運動のストレス発散は笑いを加えると違う?動く効果と楽しい感情を分けて読む

運動でストレスを発散するとき、笑いを加えればさらに楽になるのか。笑いヨガの系統的レビューや比較試験から、ストレスの自己評価、気分、心拍、痛みへの耐え方を分けて読む。改善した研究と有意な変化がなかった研究の両方を確かめ、仕事帰りに無理なく試すための見方を整理する。

運動着に着替えたのに、頭の中では昼の会議が続いている。体を動かすついでに、誰かと笑えたら少し違うだろうか。運動の予定に「楽しく過ごすこと」まで加えると、かえって宿題が増えた気もする。

笑いを含む運動プログラムでストレスが下がった研究はある。運動だけの場合との違いを知るには、笑いを加える条件をそろえた比較が必要になる。笑いヨガは、笑う動作と呼吸、体の活動などを組み合わせた介入だからだ。[1][3]

さらに、気分が良くなることと心拍が落ち着くことは同じではない。笑っている最中に心拍が上がった実験もある。[5] ここで確かめたいのは、動いた成果と楽しい感情をどう読み分けるかである。既存記事「運動のストレスは風を感じると軽くなる?涼しさと体温、息苦しさを分けて読む」が扱う環境の話はそちらに譲り、笑いを含む介入の比較に絞る。

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笑いヨガで変わったものは何か

看護師と看護学生を対象にした系統的レビューは、無作為化比較試験と準実験研究をまとめ、笑いヨガが健康に及ぼす影響を検討した。無作為化比較試験は参加者を偶然の割り付けで群に分ける研究、準実験研究はそれと異なる条件で介入前後や群を比較する研究である。含まれた研究は10件で、対象人数が50人以上のものが80%を占めた。看護職・看護学生という対象や職場の条件があるため、18〜39歳の女性全体への当てはめには生活環境の違いを考える必要がある。[1]

ストレスの低下は4件、燃え尽きの低下は3件で報告された。唾液中のコルチゾールを評価した2件でも低下が報告されている。[1] ここには、本人の回答で確かめる変化と、唾液を採って確かめる変化が並んでいる。同じ「楽になった」でも、何を測った結果なのかを付けて読む必要がある。

このレビューでは、実施回数は少なくとも5回、多い研究では24回だった。[1] 仕事で嫌なことがあった晩に面白い動画を見た、という単発の体験とは条件が違う。定期的に参加する場、呼吸に取り組む時間、笑う動作を含んだプログラムとしての結果である。回数の幅は、そのまま全員に必要な回数の目安にはならない。

レビューの結論は前向きだが、異なる測定方法で得られた結果を「ストレスが同じ割合で減った」と置き換えることはできない。[1] 読者にとって大切なのは、大きそうな数字を探すことより、自分が期待する変化が測定対象だったかを確かめることだ。帰宅後の気分を変えたいのか、仕事の負担感を減らしたいのかで、注目する結果も変わる。

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比較試験の改善は、笑いだけの取り分ではない

肺がんの化学療法を受ける患者を対象にした予備的な無作為化比較試験では、84人を通常のケアと笑いヨガの介入に割り付けた。各群42人で開始し、最終的に80人が試験を完了した。介入後には、笑いヨガ群で知覚されたストレス、前向きな心理的資源、運動能力に好ましい群間差が示された。化学療法中という条件での結果であり、健康な18〜39歳の女性に同じ効果量を当てはめることはできない。[3]

知覚されたストレスとは、本人がどれほど負担を感じているかという側から捉えたストレスである。この試験で報告された効果量は、知覚されたストレスが1.087、前向きな心理的資源が0.692、運動能力が0.659だった。[3] 効果量は群間の違いを尺度化した値として読むもので、「ストレスが何割消えた」という割合ではない。単位の異なる評価を同じ言葉でひとまとめにしないことが肝心だ。

この比較で変えたのは、通常のケアに笑いヨガのプログラムを加えるかどうかである。[3] 運動内容も参加時間もそろえ、笑う条件だけを変えた比較とは問いが違う。プログラム全体に良い結果があったことと、そのうち笑いがどれだけ貢献したかは、分けて受け取る必要がある。

たとえば、友人と体を動かした日に気分が晴れたとする。その経験を大切にするのに、運動と会話と笑いの取り分を計算する必要はない。一方、「笑いを加えると必ず上乗せされる」と人に説明するなら、その比較に合う研究が必要になる。日常の満足と科学的な原因の特定は、求められる確かめ方が違う。

