SNSと体型の悩み、スクロールのあと自分の体が嫌になる理由を論文で読む

SNSを見たあと、変わっていない自分の体が急に気になるのはなぜか。若い女性の実験研究から、理想の体型を見せる画像や動画、外見の比較、体を肯定する投稿の影響を確かめる。効果の大きさと研究の限界を読み、ダイエットの意志を責める前に、見る内容と運動の目的を選び直す手がかりを探る。

着替えようとして、さっき見た運動動画の体型を思い出す。引き締まったお腹、同じ角度で並ぶ写真、努力を促す短い言葉。朝には気にならなかった服の上からの輪郭が、急に採点の対象になる。変わったのは体なのか、それとも比べる相手なのか。若い女性の実験研究は、この問いを体への満足度から確かめている。[5]

健康のために保存した投稿なのに、見終わると自分を責めたくなる。そんな反応を、単に意志が弱いからと片づける必要はない。研究を読む鍵は、何を見せたか、何と比べたか、何を測ったかである。写真と動画、外見の理想と体の受容、満足度と運動意欲を分けると、同じSNSでも違う結果が見えてくる。[5][20]

既存記事「ヨガと摂食障害・ボディイメージ|『改善するのか悪化させるのか』がまだ議論の途上にある」では、ヨガと体への評価を扱っている。ここで確かめるのは、レッスンの効果ではなく、スクロール中に何を見せられ、誰と比べ、その直後に自分をどう評価するかである。低体重の健康問題は隣の記事に譲り、体型への悩みが画面との関係で動く部分を読む。

コーヒーを飲みながらスマートフォンを使う女性を近くから撮影した写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

SNSで動くのは、体の形より体への満足度だ

研究でいうボディイメージは、この話では自分の体への見方や評価を指す。中心となる指標は、体への満足度、不満、外見についての心配、気分などである。[1][5] 体脂肪や筋肉の量とは別の指標だ。研究結果を読むときには、「体がどうなったか」と「体をどう感じたか」を分ける必要がある。

若い女性3,603人を含む20件の実験研究を統合したメタ分析では、美の基準となる理想の体を示す内容への接触で、体への満足度が低下した。効果量はコーエンのdで−0.29だった。一方、体の受容を促す内容への接触では、満足度が上がり、dは0.20だった。[5] 同じSNSという入れ物の中でも、見せる内容によって方向が違う。

dは、尺度の異なる研究の変化を比較するための数値として読む。ここでの−0.29は、体への満足度が29%減ったという意味ではない。[5] 数字だけを写真に貼って「この動画で体への不満が何割増える」と言い換えると、研究とは別の話になる。統合された平均の変化から、今日の自分に起きる変化量を計算することもできない。

この分析が扱うのは実験である。内容を見せる条件を設けて比較しているため、単に「SNSをよく使う人ほど体に不満が多い」という関連より、接触の影響に踏み込める。[5] 今回取り上げる短期の画像・動画実験が確かめた範囲は、閲覧前後の評価や気分、運動意欲までである。長期の食生活や運動の継続は、別の検証を要する。[1][4][14][20]

もう一つ見るべき点は、比較対象である。理想の体を見た条件だけの変化を眺めるより、別の内容を見た条件と並べることで、その内容に固有の影響を検討できる。今回の個別試験には、動物、芸術、自然、旅行という比較対象が登場する。[1][4][14][20] 何も見ない場合との比較なのか、別の投稿を見た場合との比較なのかを、結論と一緒に確認したい。

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「健康のため」の動画なら安心、とは限らない

フィットスピレーションとは、運動や食事を通じて健康・フィットネスへの意欲を促す投稿のことである。ただし、その一部は、引き締まった体や運動能力の高そうな体の外見を中心に見せる。[1][14] 運動を紹介していることと、見る人が自分の体を肯定できることは、同じではない。

米国の女子大学生150人、平均年齢19.28歳を対象とした無作為化試験では、動物の動画かフィットスピレーションの動画を、それぞれ75人に5分間見せた。後者を見た人は比較条件に対して、他者との比較、外見への懸念、自分が太っていると感じる程度、悲しさが大きくなった。[1] 健康を目指すように見える動画でも、直後の心理反応は励ましだけではなかった。

