間食のりんごはべたつくほど古いのか?熟す変化と水分を守るろうの働きを読む

間食のりんごに触れてべたつくと、古くなったのか、何か塗られたのかと迷う。天然のろうの役割、熟す途中の成分変化、品種と保存温度の違いを研究からたどる。水分が失われる変化や衛生状態とは分けて、手触りだけで鮮度や食べられるかを決めないための見方を示す。

間食用のりんごを皿に置くと、指に油のような感触が残った。皮は昨日よりつややかに見える。「古くなったのか」と冷蔵庫に戻す前に、皮の表面で何が起きているのかを分けて考えたい。

りんごには天然のろうがあり、保存中にはその成分や構造が変わる。べたつきは熟す過程と関連するが、品種や保存の温度にも左右されるため、手触りだけを共通の鮮度時計として使うのは難しい。[2][12][13] 「べたつくから傷んだ」「つやがあるから新鮮」のどちらにも、判断を急ぐ余地がある。

既存記事「間食のりんごは茶色くなると栄養も減る?切り口の色と成分の変化を研究で読む」には切った後の色の話を譲る。ここで見るのは、丸ごとのりんごの皮である。白い果粉を扱う「空腹時のりんごは皮の白さで鮮度を選べる?果粉の見た目と水分保持を分ける」とも分け、指に残るべたつきと追熟、保存中の水分の関係を中心に読む。

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皮のろうは、果実自身が作る表面の層である

りんごの表面のろうを研究したレビューでは、クチクラワックスが果実の表皮を構成する重要な部分として整理されている。クチクラワックスとは、植物の体の表面にあるろうの層のことである。りんごの発育、保存、環境からのストレスへの適応に関わり、その形成には環境と遺伝子の両方が関係する。[2] つやを見た瞬間に「外から何かを塗った」と決める前に、果実自身にも表面を作る働きがあると押さえておきたい。

ただし、天然のろうと、流通過程で表面に加えられるコーティングは区別する必要がある。米国、中国、フランスのりんごを比較した表面物性の研究では、ワックス処理も洗浄もしていない試料が、いずれも適度な疎水性を示した。疎水性とは水になじみにくい性質であり、この結果には天然のろうが関わると研究者は考察している。[8] 表面が水をはじくこと自体は、外から加工した証拠にはならない。

同じ研究では、ワックス処理や洗浄によって表面の性質が変わり、その変わり方も試料の産地によって異なった。[8] したがって、水滴を載せる、指でなでる、光にかざすといった家庭での観察だけから、表面にあるものの由来を一意に当てるのは難しい。実験室で測る表面の性質と、台所で感じるつるつる感は、そのまま同じ検査にはならない。

天然のろうがあるという説明は、すべてのべたつきの原因を言い当てる説明でもない。まず、天然の表面層がある。その上で、熟すこと、保存されること、流通時の処理によって表面の状態が動く。この順に理解すると、買った日の手触りと今日の手触りの差を、汚れか鮮度かという狭い選択に押し込まずに済む。[2][8][12]

表面物性の研究が使ったのは、水滴などと表面が接する角度を測り、表面のエネルギーを求める方法である。さらに、その値をもとにウイルスと果皮の相互作用を計算している。[8] つまり、「水をはじいた」という観察から先にも、測定と計算の段階がある。べたつきという触覚、液体の広がり方、病原体との相互作用をそれぞれ分けた上で、どこに関係があるかを調べる設計だ。台所で一つの感覚から全部を判定しようとすると、この区別が抜け落ちやすい。

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べたつきは熟す過程と結びつくが、時計にはならない

べたつきを正面から調べたのが、収穫後の「Hongro」を20°Cで保存した実験である。エチレンという成熟に関わる物質を100 μL/Lで処理すると、熟す進行が速まり、べたつきも強くなった。一方、成熟を遅らせる処理として1-メチルシクロプロペンを1 μL/Lで用いると、熟す進行とべたつきの両方が抑えられた。[12] 対象は果実であり、18〜39歳の女性が食べた場合の健康や体重への影響に、そのまま当てはめることはできない。

電子顕微鏡による観察では、べたつきに関連して、表面のろうの構造にも変化が見られた。成分の分析では、べたつきの強さがエチレンの生成や、特定の脂肪酸エステルの量と正の関連を示した。[12] 脂肪酸エステルは、ここではろうの組成を考えるための化合物である。指先に感じる油っぽさを、単に水が表面に浮いた現象として扱うより、ろうの中身と構造の変化として捉える方が研究の結果に沿う。

