
力を抜けるようになることと、痛みが減ることは別に測る
産後の筋筋膜性骨盤痛がある女性57人のランダム化比較試験では、通常の骨盤底リハビリテーションに仮想現実を使った練習を加える27人と、通常のリハビリテーションだけを受ける30人を比較した。18〜39歳の女性でも、産後の骨盤痛という条件が異なれば、この治療結果をそのまま当てはめることはできない。両群とも10回の治療を受け、筋活動、超音波による筋肉の指標、触れたときの痛みを調べた。[2]
追加介入の群では、速い収縮の段階で弛緩までの時間が有意に短くなった。一方、研究の結論は、筋肉の厚みを増やすことや筋筋膜性の骨盤痛を和らげることには、追加の利益が見られないというものだった。力を抜く能力に変化があっても、痛みまで同じように変わるとは限らなかった。[2]
これは弛緩の練習が無意味だという話ではない。何を成功として測ったかによって、答えが違うということだ。収縮後に信号が落ち着くまでの時間、筋肉の厚さ、押されたときの痛みは、それぞれ別に評価されている。どれかが変われば残りも変わったはずだと補わないことが大切である。[2]
この試験は産後に診断された骨盤痛に対するリハビリテーションの研究であり、一般のピラティスクラスの試験ではない。結果から、レッスンに映像を加えれば痛みが減るとも、本人が脱力できたと感じれば治療が進んでいるとも言えない。治療としての判断は医師に相談する領域である。[2]
一方、医療で弛緩や筋肉への働きかけを組み合わせた介入が検討されていることも事実だ。性交痛のある40〜60歳の女性42人を対象にしたランダム化試験では、骨盤底筋への温熱、筋筋膜への手技、骨盤底筋の練習を含む方法と、骨盤底の練習を含まない腰部などへの方法を比較した。40〜60歳の有症状の女性を対象とするため、18〜39歳の女性への効果は別に確かめる必要がある。[15]
骨盤底を対象にした群の痛みの平均値は7.77から2.25へ、比較群では7.62から5.58へ下がり、群と時間の組み合わせによる差も有意だった。ただし、これは複数の手段を組み合わせた医療的介入の結果である。力を抜く練習だけの効果や、温かいスタジオで運動する効果に置き換えることはできない。[15]
似た「骨盤底」という言葉でくくられていても、産後の筋筋膜性骨盤痛と、更年期前後の性交痛では対象も介入も異なる。結果が違う研究を並べる意味は、どちらかを正解にするためではない。誰の、どの症状に、何を組み合わせたのかまで見ると、レッスンの助言と治療の説明の境界がはっきりする。[2][15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
排尿の研究が教える、期待できることの限界
力を抜く練習は、排尿の問題に対しても検討されている。女性の非神経因性の膀胱出口部閉塞を扱ったナラティブレビューでは、骨盤底筋の協調の乱れや緊張の高さが関わると想定される状態について、弛緩訓練が症状や筋肉の緊張にどう影響するかが調べられた。ナラティブレビューは研究を文章で整理する形式である。排尿障害のある女性の治療を扱うため、18〜39歳の女性全般に同じ効果を期待する根拠にはできない。[6]
このレビューが扱ったランダム化比較試験は3件だった。症状によい影響がある傾向はあったが、弛緩訓練と無治療または見かけ上の治療を直接比べた試験はなく、筋肉の緊張低下について群間の効果も報告されていなかった。著者は、質の高い介入研究と仕組みの基礎研究が必要だと結論づけている。[6]
この限界は、研究の欠点をあげつらうために読むのではない。「力を抜けば尿の出にくさが解消する」という、強すぎる約束を避けるために読む。体の働きに関するもっともらしい説明と、その症状を改善できるという臨床的な証拠の強さには、段差がある。[6]
別のランダム化試験は、反復する尿路感染と排尿機能の問題がある女性86人を、尿の流れを示す指導、骨盤底筋のバイオフィードバック、それらの併用、無治療に分けた。この結果を18〜39歳の女性に当てはめる際も、反復する尿路感染と排尿機能の問題を抱えた患者の研究である点を外せない。バイオフィードバックは、体の働きを機器で示して調節を学ぶ方法で、この研究では尿の流れや骨盤底筋の働きを対象にしている。[7]
介入した群では、3、6、12か月の時点で、尿をためることや出すことに関わる症状が有意に減り、尿の流れや排尿後に残る尿の量にも改善が見られた。しかし24か月の評価では、症状や排尿の状態は開始時と同程度になっていた。尿路感染の発生も同様だった。[7]
改善を示す時点と、その後の評価の両方を読むと、「習えば一生そのまま」という期待にはできない。この結果だけで変化が戻った理由までは決められないが、少なくとも長期の結果を確認する必要性は見えてくる。短い期間の手応えを、先の生活すべてへの保証書にしないのである。[7]
なお、この試験と先のレビューを足して、弛緩訓練全般の効果量を作ることもできない。対象となる排尿の問題や、練習に使った情報が異なるからだ。尿が出にくい、骨盤周囲が痛むといった困りごとがあるなら、自己流の締め直しを治療の代わりにせず、医師に相談したい。[6][7]

よくある誤解
「骨盤底筋は長く締めるほど上達する」という理解では、練習の対象を狭くしてしまう。レビューは弛緩も骨盤底筋運動に含め、姿勢を比べた試験でも持久力と弛緩は別の成績として評価されている。長く続けられることだけを上達の物差しにしないほうが、研究で測っている働きに近い。[3][10]
「呼吸ができていれば、骨盤底筋も正しく動いている」という判断も早い。横隔膜との連動を調べた研究は、筋電図や超音波を用いて姿勢による違いを評価している。ふだんの息のしやすさだけで、骨盤底筋の状態を診断することはできない。息の感覚は相談の手がかりとして使う。[1]
