ダイエットの甘酒は生の酵素が必要?温める前に分けたい糖と消化の話を読む

ダイエット中の甘酒は、生の酵素を残すために温めない方がよいのか。米麹がでんぷんから糖を作る過程、酵素の働きを測る食品研究、腸内細菌の培養実験を分けて読む。加熱の有無だけで一杯の価値を決めず、飲む量や成分表示を確認するための視点を、甘酒のレビューと米麹の研究から考える。

朝の台所で、甘酒のカップを電子レンジに入れる手が止まる。「温めると酵素がなくなる」と聞いたからだ。ダイエット中なら、せっかくの一杯を無駄にしたくない。ただ、その心配では、甘酒ができるまでの仕事と、飲んでから期待する仕事が混ざっている。

米麹の甘酒の甘さは、麹菌のアミラーゼという酵素が、でんぷんを分解してできたブドウ糖に由来する。作る段階で酵素が働いたことと、飲む段階でも同じ働きを保つ必要があることは、別の問いである。甘酒のレビューが説明する糖のでき方から、生の酵素が減量に必須だという結論には進めない。[1]

既存記事「疲労回復の甘酒は米麹と酒粕で同じ?糖とアミノ酸を製法から読み分ける」には製法の比較を譲る。ここでは米麹の甘酒を中心に、残っている糖、測定される酵素活性、腸内細菌の実験を分ける。温かい一杯を選んだ朝にも、何を確かめればよいかを考えたい。

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酵素が作った糖と、残っている酵素は別である

甘酒を扱ったレビューでは、米麹の甘酒と酒粕の甘酒が区別されている。米麹の甘酒では、麹菌の働きででんぷんから生じるブドウ糖が甘さのもとになる。一方、酒粕の甘酒の甘さは加える砂糖に依存する。どちらも甘酒という名前で売り場に並ぶが、甘さが生まれる道筋は同一ではない。[1]

この違いから押さえたいのは、「砂糖を加えていない」と「糖が含まれない」は同じ意味にならないことだ。米麹の甘酒は、でんぷんが分解されてブドウ糖になるから甘い。砂糖を足したかどうかだけで糖の存在を判断すると、製造中にできた糖を見落とす。発酵という言葉は、糖を帳消しにする印ではない。[1]

アミラーゼは、ここではでんぷんを分解する酵素を指す。酵素が材料に働いて糖を作る過程と、できあがった飲み物に糖が含まれる状態を、時間の順に並べると理解しやすい。前者は製造中の反応であり、後者は飲む時の成分である。酵素への関心が強くても、すでにできた糖の話は残る。[1]

したがって、カップを前にした問いは分けた方がよい。「この甘さは何から来たか」「この一杯をどれだけ飲むか」「酵素がどの条件で働くか」である。これらを全部「生だからよい」という短い判断にまとめない。糖ができる仕組みを知ることは、甘酒を遠ざける理由ではなく、飲み物として扱うための出発点になる。[1]

レビューには、甘酒には糖以外にも多様な成分があり、米麹の甘酒にオリゴ糖やエルゴチオネインが含まれると整理されている。ただし、成分名の多さを、そのまま減量効果の大きさに読み替えることはできない。著者は各機能に関わる物質を特定することを今後の課題としている。酵素だけに注目しても、反対に成分を数えても、一杯の健康効果を決め切ることにはならない。[1]

米麹の酵素を料理人、その働きでできた糖を料理にたとえるなら、作業が終わった後の皿と、料理人が今も働けるかは別々に確認することになる。もちろん、このたとえだけで加熱の影響を判断することはできない。役目を終えた反応の結果と、現在の反応の能力を分けるための整理である。甘酒のレビューが説明する甘さの由来は、まず前者の理解に役立つ。[1]

甘酒を選ぶ時に「酵素が働いた食品」と「飲む時にも酵素を働かせたい食品」を同じ箱に入れると、温めることへの不安が大きくなりやすい。まず、自分が期待しているのは甘さなのか、特定の消化作用なのかを区別したい。甘さの由来についての説明を、飲んだ後の消化作用の証明として使わない。それだけでも、冷蔵棚の表示と台所のカップを結ぶ考え方は変わる。[1]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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酵素活性は「入っている量」と同じではない

食品研究に出てくる酵素活性とは、決められた測定条件で、酵素が反応を進める働きを調べた値である。米麹のアミラーゼを測る研究では、酵素が作用する材料を用意し、反応によって生じる色を測って活性を評価している。「酵素を含む」という言葉より、具体的な条件を持つ指標だ。[4]

