筋肉痛の日は脂っこい食事で回復が遅れる?食後の変化と食べる時刻を分けて読む

筋肉痛の日に脂っこい夕食を食べると回復が遅れるのか。高脂肪食後の炎症、中性脂肪、血管反応を調べた研究を読み、筋肉の修復と同じ意味にできるかを確かめる。トマトを添えた試験や運動翌日の比較から、食べる時刻の決まりを作る前に確認したい対象、測定項目、時間の違いを整理する。

階段を下りると太ももが痛い。仕事帰りに揚げ物の定食を選びかけて、「これを食べたら筋肉の回復が遅れるのか」と箸が止まる。食事の脂と筋肉痛を結びつけたくなる場面だが、食後に血液で起こる変化だけで、翌日の筋肉の状態までは決められない。[10][19]

高脂肪食のあとには、炎症に関わる物質や血管の反応が変わる研究がある。一方、それらは痛みが続く時間や筋力が戻る時刻を測る物差しとは異なる。「脂っこい食事には食後の反応がある」と「筋肉痛の回復を遅らせる」は、分けて答える必要がある。[8][10][19]

ここで確かめるのは、食後の変化を回復の遅れに読み替えてよいか、そして食べる時刻の決まりまで作れるかである。筋肉内部の免疫の働きそのものは、既存記事「筋肉痛の炎症は抑えればよい?痛みと筋肉を作り直す免疫の働きを分けて読む」に譲り、夕食の皿と採血の時計に焦点を絞る。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

食後の炎症と筋肉の修復は同じ場所の話か

健康な男性39人が参加した無作為化クロスオーバー試験では、高脂肪食と、同じ食事にトマトピューレ100gを加えた食事が比べられた。クロスオーバーとは、参加者が条件を替えて両方を経験する比較方法である。血液に加え、脂肪組織を採取し、食後の炎症に関わる変化を調べた試験だ。対象は男性であり、18〜39歳の女性でも同じ反応になるかは、この比較だけでは判断できない。[10]

高脂肪食では、血中の炎症関連物質や脂肪組織の一部の遺伝子発現が増えた。トマトを加えた条件では、血中の腫瘍壊死因子やインターロイキン6など、複数の指標が低くなった。低下の仕方は指標ごとに異なり、血中の一部の物質や脂肪組織の遺伝子には例外もあった。[10]

ここで大切なのは採取した場所だ。血液で測る物質と、脂肪組織で調べる遺伝子の働きは、筋肉の修復をそのまま撮影したものではない。この試験の結果を食卓で受け取るなら、「食事の組み合わせで食後の炎症関連指標が変わる可能性がある」が適切な大きさである。トマトを添えれば翌朝の階段が楽になる、とまでは進めない。[10]

遺伝子発現とは、遺伝子の情報がどの程度読み出されているかをみるものだ。高脂肪食後の血液中の単核球、つまりリンパ球や単球などの細胞を扱った系統的レビューでは、複数の研究に共通する遺伝子の変化が確認された。炎症や酸化ストレス、脂質の運搬などに関わる変化である。[17]

しかし、細胞の遺伝子の変化、血中の物質の濃度、本人が感じる痛みは、同じ名前の成績表ではない。血液中の細胞を調べる研究の結果は、その細胞の反応として読む必要がある。「炎症」という共通語だけを頼りに筋肉痛用の献立へ変換すると、途中で調べる場所が入れ替わる。[10][17]

夕食を選ぶときに論文の物質名を暗記する必要はない。記事に「炎症が下がった」とあれば、どこの何を測ったのかを見る。その確認だけで、食後の血液の話を筋肉の治りの話として受け取る飛躍に気づける。血液や脂肪組織の変化には意味があるが、意味があることと、筋肉痛への効果が確かめられたことは別の判断だ。[10][17]

高脂肪食後の単核球のレビューでは、少なくとも3研究で同じ方向に変化した遺伝子として、約85個が抽出された。そのおよそ半分は、炎症・酸化ストレス、細胞内の代謝、細胞死、脂質の配置や運搬に関わる過程に属していた。研究をまたいで共通点を探した点に、このレビューの意味がある。[17]

さらに、主に不飽和脂肪酸を含む食事と、飽和脂肪酸を含む食事では、追加で目立つ遺伝子の働きにも違いがあった。ただ「脂を食べた」という括りより細かな反応である。この結果からは、脂質をひとつの成分のように扱うより、食事条件ごとの反応を見ていくほうが適切だとわかる。[17]

ただし、遺伝子の変化の個数が多いほど本人の痛みが強い、という数え方はできない。約85個という数字は研究間で共通する変化を抽出した数であって、筋肉痛の重症度の点数ではない。見慣れない大きな数字に出会ったときほど、単位だけでなく何を数えたのかまで読みたい。[17]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

