ダイエットのおやつの芋けんぴ、砂糖の衣は湿るとどう変わる?結晶と食感の話

ダイエット中のおやつに芋けんぴを選ぶとき、砂糖の衣の白さや硬さから何が分かるのか。砂糖の結晶化、吸湿、ガラス転移を調べた実験を手がかりに、開封後の食感の変化を読む。芋本体の硬さと衣の状態、保存の工夫と栄養の判断を分け、湿ったから糖が減ったとは考えない見方を紹介する。

袋を開けた日の芋けんぴは、指先に触れる衣も、噛んだときの音も気になる。翌日、同じ袋から出したものが少しべたつくと、「砂糖が溶けたのか」「白い粒がなくなった分、糖も減ったのか」と考えたくなる。

答えの芯は、砂糖の状態と砂糖の量を分けることだ。ショ糖を使った材料実験では、水分が非晶質の砂糖の動きやすさを変え、結晶化を促すことがある。湿ることは、ただ固体が液体に変わる一本道ではない。[1][5] ここから芋けんぴを見るなら、衣の見た目を栄養表示の代わりにしないのが筋である。

既存記事「間食のカステラの砂糖は粒で残る?結晶の歯触りと生地の硬さを分けて読む」は、粒と生地の違いを扱っている。こちらの問いは、開封後に空気中の水分に触れる衣をどう読むかだ。芋けんぴの減量効果を判定する話ではなく、砂糖を使った実験から保存と食感の関係を考える読み物である。

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砂糖は固まっていても、同じ状態とは限らない

砂糖の研究には、結晶と非晶質という言葉が出てくる。結晶は分子が規則的に並んだ状態、非晶質はその規則的な並びを持たない状態を指す。ショ糖を非晶質の固体から結晶へ移す実験は、この違いを出発点にしている。[1] どちらも「固い砂糖」として目に入るため、台所ではつい同じ箱に入れて考えてしまう。

非晶質の砂糖には、ガラス転移という状態変化も関わる。これは、結晶が融ける温度を測る話とは区別される、分子の動きやすさに関係する変化である。ショ糖のガラス転移温度と融解温度を測った研究では、吸収した水の影響を調べることで、結晶化が起こる温度との関係が検討された。[1] 「砂糖が固い」という観察だけでは、その先の変化のしやすさまで決まらない。

ここで大事なのは、芋けんぴの衣全体を、実験で作った均一なショ糖の試料と同じものにしないことだ。研究対象は、非晶質のショ糖や薄いショ糖膜である。[1][14] 市販品の袋を開けて白い部分を見つけても、それだけで結晶の割合やガラス転移温度を読み取ったことにはならない。研究の言葉は、見た目に名前を貼るためより、見た目だけでは分からない条件を整理するために使う。

たとえば白い粒が目立つ袋と、つやのある衣の袋を並べたとする。比べたいのは砂糖の量なのか、口に触れる感じなのか、保存中の変わりやすさなのか。問いを決めずに「こちらの方が軽そう」と判断すると、材料の状態の話が、いつの間にか食事の評価にすり替わる。おやつの外見はよく見えるが、中身の秤までは兼ねていない。

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水は砂糖を柔らかくするだけでなく、結晶化にも関わる

ショ糖の非晶質固体を調べた材料実験では、温度を変えながら結晶化を測る方法に加え、30℃、相対湿度32.4%の条件に置いて、水蒸気の取り込みと、その後の水の減少を追跡している。研究者はこの水の減少を、結晶化に伴う変化として調べた。[1] 同じ試料の重さの動きを時間に沿って見ることで、吸湿だけを見ていたのでは気づかない過程を捉えている。

この研究では、水が可塑化する作用、つまり分子を動きやすくする作用と、結晶化を促す傾向との関係が示された。[1] 水が入ればずっと柔らかいまま、と単純に考えると、この先が抜け落ちる。水分を取り込み、動きやすさが変わり、結晶ができ始める。砂糖の中では、見た目の「湿った」の裏側で違う段階が続きうる。

ただし、この実験の相対湿度を、芋けんぴが湿る境目として使ってはいけない。相対湿度は空気の湿り具合を表す条件であり、ここでは特定の試料を調べるために設定された値である。[1] 家の湿度計が同じ数字を示したら衣が同じように変わる、という対応表ではない。試料の作り方も、観察する時間も、食べ物の中で砂糖が置かれた状況も区別して読む必要がある。

