テニスでラリーが続くと息が切れ、次のポイントでは打球まで乱れる。体力をつける方法を、連続走とコートでの反復ダッシュを比べた研究から考える。心肺機能、短い走りの繰り返し、疲れたときの打球精度を分け、競技選手の試験を大人の趣味の練習に生かす際の考え方も整理する。
ラリーを終えてボールを拾う。息は少し落ち着いたのに、次のリターンでは脚が間に合わない。休日のテニスで欲しい「体力」は、走り終えた距離だけでは表せない。テニスは加速、減速、方向転換を繰り返し、ラリーの最中に負担が高まる競技だからである。[15]
長く走る練習にも意味はある。ただし、競技テニス選手を対象とした比較試験では、連続走とコートでの反復ダッシュはともに最大酸素摂取量を改善した一方、テニスに近い持久力テストでは反復ダッシュの改善が大きかった。対象は競技レベルの大学選手であり、18〜39歳の女性の趣味のテニスへ同じ改善幅を当てはめるには検証が必要だ。心肺の土台と、それをコートで使う力は分けて考えたい。[18]
既存記事「テニス・バドミントンとダイエットの科学 体重より先に変わる体力を見極める」に体重との関係を譲り、ここではラリーの間に何を戻し、次の打球で何を保ちたいかを考える。隣のサッカー記事の反復ダッシュとも、試合後のプロテインを扱う記事とも問いは異なる。コートに立つ自分が困る場面から、練習の目的を絞るための読み物である。

テニスの持久力は「止まらず動く力」だけではない
テニスの体力づくりを整理したナラティブレビューでは、動きによる負担の中心は頻繁な加速、減速、多方向への切り返しだとされる。体の内側にかかる負担は平均すると中程度でも、ラリー中には高い山が繰り返し現れる。ナラティブレビューとは、複数の研究を著者が論点に沿って整理する総説である。育成段階からプロまでの競技現場を扱うため、18〜39歳の女性が趣味で行う練習への適用は、競技歴や現在の運動量に合わせて考える必要がある。[15]
平均だけを見ると、この山が見えにくい。「ずっと全力ではない」と「楽に続けられる」は同じ意味ではない。総説は、ラリーの構造と動きの要求に合わせたコートでのコンディショニングに加え、脚、体幹、肩を含む筋力やパワーの練習も重視している。走り続ける時間だけで練習を組むより、動作の種類まで見る枠組みである。[15]
ここで分けたいのは、酸素を使って運動を支える能力、短い強い動きを繰り返す能力、疲れた状態で狙って打つ能力である。研究ではそれぞれ異なるテストで調べており、ある指標が伸びたから別の指標も同じだけ伸びた、と扱うことはできない。実際、心肺面の改善と打球の精度が一致しない結果もある。[6][18]
たとえば練習ノートに「今日はきつかった」とだけ書くと、どこを変えたいのかが残らない。息が落ち着かないのか、切り返しの後に戻れないのか、打点は合うのに狙いが外れるのか。これは診断のための分類ではなく、コーチに困る場面を伝えるための整理である。研究の測定項目を、日常の言葉に置き換えると使いやすい。
ラリー間の回復という言葉も、休んだ直後に気分が楽になることだけを指すのではない。次の運動を繰り返せたか、移動のタイムを保てたか、打球が崩れなかったかを別々に確かめたい。休みを挟むテストと打球を測る研究を並べて読むと、回復を何で評価するかが重要になる。[5][6][18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
連続走とコートの反復走では何が変わったか
競技レベルの大学テニス選手を対象とする無作為割付の試験では、16人をコートでのスプリント・インターバル群と、トレッドミルで45分間連続して走る群に分けた。期間は6週間、どちらも週3回である。スプリント・インターバルとは、短い強い走りを休みを挟んで繰り返す練習を指す。18〜39歳の女性全般への適用を確かめた試験ではなく、競技大学選手の練習条件として読む。[18]
両群とも最大酸素摂取量は有意に改善した。最大酸素摂取量は、強い運動中に体が取り込んで使える酸素の最大量をみる指標である。この結果から「テニスには長く走っても無駄」と切り捨てることはできない。連続走でも心肺機能の指標は変わっている。[18]
違いが見えたのは、休息を挟む走行テストと、テニスに即した移動を行うテストだった。反復ダッシュ群の連続走群に対する改善の大きさは、前者で効果量0.69、後者で1.72と報告された。効果量は変化の大きさを共通の尺度で示したものであり、0.69秒や1.72倍という意味ではない。[18]
この研究では、血液中の乳酸の除去率も反復ダッシュ群で有意に改善し、効果量は1.03だった。連続走群ではこの指標に有意な変化はなかった。ただし、乳酸の値だけを「疲れが全部抜ける速さ」と言い換えるのは適切ではない。研究は、酸素摂取、血液の指標、競技に近いテストを分けて評価している。[18]