血管の反応は変わるが、回復時間の時計にはならない

より多くの研究をまとめた根拠として、高脂肪食と血管内皮機能を扱った系統的レビュー・メタ分析がある。血管内皮は血管の内側を覆う部分で、この分析では血流の変化に応じて血管が広がる反応を評価した。指標は血流依存性血管拡張反応と呼ばれる。若い健康体重の参加者から高齢者やリスクのある群までを含む分析なので、18〜39歳の女性に同じ平均値をそのまま当てはめることはできない。[19]

レビューには131研究が含まれ、そのうち90研究が数値を統合するメタ分析の対象となった。高脂肪食後の拡張反応は、食前と比べて2時間後に平均1.02パーセントポイント、3時間後に1.04パーセントポイント、4時間後に1.19パーセントポイント低下した。食後に一時的な血管機能の低下がみられたという結果である。[19]

2時間後の推定値の95%信頼区間は、マイナス1.34からマイナス0.70パーセントポイントだった。信頼区間は推定の不確かさを示す幅である。また、研究間のばらつきは大きかった。平均値だけを使い、「誰でも同じだけ血管が広がりにくくなる」とする読み方は適切ではない。[19]

パーセントポイントという単位も読み落としたくない。これは割合の値同士の差を表す。筋肉の回復がその割合だけ遅くなる、あるいは筋肉へ届く栄養が同じ割合だけ減る、という意味ではない。分析で得られた数値は血管拡張反応の差であり、筋肉痛が続く日数の差ではない。[19]

参加者の年齢、体格、食前の血管反応、食事中の脂の割合などが、食後の反応の違いに関わっていた。若く健康体重の参加者では、高齢者や体重が重い群、リスクのある群より食後の低下が大きいという結果もあった。若いから食後の反応が起きない、という決めつけも避けたい。[19]

一方、こうした短時間の反応があることを理由に、夕食を食べた自分を「回復に失敗した」と採点する必要はない。血管研究の測定項目を、運動後の筋力や痛みの評価に置き換えることはできないからだ。皿の上の揚げ物に、筋肉の修復工程すべてを背負わせない。[19]

「高脂肪食」という名前でも食事の中身は違う

低糖質・高脂肪の単回の食事を調べた系統的レビューは、16研究を対象としている。このレビューでは糖質が総エネルギーの26%未満の食事が扱われた。食後の中性脂肪や血管内皮機能への影響が検討され、食事の栄養構成が食後最大8時間の脂質反応に関わるとされた。[8]

中性脂肪が増えるなどの好ましくない反応は一部の研究で認められたが、研究間で結果が分かれた。食事のエネルギー量や栄養素の構成にも大きな違いがあった。レビューは、低糖質・高脂肪の食事が長期の心血管・代謝の健康にどう寄与するかは、なお明確ではないとしている。[8]

この「すべてではない」を抜いてしまうと、見出しは簡単になるが内容は変わる。単回の負荷試験で使った食事と、家で選ぶ夕食を同じ条件にするには、脂の量だけでなく、総量やほかの栄養素も考える必要がある。「脂っこいと感じた」という感想だけで研究の食事と一致したことにはならない。[8]

食事の構成をそろえた例が、植物由来の代替肉と牛肉を比較した無作為化クロスオーバー試験である。健康な参加者30人が、別々の機会にそれぞれの食事をとった。食事は950kcalで、脂質71g、糖質31〜35g、たんぱく質41〜42gと、おおむね同じ栄養構成にそろえられた。[13]

両条件とも、食後にはインターロイキン6、腫瘍壊死因子、中性脂肪などが増え、全体として近い心血管・代謝反応を示した。植物由来か動物由来かという名前による、食後の反応の大きな違いはみられなかった。これは特定の栄養構成にそろえた食事同士の結果である。採血は食前と食後4時間まで行われた。[13]

普段の献立へ戻すときも、食材の肩書きだけで皿全体を評価しない視点が役に立つ。植物由来と書かれた料理を選んだことと、食事全体の脂やエネルギーが変わったことは同義ではない。逆に、この試験を使って植物性食品全般に価値がないとするのも範囲を越える。比較されたのは具体的な食事条件だ。[13]

数字で読む食後の変化

131研究中90研究:高脂肪食と血管拡張反応のメタ分析に数値が統合された研究数。[19]

食後2時間でマイナス1.02パーセントポイント:血管拡張反応の平均差で、回復の遅れの割合ではない。[19]

16研究:低糖質・高脂肪の単回食を扱った系統的レビューの対象数。結果は一様ではなかった。[8]

39人と100g:健康な男性の試験で、高脂肪食に加えたトマトピューレの条件。[10]

脂質71g:植物由来の代替肉と牛肉を比べた試験食の量。日常の推奨量を意味しない。[13]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約