さらに研究では、乳糖、トレハロース、ラフィノースをショ糖と一緒に凍結乾燥している。添加量が重量比1〜10%でも結晶化温度は有意に上がり、水分の影響で結晶化が始まるまでの時間が長くなった。始まりを遅らせる効果はラフィノースが大きかった一方、結晶の成長に対応する水の減少速度では、これらの添加物の間に有意な違いはなかった。[1]

「結晶ができにくい」の中にも、始まるのが遅いのか、成長が遅いのかという違いがある。これは家庭で何かを混ぜる提案ではない。研究者が同じ砂糖に別の糖を組み合わせると、変化のどの段階が動くのかを見分けられるという話だ。[1] 原材料に砂糖という文字があっても、それだけで保存中の振る舞いが一律になるとは考えない方がよい。

湿度を上げる実験では、結晶化の始まりが早まった

食品科学の研究では、凍結乾燥した非晶質ショ糖について、25℃で相対湿度10〜90%の範囲を調べている。まず結晶を29%含む試料を使い、水分を取り込む時間経過を測った。水分に誘発される結晶化は相対湿度40〜80%で観察され、その範囲では湿度が高いほど結晶化の開始までの時間が短くなった。[5]

注目したいのは、「砂糖が湿った」という同じ言葉の中に時間が入っていることだ。同じ場所に置いたとしても、開けてすぐの衣と、置いておいた衣を同じ時点として比べるわけにはいかない。研究でも吸湿の途中経過を追って初めて、結晶化がいつ始まったかを区別している。[5] 昨日と今日の食感の違いを考えるなら、室内の湿り具合だけでなく、開封してからの経過も観察の欄に入る。

同じ研究は、結晶の割合が23%、29%、80%の試料も比較した。一般に相対湿度90%未満では、結晶の割合が少ない試料ほど疑似平衡の水分量が高く、その差は相対湿度60〜80%で特に大きかった。[5] 疑似平衡とは、この測定で落ち着いたように見える水分状態として読むとよい。数字の比較対象はあくまで試料の水分量であり、人が食べた後の体重ではない。

ここから「結晶が多い衣なら必ず湿気に強い」と市販品を順位づけるのは飛躍である。実験は特定の調製法によるショ糖試料の比較だからだ。[5] それでも、最初の結晶の割合が、その後の吸湿の見え方に関係するという発見は役に立つ。同じ砂糖でも出発点が違えば、空気に触れた後の変化が違ってよい。袋同士の違いを、砂糖の多い少ないだけで説明しなくて済む。

実験の数字を日常へ持ち帰るときは、湿度の範囲と変化の方向を分けて受け取るとよい。相対湿度40〜80%で結晶化が観察されたという結果は、その外側なら食品が変化しないという意味ではない。測定した試料と測定条件に対応する結果である。[5] 天気予報の湿度を見て、袋の中の砂糖の状態を計算するための式としては使わない。手元に残すのは、水を取り込むことと結晶ができることが同時に関係する、という見方だ。

また、最初から結晶を含む試料で吸湿を調べた点も見逃せない。非晶質と結晶を、完全に別々の食品のように扱う必要はない。結晶の割合を変えた比較は、同じショ糖でも両者の組み合わせが吸湿の測定結果に関わることを示している。[5] 「粒があるか、ないか」という二択より、「どんな状態が組み合わさっているか」という問いの方が、研究の比較に近い。

夕方の立川駅北口で買った袋を、机の上で少しずつ食べる場面を想像する。最初の一口と後の一口の違いを確かめたくても、その間には時間も周囲の空気もある。変わった感じをすぐ商品の良し悪しへ結びつける前に、比べる条件を思い出したい。これは家庭で結晶化を測定できるという話ではなく、時間と湿度を区別して測った実験の読み方を、観察の仕方へ借りる提案である。[5]

数字で読む砂糖と水分

30℃、相対湿度32.4%:非晶質ショ糖の吸湿と結晶化を時間に沿って追った材料実験の条件である。[1]

重量比1〜10%:別の糖の添加でも、ショ糖の結晶化温度や開始までの時間に変化が出た。[1]

25℃、相対湿度10〜90%:凍結乾燥したショ糖の吸湿を測った実験の範囲である。[5]

結晶の割合23%、29%、80%:吸湿の比較に使った試料の違いであり、芋けんぴの衣の測定値ではない。[5]

相対湿度40〜80%:このショ糖試料で水分に誘発される結晶化が観察された範囲である。[5]

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宮川涼 Founder

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