この実験が支えるのは、「この品種では熟す進行とべたつきが結びついた」という読み方だ。[12] 買ってからの経過時間だけでべたつきが決まるという意味ではない。保存温度も処理もそろえていない家のりんご同士を触り比べ、片方の方が何日古いと換算することはできない。手触りは日付印の代わりにはならないのである。

また、成熟が進むことと、腐敗や微生物の状態は、同じ物差しではない。べたつきの実験が測ったのは成熟、ろうの構造、成分などの関係であり、表面に触れた人の食中毒の起こりやすさではない。[12] 後で扱う菌の保存実験も、品質の維持と菌の生存を別の項目として評価している。[7] 「熟しているらしい」という情報から「安全である」「危険である」へ飛び越えないことが大切になる。

処理によって成熟の進行を変え、表面の構造を観察し、成分も分析する。この実験は、手触りと熟す過程の関係を異なる角度から確かめたものだ。[12] 「古い」という日常語には、収穫から時間がたった、熟した、乾いた、傷んだといった別の状態が入りやすい。実験で測った成熟とろうの変化を読む際には、言葉を具体的な状態へ戻したい。間食の準備で気づいた違和感を、いきなり食べ物全体の評価へ広げず、「皮の感触が変わった」と置いておく余地がある。

同じ冷蔵庫を出ても、品種で変化はそろわない

「Hongro」と「Fuji」を比較した研究では、1±0.5°Cで保存した果実を20°Cの室温へ移し、皮や果肉の成分と品質の変化を追っている。エチレンの生成は品種間で異なり、「Hongro」では室温保存の9日目まで急速に増えた。一方、べたつきが生じた20日目には、両品種のエチレン生成に有意な差はなかった。[13] ある日のエチレンの量だけで、べたつきの経過全体を説明するのも単純すぎる。

この比較では、脂肪酸の構成にも違いがあった。「Hongro」では不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸が同程度だったのに対し、「Fuji」では不飽和脂肪酸の含量が高いという違いが示された。[13] 不飽和と飽和は脂肪酸の構造を分ける呼び方である。ここでの比率は果実成分の比較であり、どちらのりんごが人の食事として健康的かを順位づける数字ではない。

さらに、「Hongro」は低温で50日保存した後、室温に移すと多量のエチレンを生成し、べたつきの発生と関連した。室温での保存期間が進むにつれて、ペンチルリノレートやα-ファルネセンという成分も有意に増えた。[13] 収穫から店頭まで、そして買ってから食べるまでを、同じ時間のひとまとまりにしない方がよい。購入後に同じ場所へ置いたとしても、それ以前の保存履歴にも違いがあるからだ。

台所で「先週のりんごよりべたつく」と感じたときには、比較している品種も見直したい。前に買ったものと今回のものの名前が違えば、同じ速さで同じ表面になると期待する根拠が薄くなる。[13] これは鮮度を考えなくてよいという話ではなく、鮮度の手がかりを手触りだけに集めないための話である。袋に入った日を覚えることと、品種名を覚えることでは、持っている情報が異なる。

品種比較では、皮だけでなく果肉についても成分を調べ、ろうの主成分や保存中に増える物質を追っていた。[13] 表面に触れた感覚の裏側に、いくつもの測定対象があるわけだ。実際に果物売り場で選ぶときには、その全成分を知る必要はない。ただ、以前の品種の経験を別の品種へそのまま当てはめないことはできる。「この前はさらさらだった」という記憶だけより、名前と置き場所を添えた記憶の方が、今回の違いを落ち着いて整理しやすい。

数字で読むりんごの表面と保存

20°C:「Hongro」の成熟とべたつきを処理別に比較した保存温度であり、家庭での推奨保存温度を決めた数字ではない。[12]

1±0.5°C:品種比較で用いた低温保存条件。その後に20°Cへ移して変化を追った。[13]

10品種:ろうの成分と保存中の重量減少率を比較したりんごの品種数である。[19]

0.5%:早生りんごに塗布したセルロースナノファイバーの濃度。室温で10日保存した研究の実験条件である。[15]

18週間:市販流通を想定した冷蔵保存で、ワックス処理果実の品質と菌を調べた期間。家で保管してよい期間を示す数字ではない。[7]

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宮川涼 Founder

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