体力をつける朝食は抜くと損になる?夕方の持久力と数週間の伸びを分けて読む

体力をつけたいとき、朝ごはんを抜いた分を昼に食べれば同じなのか。自転車の持久運動や筋トレの比較試験から、その日の運動成績と数週間続けた体の変化を読み分ける。競技者と日常の運動の違い、血糖だけでは判断できない理由、朝食を考えるときの記録の取り方まで整理する。

朝食の皿は空のまま、夕方の運動着だけは用意してある。朝食を抜いた分は昼に食べ、夕方に運動すれば帳尻は合う。そう考えたくなるが、よく鍛えられた自転車競技者の比較試験では、昼までの食事量をそろえても、朝食を抜いた日の夕方の平均出力は低かった。競技者の結果であり、18〜39歳の女性の日常の運動に同じ差が出るかは別に確かめる必要がある。[1]

ただし、これはその日に出せた力の話である。朝食を食べれば数週間後の持久力が必ず大きく伸びる、という約束にはならない。朝食を抜くかどうかを比べた運動試験と、有酸素運動を続けて体の反応を調べた研究は、答えている問いが違う。[1][9]

既存記事「体力をつける食事はたんぱく質も増やす?長く動く力と酸素の数値を分けて読む」には食事全体とたんぱく質の論点を譲る。ここで確かめたいのは、朝に食べる時刻をずらしたときの運動成績と、それを体力の長期的な伸びにどう結びつけてよいか、という境界である。

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昼に同じ量を食べても夕方の出力は同じでなかった

朝食を抜く研究では、単に食事の時刻が違うだけでなく、その日の食事量まで少なくなってしまうことがある。それでは、朝に食べなかった影響なのか、運動までの補給量が少なかった影響なのかを分けにくい。この区別に踏み込んだのが、十分にトレーニングを積んだ自転車競技者を対象とする無作為化クロスオーバー試験である。同じ参加者が条件を変えて試すため、人によるもともとの能力差を抑えて比べられる。[1]

参加者は11人、平均年齢は25歳だった。朝食をとる条件では朝8〜9時に平均583 kcal、昼12〜14時に平均874 kcalを食べた。抜く条件では正午まで食べず、昼に平均1457 kcalを食べた。朝食ありの朝昼合計と、朝食なしの昼食のエネルギー量、炭水化物・脂質・たんぱく質の構成は同じにしてある。夕方まで食べた量をそろえた比較である。[1]

夕方の20 kmのタイムトライアルでは、朝食なしの平均出力が約3%低かった。平均差はマイナス9.1 W、95%信頼区間はマイナス15.3〜マイナス2.9 Wと報告された。信頼区間とは、差の推定にどれほど幅があるかを示すものだ。この試験では、その幅全体が朝食なしで出力の低い側にあった。[1]

朝昼の食事の栄養構成も、読み落としたくない条件である。この試験では炭水化物が81.5%、脂質が5.8%、たんぱく質が12.7%を占めていた。かなり炭水化物に寄せた食事を、朝と昼に分けるか昼へまとめるかという比較だ。ふだんの朝食の献立を幅広く比べて、どの食品が最も優れているかを決めた試験ではない。[1]

同じエネルギー量でも、食べる時刻の条件が違えば結果が違う可能性を、この設計は検討している。一方、朝食の量を少しだけ変えることや、朝食を早めたり遅めたりすることの効果まで、一度に答える設計ではない。「朝食あり」という大きな分類の中にも、まだ別々に考えるべき選択がある。朝に食べる必要性を考える研究と、具体的な献立を選ぶ研究は区別したい。[1]

ここでの3%は、走行速度や運動時間がそのまま3%違うという数字ではない。測ったのは平均出力、つまり自転車に対して発揮した仕事の速さである。また、競技者が高い強度で走る課題であり、通勤の歩行や、動きを覚えながら参加する運動教室に同じ割合を当てはめることはできない。[1]

それでも「昼に取り戻せば朝食の有無は必ず消える」という考えは、この条件では支持されなかった。食事の合計だけを見ていたら見落とす差である。昼食の大きさを足し算することと、夕方の脚の働きを予測することは同じ作業ではなかった。[1]

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脈拍や血糖が同じでも、出せる力まで同じとは限らない

同じ自転車試験では、心拍数、血糖、血中乳酸濃度に明らかな条件差がなかった。一方、朝食なしでは、出力が低いにもかかわらず、タイムトライアルの序盤で運動をきつく感じる傾向があった。血液の数値、心拍、本人が感じるきつさ、実際の出力は、そろって同じ方向に動くとは限らない。[1]

