋原線維の肥大を考えるうえで重要なのが、収縮に関わるたんぱく質の増加だ。食事のたんぱく質と筋トレを扱ったレビューは、収縮たんぱく質の変化が筋肉の大きさや力に関わることを述べ、とくにミオシンというたんぱく質に焦点を当てている。背中が厚くなるという外側の言葉の奥に、こうした分子の変化がある。[3]

一方、筋形質は「余りの水」と同義ではない。高容量の筋トレを調べた研究では、筋形質に含まれるたんぱく質を分析し、糖の利用やエネルギー産生に関係する成分の変化を調べている。収縮たんぱく質以外の成分が変化したからといって、ただの水が増えたと言い換えることはできない。[5]

この区別は、見た目に優劣を付けるためのものでもない。「厚い背中は質が低い」「細い筋肉なら質が高い」と判定する話ではない。研究で問題になっているのは、筋線維が育つ過程で内部の成分がどんな比率で変化するかだ。外形と内部構成を対応させるには、外から眺める以外の測定が必要になる。[2][5]

筋線維、筋原線維、筋形質という似た言葉が並ぶと、どれも同じ「筋肉の細い部分」に見えてくる。だが、筋線維は細胞全体、筋原線維はその中の構造、筋形質はそれを囲む環境という階層の違いがある。研究で筋線維の断面積が増えたと聞いたとき、筋原線維そのものの断面積まで同じ割合で増えたと解釈しないことが、最初の整理になる。[2]

また、筋形質に含まれるたんぱく質が変化したという測定と、筋形質全体がどれほど広がったかという推定も、区別して読む必要がある。高容量トレーニング研究は、生化学的な分析だけでなく、組織の染色や多数のたんぱく質を調べる分析も組み合わせた。成分の内訳という問いに答えようとすると、単独の厚さの測定とは異なる作業になるのである。[5]

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筋形質肥大とは、周囲の成分が相対的に大きくなること

筋形質肥大とは、筋原線維のたんぱく質の増加に対して、筋形質の拡大が不釣り合いに大きい状態を指す。単に筋形質が少しでも増えれば該当する、という意味ではない。筋線維全体が大きくなり、その中で収縮成分も周囲の成分も釣り合って増える場合とは区別されている。[2]

このテーマを扱うレビューは、成長の仕方を複数提示している。筋線維や組織の拡大と筋原線維たんぱく質の蓄積が比例する場合、筋原線維たんぱく質の蓄積が外側の成長に先行する場合、筋形質の拡大が相対的に大きい場合である。大きさの変化が同じ言葉で報告されても、内部の成長様式は複数ある。[2]

ここで重要なのは「相対的に」という部分だ。周囲の成分が増えたという説明と、収縮たんぱく質が失われたという説明は同じではない。両方が増えていても、その増え方の割合が異なる可能性はある。何がどれだけ増えたかを読むときは、全体の大きさと内部の比率を別々に確かめる必要がある。[2]

また、この分類をそのまま練習メニューの名前にしてはいけない。筋形質肥大の可能性を論じるレビューは、それと並んで通常の比例した成長や筋原線維の蓄積も扱っている。「この引き方なら周囲だけ」「この回数なら収縮部分だけ」と自分の背中を振り分けるための分類ではない。[2]

高容量の筋トレでは、どんな変化が見つかったのか

よく取り上げられるのが、筋トレ経験のある大学生年代の男性を対象にした研究だ。対象は30人、平均年齢は21歳、平均のトレーニング歴は5年で、高容量の筋トレを6週間行った。調べた場所は背中ではなく、太ももの外側広筋である。筋生検という、筋組織の一部を採取する方法で内部を調べている。男性の太ももで得た結果であり、18〜39歳の女性の背中にそのまま当てはめることはできない。[5]

ただし、詳しい成分分析の中心になったのは、その全員ではない。筋線維の平均断面積が増えた15人を選び、その組織をさらに解析した。この15人では平均断面積が23%増えた。したがって「筋トレ経験者なら6週間で23%育つ」と読んではいけない。成長が観察された人たちを対象に、その成長の中身を追った数字である。[5]

この集団では、筋肉内のグリコーゲン濃度は変わらなかった。一方、ミオシンとアクチンという収縮に関わるたんぱく質の濃度が低下する方向の結果が得られ、筋形質に含まれる複数のたんぱく質には増加が観察された。研究者は、短期の高容量トレーニングで筋線維が育つとき、筋形質の拡大が伴う可能性を示した。[5]

統計の扱いにも注意が要る。ミオシンとアクチンの濃度について、反復測定の解析での値はそれぞれp=0.052、p=0.055であった。その後の比較では約30%の低下が示されたが、著者が追加で行った比較である。見出しになる大きな低下率だけを抜き出すと、結果の確かさに関する情報が落ちる。[5]

筋形質側では、解析した40種類のたんぱく質が増加し、糖を利用する経路などの変化が示された。これは筋肉の内訳を考える手掛かりになる。しかし、収縮成分の濃度低下と代謝関連成分の増加という組み合わせから、「増えた厚みはまったく役に立たない」と価値判断を付け足すことはできない。[5]

さらに、15人のうち7人では、最後の練習後に8日間トレーニングを控えてから組織を採取した。そこでも開始前と比べた成分の違いが残り、筋形質たんぱく質の濃度は66%高かった。運動直後の張りだけを見た実験ではない点は押さえたい。ただし、この追跡の人数は最初の対象よりさらに少ない。[5]

対象の選び方をもう少し丁寧に見ると、この実験が答えようとした問いが分かる。参加者全体の平均的な成長を予測するより、実際に線維が大きくなった人の中で何が変わったかを掘り下げる設計だ。成長した人を選んだことは、成分の変化を探るうえで意味がある。同時に、その集団の成長率を、これから練習を始める人への見込みとして示すことは避けなければならない。[5]

採取の時点も、結果を読む手掛かりになる。組織は開始前、途中の3週目、6週目に採取された。さらに一部では練習を控えたあとの採取も行われている。鏡の前で「昨日より大きく見える」と判断する場面とは、比較している時間の軸が異なる。時間を追って組織の成分を調べた結果を、その日の見た目の差へ直接重ねることはできない。[5]

グリコーゲン濃度に変化がなかったという結果も、読み飛ばさない方がよい。筋形質の拡大を示唆した研究であっても、調べた成分には、増加したものと変わらなかったものがある。筋肉の内部を「収縮成分以外は全部同じ」と一括りにすると、変化したたんぱく質と、変わらなかったグリコーゲンの違いが見えなくなる。[5]

研究では、クエン酸合成酵素という酵素の活性が24%低下し、研究者はミトコンドリアの体積の低下を示唆する結果として解釈した。ここでも、測定したのは酵素活性であり、それを手掛かりにした内部構成の解釈が続く。観察された値と、そこから推定したことを分けて読むと、論文の表現を必要以上に強めずに済む。[5]

数字で読む筋線維の成長と内訳

30人:研究に参加した筋トレ経験のある大学生年代の男性の人数である。[5]

6週間:高容量のトレーニングを行った期間で、背中の成長期限を意味しない。[5]

15人:筋線維の断面積が増え、詳しい成分分析の対象となった人数である。[5]

23%:その15人で観察された筋線維の平均断面積の増加である。[5]

8日間:7人が最後の練習後にトレーニングを控えてから、再び組織を採取するまでの期間である。[5]

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宮川涼 Founder

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