全力の20秒を数本だけはさむ10分ほどの自転車こぎで、体力はどこまで上がるのか。6週間の無作為化試験と職場の8週間の比較、2週間では何も変わらなかった試験、体重を動かしたのは食事の側だった16週間の試験から、負担を減らした高強度運動に期待できることと、できないことを分けて読む。
寝室の隅で、室内用の自転車がハンガー掛けの役を引き受けて久しい。買った春には、テレビの前でニュースを一本見終えるまでこぐつもりだった。サドルにはいま、明日着るシャツが一枚掛かっている。こがなくなった理由を自分の言葉で言い直すと、平日の夜には、その長さがいつも少しだけ重かった、というあたりに落ち着く。
運動の研究には、その重さの方を削った型がある。REHIT(reduced-exertion high-intensity interval training、負担を減らした高強度インターバル)や、低容量のHIITと呼ばれる方法だ。1回の運動の大半はペダルを軽く回し、全力に近い区間は数十秒を数本だけにとどめる。体を動かす量が足りない若い成人の試験では、10分の自転車こぎの中に20秒の全力を3本はさむ形が使われた[4]。
体力と体重は、同じ運動の成果として一続きに語られやすい。ところが、この型の試験を並べると、二つの数字は同じ向きにそろっては動かない。心肺の体力ははっきり伸びたのに、体重と内臓脂肪を減らしたのは食事を減らす側だった試験がある[4][18]。

「負担を減らした」のは、強さではなく合計の量
先に、何が減らされたのかを確かめたい。血糖への作用をまとめたメタ分析(複数の試験の結果を統合する解析)は、対象とする「低容量」の型を、強い区間の合計が15分以下で、1回の運動全体が30分以下のものと決めた。全力の短距離走に近い型(スプリント・インターバル)については、1本の全力を30秒未満とする条件も加えている。対象は運動選手ではない成人である[3]。
具体の型は試験ごとに違う。体を動かす量が足りない若い成人の試験では、低い強さで10分こぐあいだに「全力」の20秒を3回入れた。全力の時間をすべて足しても1分にしかならない[4]。過体重や肥満の人の16週間の試験は、最大酸素摂取量の150%に当たる強さで20秒こぎ、続く40秒は軽くこぎ続ける形を、1回10分にまとめた[18]。運動の習慣がある若者の実験では、最大酸素摂取量の約170%の強さで20秒動き、10秒休むことを8回繰り返した。休みを含めた1回の長さが約4分で、強い区間だけを足すと2分40秒になる[12]。
最大酸素摂取量は、体が1分間に取り込める酸素の量の上限で、体重1kgあたりで表すと心肺の体力の物差しになる。150%や170%という値は、その上限を物差しにして、それを超える強さで短く動いたことを示している。数字の上では、ゆっくり長くこぐ運動とはまるで別の種目に見える[12][18]。
減らしたのは強さではない、と言ってよい。どの型でも、強い区間そのものはきつい。削られたのは、強い区間の合計の時間と1回の長さ、型によっては週あたりの回数である。過体重や肥満の成人の気分の反応を調べた系統的レビューも、低容量の型を、従来の高強度インターバルより運動の時間が短く、回数が少なく、全体の量も少なくなりうるものと位置づけた[2]。
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
運動不足の若い成人は、6週間で心肺の体力を伸ばした
2025年に報告された無作為化比較試験(参加者をくじ引きのように組に分けて比べる試験)は、体を動かす量が足りない若い成人を対象にした。平均年齢22歳、BMIは平均24、開始時の最大酸素摂取量は体重1kgあたり毎分33mLである。17人が週3回・6週間の低容量スプリント・インターバルを行い、20人は運動をしない対照の組に入った。著者らは、事前の登録、組分けの隠し方、データの公開など、似た先行研究の方法に向けられた批判に答える設計をとったと書いている[4]。
運動の組の最大酸素摂取量は、対照の組と比べて、体重1kgあたり毎分5.6mL多く伸びた(信用区間2.2〜8.1)。体重で割らない値でも毎分325mL多い。疲れ切るまでこぎ続けられる時間は、対照の組より133秒長くなった。運動の組では1人を除く全員、割合にして94%が「伸びた人」と判定され、対照の組でも4人、20%が同じ基準に当てはまった。何もしなくても数字が揺れる人はいる。その揺れを見込んだうえで、運動の組ではほぼ全員が伸びた側に入った[4]。