「本人が締めたつもりなら、確認は不要」とも言い切れない。経腟分娩から4〜6週間後の女性65人を対象にしたランダム化試験では、腟内の触診による指導と、腹部からの超音波による指導を比較した。収縮時の膀胱底の動きの変化や収縮への理解などについて、両群の間に有意な差はなかった。18〜39歳の女性でも、産後の状態と異なる場合に同じ指導結果になるかは別の問いである。[16]
この結果は、どちらかの方法だけが正しいという主張を支えなかった。研究者は、どちらも収縮を理解する助けになりうるとしている。医療の指導方法を自宅で再現する必要はないが、理解できているかを確認する手立てがあることは知っておきたい。鏡に映らない筋肉にも、相談の入口はある。[16]
今日からできること
- レッスン前に、力を入れる合図だけでなく、収縮を終える合図も確かめる。骨盤底筋運動には筋力や持久力とともに弛緩が含まれるため、「休む局面が分からない」と伝えることも練習の相談になる。[10]
- 呼吸と動作を両立しにくい姿勢を言葉にして指導者に伝える。64人の横断研究では姿勢によって連動が異なったが、全員に共通する最善の姿勢を決める試験ではなかった。研究の姿勢を無理にまねる必要はない。[1]
- 感想を「締めた感じ」「力を抜いた感じ」「日常の症状」に分けて記録する。57人の産後の試験では、弛緩までの時間の改善と、痛みに対する追加の利益が一致しなかった。本人の感覚だけで治療効果を判定しない。[2]
- 練習期間の数字を、そのまま自分の期限にしない。8週間の試験でも、姿勢や評価項目により変化は異なった。「いつまでにできるべきか」より、どの局面が分かりにくいかを次の相談につなげる。[3]
- 骨盤底の痛み、過緊張を指摘された経験、尿の出にくさがある場合は、自己判断で締める練習や弛緩の練習を始めたり強めたりせず、泌尿器科・婦人科の医師への相談を最優先にする。練習中に痛みが出た場合も中止して医師に相談し、症状を我慢して続けない。弛緩訓練を扱う研究は医療での評価を前提に読む。[2][6][7]

オンザショア立川店で、続ける時間を予定に入れる
締める合図も休む合図も、レッスンの中で確かめたい。運動を続ける場所を選ぶなら、まず生活に入れられる時間と通う距離を具体的にしておく。オンザショア立川店の営業時間は8:00〜23:30で、全曜日同じ、年中無休である。所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F、JR立川駅北口から徒歩1分だ。
妊娠中は溶岩ホットヨガには参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。参加条件を確認したうえで、続ける運動を選びたい。
当店にはピラティスのほか、常温のヨガ、溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガがある。ヨガのレッスンは25種類以上で、パーソナルトレーニングも扱う。ほかに、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIITもある。ヨガ以外の運動も扱うスタジオである。運動の時間を予定の中に置くための選択肢として、店舗の案内と料金を確認できる。
ヨガの体験は税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。体験予約はヨガの入口である。予約の前に、レッスンの内容と通える時間を照らし合わせたい。
参考文献
- Exercise Position to Improve Synergy Between the Diaphragm and Pelvic Floor Muscles in Women With Pelvic Floor Dysfunction: A Cross Sectional Study — Korkmaz Dayican D, Keser I, Celiker Tosun O, Yavuz O, Tosun G, Kurt S, Baser Sec, 2023, Journal of manipulative and physiological therapeutics. DOI: 10.1016/j.jmpt.2024.02.005
- Effectiveness of virtual reality technology combined with conventional pelvic floor rehabilitation training in postpartum myofascial pelvic pain syndrome: A randomized controlled trial — Liu L, Lin Z, Chen X, Hou Y, Liu Y, Wang X, Hou M., 2026, PloS one. DOI: 10.1371/journal.pone.0340918
- Utilizing Synergism between the Transverse Abdominal and Pelvic Floor Muscles at Different Postures in Nulliparous Women: A Randomized Case-Control Study — Molnár T, Domján A, Szűcs M, Surányi A, Bódis J., 2022, Urologia internationalis. DOI: 10.1159/000519590
