平日は仕事帰り、週末は昼に運動する。その変更だけでダイエットが不利になるのか。睡眠時刻のずれと体重変化を調べた観察研究、大学生の生活時間、マウスの実験を区別し、夜の運動を毎回同じ時刻に固定する前に、平日と休日の予定で何を記録し、どこを調整するかを考える。
金曜は夕食前にヨガをして、土曜は昼の用事の前に済ませたい。運動を続けるつもりで時間を変えたのに、「体内時計のためには毎回同じ時刻」と聞くと、予定表の空欄まで気になってくる。
先に答えると、ここで扱う研究から、週末だけ夜の運動を昼へ移すと痩せにくくなるとは決められない。体重変化との関係が調べられているのは、主に平日と休日の睡眠のずれである。運動開始時刻のばらつきと、睡眠時刻のずれを同じものとして扱わないことが出発点だ。[9][12]
「朝の運動は出張先でもいつもの時刻にする?時差と体内時計の動きを研究で読む」は移動先での時差の問いに譲る。こちらは同じ街で暮らしながら、平日夜と休日の運動予定をどう組むかを考える。朝か夜かの勝敗ではなく、予定を変えたときに何が一緒に動いたのか、が焦点である。

運動の予約時刻と、睡眠のずれは別のもの
ソーシャルジェットラグとは、仕事のある日と自由な日の睡眠・覚醒の時刻が食い違う状態を指す。中国の装着型機器を使った研究では、仕事日と休日それぞれの「睡眠の中央の時刻」の差で計算している。運動が始まる時刻の差を測った指標ではない。[6][12]
睡眠の中央の時刻とは、眠り始めと目覚めの中間である。就寝だけを見ていると、起床側の変化を取りこぼす。休日の運動を昼に動かしても睡眠の位置が変わらない場合と、運動を夜に固定していても休日に寝起きが大きく後ろへ動く場合は、別の生活パターンになる。この区別は、睡眠の中央でずれを捉える研究の読み方から導かれる。[12]
クロノタイプは、朝型・夜型のような、好む睡眠や活動の時間帯の個人差である。大学生の追跡研究では、この好みは比較的安定しつつ、一定の範囲で変化する性質として扱われている。単に遅い時刻に動く人を、生活が乱れた人と呼ぶための言葉ではない。[4]
したがって、平日に夜の運動が合う人へ、休日も夜だけを選ぶよう直ちに勧めることはできない。先に見るべきなのは、仕事日と休日の寝起きの位置がどう違うかである。睡眠の記録を運動の記録と分けると、「運動の時間が変わった」と「生活全体が後ろへ動いた」を区別しやすくなる。[9][12]
たとえば、休日の昼のレッスンを選んだという予定表だけでは、睡眠のずれの大小は分からない。前夜にいつ眠り、当日いつ起きたかが必要になる。反対に、予約欄に毎回同じ時刻が並んでいても、その前後の寝起きまで一定である証明にはならない。カレンダーは整っていても、眠る人間は別の欄で暮らしている。
ここでいう「一定さ」は、分単位で同じ予定を守ったかを採点する話ではない。研究で使う指標に合わせて、自分のどの時刻が動いているのかを見分ける話だ。夜の運動を続ける方法を考える際にも、睡眠のずれを測る研究を、運動の予約変更を禁じる規則へ置き換えないことが大切になる。[9][12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
減量プログラムでは睡眠のずれと結果が関連した
運動と栄養指導のプログラムに参加した人を調べた観察研究がある。解析対象は11,829人で、男性3,696人、女性8,133人、平均年齢は40.4歳だった。18〜39歳の女性だけを調べた結果ではなく、この年代の女性に同じ関連の強さをそのまま当てはめることはできない。睡眠記録などを使い、ソーシャルジェットラグの程度と、体格指数であるBMIおよび体脂肪率の変化を比較している。[9]
睡眠のずれが大きい人ほど、BMIと体脂肪率の低下が小さいという関連があった。性別、年齢、参加期間、開始時のBMIと体脂肪率、クロノタイプ、食事摂取量を調整した解析でも、その関連は残った。睡眠のずれが1時間大きいことに対し、BMIの変化量はプラス0.56、体脂肪率の変化量はプラス1.40という係数が報告されている。[9]
ここでのプラスは、変化量がより増加側、または低下が小さい側にあるという読み方になる。体脂肪率の変化量の数値を、体脂肪の重さへ読み替えてはいけない。また、これは多くの参加者のデータから求めた関連であり、自分が休日の起床をずらしたときの増減を計算する式ではない。[9]
