腕の腱が見える人と見えない人がいる?長掌筋の有無と握る力の意外な関係を読む

腕の腱を浮かせて比べたとき、見えない側は筋力が弱いのだろうか。長掌筋が生まれつきない人の割合、見た目だけでは判定できない理由、握力とつまむ力で異なる研究結果を読む。集団や検査方法による数字の違いも確かめ、手首の線を体力の成績表にしない見方を考える。

手首に浮かぶ細い線は、誰の腕にもあるのだろうか。机に両腕を並べると、右には見えるのに左には見えず、左右で違うこともある。長掌筋という筋肉は、生まれつきない人がいる。ただし、動かして腱が見えなかっただけでは、本当にないとは決められない。[14][15]

そして、長掌筋がない手は握力が弱い、とも一律には言えない。成人の横断研究では、有無による握力の有意な差を認めない結果が繰り返し報告されている。一方、つまむ力や親指を開く力では差を認めた研究があり、「何の力を測るか」で話が変わる。[2][4][5][6]

既存の「腕の筋肉の名前が同じなら働きも同じ?筋肉の中で分かれる神経の担当を読む」には筋肉内部の担当分けを譲る。ここで確かめるのは、手首に見える線と筋肉の有無、そして握る力の関係である。隣の記事の指を個別に動かす能力とも分け、長掌筋という具体的な構造に絞って読む。

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腕の腱の正体は、長掌筋という細い筋肉の一部である

長掌筋は前腕の、手首を曲げる筋肉が集まる場所にある細長い筋肉である。オマーンの医学生を調べた解剖学的研究も、この位置と形を出発点にしている。筋肉の名には「掌」が入るが、前腕にある筋肉を指している。[4]

働きとしては、手首を曲げる力への弱い寄与と、手のひらに広がる腱膜を張ることが説明されてきた。腱膜とは、膜のように広がった腱の構造である。さらに親指を手から離す方向へ開く動きにも寄与する、という実験結果がある。目立つ線だから大きな力を担当する、という順番ではない。[2]

筋肉の名前を知ると、目の前の線にも名前を付けたくなる。しかし研究では、ただ腕を眺めるだけでなく、決められた動作を用いた検査で長掌筋の有無を調べている。若い成人を対象にした研究では、シェーファーテストと呼ばれる検査などを使い、その後で握力を測っている。線を見つけることと、力を測ることは別の手順なのだ。[4][6]

この区別は、日常の疑問にも役立つ。友人と比べて線が薄く見えた、写真では片側だけ目立った、という観察は、その場の見え方である。研究でいう「長掌筋がない手」とすぐ同じ箱に入れない方がよい。検査で不在とされた例でも、判定方法によって不在を多く数える可能性が指摘されている。[14]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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「見えない」と「ない」の間には検査の問題がある

この題材で先に読む価値があるのは、長掌筋の不在率を統合したメタ分析である。メタ分析は複数の研究結果をまとめて傾向を調べる方法だ。2017年の研究は、遺体を調べた解剖研究と、動作によって存在を確かめた研究を分けて比較した。動作で調べる研究の方が、不在を多く報告していた。[14]

著者らは、機能的な検査では長掌筋がない割合を過大に見積もる可能性があるとした。そして、動作検査で見つからなかった患者について、腱移植に使えないと判断する前に画像で評価することを勧めている。これは手術前の判断に関する提案であり、自宅で線が見えなかった人全員が検査を受けるべきだ、という提案とは区別する必要がある。[14]

なぜこの違いが大切なのか。もし「線が出なければ不在」として人数を数え、その数字をそのまま生まれつきの筋肉の有無だと受け取れば、見つけ方の難しさまで体の個人差として数えてしまう。メタ分析が示すのは、体の違いを論じる前に、何を使って確かめたかを読む必要がある、という問題である。[14]

長掌筋には形の変異も多い。各国の研究と解剖学的変異を扱ったレビューは、不在率の違いに加えて、形がさまざまであること、臨床で見つかる場合も手術中や解剖で見つかる場合もあることを整理している。標準的な絵は代表的な形を示しており、全員の腕の設計図にはならない。[16]

手首の写真を見て「自分だけ違う」と感じたときは、この検査の段階を思い出したい。研究でさえ、存在を確かめる方法の影響を受ける。スマホの画面に線が写ったかどうかを、筋肉があるかどうかの最終判定にするのは早い。[14] 腕の写真は撮れても、写真だけで内部の構造までは確定できない。