運動記録を見返すとき、「脈拍がいつもと似ていたから、同じ練習ができた」と考えることがある。しかしこの試験では、心拍に明らかな違いがなくても平均出力に差が出た。逆に、きつく感じたからといって、それだけで持久力そのものが落ちたと決めるのも早い。まずは、何を同じにして何が違ったのかを見る必要がある。[1]

例えば仕事帰りの運動についてメモするなら、朝食を食べたかだけでなく、昼食の時刻、運動の内容、できた量、主観的なきつさを別々に残す、という読み方ができる。これは試験の再現ではなく、出力と感覚を混ぜないための記録案だ。疲れた日の短い感想を、そのまま「自分には体力がない」という評価に変えないためでもある。

なお、血糖の条件差がなかった結果を「朝食は血糖に一切関係しない」と広げることもできない。対象と測った場面が決まった試験での結果である。何でも血糖で説明したくなる朝もあるが、この運動成績の差を血糖の低さだけで説明することはできない。[1]

筋トレの回数も、その日の成績として読む

朝食の影響は、自転車のほか、筋トレでも調べられている。習慣的に朝食をとる、筋力トレーニング経験のある男性16人を対象にした無作為化試験では、炭水化物を含む朝食と、水だけの条件が比較された。食事の条件を変えた後、2時間たってからスクワットとベンチプレスを行った。男性を対象とした結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[2]

課題は、それぞれ決まった負荷で限界まで反復する4セットだった。スクワットの総反復回数は朝食なしで58±11回、朝食ありで68±14回。ベンチプレスでは38±5回と40±5回だった。いずれも朝食を抜いた条件で少なく、研究が報告した効果量はそれぞれ0.98と1.06だった。効果量は差をばらつきとの関係で表す指標であり、回数そのものとは別の見方になる。[2]

朝食を食べた条件では満腹感が高く、空腹感や食べたい気持ちも低かった。したがって、補給の有無だけでなく、空腹を感じる状況も違っていたと読める。ただし、どの要素が回数の差をどれだけ説明するかを、この結果から割り振ることはできない。[2]

筋トレ試験の朝食には、体重当たり1.5 gの炭水化物が含まれていた。また、運動の負荷は、最大で10回反復できる重さの90%に設定されていた。参加者がその場で好きな重さを選ぶ運動ではなく、事前に能力を確かめてから条件を決めている。限界までの反復という課題の性格も含めて、朝食の影響を読む必要がある。[2]

運動教室で動きを練習する日と、決まった負荷で限界まで繰り返す日は、目指していることが違う。研究の回数を自分の予定へ持ち込むより、「何ができたら今日の運動を終えたとするか」を先に考えておきたい。回数、動作の練習、予定への参加を同じ成績表に載せない、という整理である。

この研究を持ち出して「朝食を抜くと筋肉がつかない」と言うのは飛躍である。測ったのは、その日の決まった課題で反復できた回数であり、筋肉量が長期にどう変わったかではない。また、ふだん朝食を食べる男性の結果なので、朝に食べる習慣が異なる人や女性の運動に、差の大きさまでそのまま移すことは避けたい。[2]

自転車の出力と筋トレの反復回数は違う指標だが、どちらも運動当日の成績を見ている点は共通する。朝食を抜いた条件で成績が低かったことは、運動日に食事の時刻を考える理由になる。一方、それを将来の伸び率に置き換えるには、別の比較が必要になる。[1][2]

自転車試験の対象者の最大酸素摂取量は平均61 ml/kg/分だった。これは体重当たりで表した酸素利用の能力の指標である。運動習慣のない人を集めた試験ではないことを、この対象者の数値からも押さえておきたい。[1]

数字で読む朝食と運動の比較

11人:昼までのエネルギー量と栄養構成をそろえた、自転車競技者の比較試験に参加した。[1]

約3%:朝食を抜いた日の夕方の20 km走で、平均出力が低かった。[1]

マイナス9.1 W:同試験の平均出力差。95%信頼区間はマイナス15.3〜マイナス2.9 Wと報告された。[1]

58回と68回:朝食なしと朝食ありでのスクワット総反復回数の平均を比べた数字だ。[2]

10週間:糖尿病のある参加者に、監督下の有酸素運動を続けてもらった研究はこの期間続いた。[9]

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