ランニング初心者の筋トレはけが予防になるか、脚の力と発生率を分けて読む

ランニング初心者が筋トレを加えれば、けがは減るのか。初心者を追った無作為化試験と市民ランナーの調査を軸に、筋力、足の筋肉、フォーム、走りの効率が変わることと、けがの発生率が下がることを区別する。予防を期待して練習を足す前に、研究の数字の読み方と記録する項目を考える。

走る靴を玄関に置いた。その隣に、筋トレ用のマットも広げた。走り始めたばかりなら、脚を鍛えておけばけがを避けられるのでは、と考えるのは自然だ。しかし、筋トレを追加した初心者のけがを直接追った試験では、ストレッチをした群より発生率が低いという結果にはならなかった。[1]

だから筋トレが無意味だ、と急ぐ必要もない。筋力が増える、足の筋肉が大きくなる、同じ速さで走るときの酸素の消費が減る。こうした変化を示す試験はある。ただし、そこで測った成果をそのまま「けがを防いだ」と読み替えることはできない。[2][4][10]

既存記事「スクワットでランニングは楽になる?走る練習とは別に育つ脚の力を研究で読む」には、脚の力と走りへの移り方を譲る。ここで考えるのは、筋トレを予防のために足すとき、何を根拠に期待し、何を別に確かめるかである。

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初心者を追った試験では、けがの差は出なかった

まず見るべきは、実際にけがが起きたかを調べた研究だ。無作為化比較試験とは、参加者を偶然に任せて群に分け、介入の結果を比べる方法である。初心者を対象とした予備的な無作為化比較試験では、走り始めて最近の経験が2年未満の、18〜60歳の129人が参加した。抵抗を使う筋トレ、機能的な筋トレ、対照となるストレッチの群に分けている。18〜39歳の女性だけを対象にした比較ではなく、その年代の女性の予防効果にそのまま当てはめるには慎重さが要る。[1]

最初の8週間は、割り当てられた運動を週3〜5回行うよう指示され、その後の4か月は維持期間だった。期間中、少なくとも1回のランニング関連のけがを経験した人は52人、全体の40%だった。機能的な筋トレ群で21人、抵抗を使う筋トレ群で16人、ストレッチ群で15人である。[1]

ここで人数だけを見て「機能的な筋トレが危険だった」と判断するのは早い。走った時間を考慮した発生率でも比較され、群間の差は認められていない。この試験が示す中心は、自宅で行う筋トレがストレッチに比べてけがの発生率を変えたとは確認されなかった、という結果だ。[1]

予備試験である点も大切だ。著者らは、より大きな試験に向けて参加者の脱落を減らす方法が必要だと述べている。これだけであらゆる筋トレの予防効果を否定することも、別の筋トレなら必ず効くと言うこともできない。少なくとも、初心者に筋トレを加えるだけでけがが減るという約束を支える結果ではない。[1]

帰宅後の予定に筋トレを書き込む場面に戻そう。「けがをしないために必ず追加する」という義務にすると、期待が研究を追い越す。この試験を読む限り、予防を保証する予定としてではなく、別の成果も確かめながら取り入れる運動として考えるほうが筋が通る。[1]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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人数と発生率は、違う角度からけがを数える

けがをした人の数と、走行時間当たりのけがの数は、同じ数字ではない。先の試験の発生率は、走った1,000時間当たりのけが件数で表されている。機能的な筋トレ群は32.9件、抵抗を使う筋トレ群は31.6件、ストレッチ群は26.7件だった。数字の大小はあるが、統計的には群間差がなかった。[1]

それぞれの95%信頼区間は、機能的な筋トレ群で20.8〜49.3件、抵抗を使う筋トレ群で18.4〜50.5件、ストレッチ群で15.2〜43.2件だった。信頼区間は推定の不確かさを示す幅であり、この試験では発生率を狭い範囲に絞れていない。平均値の並びを、そのまま優劣の順位表にしてはいけない。小数点まである数字も、確実さとは別である。[1]

また、1,000時間という表示は研究を比較するための尺度であって、そこまで走るとけがをするという期限ではない。全体の40%という値も、この試験の対象と観察期間で得られた割合だ。今朝走り始めた自分の将来を、同じ確率で言い当てる数字ではない。[1]

読者が練習記録をつけるなら、「今月けががなかった」という欄に、どの程度走った月だったかを添える意味がある。けがの数だけでは運動への接触量が見えないという、発生率の考え方を生活に移したものだ。走る機会の少なかった月と、多く走った月を同じ条件として比べないための記録になる。[1]