ない人の割合は、誰をどう数えたかで違う

2013年の系統的レビューとメタ分析は、条件を満たした26報をまとめ、長掌筋の先天的な不在の統合割合を20.25%とした。よく引用される15%より高かったという結果だ。ただし、この20.25%を日本の大人全員に当てはめる読み方はできない。同じ分析で、対象集団による違いが示されている。18〜39歳の女性だけの割合として、そのまま使うこともできない。[15]

この分析の東アジア集団の統合値は4.5%、アラブ系中東集団では41.7%であった。割合に大きな開きがあるため、「人類の何人にひとり」という単独の数字だけでは、近くにいる人のことを十分に表せない。対象者の背景を外したまま、珍しさだけを競う数字にはしにくい。[15]

中国人の男女329人を調べ、文献も検討した研究では、片側のみの不在が3.3%、両側の不在が1.2%、全体の不在率が4.6%と報告された。著者らも、標準的な不在率をすべての集団に適用できないと結論している。この研究の人数と割合を、18〜39歳の女性や立川の利用者の割合に、そのまま置き換えることもできない。[18]

ここで気を付けたいのは、人数と手の数である。両腕を調べる研究では、参加者の数と調べた上肢の数が別々に登場する。片側だけない人も、両側ともない人もいるので、「ない手の割合」と「ない人の割合」は同じにならない。中国人集団の研究が片側と両側を区別して報告している点は、その読み分けの助けになる。[18]

性別についても、身近な印象で決めない方がよい。26報をまとめた分析では、性別による有意な差は認めなかった。一方、トルコの小児を調べた研究では、左右それぞれの不在率に男女差があった。小児の性差を18〜39歳の女性の特徴にそのまま当てはめることはできない。特定の集団の結果と、複数集団をまとめた結果は、同じ質問への同じ答えにはならない。[1][15]

複数の数字があることは、好きな数字を選んでよいという意味ではない。全体の統合値なのか、特定集団の観察値なのか、片手を単位にした値なのかを添える。自分の腕を見ながら読む記事だからこそ、遠くの集団の平均を自分の確率として言い切らないことが大切である。[15][18]

割合の読み方には、研究の入口も関係する。動作で判定した研究と解剖で確かめた研究では、そもそも見つけ方が違う。対象集団による差を知りたいときも、その差のすべてを集団固有の特徴として説明する前に、判定方法を確かめる必要がある。不在率のメタ分析と検査方法を比較したメタ分析は、並べて読むことで数字の意味がつかみやすくなる。[14][15]

また、研究をまとめた値は、そのまま自分の家族や職場での人数予想にはならない。全体の20.25%という値も、対象が異なる複数の研究を統合したものである。隣の席の人に線があるから自分にもあるはずだ、あるいは周囲で見つからないから極めて珍しいはずだ、という判断とは距離を置きたい。比較の相手を変えると、数字が答えている問いも変わる。[15]

「生まれつきない」という言葉は、あとから使わなくなって筋肉が消えたという話とは区別したい。ここで取り上げた系統的レビューは先天的な不在を扱っている。したがって不在率の数字を、運動不足の人の割合として読んだり、よく鍛える集団ほど低くなるはずだと推測したりする根拠にはできない。研究名に含まれる問いを、そのまま保って読む必要がある。[15]

2015年の文献レビューでは、世界の報告の不在率は1.5〜63.9%の範囲にあった。これは各人の体でその範囲の確率が揺れるという意味でも、世界全体の平均がその中間にあるという意味でもない。報告された研究の値には、それだけの開きがあった。数字の幅が大きいときほど、強い見出しにするより、調べた集団と方法を一緒に置く方が正確である。[16]

数字で読む長掌筋の有無と手の力

26報:先天的な不在率の系統的レビューとメタ分析に採用された論文数である。[15]

20.25%:同じメタ分析の全体の統合不在率であり、集団差を含んだ値である。[15]

329人:中国人集団の調査対象で、不在率は全体で4.6%だった。[18]

523人・1046手:握力とつまむ力を調べた横断研究では、これだけの対象を評価した。[5]

36人と35人:新しい手の機能研究で比較された、不在者と存在者の人数である。[7]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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