この実験は、動画を単独で見せるのでなく、5分の動画集として提示した。[1] したがって結果は、その提示条件で動物の動画集と比べた差である。日常の閲覧では運動の手順、友人の近況、別の話題が混ざる。実験の条件を押さえておくと、個々の投稿の判定と、一定の内容をまとめて見る経験の評価を区別しやすい。

反応には個人差もあった。この試験では、もともと外見への懸念が高い人で、外見への懸念に関する悪影響が見られ、低い人では見られなかった。抑うつ症状による違いも報告されているが、単純に症状が高いほど悪影響が強いという結果ではなかった。[1] 「落ち込んでいる人にだけ危険」「気にしない人なら絶対に安全」といった線引きはできない。

日常で使うなら、投稿者の言葉より、見たあとの自分の反応を観察する手がかりになる。動きのやり方が気になったのか、それとも映っている人との差ばかり気になったのか。これは研究に沿った問いであり、自己診断ではない。[1][14] 同じ動画を友人が楽しめたことは、自分も我慢して見続ける理由にはならない。

動画と写真の差は、平均の差として読む

先ほどのメタ分析では、理想の体を示す動画による満足度の低下は、TikTokでd=−0.45、Instagramの画像でd=−0.25だった。動画を中心とする条件のほうが、平均の低下は大きかった。[5] ただし、これだけで、どの動画もどの写真より悪いと順位をつけることはできない。比較しているのは研究で扱われた内容と条件である。

一方、体の受容を促す内容では、動画と画像の効果量はd=0.21と0.20で近かった。ただし、その比較に使える研究数は限られていた。[5] 動画という形式そのものを敵にすると、受容を支える内容も一緒に見落とす。見るか見ないかを決める際には、アプリの名前に加えて、その投稿が何を基準に体を扱っているかも考えたい。

しかも、個別の実験は一枚岩ではない。オーストラリアの18〜25歳の女性120人を、TikTokのフィットスピレーション動画と芸術の動画に無作為に割り付けた試験では、前者でその場の外見の比較と否定的な気分が増えた。しかし、体への不満が直接増える効果は見られなかった。[14] 「動画を見れば必ず体が嫌になる」という言い切りは、この試験に合わない。

同じ試験では、外見の比較が、動画と体への不満や気分の変化を結ぶ経路として示された。[14] ここでいう経路とは、比較の程度を考慮すると変化のつながりが説明される、という統計上の結果である。個々の人の思考を直接観察した結果ではなく、測った指標同士のつながりの分析だ。直接の不満増加がなかったことと、比較が関わったことは両方残して読む。

ここで、動画の動きや音が差を生んだのか、と知りたくなる。しかし、引用した統合結果は、動画中心のプラットフォームと画像中心のプラットフォームを比べたものである。[5] 同じ出演者、同じ構図、同じ内容を静止画と動画だけに変えた比較としては読めない。映像形式と掲載場所が重なっているため、差のすべてを動きや音だけで説明することはできない。

個別の動画試験の報告では、比較や気分が変わった方向は分かるが、今回引用した結果には、その差の効果量や信頼区間が示されていない。[1][14] 信頼区間は推定の幅を読む情報である。その記載がないところに、メタ分析の数字を借りて埋めることはしない。米国の動画試験にもオーストラリアの試験にも、統合分析と同じ大きさの変化があったと書けば、対象と研究の違いを消してしまう。

講義の帰りに、運動の動作を知りたくて検索する場面を考える。手順を確かめたいのに、気づけば出演者の腰や脚を自分と比べている。そこで検索の目的を言葉に戻す。「この動きのやり方を知りたい」と「この体でなければいけない」は、違う問いだ。外見の比較が心理反応に関わった試験を、こうした閲覧中の気づきに使うことはできる。[14] ただし、検索語を変えるだけで不満が改善するかは、その試験の結果ではない。暮らしへの応用案と、実験で確かめた効果を区別しておきたい。

数字で読むSNSと体への評価

20件・3,603人:若い女性の実験研究を統合したメタ分析の規模。[5]

−0.29:理想の体を示す内容による体への満足度の変化。割合ではなく効果量d。[5]

0.20:体の受容を促す内容による満足度の変化。こちらも効果量d。[5]

5分・150人:動物と運動・体型の動画を比較した米国女子大学生の試験。[1]

120人:比較と否定的な気分は増えたが、体への不満の直接増加はなかった試験。[14]

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