ダイエット中の食事量を、メニューの中間サイズだけで決めていないだろうか。食品選択の実験では比較相手や情報の出る順序で好みが動く一方、おとりを加えても狙った効果が出ない例もある。妥協効果とおとり効果を分け、購入意向と実際の摂取量の違いから、自分の注文を見直す視点を考える。
メニューに小盛り、並盛り、大盛りが並ぶ。小盛りでは心もとなく、大盛りほどでもない。指が止まったのは真ん中のサイズだった。その選び方は、自分にちょうどよい量を見つけた結果だろうか。それとも、隣の大きなサイズとの比較で落ち着いたのだろうか。
食品選択の研究には、極端でない選択肢が好まれる「妥協効果」を示した実験がある。ただし、食品の価格や品質、購入意向を調べた結果を、そのまま食事の適量の証明にはできない。中間を好むことと、必要な量を食べることは分けて考える必要がある。[7][9]
答えの芯は、中間サイズを避けることではない。真ん中という位置だけを食事量の目安にしないことだ。比較相手を加える工夫が選択を動かす場合もあれば、狙った効果を示さない場合もある。メニューは体の必要量を測るものさしではない。[1][7][9]

中間を選ぶ妥協効果と、おとり効果はどう違うか
妥協効果とは、価格や品質などを比べるとき、最高や最低という極端な位置にない商品が選ばれやすくなる現象である。中国の豚肉製品の購入を扱った研究では、高価格・高品質側と低価格・低品質側との関係の中で、極端でない商品の選択を調べている。ここでの「中間」は、体に必要な栄養の中間値という意味ではない。中国の食品購入者の結果を、18〜39歳の女性の食事量の判断へそのまま当てはめるには、対象と課題の違いがある。[9]
一方、おとり効果は、比較用の選択肢を加えることで、もともとある商品の選ばれ方が変わる現象である。たとえば魅力の低い料理を加え、狙った料理がそれより優れて見えるようにする仕掛けが研究されている。選択肢を追加したという操作が共通していても、真ん中を選ぶことと、劣る比較相手によって特定の商品が魅力的に見えることは区別したい。[1][13]
フランスの参加者を対象にしたポケボウルの研究は、この違いを同じ食品の文脈で扱った。ポケボウルは具材を組み合わせたボウル料理である。研究では、特定の属性で比較相手より優れた選択肢に向かう効果と、属性全体で中間にある選択肢に向かう効果を分けて検討した。フランスの参加者の購入判断を、18〜39歳の女性の食事量へ直接適用することはできない。[7]
日常のメニューを読む場合も、「真ん中だから安心した」のか、「隣と比べて条件がよく見えた」のかを分けると考えやすい。これは注文を採点するための分類ではない。同じサイズを選んだとしても、何を基準に決めたかを言葉にするための整理である。サイズの名前より、自分が比べた条件に目を向けたい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
大きな選択肢だけでなく、価格や情報の順序を見る
豚肉製品の購入判断を調べた研究では、低価格側のおとり情報でも、高価格側のおとり情報でも、有意な妥協効果が確認された。比べる対象は価格、品質、安全性であり、単純な盛り付け量の大小ではない。大きなサイズを隣に置けば必ず中間サイズが選ばれる、という読み方には進めない。[9]
この研究には情報を示す順序の違いもある。おとり情報のない状態で先に選んだ後、その情報を追加すると、妥協効果は弱まった。選択肢の顔ぶれだけでなく、すでに何を見て選んでいたかも判断に関わったのである。同じ商品一覧でも、最初から全部を見た場合と、後から比較相手が加わる場合を同一視しないことが大切だ。[9]
これを外食の場面に置き換えて考えてみる。初めて入った店でサイズ表を一斉に見る場合もあれば、いつもの注文を決めた後に大盛りの案内を見る場合もある。研究と同じ実験条件ではないが、比較相手がいつ視界に入ったかという問いを持つことはできる。「私は中間が好き」で片づけず、注文の手前にあった情報を思い返す視点だ。
食品の比較には値段以外の軸もある。無錫市の消費者を調べた別の豚肉購入研究では、品質と価格の属性によっておとり効果が異なり、消費者の間にも違いがあった。比較の効果を、全員に同じ強さで働く法則として扱えないことを示す結果である。無錫市の消費者での結果が、18〜39歳の女性にも同じ強さで生じるかは別に確かめる必要がある。[11]
家族と食事をするとき、「同じメニューを見たのだから同じように感じるはず」と考える必要はない。食べたいものや予算を言葉にして、それぞれの注文を決めればよい。研究が示す個人差は、他人のサイズをそのまま自分の基準にしなくてよいという読み方につながる。ただし、個々の注文理由を実験の効果だけで説明し切ることも避けたい。[11]
