脂肪燃焼で糖も作られるのはなぜ?グリセロールと糖新生のつながりを読む

脂肪を使っているのに糖も作るのは矛盾なのか。脂肪の分解で生じるグリセロールが肝臓へ届く経路を軸に、脂肪酸の酸化、糖新生、血液への糖の供給を分けて読む。人の試験とレビューから、分解が増えても糖の産生が必ず増えるわけではない理由と、脂肪燃焼スイッチという説明の限界を考える。

朝食の皿を前にして、「脂肪を使っている間にも、体は糖を作るのか」と疑問が浮かぶ。脂肪燃焼と糖新生を逆向きの働きだと思っていると、同時に起きるという説明は矛盾に聞こえる。鍵になるのは、脂肪の分解で出てくる成分の行き先だ。

答えの入口は、脂肪を分解したときに出てくるグリセロールである。脂肪組織からは脂肪酸とグリセロールが放出され、グリセロールは肝臓で糖新生、つまり糖を新しく作る経路に入ることができる。脂肪の動員と糖の供給は、対立する働きではない。[3]

ただし「脂肪燃焼で糖が作られる」は短縮しすぎた言葉でもある。脂肪の分解、脂肪酸を使う酸化、肝臓から出る糖は別々に調べる必要がある。実際、健康な男性の試験では、条件によって脂肪の分解が増えても糖の動きは変わらなかった。材料の出口が広がったことと、糖の供給が増えたことは同じではない。[15]

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脂肪を分解すると、糖につながる材料も出てくる

脂肪の蓄えは、栄養の状態に応じて動く。細胞内の脂肪滴という脂質の蓄えは、栄養の状態に応じて変化する。2型糖尿病とその合併症を扱う脂肪滴のレビューでは、脂肪組織が脂肪の分解を調節し、遊離脂肪酸とグリセロールを放出する経路が説明されている。遊離脂肪酸とは、蓄えから出て利用へ向かう形の脂肪酸である。[3]

ここで名前を分けておきたい。グリセロールは脂肪の分解で生じる成分であり、肝臓へ入って糖を作る材料になりうる。一方、脂肪酸の量の変化は、インスリンの働きや筋肉の糖の取り込みにも関係する。インスリンは糖の利用や供給の調節に関わるホルモンである。脂肪組織の出口は、脂肪だけの問題で完結しない。[3]

「脂肪が糖になる」と聞くと、蓄えた脂肪が丸ごと別の燃料へ変換される図を想像しやすい。しかし、この問いで確かに追えるのは、分解で生じたグリセロールが肝臓の糖新生につながる経路である。脂肪酸とグリセロールを同じ名前で呼ぶと、材料としての役割と燃料としての役割が見えにくくなる。[3][20]

甲状腺機能亢進症を扱うレビューでも、空腹時に脂肪の分解が増え、そこで生じたグリセロールが糖新生の材料になることが説明されている。同時に、脂肪酸は糖新生を促す働きや、筋肉などで酸化される燃料としての役割を持つ。対象は甲状腺機能亢進症の病態であり、18〜39歳の健康な女性へ反応の大きさを当てはめることはできないが、成分ごとの役割を分ける助けにはなる。[20]

つまり、糖新生の説明で必要なのは「脂肪由来」という出身地だけではない。何という成分が、どの組織へ入り、何に使われたのかまで見ることだ。食卓では油と砂糖は別の容器に入っているが、体内では代謝の経路がつながっている。[3][20]

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分解、酸化、糖の産生は同じ数字ではない

脂肪燃焼という日常語には、蓄えから取り出すことと、実際に燃料として使うことが混ざっている。研究では脂肪の分解と脂肪酸の酸化を区別し、さらに体内で糖が作られて血液へ現れる流れも調べる。食事を変えた人の試験でも、肝臓の糖の産生、脂肪の分解、全身の燃料の酸化は、それぞれ測定の対象になっていた。[4]

測り方にも役割がある。その試験では、追跡できる目印を付けた糖とグリセロールを使い、糖の産生や脂肪の分解を調べている。また、呼吸のガスから燃料の利用を推定する間接熱量測定を組み合わせている。同じ「代謝を測る」でも、入口と出口を違う方法で見ているのである。[4]

この違いは、血液の値を読むときにも役立つ。グリセロールという物質の名前が出たら、まず濃度を測ったのか、産生の流れを追ったのかを確かめたい。成長ホルモンの作用を抑えた絶食試験では、血液中のグリセロールの値と、体内の糖の産生を別に評価していた。血中濃度と糖新生の速さは分けて評価する必要がある。[19]

