ラットプルの肩関節と肩甲骨、動作範囲の成績から開始順序を決めてよいか

ラットプルダウンで肩甲骨を先に動かすべきか迷ったとき、重さや背中の感覚だけで順序を決めていないだろうか。動作範囲、補助具、負荷、種目順序を比べた研究から、筋活動や筋力の結果と関節の動き出しを分け、指導者に何を見てもらうか、次回の練習で何を記録するかを考える。

バーに手を掛けて、引き始める前に止まる。「肩甲骨から」と言われたが、肩を下げてから腕を動かすのか、腕と一緒に動いてよいのか。まだバーは動いていないのに、頭の中では肩と腕の順番待ちが始まっている。

先に答えると、ここで取り上げる動作範囲、補助具、負荷、種目順序の比較から、「肩甲骨を先に動かせばよい」という順序までは決められない。筋力が伸びたこと、背中の筋肉が活動したこと、関節がどの時点で動いたかは、別の問いとして扱う必要がある。[1][6][9][17]

既存記事「ラットプルダウンの呼吸法は引く時に吐く?背中への効き方と合図を分けて読む」には呼吸の合図を譲る。ここで考えるのは、引き始めの合図をどう理解し、その成否を何で判断するかだ。フォームの決まり文句を増やすより、研究が測った結果と、目の前で見てもらいたい動きをつなぐための記事である。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

「先に動かす」の前に、何を確かめたいか

「肩甲骨から引けた」と感じた日と、重いバーを引けた日は同じとは限らない。たとえば補助具を使う試験では、最大筋力、反復回数、広背筋の活動がそれぞれ調べられている。広背筋とは背中の筋肉の名称であり、この試験はそれらの指標を使って補助具の有無を比較したものである。[6]

筋活動とは、運動中の筋肉の働きを評価する指標だ。一方、最大筋力の試験では扱える重さを、反復の試験では続けられた回数を結果にする。どれも練習を考える材料になるが、筋活動や重さの結果を、そのまま肩甲骨と腕の動き出しの時刻に置き換えることはできない。[6]

読者が知りたいのは「どこに効いたか」ではなく、「今の合図でどう動いたか」かもしれない。その場合は、指導者に「引き始めに、どこが動いているか見てほしい」と伝える方が、質問の焦点が合う。「背中に効かないので全部直したい」では、相談したい場面が広すぎる。

ここでは「肩甲骨から」という言葉を、動作を確かめるための合図として扱う。全員に共通する開始順序を証明した法則とは扱わない。ラットプルダウンを含む研究でも、比較の中心が動作範囲なのか、補助具なのか、練習の種目順序なのかによって、答えられる質問が変わるからだ。[1][6][17]

たとえば「先に下げると、より重い物を引けた」という自分の経験を得たとしても、その日は実施した種目の順番も違っていたかもしれない。種目順序を比較した試験がある以上、合図以外の練習条件にも目を向けたい。自分の記録では、変えた言葉だけでなく、その運動をいつ行ったかも残すと、次の相談の材料になる。[17]

観察するときの言葉も具体的にしたい。「正しい肩」より「引き始め」、「よい姿勢」より「バーを動かし始めた場面」である。これは新しい運動法の提案ではない。動作を見てもらう範囲を絞るための工夫だ。合図を聞き直すときは、自分が理解した動きを言葉にして返すと、互いに何を指しているか確かめられる。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

動かす幅の研究は、動き出す順序の研究と違う

動作範囲とは、反復の中で動かす幅のことだ。筋肉が伸びた側の範囲だけを使う部分反復と、全体の範囲を使う反復を比べた研究がある。健康で筋力トレーニング経験のある参加者30人が対象で、左右の上肢を異なる条件に無作為に割り当てた試験である。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるより、まずトレーニング経験と実施条件の違いを考えて読む必要がある。[1]

期間は8週間、練習は週2回で、上半身を対象とした運動を行った。評価したのは、肘を曲げる筋肉と伸ばす筋肉の厚さ、そして片側で行うラットプルダウンの筋力・持久力である。背中全体の見た目を判定した試験として読むと、対象が変わってしまう。[1]

結果は、筋肉の厚さの増加も、ラットプルダウンで10回反復できる最大の負荷の改善も、条件間で同程度だった。差の推定値はゼロに近く、統計的な比較でも同程度の改善を支持する結果だった。ここから読めるのは、この参加者と練習条件で、異なる動作範囲でも似た適応が得られたということだ。[1]

