ウォーキングの停滞期は歩き慣れたせい?同じ速さの消費と体重を分けて読む

ウォーキングを続けて体重が動かなくなると、歩き慣れて消費が減ったのかと気になる。高齢者や女性競技者の研究から、歩行の効率、同じ速さでの負担、体組成の変化を分けて読む。通勤の記録で比べたい条件と、研究の数字を自分の消費カロリーに置き換えないための見方を整理する。

散歩用の靴ひもを結び、いつもの坂へ向かう。以前より楽に歩けるのに、体重計の表示は変わらない。すると「体がこの道を覚えて、もう運動にならないのか」と考えたくなる。道順には慣れた。しかし、そのことだけで体重の足踏みまで説明できるだろうか。

歩く練習によって歩行の効率が改善することはある。座って過ごすことの多い高齢者を対象とした無作為化比較試験では、通常の歩行でもポールを使う歩行でも、訓練後に歩行の経済性が改善した。18〜39歳の女性に同じ適応が生じるかは、この高齢者の結果だけでは判断できない。歩き慣れによる体重停滞の検証とは分けて読む必要がある。[5]

ここで分けたいのは、同じ条件で歩くために必要な消費と、体重の変化である。歩行の効率を調べた試験と、体組成を調べた試験は、同じ問いへの答えではない。[3][5] 既存記事「ウォーキングの発汗は追い風で変わる?歩く速さと肌に当たる風を分けて読む」には汗と風の話を譲り、ここでは歩く練習を続けた後の消費の読み方に絞る。

既存記事「ウォーキングの後ろ歩きは慣れると楽になる?練習で変わる効率と負荷の読み方」は後ろ歩きの反復練習を扱う。ここでは通常歩行を含む訓練から、効率の変化を体重停滞の原因とみなしてよいかを考える。

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歩行の効率がよくなるとは、何が変わることか

歩行の経済性とは、歩くために必要な代謝上の負担を、速度や距離などの条件と対応させて評価する考え方である。高齢者の試験では、トレッドミル上で速さを変えながら測り、歩行の経済性と代謝的に最適な速度を別の項目として調べている。単に「楽だったか」だけを尋ねた研究ではない。[5]

同じ道を歩いたという記録にも、異なる中身が入る。駅まで同じ距離でも、信号で止まる日と、急いで歩く日がある。距離の欄だけを見て同じ運動だったと決める前に、速さの条件を確かめたい。これは実験の測定条件を日常の記録へ引き寄せるための工夫であり、毎回の通勤を実験室にする必要はない。

また、一定時間あたりの負担と、一定距離を進むための負担も、数字を読む際には区別する必要がある。高齢者の試験が調べたのは、速度と代謝コストの関係が訓練前後でどう変わるかだった。そのため「歩いた時間が同じなら消費も同じ」と固定して読むより、どの速さで測った結果かを先に見るほうが研究の問いに沿っている。[5]

効率という言葉は、ダイエットの文脈では損をしたように響く。しかし同試験の著者は、歩行の経済性と機能の改善として結果を評価している。歩くための負担を軽くできることには、歩行そのものの価値がある。消費を大きくすることだけを物差しにすると、研究が改善として扱う変化を、失敗と読み違えてしまう。[5]

体重計が答える問いは「今の体重はいくらか」である。一方、歩行効率の測定が答えるのは「この条件で歩くための負担はどうか」だ。どちらかが動いたからもう片方も同じ方向へ動く、という前提を置かない。この区別が、停滞期を慣れのせいだと即断しない出発点になる。[3][5]

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高齢者の比較試験では、通常の歩行でも効率が改善した

中心となる試験は、座って過ごすことの多い高齢者33人を、ポールを用いるノルディックウォーキング群16人と、通常の歩行群17人に無作為に分けたものだ。訓練期間は8週間で、群間の運動負荷をそろえて比較した。歩行の検査は時速1〜5kmの範囲で行われた。18〜39歳の女性の通勤に同じ変化量を当てはめるには、対象の違いを考える必要がある。[5]

結果は、両群で歩行の経済性が改善したというものだった。ポールを持つ群だけに生じた変化ではない。代謝的に最適な速度は約0.5km/h上がり、速度とコストの関係も変わった。これは「慣れると一定量だけ消費が減る」という単純な図より、歩く速さと負担の組み合わせが変わる様子として読むほうが正確である。[5]