もう一つの無作為化試験では、大学の競技テニス選手24人が、同様に6週間、週3回のコートでの反復ダッシュか45分の連続走を行った。反復ダッシュ群では、間欠的な回復能力をみる走行テストの成績が7.8%向上し、テニスに即した反復スプリントの平均所要時間は5.1%、合計所要時間は5.2%短くなった。18〜39歳の女性が趣味で行う場合にも同じ変化が出るかは、この競技選手の比較だけでは判断できない。[5]
ここでの7.8%は試合の勝率ではなく、5.1%もラリーの成功率ではない。走行テストの成績が変わったという結果である。練習法を選ぶ際には頼りになるが、「この練習なら次の大会で勝てる」とは別の話だ。数字が何を測ったのかを残したまま読む必要がある。[5]
これらの試験は、走り込みを捨てる根拠よりも、狙いに合わせて走り方を選ぶ根拠になる。全身の持久力を支える練習と、コート内で強い移動を繰り返す練習は、役割が重なりながらも同じではない。ただし対象は競技選手であり、久しぶりにラケットを握った人に同じ負荷をそのまま勧める結果ではない。[5][18]
連続走との比較には、場所の違いも含まれている。コートで反復して走る群とトレッドミルで走り続ける群では、強度だけでなく運動の組み立ても異なる。したがって、成績の違いを「休みを入れたから」だけに帰すことはできない。比較されたのは練習のまとまりであって、一つの要素だけではない。[18]
また、前後のテストで成績が上がったことと、試合中のラリー間に必要な休息時間が何秒短くなったかは別の問いである。休息を挟む走行テストに改善があっても、その割合をポイント間の休みへ換算することはできない。練習の候補を選ぶときの材料として受け取り、試合の時間へ直接置き換えないようにしたい。[5][18]
こうした条件を踏まえると、普段の走り込みを続ける人にも検討の余地がある。長く走る記録は伸びたのにコートで困る場面が変わらないなら、さらに距離を増やす前に、測っている能力と困っている動作が合っているかを問い直せる。テニスに即したテストを併用した研究の価値は、練習法の勝敗だけでなく、この視点を示した点にもある。[18]
シングルスとダブルスで「きつさ」を同じにしない
若い男性テニス選手48人、平均年齢16.8歳を対象とした無作為化並行比較試験では、シングルス形式、ダブルス形式、通常の走行による高強度インターバルなどを比較した。介入は6週間、週2回で、コートでの練習はサーブを含まない試合形式だった。18〜39歳の女性へそのまま当てはめるには、性別、年齢、競技水準の違いを考慮する必要がある。[2]
酸素を使う能力に関する指標は、高強度インターバルの各形式で同程度に改善した。一方、自転車を使う無酸素性テストのピークパワーでは、シングルス形式がダブルス形式を上回り、その差は体重当たり0.85 W/kg、95%信頼区間は0.63〜1.08だった。信頼区間は、差の推定にどれくらい幅があるかを示す。[2]
同じ「テニス練習」でも、何を伸ばすかで形式の選び方が変わる。心肺機能を狙うなら複数の形式が候補になり、短時間に強い力を出す能力を狙うなら、この試験ではシングルス形式が有利だった。ただし、サーブを含まない若年男性の練習で得られた結果である。[2]
休日のダブルスと競技選手の高強度練習を、名前が同じだからと並べることはできない。普段のレッスンを考える際には、試合形式の名称だけでなく、待っている時間、移動する範囲、練習の目的をコーチと確認したい。研究の形式に似ているかどうかを考える入口になる。[2]
「今日はダブルスだから体力づくりにならない」と決める必要もない。逆に、シングルスに変えればすべて解決するわけでもない。心肺の指標と無酸素性パワーで結果が分かれた点こそ、この比較の使いどころである。練習相手の人数を、効果の順位表にしてしまわない。[2]
数字で読むテニスの体力づくり
16人:コートの反復ダッシュと45分の連続走を比較した大学競技選手の人数である。[18]
6週間・週3回:その比較試験の期間と頻度であり、趣味の選手への一律の処方ではない。[18]
7.8%:別の大学選手の試験で、反復ダッシュ群の間欠的走行テストが改善した割合である。[5]
5.1%:同じ群のテニスに即した反復スプリントで、平均所要時間が短縮した割合である。[5]
0.85 W/kg:若年男性の試験で、シングルス形式がダブルス形式を上回ったピークパワーの差である。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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