豚肉の研究で扱う品質や安全性と、外食のサイズ表で扱う量とでは、判断の対象が違う。たとえば品質が高いが価格も高い商品と、価格を抑えた商品との間で迷う場合には、何をどこまで重視するかという交換条件がある。研究の「中間」を読むときは、その中間がどの属性の間に位置するのかを確認したい。食品購入で妥協効果が見られたことは、どんな大小の組み合わせでも同じ結果になるという意味ではない。[9]

考え方の誘導で、中間の魅力も変わった
ポケボウルの実験では、参加者の考え方を分析的にする条件と、全体を捉える条件を設けた。分析的とは属性を分けて見る考え方、全体的とは関係を含めて捉える考え方として整理できる。そのうえで、購入したい気持ちと、支払ってもよいと考える金額を測定した。実際の食後の満腹感を調べた試験とは問いが異なる。[7]
結果は一様ではなかった。分析的な考え方の条件では、特定の属性で比較相手に優る選択肢への引きつけが強まった。全体的な考え方の条件では、中間にある選択肢への妥協効果が強まった。食品自体の条件を読むだけではなく、そのときの考え方によっても購入選好が動いた点が興味深い。[7]
この結果を読む鍵は、考え方の優劣ではなく、比較する軸の違いにある。属性ごとの優位さに向かう選好と、属性全体で中間に向かう選好が、それぞれ異なる条件で強まった。値段だけを見るのか、料理全体の釣り合いを見るのかという、判断の向け先を考える材料になる。[7]
夜のスマホでメニューを見ながら、今日は値段を重視したのか、具材の組み合わせを重視したのかと振り返ってみる。これは自分の性格を診断する作業ではない。「中間だから」だけでは見えなかった決め手を探す作業だ。比較の理由が分かれば、次に同じ料理を選ぶときにも、その理由を使うかどうかを考えられる。
おとりを足しても、狙いどおりに選ばれるとは限らない
価格を使ったおとりを調べたオンラインの無作為化比較試験では、菜食料理の選択を増やす狙いがあった。対象はオンラインで仮想の料理を選ぶ参加者で、既存の菜食料理より高い価格のおとり料理をメニューに加えた。18〜39歳の女性が実際に注文する場面へ、そのまま当てはめることはできない。ところが、最初の試験でも、条件を増やした再試験でも、介入の主効果は認められなかった。[1]
最初の試験はメニューの条件が4つで、オッズ比は1.08、95%信頼区間は0.45〜2.57だった。再試験では条件が7つとなり、より高価なおとりも試したが、オッズ比は0.68、95%信頼区間は0.41〜1.12だった。どちらも「狙った菜食料理の選択が増えた」と断定する結果ではない。[1]
オッズ比は選択の起こりやすさを比較する指標で、選択確率がそのまま何倍になったという数字ではない。ここでは信頼区間がいずれも1をまたいでいる。点の数字だけを拾い、「少し増えた」「逆に減った」と物語を作るより、主効果が確認されなかったという試験の結論を先に置きたい。[1]
さらに、この試験で参加者が行ったのは仮想の料理選択だった。画面上で選ぶことと、代金を払い、目の前の料理を食べることは同じ課題ではない。著者らも味、盛り付け量、特徴的な具材など、どの属性が比較相手として適しているかを現実の選択場面で調べる必要を挙げている。[1]
また、試験で主効果がなかったことは、あらゆるおとりが無意味だと決まったことでもない。菓子の選択実験では組み合わせによる効果の違いがあり、ポケボウルでは考え方の条件による違いがあった。それぞれが試した料理、比較する属性、測った判断を並べて読む必要がある。成功例だけを集めても、失敗例だけを集めても、食品を選ぶ場面の幅は捉えにくい。[1][7][13]
サイズ表を見て迷う読者に必要なのは、心理効果の名称を暗記することより、研究の問いと自分の問いをそろえることだ。「選ばれやすいか」を知りたいのか、「自分にちょうどよいか」を知りたいのか。注文ボタンを押す前に、その違いを置いておきたい。
数字で読む食品の比較と選択
4条件:価格のおとりを検討した最初のオンライン試験のメニュー条件数である。[1]
1.08:最初の試験のオッズ比。95%信頼区間は0.45〜2.57で、主効果は認められなかった。[1]
7条件:再試験では条件を広げ、より高い価格のおとりも検討した。[1]
0.68:再試験のオッズ比。95%信頼区間は0.41〜1.12で、こちらも主効果は確認されなかった。[1]
420人:学食の料理を用い、おとりや料理名の説明を比較した無作為化選択研究の参加者数である。[14]
820人:企業の食堂で、翌週の特別メニューへの投票に参加した客の数である。[14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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