肝臓の糖の産生という言葉も、糖新生の言い換えとして無条件には使えない。競技者の運動や糖質摂取を扱うレビューでは、肝臓に蓄えたグリコーゲンの分解と糖新生が区別されている。血液へ糖を供給する働きを考えるときは、新しく作る経路だけでなく、蓄えを取り出す経路も視野に入る。競技者の運動時の結果を18〜39歳の一般女性の日常活動へそのまま当てはめることはできない。[2]

たとえば「運動中に血糖が保たれた」という説明を読んでも、それだけではグリセロールから作った糖の量は分からない。血糖の維持、糖の産生、特定の材料からの糖新生は、問いの細かさが違う。ここを飛ばすと、体の調節を説明する論文が、いつの間にか脂肪を減らす方法の宣伝になってしまう。[2][3][15]

既存記事「脂肪燃焼の仕組みは乳酸で止まる?脂肪の分解と実際に使う量を分けて読む」は分解と利用の違いを扱っている。ここではその先にある、分解で出た材料が糖の供給へどうつながるかに問いを絞る。

人の試験では、分解が増えても糖の動きは変わらなかった

脂肪の分解と糖の供給が連動しうるなら、分解を増やすほど糖も増えるのだろうか。この直線的な見方を立ち止まらせるのが、健康な男性20人を対象とした無作為化の試験である。参加者はインスリンの低い条件と高い条件に分けられ、コルチゾールの投与条件を入れ替えて調べられた。コルチゾールは代謝に関わるホルモンである。男性のみの試験なので、18〜39歳の女性で同じ反応が出るかは別に検証が必要だ。[15]

研究者は糖とグリセロールに目印を付けて追い、インスリンやアドレナリンとの組み合わせを調節した。高いコルチゾールによって脂肪の分解が増えたのは、高いインスリンやアドレナリンがある条件だった。一方、糖の動きには変化がなかった。分解に変化が出ても、糖の供給側の変化には結びつかなかった。[15]

この結果は、グリセロールが糖の材料になることを否定しない。材料になれることと、ある実験で糖全体の流れが増えることは別の命題だからだ。肝臓へ届く材料だけでなく、ホルモンの組み合わせや組織の反応を含めて考える必要がある。材料の説明は経路の地図であり、その日の交通量そのものではない。[3][15]

研究の範囲にも注意したい。脂肪の分解を促す作用には、通常の生理的範囲を超えるコルチゾール濃度が必要だった。また、培養した人の脂肪細胞では、皮下の脂肪と内臓の脂肪で反応が違った。この試験から、日々のストレスを利用すれば脂肪が燃える、という生活上の方法を引き出すことはできない。[15]

論文でホルモン名を見つけると、「これを上げればよい」という操作の話に変えたくなる。しかし、ここで確かめられたのは、条件を調節した実験での反応である。男性を対象とした急性の実験を、女性を含むすべての人の普段の運動に共通する量的な法則として扱わないことが大切だ。[15]

この試験の比較をもう少し細かく見ると、男性はインスリン条件ごとに10人ずつに分けられていた。各参加者は異なるコルチゾール条件で繰り返し測定を受けた。誰か別の人の数字を横に並べるだけでなく、同じ人で条件を変える設計で、ホルモンの相互作用を確かめようとしていたのである。[15]

脂肪組織については、体内での測定に加えて、皮下脂肪と内臓脂肪の細胞を培養した比較も行われた。高いコルチゾールとインスリンを組み合わせたとき、分解が増えたのは皮下脂肪の細胞であり、内臓脂肪の細胞ではなかった。「体脂肪」という一語の内側にも、場所によって違う反応がある。血液で見た変化だけを、体のすべての脂肪に均等に起こった出来事として描くことはできない。[15]

このように条件を分ける理由は、糖と脂肪が無関係だからではなく、関係の仕方が一通りではないからだ。グリセロールが肝臓へ向かえるという経路の説明と、ホルモンを調節したときの全身の測定は、違う問いに答えている。前者は材料の行き先を示し、後者はその条件で流れが変わったかを確かめる。両方を読むと、つながりを認めながら、比例するという思い込みは手放せる。[3][15]

数字で読む脂肪と糖の研究

20人:コルチゾールと燃料代謝を調べた試験の対象は健康な男性だった。[15]

11人:等エネルギーの食事を入れ替えた試験を完了したのは、過体重または肥満で血糖が正常な男性だった。[4]

4日間:その食事試験で、低糖質・高脂肪食と高糖質・低脂肪食をそれぞれ続けた期間である。[4]

35.3%減:男性の4日間の大幅な食事変更による肝臓の脂肪の相対的減少。95%信頼区間は24.1〜46.6%の減少で、全身の減量率でも、自己流の食事制限の目標でもない。[4]

9人:成長ホルモンの作用を抑える条件も比べた絶食試験の対象は、肥満の男性だった。[19]

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