- Is there evidence for pelvic floor muscle relaxation training in nonneurogenic female bladder outlet obstruction?-A narrative review — Bø K., 2025, Neurourology and urodynamics. DOI: 10.1002/nau.25241
- The role of uroflowmetry biofeedback and biofeedback training of the pelvic floor muscles in the treatment of recurrent urinary tract infections in women with dysfunctional voiding: a randomized controlled prospective study — Minardi D, d’Anzeo G, Parri G, Polito M, Piergallina M, El Asmar Z, Marchetti M,, 2010, Urology. DOI: 10.1016/j.urology.2009.11.019
- Pelvic floor muscle exercise and training for coping with urinary incontinence — Cho ST, Kim KH., 2021, Journal of exercise rehabilitation. DOI: 10.12965/jer.2142666.333
- Physical Therapy Intervention for Women With Dyspareunia: A Randomized Clinical Trial — Schvartzman R, Schvartzman L, Ferreira CF, Vettorazzi J, Bertotto A, Wender MCO., 2019, Journal of sex & marital therapy. DOI: 10.1080/0092623x.2018.1549631
- Vaginal palpation versus transabdominal ultrasound in the comprehension of pelvic floor muscle contraction after vaginal delivery: a randomised controlled trial — Ikeda M, Mori A., 2021, BMC women’s health. DOI: 10.1186/s12905-021-01203-w
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
ヨガとからだの小さな疑問のほかの記事
- ヨガの片脚立ちは音の位置でも変わる?耳の手掛かりと揺れの研究を読む
- ヨガの呼吸でハミングすると何が変わる?鼻の通気と一酸化窒素を分けて読む
- ヨガのゆっくり呼吸は寝ても座っても同じ?姿勢で変わる心拍の揺れを読む
- ヨガ瞑想のやり方は呼吸を数えるだけ?数えない観察と注意の戻し方を読む
- ヨガの姿勢改善は少し膝を曲げると分かりやすい?位置感覚と立ち方を読む
- ヨガ初心者の肩こり、腕を上げる手のひらは向け替える?肩の回転と範囲を読む
- ヨガ初心者は上達したと聞くと動きも変わる?励ましと翌日に残る学びを読む
- ヨガで疲れるとポーズの角度を間違える?体力だけで決まらない関節の位置感覚
- ピラティス初心者は数回分の助言をまとめて聞く?平均の動きと残る学習を読む
- ピラティスの個人レッスンは助言の口調で変わる?命令と提案で違う学びを読む
- ピラティス初心者は手元より遠くを意識する?目標までの距離と上達の関係を読む
- ピラティスの骨盤の傾きは手で確かめられる?触れた目印と角度のずれを読む
- ピラティスの静止メニューは止めた角度だけ強くなる?別の角度へ移る力を読む
- ピラティスの血流は力を抜く瞬間に変わる?静止と反復で違う筋肉の酸素を読む
- ピラティスの運動強度は息だけで分かる?小さな筋肉と局所のきつさを読む
- キックボクシングの基本の構えは横幅も必要?前後の足間隔と横揺れを分けて読む
- キックボクシングは軽く沈んでから蹴ると速い?予備動作と反動の働きを読む
- キックボクシングのミドルキックで上体が傾くのはなぜ?全身の釣り合いを読む
- ボクササイズは両腕を交互に動かすと難しい?速さで変わる左右の協調を読む
- ボクササイズは音と光で動き出す速さが違う?音楽と合図の反応時間を読む
- キックボクシングは先に楽しいと聞くと楽になる?運動前の期待と気分の変化を読む
- ホットヨガの水分不足は尿の色だけで分かる?運動直後の目安と時間差を読む
- ホットヨガ後の塩分は食事でも補える?水だけで飲むときの保持と口渇を読む
- ホットヨガの暑さで順番を忘れる?反応の速さと複雑な記憶を分けて読む
- ホットヨガは自分で休めると暑さが変わる?向かないと決める前に読む調節の感覚
- ダイエットの運動は理想だけ想像する?途中の障害も思い描く続け方を読む
- 社会人のダイエットは誘う言い方で変わる?得する説明と損する説明の研究を読む
- ダイエットのリバウンド相談は対面だけ?電話で歩く習慣を支える条件を読む
- ダイエットの有酸素運動は後ろ歩きでもできる?同じ速さの負担と安全を読む
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
2