測り方の影響もある。米麹のアミラーゼ活性の測定法を比較した評価研究は、41種類の米麹を対象とした。新しい測定法は従来法と良好に対応した一方、平均では約10%高い値を示した。試料によって両者の値の比も異なり、方法を切り替える際には、対象の麹で比較することが望ましいとされた。対象は食品であり、18〜39歳の女性が飲んだ後の消化や体重に、この測定結果をそのまま当てはめることはできない。[4]

これは「酵素が約10%多ければ健康によい」という実験ではない。分析の手順を替えると、同じ活性を評価していても数値に違いが出るという研究である。広告などで活性の数字を見かけた時には、数字の大小より先に、何をどの方法で測ったのかという問いがある。測定法の差は、体内での消化の差を意味しない。[4]

さらに、酵素由来の物質が見つかることと、働きを持つことも区別したい。米麹の粒の中にあるたんぱく質の断片を可視化した研究では、アミラーゼの一部に由来すると考えられる断片が確認された。その構造からは、加水分解、つまり水を使って分解する働きを持たないと考えられた。対象は米麹の粒内の断片であり、18〜39歳の女性の消化への影響を直接確かめた結果ではない。[7]

この実験では、製麹の後半にその断片が検出される時期と、アミラーゼ活性の増加が鈍くなる時期が重なり、断片化との関係が示唆された。原因を決めつける結果ではないが、「酵素の一部がある」「酵素として働く」を同じにしないための具体例になる。成分名を見つけただけで、消化の助けになると判断するのは早い。[7]

米麹の品質管理のための測定は、製造者にとって意味のある情報である。しかし、そこで得られた活性値に、飲む人の体重という別の単位の結果を足すことはできない。分析の精度を確かめる研究と、食べた人の変化を確かめる研究では、答えようとしている問いが違う。この区別が、酵素の数字を落ち着いて読む助けになる。[4][7]

温度の話では、作る途中と飲む直前を混ぜない

米麹と麦麹を比較した食品実験では、発酵中だけでなく、保存中の酵素活性なども追っている。麹菌が増える時期にはアミラーゼ活性も増え、増殖が落ち着く時期に入ると活性は低下し始めた。麹の働きは、発酵の段階に応じて変化した。[15]

この研究では、米麹の活性は発酵開始から58時間の時点でピークを示した。一方、麦麹では46時間であり、使う穀物によっても経過が違った。研究者は、発酵と保存の条件を調整することで、食品産業で求める酵素活性を得られると考察している。家庭で飲む量を決める試験ではなく、麹を作り、保つ条件の研究である。対象は米麹と麦麹であり、18〜39歳の女性が甘酒を飲んだ場合の効果へ、そのまま当てはめることはできない。[15]

実験で用いた保存温度は−20℃、4℃、32℃であった。測った項目には酵素活性のほか、水分や酸性度なども含まれた。こうした研究を読む時には、「温度が関係した」という一言で済ませず、何を保存し、何を測ったのかを見る必要がある。麹の保存の結果を、完成した甘酒を家庭で温める手順へ、そのまま移すことはできない。[15]

温度に敏感な酵素があるという話から、「この温度以上では甘酒の栄養がすべて失われる」という話に飛ぶのも避けたい。米麹を作る時の酵素活性と、完成した甘酒の成分とでは、そもそも確認する対象が違う。製造条件を調べる食品実験の結果は、製造の理解に使うのが筋である。[1][15]

売り場で生の表示を見て選ぶ時も、温めた甘酒を選ぶ時も、商品が示す保存方法や飲み方を確認するところから始めればよい。酵素を残したいという気持ちだけで、自分で保存条件を変える必要はない。ここで優先したいのは、自宅の温度操作を実験の代わりにしないことだ。酵素の活性を確かめるには、実際に測定する手続きが要る。[4][15]

温度を読む時には、対象の食品と工程を確かめる。この順番を守れば、製造の数字を飲用の効果と取り違えずに済む。[15]

数字で読む甘酒と酵素の研究

約100mL/日:甘酒のレビューで、人の機能評価に関して言及された摂取量。誰にでも必要な量という意味ではない。[1]

41種類:アミラーゼ活性の測定法の比較に使われた米麹の種類数。飲用者の人数ではない。[4]

約10%:新しい測定法が従来法より平均で高く示した値。減量効果の上乗せではない。[4]

58時間:食品実験で米麹のアミラーゼ活性がピークを示した発酵時間。家庭の甘酒作りの推奨時間ではない。[15]

1%:腸内細菌の培養実験で、培地に加えた米麹抽出物の条件。飲料の推奨濃度ではない。[2]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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