対象が化学療法中の患者だった点も外せない。[3] 仕事帰りの健康な大人が同じプログラムを行ったとき、同じ効果量になるという予測には使えない。治療環境での支援として得られた結果を、通勤後の運動の成績表にしないことだ。病気の治療中に取り入れる場合は、参加の可否を医師に確認する。

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心拍が上がっていても、楽しい時間は成立する

笑いを身体反応から調べた実験では、72人が作り笑い、面白い動画を見る自然な笑い、面白くないドキュメンタリーを見る対照条件に無作為に割り付けられた。介入は6分で、その後に実験室のストレス課題が行われた。心電図で心拍と心拍変動を追っている。18〜39歳の女性の日常の運動後にも同じ反応が出るかは、この実験だけでは判断できない。[5]

作り笑いの条件では、笑っている間の心拍がほかの条件より高く、心拍変動の指標は低くなった。心拍変動は、拍動と拍動の間隔がどのように揺れるかを捉える指標である。心拍の違いには笑った量が関わり、心拍変動の違いは笑いの量を考慮しても作り笑い条件に残った。[5]

この実験の著者は、笑いによる心拍の増加と心拍変動の低下を、運動に似た反応として捉えている。[5] つまり、笑うことは静かに休むことと同一ではない。気持ちをほぐすつもりで笑ったら心臓は少し忙しくなった、という結果である。笑い声の大きさを、落ち着きの深さに読み替えるわけにはいかない。

その後のストレス課題では、作り笑い条件の平均心拍が低かったものの、笑いの量を統計的に考慮すると有意ではなくなった。[5] ここを省いて「作り笑いはストレスへの心拍反応を抑える」と言い切ると、結果が強くなりすぎる。笑っている最中と、その後に負荷を受けたときでは、見ている時間帯も違う。

運動後に時計の心拍表示を見て、「まだ高いから気分転換は失敗」と決めるのも早い。この実験が測ったのは短時間の笑いに対する身体反応だ。[5] 自分の気分の記録と心拍の記録は、別々の欄に置いておきたい。良い時間だったかどうかを、表示された数字だけに採点させる必要はない。

動画を見た後の気分と、筋肉の回復を混ぜない

健康な若い参加者40人を対象にした無作為化クロスオーバー試験では、同じ参加者が笑いを誘うコメディーと面白くないドキュメンタリーの両方を見た。クロスオーバーとは、同じ人が異なる条件を経験して比べる方法である。脚には筋肉が伸ばされながら力を出す運動で遅れて出る筋肉痛を起こし、押す力に対して耐えられる強さなどを調べた。健康な若い参加者の結果だが、18〜39歳の女性だけに同じ程度の変化が生じるかは別に確かめる必要がある。[4]

コメディーを見た後の前向きな感情の変化は2±1、ドキュメンタリーでは−11±2だった。痛みに耐えられる強さはドキュメンタリーの後に17±5 N低下したが、コメディー後には有意な変化がなかった。Nは力の単位である。[4] 「笑ったら耐えられる強さが増した」というより、比較条件で見られた低下がコメディー後には見られなかった、と読む方が正確だ。

著者が検討したのは30分のコメディー視聴であり、健康な人の痛みへの耐え方への好ましい影響だった。[4] 筋肉の修復速度や、次回の運動で扱える負荷をそのまま表す数字ではない。気分が明るくなったために痛みの受け止め方が違っても、そこから筋肉の状態まで決めることはできない。

痛みへの耐え方そのものは、既存記事「笑いヨガ教室で痛みを感じにくくなる?気分と耐えられる強さを分けて読む」に譲る。ここでは、運動後の気分転換を評価するとき、気分と痛みと運動能力を別の結果として扱うことに注目したい。翌日の予定を決める際も、「昨日は楽しかった」という記憶だけで負荷を増やす理由にはしない。

コメディーと比較した相手が、面白くないドキュメンタリーだったことにも意味がある。[4] この試験は、笑う映像と静かに好きなことをして休む時間を比べたものではない。比較相手が何かを抜きにして「動画を見る方が良い」と広げると、条件の違いが消えてしまう。夜の自分にとって読書や会話とどちらが合うかは、この数字だけで順位を付けられない。結果を生活へ移す際には、研究で比べた相手と、自分が迷っている選択肢を照らし合わせたい。

数字で読む笑いとストレスの比較

10件:看護師・看護学生の笑いヨガを検討した系統的レビューに含まれた研究数。[1]

84人:化学療法中の肺がん患者を割り付けた予備的試験の開始時の人数。[3]

72人:作り笑い、自然な笑い、対照条件を比較した実験の参加者数。[5]

40人:コメディーとドキュメンタリーを同じ人で比較した試験の参加者数。[4]

18人:透析中の笑いヨガの実施可能性を調べた研究で募集された人数。[20]

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