この試験から言えないことも、同じだけはっきりしている。参加者は若く、BMIの平均は24で、肥満の人の試験ではない。比べた相手は「運動しない」組で、同じ時間を別の運動に使った組ではない。体重の変化は最大酸素摂取量を説明する式に入れた要因の一つで、体重を減らすための試験として組まれてはいなかった[4]。心臓や血圧の治療を受けている人は、全力の区間を入れる前に主治医に確かめておきたい。

職場の8週間と、4分と30分を比べた実験
職場で行われた試験は、32人をREHITの組と、中くらいの強さで続ける従来の持久運動(MICT)の組に16人ずつ分け、8週間後に比べた。心肺の体力の伸びはREHITの組で12%、MICTの組で7%だった。収縮期血圧(上の血圧)は順に5%と2%下がり、腹囲は順に1.4%と0.3%減った。メタボリックシンドロームの重さを表す点数は、REHITの組で62%下がったのに対し、MICTの組では27%の増加で、悪い向きの値だった[9]。
点数が一定以上よくなった人は、REHITの組では12人中9人(75%)、MICTの組では15人中7人(47%)だった。著者らは、短い方法がより効率よく体力と心血管の健康を高めたと結論している。ただし1組16人の小さな試験で、腹囲の差も1.4%と0.3%の違いにとどまる。職場という現実の場で回せたことに、この試験の重みがある[9]。
時間の差をもっと極端にした実験もある。運動の習慣がある若い男女19人を、約170%の強さの短い反復(休みを含めて約4分)の組と、最大酸素摂取量の約65%で30分続ける持久運動の組に分け、週4日を6週間続けた。最大酸素摂取量は、持久運動の組が体重1kgあたり毎分48.3から55.0へ、短い反復の組が47.9から54.7へと、ほぼ同じ幅で伸びた。筋線維ごとの酸素を使う力や、筋肉の中の毛細血管の密度の変化もよく似ていた[12]。
違いが出たのは無酸素の運動能力で、大きく伸びたのは短い反復の組だけだった。もともと体力のある若者の、人数の少ない実験である。それでも、4分と30分という運動時間の開きのまま心肺の伸びが並んだという結果は、短い型の働きを読む手がかりになる[12]。
2週間では、何も動かなかった
短ければ短いほど都合がよい、という話にはならない。過体重や肥満の男性18人を対象にした小さな試験では、最高心拍数の90%で1分こぎ、1分休むことを10回繰り返す運動を、2週間に6回行う組(8人)と4回行う組(10人)に分けた。開始時のBMIは平均31.2である。最後の運動から72時間後に測ると、体組成、有酸素の能力、糖の代謝、炎症の指標は、どちらの組でも開始時から変わっていなかった[8]。
著者らは、2週間で6回でも4回でも、この量では選んだ健康の指標を改善できないと結論した[8]。6週間で最大酸素摂取量が伸びた試験とは、対象も運動の型も違うので、どちらが優れているとは比べられない。それでも、2週間という短さで結果を判断するのは早いということは、二つを並べて言える[4][8]。
逆に、時間をかけた例もある。前糖尿病(糖尿病の手前の段階)がある71歳前後の高齢者10人は、低い強さと高い強さの歩行を60秒ずつ10回交互に繰り返す30分の運動を、指導者のもとで週3回、10週間続けた。最大酸素摂取量は16±11%伸び、空腹時の血糖とインスリンが下がり、インスリンの効きもよくなった。比べる組は置かず、若い健康な6人の値と見比べた小さな試験である[10]。
数字で読む負担を減らした高強度運動
- 体重1kgあたり毎分5.6mL:20秒の全力を3本はさむ10分の自転車こぎを週3回・6週間行った組で、運動しない組と比べて多く伸びた最大酸素摂取量。対象は運動不足の若い成人[4]。
- 12%と7%:職場の8週間の試験で伸びた心肺の体力。順にREHITの組、従来の持久運動の組[9]。
- 47.9から54.7:休みを含めて約4分の短い反復を週4日・6週間続けた組の最大酸素摂取量(体重1kgあたり毎分mL)。30分の持久運動の組は48.3から55.0だった[12]。
- 2週間に6回と4回:過体重や肥満の男性が高強度インターバルを行った回数。どちらの組でも体組成も有酸素の能力も変わらなかった[8]。
- 16±11%:歩くインターバルを10週間続けた前糖尿病の高齢者10人で伸びた最大酸素摂取量。比べる組を置かない試験の値[10]。
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
1
2