ここで約0.5km/hという数字を、自分の歩く速度へ足す指示にしてはいけない。研究対象は高齢者で、訓練前後の検査から得られた集団の結果だ。若い女性の通勤で同じ幅が生じるという意味でも、誰にとってもそのぶん速く歩くのが適切という意味でもない。[5] 研究の変化量は、生活上の目標値と同じものではない。

動きの仕組みについても興味深い。上下肢の筋電図による活動、振り子のような動きによるエネルギーの回収、全体や外部・内部の力学的仕事には、有意な変化がなかった。一方で、上肢の筋肉が同時に収縮する程度は両群で低下した。著者は、この同時収縮の減少が経済性の改善に関わった可能性を挙げている。[5]

同時収縮とは、複数の筋肉が同時に働くことを指す。この試験では、目立つ歩き方の変化がなくても、代謝上の効率が変わることが示された。ただし、上肢の変化が原因のすべてだと断定した結果ではない。[5] 鏡で見た歩き姿が以前と似ているからといって、測定される負担まで同じと決めることはできない。

無作為に群を分け、負荷をそろえた設計には、歩く方法の違いを比較しやすくする利点がある。一方、この試験の比較相手は通常の歩行であり、歩く練習をしない集団との比較とは異なる。両群が改善した結果から共通の適応を考えることはできるが、改善のすべてを道具固有の作用へ割り当てることはできない。[5]

速度とコストの関係を調べる点も見逃せない。ある速度でだけ測った数字なら、その条件についての変化を読むことになる。この試験では複数の速度で検査し、最適速度の変化も評価した。[5] 通勤に引きつけるなら、昨日と今日で速さが違うのに、同じ道だから同じ負担だったと考えないための材料になる。距離の一致だけで比較を終えない、という使い道である。

この結果から拾えるのは、歩く練習への適応が起こりうるという点である。「だから通勤で消費するカロリーはこれだけ減った」と計算するところまでは進めない。経済性の改善、最適速度の変化、体重の停滞は、それぞれ別の測定と検討を要する。試験の対象と結果をそろえて読むほど、魅力的な数字の使い道は具体的になる。[5]

女性競技者の結果を、駅までの散歩にそのまま移せない

歩行の適応は、高齢者の研究だけに出てくる話ではない。女性の競歩選手5人と長距離走選手6人に、それぞれ通常の練習へ追加の持久的訓練を行わせた研究がある。別の女性長距離走選手6人は通常練習のみを行った。追加訓練は1回20分、週6日、8週間だった。競技者への追加訓練の結果であり、日常的に歩く18〜39歳の女性への適用は別に検証する必要がある。[9]

競歩群では、乳酸の変化に関連する指標での速度と、歩行の経済性が有意に改善した。走る群でも、追加訓練によって走行成績や生理指標に変化がみられたが、通常練習のみの走者群には、乳酸関連の指標、走行速度、経済性の有意な変化がなかった。運動を繰り返すことを、どの種目にも同じように効く一枚の処方として扱わない研究である。[9]

ただし競歩選手の追加訓練は、買い物帰りの散歩とは条件が違う。競歩群の訓練速度の平均は2.86m/sで、もともとの練習に加えて行われていた。[9] 「女性を調べた」という共通点だけを取り出して、日常のウォーキングの消費変化に当てはめるのは飛躍だ。女性という属性より、競技歴や運動条件の違いに目を向けたい。

高齢者の試験と競技者の研究は、対象も訓練の条件も異なる。それでも、歩行の経済性が固定された数字ではなく、訓練後に変わりうる点では方向が重なる。[5][9] 重なるのはこの論点であって、変化量や体重への影響まで共通だということではない。研究同士を合わせる際には、共通する部分だけを重ねる慎重さが要る。

身近な場面なら、「前は遅刻しそうで必死だった道を、今は落ち着いて歩ける」という実感があるかもしれない。その感覚は記録してよい。ただ、その日は出発時刻が違ったのか、歩く速さも違ったのかを分けておく。楽さという感想を消費量の数字へ翻訳する前に、比較できる状況だったかを確かめるという順番である。

数字で読む歩行の適応

33人:通常歩行とノルディックウォーキングを比べた高齢者の無作為化比較試験の人数。[5]

8週間:その試験で歩行の経済性の改善を確認した訓練期間。[5]

時速1〜5km:訓練前後にトレッドミルで歩行を測定した速度の範囲。[5]

約0.5km/h:代謝的に最適な速度の増加であり、消費カロリーの減少量ではない。[5]

5人:追加訓練による歩行の経済性の改善がみられた女性競歩群の人数。[9]

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宮川涼 Founder

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