HIITの曲は複雑なほど動きたくなる?拍の見通しと好みから選ぶリズムの研究

HIITの曲はリズムが複雑なほど動きたくなるのか。音楽心理学の研究から、中程度の複雑さで楽しさが高まる結果と、差が出なかった実験を読み分ける。拍の取りやすさ、楽器の重なり、好きなジャンルや聴き慣れた曲の影響を比べ、運動の成果と混同せず自分に合う曲を探す視点を示す。

運動着に着替えたのに、曲を選ぶ手が止まる。ドラムが細かく跳ねる曲には気分が乗るのに、いざ動こうとすると拍を見失う。逆に、地味だと思った曲で自然に足が動く。プレイリストの格好よさと、自分の動きやすさは別々に確かめたい。

HIIT用の曲を探す手掛かりとして、音楽知覚の研究を読む。音楽に合わせて心地よく体を動かしたくなる感覚を「グルーヴ」と呼び、複雑さが中程度のときに高まるという理論がある。一方、日頃耳にするようなドラムパターンでは、複雑さによる差が出なかった聴取実験もある。ここで扱うのは音楽の感じ方であり、HIIT中の出力や持久力への効果を検証した研究ではない。[16][7]

ここで考えるのは、運動の曲を選ぶときの「動きたさ」である。既存記事「女性のキックボクシングは曲の速さが変わると迷う?拍のずれを直す動きを読む」には、速さの変化に動きを合わせ直す問いを譲る。こちらでは、速さの順位表を作らず、拍の見通しと意外な音の配置がどう共存するかを読む。[16]

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複雑さの頂上より、拍が見える途中を探す

机を一定の間隔で軽くたたく場面を想像すると分かりやすい。次の音が来そうな位置を感じながら、そこから外れた音にも耳を向ける。グルーヴを論じた理論的な報告では、繰り返しから生まれる予測しやすさと、リズムのずれが生む驚きの釣り合いが重視されている。シンコペーションは、その予測をずらす音の配置に関わる仕掛けである。[16]

同報告では、単純すぎるリズムは関心を引きにくく、複雑すぎるリズムは捉えにくいため、その間でグルーヴが高まりやすいと整理される。横軸を複雑さ、縦軸を動きたさにすると、中央が山になる「逆U字」の関係だ。これは、強い刺激ほどよいという直線的な発想とは違う。[16]

研究の射程はここで整理しておく。扱う根拠はグルーヴの理論、聴取時の評価、拍に合わせてたたく実験である。高強度運動中に曲を変えて出力や持久力を比べた試験を根拠にはしていない。「動きたい」という主観と、実際に続けられる時間や出せる力は、別の評価項目だ。以下の選曲案は、運動前に音楽の好みを確かめるための提案として読む。[16][7][4]

たとえば候補の曲を聴くとき、「音が多くて盛り上がる」と「次の拍が分かる」を別の言葉でメモしてみる。両方がそろう曲も、片方だけが強い曲も候補に残せる。この分け方は、予測しやすさと驚きを両方見る理論を、選曲のための問いに置き換えたものである。研究で決められた採点法ではない。[16]

好きな曲なのに動きにくいとき、選曲の失敗と即断する必要はない。鑑賞用として好きなのか、拍に合わせたくなるのか、実際に動いたときに楽しめるのかを分けてみたい。理論が扱うのは、音の難しさを競うことではなく、予測と驚きがどう動く気持ちにつながるかという問題である。[16]

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同じ中程度でも、拍子が変われば山は動く

「中程度がよい」を理解すると、今度は中程度の曲を指定してほしくなる。しかし、複雑さの感じ方を音の配置だけから切り離して考えるのも難しい。西洋の音楽を聴く人を対象にした行動実験では、よく使われる拍子と、それほど一般的でない拍子を分けて、リズムの複雑さへの反応を比べている。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるより、音楽文化や個人の経験も含めて考えたい。[5]

この研究は参加者143人、120人、120人の実験からなる。4/4拍子では中程度の複雑さでグルーヴが最大になったが、それ以外の拍子では、より単純なリズムで最も高かった。したがって、どんな拍子でも中央の複雑さを選べばよいという一般化はできない。拍子とリズムの特徴の組み合わせが関わる結果である。[5]

4/4は拍のまとまり方を示すものであり、曲の速度の指定ではない。研究でも拍子と複雑さを独立に扱っている。曲の紹介文に「変拍子」「複雑」とあっても、それだけで動きやすさの格付けはできない。少なくとも、この実験では、一般的でない拍子に複雑なリズムを重ねる方向が最大のグルーヴにつながったわけではなかった。[5]