「部分反復でも改善したのなら、引き始めはどう動いてもよい」と飛躍しない。この試験の比較対象は動かす範囲であり、「肩甲骨だけを先に動かす条件」と「腕と一緒に始める条件」ではない。範囲に関する結果を、開始順序の許可証にしてはならない。[1]

逆に、広く動かせば必ず優れている、と読み替えるのも違う。この試験では全体の範囲が部分反復より優れるという結果ではなかった。指導者から受けた合図を考える際も、「動かす幅の話なのか」「動き始める場所の話なのか」を聞き分ける必要がある。[1]

日常の練習では、バーの到達位置ばかり見てしまうことがある。けれども、「同じ所まで引けた」と「同じ動きで引けた」は、別々の確認項目として書ける。到達位置を記録したら、それに加えて、引き始めで迷ったこともメモしておく。動画や見本を確認する場面でも、始点と終点の印象だけで動作全体を採点しないための問いになる。

補助具を使っても、背中の働きは自動で変わらない

手とバーを補助するリフティングストラップの試験では、筋力トレーニング経験のある男性12人が、使用する条件と使用しない条件を行った。平均年齢は27歳で、平均のトレーニング経験は6.6年だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、性別に加え、初めてマシンに触る人と経験者との違いを考える必要がある。[6]

最大筋力の値は、使用時96.5kg、非使用時96.6kgで、条件間の差は認められなかった。最大筋力の70%の負荷で限界まで行った反復でも、各セットの回数、総反復回数、広背筋の筋活動に差は認められなかった。補助具があれば必ず背中の働きが増す、という期待を、この条件の結果は支えていない。[6]

ただし、差が認められないことを「補助具は誰にも必要ない」と読み替えることもできない。経験のある男性で比較した結果を、握り方にまだ慣れない人の道具選びまで広げない。自分に道具が必要かという相談と、それを使えば肩甲骨の開始順序が正しくなるかという質問は、分けておきたい。[6]

道具を着けた後も、動作は別に確かめる必要がある。今回の比較で得られたのは筋活動や反復回数についての結果であり、肩甲骨を先に動かす方法の優劣ではない。この区別がつけば、道具を替えた日の感覚を大切にしつつ、感覚だけで関節の順序を断定せずに済む。[6]

「今日は握りやすかった」「背中が分かりやすかった」というメモは残してよい。その隣に、使った補助具と負荷、実施した運動の順番を書く。よかった感覚を否定するためではなく、指導者に伝えるときに、何を変えた日だったか説明できるようにするためだ。

筋力の数字をもう少し丁寧に見ると、この試験は最大筋力の試験と、一定割合の負荷で反復する試験を分けていた。後者は最大筋力の70%を使い、休憩を60秒として、限界まで引くセットを行っている。したがって「差がなかった」という結果にも、どの負荷で、どの終え方まで比べたのかという条件が付いている。[6]

練習で補助具を試すときも、この条件を丸ごと自分のメニューにする必要はない。研究の負荷設定は、参加者同士の比較を読むための情報だ。道具の使い方を教わる相談と、限界まで繰り返す練習の相談を分ければ、「道具の試験に書いてあったから」という理由だけで反復を続けることを避けられる。

動作範囲の試験でも、測定場所に意味がある。筋厚は上腕の長さの45%と55%の位置で評価され、ラットプルダウンの試験は部分的な範囲と全体の範囲の両方で行われた。筋肉の厚さの測定と、運動を行う能力の測定を組み合わせている点が、この研究を読む手掛かりになる。[1]

この区別を自分の目的に引き寄せるなら、「動作を覚えたい」「反復を続けたい」「筋肉の変化を見たい」を同じ達成項目にしないことだ。研究でも、筋厚と筋力・持久力は別に評価されている。開始順序が気になる読者は、重さの記録の横に動作の質問を残し、次の練習で指導者に確認する項目として持っていける。[1]

数字で読むラットプルダウンの比較

30人:左右の上肢で動作範囲を比べた、トレーニング経験者の試験。[1]

8週間:その試験で上半身の練習を続けた期間。筋厚と筋力・持久力の改善は条件間で同程度だった。[1]

12人:ストラップの有無を比べた、筋力トレーニング経験のある男性の人数。[6]

96.5kgと96.6kg:ストラップ使用時と非使用時の最大筋力の平均値。有意な差は認められなかった。[6]

16人:種目を行う順番と筋力の伸びを比べた、トレーニング経験のある男性の人数。[17]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約