研究の型も重要だ。参加者を睡眠のずれが大きい群と小さい群へ無作為に割り付けた試験ではない。食事などを調整しても、睡眠のずれだけが減量結果を変えたと確定はできない。まして、週末の運動を昼に移したことが原因だったとは言えない。ここから受け取れるのは、運動と食事の計画を読む際、寝起きの時間も一緒に見る価値があるという示唆である。[9]
この対象は、すでに運動と栄養指導のプログラムへ参加していた人たちである。運動を始めたばかりの人、体重を変えることを目標にしていない人、生活時間の制約が異なる人へ、そのまま同じ数値を当てはめることはできない。女性が多く含まれていることと、すべての女性に同じ変化が起きることも別だ。[9]
夜に運動できる日を見つけた人が、この研究を読んで「休日の枠を変えたから努力が無効になる」と考える必要はない。研究で確かめた結果は、プログラム全体の中での睡眠のずれとの関連である。運動の時刻、寝起き、食事、結果を別々の項目として読むほうが、自分の予定を直す場所も具体的になる。[9]
大人数の研究でも体格との関係は一致していない
睡眠のずれと体格の関係は、集団によって結果が異なる。中国で装着型機器の記録を解析した研究は、71,176人を対象とし、少なくとも1週間の睡眠・覚醒パターンを扱った。この集団では、ソーシャルジェットラグとBMIの相関は認められず、相関係数は0.004だった。男女を含む中国の機器利用者の結果であり、18〜39歳の女性に絞った関係はこの数値から判断できない。[12]
一方、韓国の交代勤務の看護師183人を対象にした横断研究では、異なる結果が示された。対象の81.4%が女性、年齢中央値は27歳である。若い女性を多く含むが、交代勤務という条件があり、18〜39歳の女性全体にそのまま一般化はできない。平均の睡眠のずれである3時間31分を超える群は、クロノタイプ、運動時間、食習慣を調整しても、研究で定義した肥満のオッズが8.44倍だった。[11]
ただし、その95%信頼区間は1.66〜42.99と広い。信頼区間は、推定値の不確かさの幅を示すものだ。また、オッズは確率そのものではなく、この倍率を「自分が体重を増やす確率」として使えない。交代勤務者を同じ時点で調べた研究なので、ずれが先で体格が後だったかという時間的な順序も、この結果だけでは決められない。[11]
プログラム参加者の「変化」を追った研究、一般の装着型機器利用者の「体格」と比較した研究、交代勤務者を調べた研究では、集団と問いが違う。結果の一致しない部分を省いて、睡眠のずれさえなくせば必ず痩せると説明するのは行き過ぎだ。睡眠の規則性に目を向ける理由はあっても、体重への効果を一律には約束できない。[9][11][12]
看護師の研究に出てくる3時間31分は、その集団の平均に基づく区切りである。休日に許されるずれの上限として示された数字ではない。数字が細かいと規則のように見えるが、平均値は生活指導の境界線に自動変換されない。昼の運動を選んでよいかどうかを、この値だけで判定することもできない。[11]
もう一つ区別したいのは、今の体格と、その後の変化である。中国の研究が比べたのは睡眠のずれとBMIの関係で、運動・栄養プログラムの研究が比べたのは参加中のBMIや体脂肪率の変化だった。今のBMIと関係しないという結果から、減量中の経過にも関係しないとは言えず、逆向きの読み替えもできない。同じ「体重の研究」として並べるだけでは、質問の違いが消えてしまう。[9][12]
休日の運動を移した後の記録も、この区別を意識して眺めたい。知りたいのが寝起きの変化なら、運動の開始だけを記録しても答えに近づかない。知りたいのが体格の変化なら、睡眠のずれだけで理由を説明しきろうとしない。プログラム参加者の研究では食事摂取量や開始時の体格なども解析に含めていた。生活の中で一緒に動く条件を見ずに、休日の予約変更だけへ結果を帰すのは早いのである。[9]
数字で読む運動予定と睡眠のずれ
11,829人:運動と栄養指導の参加者で、睡眠のずれとBMI・体脂肪率の変化の関連を調べた人数である。[9]
71,176人:中国の装着型機器による睡眠記録の解析対象で、この集団では睡眠のずれとBMIに相関がなかった。[12]
8.44倍:交代勤務の看護師で報告された肥満のオッズ比であり、95%信頼区間は1.66〜42.99だった。[11]
約70%:大学生で、2か月後にも最初と同じ自己評価の朝型・夜型カテゴリーを選んだ割合である。[4]
4時間:雄マウスの実験で、週末の明暗環境をずらした幅であり、人の運動時刻への推奨値ではない。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