通勤中に聴いて面白かった曲を、帰宅後の動きに合わせる候補として聴き直す。そこで「展開は好きだが拍がつかみにくい」と思ったら、その感想を残せばよい。一般的でない拍子には単純なリズムが合ったという結果は、珍しい曲を避ける命令ではない。音の仕組みの組み合わせを確かめる理由になる。[5]

研究対象は西洋の音楽を聴く人である。この結果を、どんな音楽文化や個人にも同じように当てはめないことも大切だ。「中程度」という言葉を絶対的な商品の分類として使うより、自分が拍を追えるかという観察と並べて使いたい。そこまでなら、この実験から得られる選曲の視点を保てる。[5]

ドラムの音を増やすと、同じずれも違って聞こえる

複雑さには、音が置かれる位置だけでなく、何の音が重なるかという側面もある。スネア、バスドラム、ハイハットの組み合わせを変えたオンライン研究では、リズムの層の数とシンコペーションが、動きたさや楽しさにどう関わるかを調べている。参加者はそれぞれ108人と46人だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、このオンライン評価と本人の聴こえ方を分けて考える必要がある。[10]

各研究では12のリズムに楽器構成の異なる版を用意し、合計48の刺激を評価した。最初の研究では、スネアだけの版で複雑さに対する評価の変化はほぼ平らだった。一方、スネア、バスドラム、ハイハットを重ねた版では、シンコペーションに対する逆U字が最も強く現れた。[10]

後の研究でも似た結果が得られたが、版どうしの差は小さく、特定の楽器の組み合わせの違いが主に関わった。音の層を足せば必ず同じ量だけ動きたくなる、という単純な足し算ではない。楽器の役割と、重なり方と、シンコペーションの組み合わせで反応が形作られるという読み方になる。[10]

この結果を日常の選曲に置き換えるなら、「細かい音が多いから難しい」とひとまとめにせず、低いドラムや細かな刻みが重なったときにどう感じるかも聴いてみることである。同じリズムでも楽器構成で反応の形が違ったのだから、音の数だけを減らした曲が必ず自分に合うとも決められない。[10]

曲全体の迫力と、体が合わせたくなる感じの違いを見るのにも、この研究は役立つ。イヤホンで聴くと華やかな曲を、動くためにも使いたいのか。それとも、もっとすっきりした響きがよいのか。実験の楽器構成をそのまま再現する必要はない。どの音の組み合わせに自分が反応したかを考える入口にできる。[10]

楽器を重ねた研究で興味深いのは、同じリズムの候補を、編成だけ変えた版どうしで比較した点だ。曲名も雰囲気も全く違う楽曲を並べると、何に反応したのかが分かりにくい。リズムと楽器の関係を分けて調べる設計によって、「複雑だから好き」という感想の内側に、別の要因があることを検討できる。[10]

たとえばスネアだけではほぼ平らだった評価が、楽器を重ねた版では逆U字を示すという違いは、単独の音の配置を見て曲全体の反応を予言する難しさを示す。ここから、バスドラムがあれば必ず拍が分かるなどの新しい法則を作るのも早い。研究が示したのは、具体的な編成の比較で、複雑さに対する評価の形が変わったことである。[10]

拍子を変えた研究とも合わせると、選曲で問う順番が見えてくる。まず自分が拍のまとまりを感じるかを聴き、その上で、ずれた音や重なる音を面白いと感じるかを考える。拍子の実験と楽器構成の実験は別々なので、この順番自体が検証された手順ではない。それぞれの結果を混ぜずに、自分の感想を整理するための提案である。[5][10]

仕事帰りに曲を探していて、楽曲の理論的な分類まで調べる余裕がない日もある。そのときは「どのジャンルなら正解か」を急いで決めず、耳に入る音と自分の反応を言葉にしておけばよい。音の構造だけでなく聴く人の好みも関わるという研究を読むと、分類できない感想にも選曲の手掛かりとして居場所がある。[19]

また、ここでいう逆U字は、個人のプレイリストを複雑さの順に並べれば必ずきれいな山になるという約束ではない。実験では条件をそろえた刺激を比べるが、日常の曲は拍子も楽器も親しみも異なる。別々の研究が扱った条件の違いを意識すれば、研究結果と自分の感想がぴったり重ならなくても、無理に修正する必要はない。[5][10][19]

数字で読むグルーヴの研究

143人・120人・120人:拍子と複雑さを分けた行動実験の参加者数。中程度の山は4/4拍子で見られた。[5]

108人・46人:楽器の重なりを変えたオンライン研究の参加者数。反応は楽器構成とも関わった。[10]

179人:日常的なドラムパターンを使った実験の参加者数。知覚された複雑さの有意な効果はなかった。[7]

665人:ドラムパターンの探索的な聴取実験の参加者数。曲の特徴と聴く人の好みを一緒に調べた。[19]

42人:動かずに聴く条件と、拍に合わせてたたく条件などを比べた実験の参加者数。[4]

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