研究の対照がストレッチだったことも読み落とせない。比較したのは筋トレと何もしない生活ではなく、割り当てられた運動同士である。したがって「運動を何も加えないより筋トレはどうか」という問いまで、この結果だけで答えたことにはならない。誰と何を比べた数字かを残すと、見出しだけから受ける印象が変わる。[1]

足の筋肉やフォームの改善は、予防への途中の成果である

足を鍛える研究には、明るい結果がある。健康な長距離の市民ランナー31人を、足と足首の筋トレかストレッチに分けた無作為化試験の実施可能性研究では、8週間のプログラムが試された。参加者が取り組めるか、満足して続けられるか、筋肉に変化が起きるかを確かめる段階の研究である。対象は長距離を走る人であり、走り始めた18〜39歳の女性にも同じ変化が起きるかは別に確かめる必要がある。[2]

運動への実施遵守率は97%で、介入群では8週間後に、足の親指や指に関係する母趾外転筋と短趾屈筋の断面積が有意に増えた。足の小さな筋肉にも練習による変化が起きること、そしてこの計画を本格的な試験へ進める見込みが得られたことは、具体的な成果だ。[2]

ただし、筋肉の断面積が増えたことと、将来のけがが減ったことは別の評価である。この研究の結論は、筋力などの好ましい変化を踏まえ、けがのような臨床的な結果を評価する意義がある、というものだった。予防研究への入口を、予防効果の確定と取り違えないようにしたい。[2]

動き方の改善にも同じ区別が要る。すねの内側に症状が出る内側脛骨ストレス症候群と診断された、25〜35歳の男女40人を対象とする無作為化試験がある。通常の理学療法の運動に、股関節を外へ開く筋肉の機能的な筋トレを加える群と、加えない群を8週間比較した。患者を対象とする結果なので、同年代を含む18〜39歳の女性でも、症状のない初心者の予防にそのまま当てはめることはできない。[6]

筋トレを加えた群では、膝が内側に入る動きや、反対側の骨盤が下がる角度が、対照群より有意に小さくなった。これは症状のあるランナーの動きを測った結果であり、健康な初心者の新しいけがを減らしたという結果とは区別される。動きが変わることは評価できても、その先の発生率まで同じ測定で確かめたことにはならない。[6]

スマホで撮った自分の姿を見て、膝の向きが気になることもあるだろう。ただ、診断を受けた人への理学療法と筋トレの組み合わせを、動画だけで選ぶ自主練習に置き換えるのは飛躍がある。痛みがある場合の運動選びは医師に相談する場面であり、見た目の角度だけで予防の成否を決める話ではない。[6]

この順序は、運動の説明を受けるときにも役に立つ。「足を強くする」「膝の向きを変える」という説明を聞いたら、それが今回の練習で確認する目標なのか、けがを減らすことまで確認された話なのかを分けて受け取れる。途中の成果には価値があるが、先の成果を自動的に付け足すことはできない。足の試験と股関節の試験は、その境界を考える材料になる。[2][6]

また、実施遵守率の高さも、効果の大きさそのものではない。足の試験の97%は、参加者がプログラムにどの程度取り組んだかを示す数字である。「ほとんどの人が続けた」と「ほとんどの人がけがを避けられた」は違う文だ。取り組みやすい計画が見つかったことを評価しつつ、予防の結果は別に追う必要がある。[2]

自宅で続ける運動を選ぶ際には、説明の中の動詞に目を向けたい。筋肉を「大きくした」、角度を「小さくした」、けがを「減らした」では、確かめる対象が違う。体の変化を丁寧に測った研究だからこそ、その測定が届いたところまで受け取ることが大切だ。[1][2][6]

数字で読む筋トレとけが予防

初心者129人:抵抗を使う筋トレ、機能的な筋トレ、ストレッチを比べた予備的な無作為化試験の参加者数だ。[1]

52人、40%:同試験で少なくとも1回、ランニング関連のけがを経験した人の数と割合である。[1]

1,000走行時間当たり31.6件:抵抗を使う筋トレ群の発生率で、ストレッチ群の26.7件との間に差は認められなかった。[1]

31人、8週間:足と足首のプログラムの実施可能性を調べた試験の規模と介入期間である。[2]

616人:筋トレ参加の有無でけがの割合に差がなかった横断調査の対象者数で、予防の因果関係は決められない。[15]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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